【コラム】w.o.d.が最高の3ピースバンドであることも証明した『BLEACH 千年血戦篇-訣別譚-』OPテーマ「STARS」

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無骨なのにスタイリッシュ。獰猛なのにシャープ。w.o.d.は最高の3ピースバンドである。そんな最高の3ピースバンドの新曲「STARS」は、その名の通り流星のごとく3分半を一気に駆け抜ける。「音塊」という言葉が相応しいアンサンブル。ギターは挑発的にざらつき、ドラムは饒舌で、ベースはデカい。サウンドは巨大なエネルギーを濃縮したような密度を持ちながら、同時に解放感もある。密室的なスリリングさとポップなダイナミズムの融合。そのアンビバレントな感触は、w.o.d.の大きな魅力である。



この新曲「STARS」は、アニメ『BLEACH 千年血戦篇-訣別譚-』のオープニングテーマとして書き下ろされた1曲。これまでw.o.d.を追ってきた人たちだけでなく、「BLEACH」のファンやアニメファン、日本国外のリスナーにも広くリーチする曲になるだろう。しかし、だからといって、w.o.d.は余計な衣装を着飾るようなことはしていない。自分たちが何者かを証明するために、最もシンプルかつ効果的な名刺を彼らは用意している。サイトウタクヤのボーカルは、相変わらずどこかぶっきらぼうで、そしてこれも相変わらず、叫ぶべきこと、あるいは伝えるべきことを明確に抱いているように思える。「STARS」で彼は「大人になんかなるんじゃねえ」と歌っているようで、本当はもっと繊細で複雑なことを、真っすぐに、歌っている。それは「生きる」ということの解決のされなさと、そのうえで「どうやって生きていけばいいのか?」ということ。もちろん、w.o.d.は「こう生きろ」なんて説教じみた嘘くさいことは言わない。ただ、疑問符の奥から滲む「こう生きたい」という願いは、その音楽から溢れてくる。



サイトウは「STARS」で、《変わってく僕》を歌いながら、その変化を「こどもから大人への変化」という安直な図式にはめ込むようなことはしていない。むしろ、そこには鋭い問いがある──「“大人”とは誰のことだ?」という問いが。サイトウの眼差しは迷える魂に向いている。柔らかく繊細で、弱く、それゆえに気高い魂に。彼は、どれだけ歳を重ねても、消えないものがあることを知っている。時としてその「消えないもの」が、私たちにどうしようもなく不安な夜を越えさせてくれるということも。「STARS」の歌詞は、サイトウが、自らの人生に思いを巡らせて綴った歌詞のように思える。

振り絞ったその声で 夜を切り裂いて
形の無いこの恐怖ごと 胸を焦がして
あの日みたいに 笑えなくていい
哀しみも傷も全部 連れていきたい
(「STARS」)


w.o.d.は、サイトウタクヤ(Gt/Vo)が中学生の同級生だったKen Mackay(Ba)を誘い始まった。中学時代から、彼らは神戸のライブハウスシーンで活動を開始。当初の演奏では打ち込みのドラムを使用していたという。最初に彼らが名乗ったバンド名「webbing off duckling」は辞書で見つけた言葉を組み合わせた造語のようだが、ライブハウスに出演し始めた頃、「w.o.d.」へと改名。早いうちからオーディションなどで成果を上げると、大学進学と共に活動を本格化させ、2016年には自主制作ミニアルバム『F.L.O.W.E.R.S.』をリリース(現在廃盤)。2017年に神戸から上京すると、2018年に1stフルアルバム『webbing off duckling』をリリースした。そして同年、中島元良(Dr)が加入し現在の編成に。私がw.o.d.の存在を知ったのは、この全編一発録りで制作された1stフルアルバムがリリースされた頃のことだった。世界的にはラップミュージックやポップスが活況を呈していた時代。そんななかで、ハードロック、パンク、グランジ、オルタナティブロックからの影響を真っ直ぐに体現したw.o.d.には、揺れ動く時代に対して垂直にぶっ刺さるナイフのような鋭利な存在感を感じた。その刃先に反射する光は、美しくて眩しかった。





その後、メンバー自らの生まれた年(そして、ロックミュージックを愛する人にとっては少し特別な響きを持つ年)をタイトルに冠した2ndアルバム『1994』(2019年)がリリースされる頃には、彼らの音楽の「内面」にも私は惹かれることになっていた。音楽への愛情とロマンティシズム、そして苛立ちも内省も隠さない歌詞。w.o.d.の音楽は、彼ら自身の人生やエモーションにどこまでも深く、実直に向き合うことによって生まれているということが、作品を経ることでわかってきた。その後、バンドとしての野性味を研ぎ澄ませながら、よりサイケデリックにもダンサブルにも音楽の翼を広げた3rdアルバム『LIFE IS TOO LONG』を2021年にリリース。また、《馬鹿にしてよ 馬鹿にしてよ もっと馬鹿にしてくれ》(「リビド」)──そんな狂騒的なフレーズで幕を開けたかと思えば、ウクライナの国花ひまわりをタイトルに冠したメロディアスな「Sunflower」もある、「今」を生きる者としての苛立ちも、愚かしさも、祈りも、現実も、あらゆる「生」の在りようを表現してみせたアルバム4thアルバム『感情』を2022年にリリース。コロナ禍以降も彼らは止まることなく自らの表現を突き詰めてきた。『感情』のリリースツアーでは、自身初となるZepp公演も開催。彼らがその音楽に込めてきたものへの信頼は、今、動員や人気という形でも表れている。











そんなw.o.d.にとって、2023年はさらなる飛躍の年として記憶されることになるだろう。4月にリリースされた配信シングル「My Generation」は、中野雅之(THE SPELLBOUND、BOOM BOOM SATELLITES)をプロデュースに迎えた覚醒感のあるダンスサウンドを展開。そして、件の新曲「STARS」では、自らの原点を刻むような3ピースのロックサウンドを提示するなど、今、w.o.d.は自らの「革新」も「本質」も謳歌しながら、私たちの目の前にいる。今、手を伸ばすべきだ。さもなければ夜空を行く流星のように、w.o.d.は私たちを置き去りにして、先に行ってしまうだろう。



文:天野史彬

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w.o.d.「STARS」


2023.07.09 Digital Release.
各種サブスクリプションサービス・DLサイトにて配信リリース

AppleMusic「Pre-Add」&Spotify「Pre-Save」受付開始
https://onl.tw/vK7cNq9
※事前登録すると楽曲リリース後にライブラリに自動で追加されます
※登録後には自動でメンバーコメント動画が視聴できます

配信リンク:https://wodband.lnk.to/STARS

w.o.d. 4th Album『感情』Vinyl


2023.07.12 発売
全国の取り扱いCD&レコードショップにて発売
7/1(土)より予約受付開始

FLAKE RECORDSでは数量限定でメンバー直筆サイン入りも発売
https://www.flakerecords.com/

w.o.d. Official Storeでは7/1(土)より先行販売
https://wod-official-stores.jp/

<ONE MAN TOUR “バック・トゥー・ザ・フューチャーⅤ”>


2023年8月10日(木)
東京・恵比寿ガーデンホール
OPEN 18:00 START 19:00

2023年8月17日(木)
大阪・梅田CLUB QUATTRO
OPEN 18:00 START 19:00

TCIKET:前売り 4,600円 (D別)

【オフィシャル東阪統一最終先行(抽選)】
受付期間:7/1(土)12:00~7/10(月)23:59
受付URL:https://w.pia.jp/t/wod-tour23/

【チケット一般発売(先着)】
取り扱いプレイガイド:
チケットぴあ/イープラス/ローソンチケット
販売開始:2023年7月15日(土)10:00~
※予定枚数に達し次第販売終了となります

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