【インタビュー】“横向きスタイル”のエンヤサン、「ベストアルバムで僕らのことを知ってもらった上で、また新たなところへ行ける気がしている」

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■この機会に聴いてみたら、「意外といいじゃん。意外と頑張ってる」って(笑)

──「いわない BABY」「頬つねったら」「無垢」とか、ラブソングが独特な作風なのも印象的です。

Y-クルーズ・エンヤ:「いわない BABY」は、うちの母親が「好き」って言ってくれています。好きになってくれる人は、多いんじゃないかなと。恋愛に関しても、照れが多いかもしれないですね。僕は保育園の入園式で名前を呼ばれて前に出た時、膝がガクガク震えて立っていられないくらいの子供だったんです(笑)。

Jr.TEA:こういう曲も兄の人間性そのままということですね。

──「頬つねったら」は失恋ソングですけど、《僕をずっと遠くへと 君が届かないとこへと 連れてってほしい》って他人任せなのが面白いです。

Y-クルーズ・エンヤ:めちゃくちゃ女々しい曲なのに、自分の方が有利でいたいっていう男心が出ちゃってて、正直なところダサいですよね(笑)。当時の恋愛が、本当にそういう状況だったので、「曲が売れて、わけのわからないところまで俺を連れて行ってくれよ」みたいなのもあったんです。


──「無垢」は、ポエトリーリーディングですね。

Y-クルーズ・エンヤ:この曲のトラックができた時、身近にいるDJや音楽通の人たちが評価してくれたんです。「あるく」と同じくらいの頃にできたよね?

Jr.TEA:そうだね。

Y-クルーズ・エンヤ:だからこれもポエトリーの要素もあるんですよね。当時の叶わぬ恋みたいなのを匂わせています。


Jr.TEA:当時、こういう曲調を作ってみたかったんです。

Y-クルーズ・エンヤ:当時、ダブっぽいのが好きだったので。

Jr.TEA:フィッシュマンズも、こういうサウンドの曲があったりするし。

Y-クルーズ・エンヤ:当時、こういうのが好きな音楽のど真ん中だったよね?

Jr.TEA:うん。だから、そういう影響が出ているんだと思います。

──ダブという点だと「大メインクライマックス feat.ACO」も、そうですよね?

Jr.TEA:これに関しては、あんまりダブは意識していなかったですけど。

Y-クルーズ・エンヤ:これは「ACOさんと曲を作れるぞ」って決まってから作ったよね?

Jr.TEA:うん。トラックがない中で作ったんです。「ACOさんをお迎えするのにふさわしいトラックを作ろう」っていう流れでした。

Y-クルーズ・エンヤ:普通は曲を作ってから「これはACOさんに歌っていただきたい」ってなるんでしょうけど。

Jr.TEA:普通とは逆の順番だったんですけど、よくできたと思います(笑)。


──「大メインクライマックス」って、すごい表現ですね。山場を意味する言葉をトリプルで重ねている感じですから。

Y-クルーズ・エンヤ:『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』の演出のヘイポーさんが会議の時に「大メインクライマックスですよ」って言ったのをまっちゃんがラジオで取り上げていたんです。その言葉がずっと頭の中に残っていて、使わせていただきました。

──かっこいいサウンド+ユニークな言語センスというのは、やはりエンヤサンの醍醐味だと思います。例えば「中の下」は、あまりパッとしない生活を送っている人への応援歌ですけど、対象を《中の下》と称してメッセージを送る人は、あまりいないんじゃないですか?

Y-クルーズ・エンヤ:僕の性格の悪さが出てた時期ですね(笑)。自虐も込めています。自分のことを客観視できずにいて、写真を加工して偽って見せることに対する皮肉も込めて作っています。でも、意外と女の子ウケが良かったんですよね。


──ねじくれまくっていますけど、「あるがままの自分に自信を持っていいのかもよ」っていう歌に実はなっていますよね?

Y-クルーズ・エンヤ:そうなんですよ。写真なんて加工しなくて、そのままの方が魅力的な人ってたくさんいますから。

──こういう応援歌がヒットしたら、日本は少し住みやすくなるかもしれないです。

Y-クルーズ・エンヤ:炎上要素がギリギリありますけど。こういうのを自然に受け止めていただける世の中になったら、僕らは売れているかも(笑)。

──収録されている曲に関して一通り語っていただきましたが、何か改めて思うことはありますか?

Jr.TEA:自分たちの曲ってなかなか客観視できなくて、聴き直したりもあまりしないんですけど、この機会に聴いてみて新鮮でしたね。「意外といいじゃん。意外と頑張ってる」って思いました(笑)。だからいろんな人に聴いていただきたいですね。配信だったら、気軽に聴けますから。

Y-クルーズ・エンヤ:このベストアルバムで僕らのことを知ってもらった上で、また新たなところへ行ける気がしているんです。今、新しいアルバムを作っているので、そこからライブも徐々に増やしていきたいと思っています。

取材・文:田中 大

  ◆  ◆  ◆

ベストアルバム『THIS エンヤサン』

2023年7月12日発売
レーベル:術ノ穴
DOWNLOAD / STREAMING DL/St https://linkco.re/MNaff3nX

01.ホームパリィ ※新曲
02.もっかい HOO'15 feat. BIKKE
03.肋骨から君が覗いてる
04.大メインクライマックス feat.ACO
05.メローグッバイトキオ
06.今夜はポン酢絡めたい
07.M●THERFUCKIN' SUMMER
08.無垢
09.頬つねったら
10.It's OK?(エンヤサンと MZP)
11.中の下
12.夜が FANZA めいてる
13.あるく
14.TONIGHT3
15.いわない BABY

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