【インタビュー】かたこと、『Neutract』に本当の自分「人はいくつかの顔を持っている」

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■『Neutract』っていうタイトルは
■ニュートラルとアクトから作った造語


──伊東さんが加わったのが2017年。そこから3枚のミニアルバムをリリースしてきましたが、結成から7年、かたことはバンドとして、現在、どの辺まで来られたと思いますか?

長尾:それぞれが初めてのバンドなんですよ。だから、探り探りと言うか、自分たちの成長とともに活動してきたバンドなんです。バンドとして本格的にキャリアが始まったと言えるのは、1stミニアルバムからなのかな。そう考えると、まだ3年しか経っていない。だから、まだまだですね。これからもがんばります。

伊東:未熟者ですが。

長尾:って感じです。


▲純(B)

──そんな中、2022年7月に新曲「Fancy Girl」、12月に新曲「さよならが言えるように」を配信リリースしました。その2曲は『Neutract』にも収録されていますが、2曲を配信リリースする時には、もう今回のミニアルバムのことは考えていたんですか?

長尾:その時はまだ考えていなかったです。それも理由があって、前作の『Sherbet』は全7曲、こういう曲順で、この曲を入れようと決めた上で、それぞれフル尺で完成させるという作り方をしたんですね。今回はその反動と言うか、今、作りたい曲をどんどん作っていこうってテンションで作っていったんです。最初にできたのが「Fancy Girl」「Letter Song」「純情ラプソディ」の3曲で、「Letter Song」と「純情ラプソディ」は今回、初めて音源になるんですけど、ライブではずっとやっていて。そこから徐々に曲が増えていって、「さよならが言えるように」ができたタイミングでリリースの話が具体的になって、バランスを考えながら、他の3曲を決めたという流れでした。

──最初に3曲ができたとき、3曲の中から「Fancy Girl」を配信リリースしたのは、どんな理由からだったんですか?

長尾:曲が持っているエネルギーが他の2曲に比べてズバ抜けていたからです。どの曲を配信リリースするか、メンバーを含めたチーム内で話し合った時も満場一致で決まりました。僕ら、夏に何かをやるってことが多いんですけど、「2022年も夏に1曲出したい」「夏に似合う一番エネルギッシュな曲は何だろう?」って話し合う中で「Fancy Girl」が選ばれました。


──作りたい曲をどんどん作っていったそうですが、じゃあ曲作りは壁にぶつかることなく進んでいったわけですね?

伊東:いえ、毎回ぶつかっていました。

長尾:曲の取っ掛かりや、そこからある程度の形になるまでは早いんですけど、最後、仕上げるまでに時間が掛かるんです。最初のデモは僕が作ることが多いんですけど、大体5分とか10分とか掛からずに原型ができるんですよ。そこから2人とデータをやり取りしながらアレンジを作り上げていくんですけど、PCで作っているがゆえに細かいところまで調整できてしまう。それで、“ここはこっちのほうがいいんじゃないか”って一音単位で、それぞれにやるから時間が掛かる。それを毎回繰り返しているんです。

──PC上で曲を完成させてからスタジオで合わせるんですか?

長尾:今回はレコーディングするまでスタジオで音を出すことはなかったです。前作まではスタジオで合わせながら作ることも多かったんですけど、今回の曲はほぼデータのやり取りだけで完成させました。PCを開いて、3人でああだこうだ言いながら作ったこともありましたけど、PC上で完結させて、出来上がった曲をライブでどうやろうかって考え方で作っていったんです。

──『Neutract』の楽曲はテクニカルともエキセントリックとも言えるアレンジも聴きどころだと思います。そういうアレンジもPC上で考えるんでしょうか?

長尾:そうです。ドラムのフレーズしかり、ベースラインしかり、コーラスワークもこだわった曲も何曲かあって。コーラスもPC上だったら、いくらでも重ねられるので、自分の気の済むまで、しっかり作りました。中でも「Letter Song」「純情ラプソディ」のコーラスはめちゃめちゃ凝りましたね。だいたいコーラスってメインの歌に同じ歌詞でハモることが多いと思うんですけど、「純情ラプソディ」は主旋律と掛け合うようなコーラスを入れてみたいと思って。だから、歌詞もそういうコーラスにハマるように1番と2番で語感が似ている言葉を使って書いていきました。



──自分たちが理想と考える曲を、まずPC上で作り上げて、曲ができてからその曲を演奏できるレベルまで自分たちの演奏技術を上げるわけですね?

純:まさに。

長尾:毎回、ちょっと無理すればできるかなっていうラインの曲を作っているんです。それで、毎回、新曲の初披露まで苦しむっていう(笑)。

──でも、技術的にできないからと諦めていたら、曲作りも演奏も進歩しないですからね。

長尾:筋トレと同じで、僕たちも自分自身に負荷を掛けて、「これ、できるかな?」「無理じゃね」って言いながらがんばって、そこに追いついたとき、次、もっとできることが増えているっていうのは、この1年で特に実感していますね。

伊東:アルバムを出すたび、うまくなっているよね。

純:拓海はソロを弾きながら歌っているみたいな感じだもんね。

──その結果、『Neutract』では1曲1曲のキャラがそれぞれに際立った印象があります。曲作りを進める上で、これまで以上に1曲1曲のキャラを立てようというテーマもあったんでしょうか?

長尾:作りたい曲を作りながらも、“前にこういう曲を作ったから、今回はそれとは違う曲を作ろう”みたいに作っていたので、歌詞の一人称を使い分けることも含め、自然とキャラ分けはできたのかな。曲がどんどん出来上がっていく中で、アルバムの構想が段々見えてきたとき、さらに別の一人称を使ったら、曲の色分けがはっきりできると思って、「もういいや」で初めて“俺”って一人称を使ってみました。こういう荒々しい曲調もこれまで自分たちにはなかったので、いい機会だと思ったんです。

──異色曲と言えますよね。

長尾:『Neutract』っていうアルバムタイトルは、実は“ニュートラル”と“アクト”から作った造語なんです。ニュートラルって無色とか自然体とか、何色にでもなるとかという意味があって、アクトは演じるとか、行動するとか、そういう意味があると思うんですけど、誰でも学校とか、仕事とか、家庭とか、生活の中のいろいろな場面で、いろいろな顔を持っていると思うんですよ。でも、そのいろいろな顔も全部、自分じゃないですか。“これが本当の自分だ”と思いながら、人はいくつかの顔を持っているということを1個のワードに落とし込めないかなと思って考えたのが『Neutract』というタイトルなんですけど。それもあって一人称も“僕” “私” “俺”と使い分けながら、曲作りの中盤以降は曲のキャラ分けを考えて作っていきました。


──『Neutract』というタイトルに、どんな思いが込められているのかというお話を聞きながら、1曲目の「主人公」は、『Neutract』というアルバムのテーマソングなのかなと思いましたが。

長尾:おっしゃるとおりです。実は今回の7曲は核の部分では同じことを、いろいろな角度から言っているんです。その核の部分を一番表現しているのが「主人公」と「Fancy Girl」で。そう考えると、「Fancy Girl」ができた時にアルバムの方向性は決まっていたんじゃないかって今振り返ると思うんですけど。その「Fancy Girl」をきっかけに、かたことが歌うべきことは、こういうことだよねって定まったところもあったんです。それを踏まえて、できたのが今回の7曲で。「主人公」は最後に完成したんですけど、ほか6曲を作った上で、結局このアルバムってこうだよねって締めくくれた気がします。

──なるほど。1つの道筋を辿っていった結果、できたアルバムなんですね。

純:偶然のようで実は必然だったという。

長尾:自分たちはがむしゃらに1年間、制作に取り組んできたんですけど、気づいたらコンセプトのあるアルバムが出来上がっていましたね。

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