【ライブレポート】UNISON SQUARE GARDEN、音楽と行動でロックバンドの存在価値を主張し続ける男たち
新曲を作ってライブをやる。コロナ禍の3年間、バンドにとって当たり前のことが当たり前でなくなった時、誰よりも真摯にそれだけをやり続けてきたのがUNISON SQUARE GARDENだ。昨年から今年にかけて<TOUR 2022 「fiesta in chaos」>を12本回り、今年4月にはニューアルバム『Ninth Peel』を出し、今度は全22公演の<TOUR 2023 “Ninth Peel”>だ。多くを語らず、ただ音楽と行動だけでロックバンドの存在価値を主張し続ける男たち。ツアーのセミセミファイナル、追加公演である7月1日の東京ガーデンシアターを振り返ろう。
1曲目「夢が覚めたら(at that river)」からいきなりかっこいい。ほとんど真っ暗な中で3人だけにスポットを当てる照明。緊張感の高いミドルロックバラードを歌う斎藤宏介の、息を吸う音までリアルに響く生々しい歌声。開演前のざわめきから一転、観客の目と耳と心をステージに全集中させる見事な演出。そして引き絞った矢を放つように一気に光がはじけ、「シュガーソングとビターステップ」が始まる。彼らにとって最大級のポップなヒット曲だが、複雑な構成といい中間部のカオスな展開といい、実はとんでもなくエキセントリックで攻撃的な楽曲であることはライブを観た人は知っている。さらに続けて、「ミレニアムハッピー・チェーンソーエッヂ」「Nihil Pip Viper」と、『Ninth Peel』からのソリッドなロックチューンをぶちかます。鈴木貴雄が単なるリズムキーパーでないことは誰でも知っているが、それにしてもここ最近のプレーは鬼気迫ると言いたいほどキレキレだ。田淵智也も随分調子が良さそうで、広いステージを左右に駆け回って腿上げのアクションを繰り返す。3人とも見るからに絶好調。
「東京、最後までよろしく」
斎藤宏介の短い挨拶を挟んで、個人的に特に聴きたかった1曲「City peel」が早くも登場。『Ninth Peel』の中でも静かに目立っていた、シティポップやフュージョンの香りがする洒落たポップチューン。そこに2作前の『MODE MOOD MODE』からの「静謐甘美秋暮抒情」を繋げ、近年増えてきたユニゾンのアダルトで洗練されたポップサイドを強調するセットリストがいい。と思ったら次は初期楽曲「WINDOW開ける」で、グランジロックとスローバラードが融合したような激しい世界を見せ、「シューゲイザースピーカー」では猛スピードで疾走しながら若々しい情熱を叩きつける。どちらの曲も、斎藤がすさまじくかっこいいギターソロを決めて観客の興奮の火に油を注ぐ。難度の高いバッキングとリードをこなしながら完璧な歌を聴かせる、今さらながら斎藤は本当にとんでもなくハイレベルのミュージシャンだ。
興奮はまだまだ続く。『Ninth Peel』の中でもとりわけダークでファストでクレイジーな1曲「アンチ・トレンディ・クラブ」は、リズムのブレイクが独特過ぎてむしろ乗りづらいのだが、「なんじゃこりゃ!」と思いながらも体が持っていかれる1曲。そこから「MIDNIGHT JUNGLE」に繋げてさらに暗く激しい興奮を煽り、「Phantom Joke」へなだれ込む展開は凄いとしか言いようがない。四拍子と三拍子が高速で交錯する複雑なリズムを、涼しい顔で乗りこなす貴雄。田淵がステージを走りまくってドラム台に駆け上がる。走らないほうが弾きやすいと思うのだが田淵は走る。その走りが見ているこっちのハートに火をつける。
もう1曲、ぜひライブで聴きたかった『Ninth Peel』収録曲「Numbness like a ginger」は、期待通りに、いや期待以上に楽曲の持つ優しさと温かみが溌剌とした演奏とマッチしたみずみずしい楽曲に仕上がっていた。そこに初期楽曲「お人好しカメレオン」をぶつけて、一気にセンチメンタルで甘美なノスタルジーの世界へ引きずり込むセットリストも冴えている。乗りのいい曲なのに誰もが静かに聴き入ってしまったのは、どんな応援歌より力強い励ましの歌として、みんなこの曲が大好きだから。
恒例、貴雄のドラムソロは、わずか3、4分に感じたがとてつもなく中身が濃く、汗と叫びとエモーションの詰まった渾身のプレー。あとを受けた田淵がスラップを駆使した豪快なソロで盛り上げ、「スペースシャトル・ララバイ」へと繋ぐ。照明が一気に明るくなり、ここからがライブ後半の盛り上がりゾーンだと観客に知らせる。「放課後マリアージュ」はシングルのカップリングだったのでひょっとして未聴の人もいるかもしれないが、ユニゾンのポップでハッピーでキュートで青春な一面を代表する楽曲なので今すぐチェック。
無敵のライブチューン「徹頭徹尾夜な夜なドライブ」では、コロナ禍の季節が過ぎつつあることを実感するサビの大合唱で盛り上がり、そのまま「カオスが極まる」へと繋げる完璧な流れ。本編17曲目にして初めてレーザービームを使ったド派手な演出をぶちかます、意表を突いて観客を楽しませるやり方がユニゾンっぽい。さらに18曲目、『Ninth Peel』の中でも最上級にポップでハッピーな「恋する惑星」で、七色の電飾を光らせながらのゴージャスなフィナーレもまた、予想を超えた喜ばせ方が好きなユニゾンらしい。「UNISON SQUARE GARDENでした。バイバイ!」──斎藤の挨拶に応えて湧き上がる拍手、幸せの余韻が半端ない。
「おまけ!」
アンコールの拍手が始まったかと思ったらあっという間に戻って来た3人。「ガリレオのショーケース」では田淵につられて斎藤も走り出し、二人で楽しく鬼ごっこ。二人とも走りながらなぜこんなに激しく正確に弾けるのかさっぱりわからないが、とにかく楽しい。そして本当のラストチューン「kaleido proud fiesta」は、場内の照明を全部灯した中での明るい大団円。観客は今日はまだマスク着用だがその下が笑顔なことがすぐわかる。田淵がベースをスタッフに手渡す。斎藤が手を上げて歓声に応える。貴雄が投げキッスを観客に届ける。なんという濃密な、誠実な、幸福な90分間。
『Ninth Peel』は作り込んだコンセプトアルバムではなく、肩の力を抜いて今やりたい音と言葉を自由に詰め込んだ風通しのいいアルバムだ。その清々しさをそのままステージへ持ち込んだ、等身大のユニゾンのライブが楽しめた今回のツアーは、バンドにとって大きな自信とステップアップになったはずだ。『Ninth Peel』ツアーは終わるが、バンドはまた新たなモチベーションを得てすぐにステージに戻って来るだろう。新曲を作ってライブをやる。バンドにとって当たり前のことが当たり前でなくなっても、UNISON SQUARE GARDENはひたすらそれをやり続ける。信じていい。そして、アルバムツアー2周目となる<TOUR 2023 “Ninth Peel” next>へ続く。
文:宮本英夫
撮影:Viola Kam (V'z Twinkle)
◆ ◆ ◆
■SET LIST
2023.07.01(Sat)@東京ガーデンシアター
01 夢が覚めたら(at that river)
02 シュガーソングとビターステップ
03 ミレニアムハッピー・チェーンソーエッヂ
04 Nihil Pip Viper
05 City peel
06 静謐甘美秋暮抒情
07 WINDOW開ける
08 シューゲイザースピーカー
09 アンチ・トレンディ・クラブ
10 MIDNIGHT JUNGLE
11 Phantom Joke
12 Numbness like a ginger
13 お人好しカメレオン
14 スペースシャトル・ララバイ
15 放課後マリアージュ
16 徹頭徹尾夜な夜なドライブ
17 カオスが極まる
18 恋する惑星
EN
19 ガリレオのショーケース
20 kaleido proud fiesta
■<UNISON SQUARE GARDEN TOUR 2023 “Ninth Peel” next>
2023年11月2日(木) 福岡県 Zepp Fukuoka
2023年11月3日(金祝) 鹿児島県 CAPARVO HALL
2023年11月6日(月) 神奈川県 KT Zepp Yokohama
2023年11月7日(火) 神奈川県 KT Zepp Yokohama
2023年11月 9日(木) 北海道 Zepp Sapporo
2023年11月12日(日) 宮城県 仙台GIGS
2023年11月13日(月) 秋田県 Club SWINDLE
2023年11月16日(木) 大阪府 なんば Hatch
2023年11月17日(金) 大阪府 なんば Hatch
2023年11月20日(月) 愛知県 Zepp Nagoya
2023年11月21日(火) 愛知県 Zepp Nagoya
2023年11月26日(日) 広島県 BLUE LIVE HIROSHIMA
2023年11月27日(月) 高知県 高知 X-pt.
2023年11月29日(火) 香川県 高松 festhalle
2023年12月5日(火) 滋賀県 U★STONE
2023年12月6日(水) 大阪府 GOLILLA HALL OSAKA
2023年12月11日(月) 東京都 Zepp Haneda
2023年12月16日(土) 沖縄県 ミュージックタウン音市場
オフィシャルFC先行受付(抽選)>:
受付期間:2023年7月10日(月)正午12:00~2023年7月18日(火)18:00
■19thシングル「いけない fool logic」
TVアニメ『鴨乃橋ロンの禁断推理』オープニング主題歌
初回生産限定盤 [CD+BD] TFCC-89766~89767 ¥2,640(税込)
通常盤 [CD] TFCC-89768 ¥1,320(税込)
■収録曲
「いけない fool logic」含む全2曲
■初回生産限定盤付属 Blu-ray 内容
STUDIO LIVE at Bunkamura Studio
恋する惑星 / Numbness like a ginger / カオスが極まる / スカースデイル
※初回プレス分封入特典あり
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