【ライブレポート】さくらしめじ、9年目の結成記念日にツアーファイナル。約2年半ぶりフルアルバムリリースも発表
さくらしめじが、9年目の結成記念日の当日である6月14日に、東京・EX THEATER ROPPONGIにてワンマンライブ<桜TOUR 2023 FINAL<しめたん>>を行なった。
◆ライブ画像
さくらしめじは、2023年3月から4月にかけて、2人だけの弾き語りツアー<さくらしめじ 桜TOUR <早春>>を行い、5月からはアコースティックバンドによるライブハウスツアー<さくらしめじ 桜TOUR <晩春>>を開催していた。
そして、フルバンドの編成で臨む本公演は、キャリア最長となったツアーのファイナル公演であるとともに、毎年恒例となっている結成記念日ライブ<しめたん>(さくらしめじが誕生した日の略称)も合わせたスペシャルなステージとなっており、全国から数多くのきのこりあん(ファン呼称)が集結し、CS テレ朝チャンネル1での生中継も行われた。
客電が落ち、バンドメンバーに続いて、ジャケットにパンツ、革靴というシックなスタイルのさくらしめじが登場すると、場内からは驚きと喜びの声があがった。まずは、フォークデュオとしての新境地を目指した「My Sunshine」でライブはスタートし、心臓の鼓動のように太いビートが刻まれる「青春の唄」や音楽の楽しさを詰め込んだ「ケセラセラララ」では自然と手拍子が沸き起こり、場内の熱気は一気に上昇した。
最初のMCでは田中雅功が、異なる編成やセットリストで挑んだ<早春><晩春><ファイナル>の3部構成となったツアーを振り返りながらも「話したいことはたくさんあるんですけれども、今日はとにかくいっぱい歌を聴いて欲しい」と語り、ドラマ「高嶺のハナさん2」OPテーマ「simple」では憧れにも似たピュアな恋心を観客の胸に真っ直ぐに届け、伊藤一朗(Every Little Thing)とのコラボ曲「靴底メモリー」やコレサワが提供した「届けそこねたラブソング」では、雅功が熱く感情的に、高田彪我が可愛くフラットに歌うことで、楽曲の主人公である“ボク/僕”の葛藤と希望の間で揺れる複雑な心模様を表現してみせた。
その後、雅功は二人とも21歳になったことに触れ、「中1の頃からやっていて。たくさん曲が増えて、今、夢の中にいる気分なんですよ。9年やれていることがすごいことだなと思うし、ありがたいことだなと思います。増えた曲をみんなと歌えるのが、ものすごく最高に幸せです」と感謝の気持ちを伝えた。
そして、「中2から曲を作り始めて、高校1年生の時にベットで作った曲です」と語り、新たにチェロの音色が加わったニューアレンジの「天つ風」、高校卒業間近の時期に作られた「合言葉」、今年の2月に配信リリースした「花びら、始まりを告げて」と、春の季節の別れをテーマにした、様々な時代の前向きな卒業ソングを3曲続けて披露。さらに、雅功が「彪我が中3で作詞した曲で、めっちゃ好きなんです。彼は宇宙人なんですけど(笑)、地球に降り立った宇宙人から見た地球の風景の美しさ。その視点が新鮮できれいで、地球人の僕には書けない歌詞です」と紹介した「夕空小道」では、スチールギターがノスタルジックな情景を引き連れてくるなど、優しくも繊細な歌声と多彩なバンドアンサンブルで物語の世界にグッと引きこみ、観客の胸を打った。
ライブの中盤では“早春”ツアーの弾き語りを再現すべく、「かぜだより」「かぜいろのめろでぃー」を二人だけでパフォーマンス。アコギと歌のみで目の前の空気や雰囲気をガラリと変えると、溌剌とした歌声そのものから生み出されるグルーヴは以前よりもタフさを増しており、二人の歌声が重なるハーモニーもより伸びやかになっていた。
真っ直ぐにひたむきにライブの一本一本と向き合って歌を紡いできた成果を明確にみせてくれた二人は、再びバンドを呼び込むと、胸キュンラブソング「ストーリーズ」では会場がピンクのペンライト一色に染まり、甘酸っぱい片思いを描いた「ひだりむね」では観客が一体となって手を叩き、ジャンプし、この日、最大の盛り上がりとなった。さらに、“ABC”や“ドレミ”、“六本木”などのコール&レスポンスを挟み、「1・2・3」では手を叩きながらのシンガロングも実現した。
カラフルで煌びやかなミラーボールも周り、会場全体がライブの楽しさと興奮、幸福感で満ち満ちた、次の瞬間に、雰囲気は一変し、<晩春>ツアーのライブハウスの世界へ。雅功がホールを指差し、「ステージ上の総勢6人とお前ら、全員でさくらしめじだからな!手を抜くんじゃねーぞ!!」と絶叫。赤いランプが点滅し、スモークが焚かれる中で、「わがままでいたい」「でぃすとーしょん」と攻撃的なロックナンバーを連発。怒りや苛立ちといったネガティヴな感情を荒々しく吐き出した。
さらに、そこから一転し、「同じ雲の下」では“ひとりじゃない”というメッセージを送り、5月8日に配信リリースしたばかりの新曲「なるため」では映像と合わせて、何者でもない満たされない日々の言葉がゴミ箱に溜まっていき、積み重なる日々が段々と自分だけの道を進んでいく強い思いとなっていく様子を描いた。
本編ラストを前に雅功が「僕は小5で音楽に出会い、カッコいい音楽家になりたいと思ってました。でも、9年やってきて、憧れていたものとは違う、なりたい自分になれてない自分がコンプレックスでした」とこれまでを回想。続けて、「でも、最近、ようやくそれでよかったと心から思えてます。本当に悔しいことばかりの9年だったけど、ここに立ててることは、皆さんのおかげだと思ってて。本当に皆さんに生かされてると思う日々を送っています。コンプレックスを振り払えたのも、生きててよかったと思えるのもみんなのおかげです」と感謝を伝えながら、「本気で僕はステージの上で死にたくて。ここで生きて、ここで死にたい。人生の最後の一分一秒までここにいたい」と強い決意を表明。「最後の最後まで死ぬ気で僕らの全部をあなたの奥の奥まで届けられたらと思います」と語りかけ、「お返しの約束」で“これからの僕らを見ていてね”というフレーズを全身全霊でエモーショナルに歌い上げて、ライブ本編を締めくくった。
ツアーTシャツに着替えたアンコールでは、雅功が「2023年6月14日は僕らが一番幸せな人間だと思います」としみじみと語り、「辛夷のつぼみ」で声を重ね、“君”と一緒に前へ前へと歩み続けていく覚悟を示した。アウトロでは雅功が「僕らの歌が証明です。これからの人生を一緒に歩んでいきましょう」と観客と約束を交わし、場内には銀テープが華やかに舞う中で、バンドセットながら勢いに頼らずにしっかりと歌心を届けたツアーは幕を閉じた。
なお、バンドメンバーとハイタッチをして送り出した後、さくらしめじは新しいロゴとニューアルバムのリリースを発表。さらに、本公演の完全版が8月19日にCS テレ朝チャンネル1で放映されることも決定した。大きな歓声が上がる中で、最後に彪我がこの日のライブを振り返り、「一生の思い出になったと思っております。またやりたいよね。9年迎えられたことも皆さんのおかげですし、一人一人が笑顔を見せてくれるからこそ、このステージに立ててるんだなと思います。これからもやりたいことはいっぱいあるので、ここからまた再発信していきたい」と真剣な表情で告げてステージを後にした。
結成10年目のアニバーサリーイヤーに突入したさくらしめじはどんな道を歩んでいくのか。まずは、フルアルバムとしては、2020年3月にリリースされた前作『改めまして、さくらしめじと申します。』から約3年半ぶりとなる通算3枚目のアルバム『ゆくえ』の完成を楽しみに待ちたい。
取材・文◎永堀アツオ
撮影◎鈴木友莉
※高田彪我:「高」の正式表記は「はしごだか」
<桜TOUR 2023 FINAL<しめたん>>セットリスト
M1. My Sunshine
M2.青春の唄
M3.ケセラセラララ
M4. simple
M5.靴底メモリー
M6.届けそこねたラブソング
M7.天つ風
M8.合言葉
M9.花びら、始まりを告げて
M10.夕空小道
M11.かぜだより
M12.かぜいろのめろでぃー
M13.ストーリーズ
M14.ひだりむね
M15.1・2・3
M16.わがままでいたい
M17.でぃすとーしょん
M18.同じ雲の下
M19.なるため
M20.お返しの約束
EC. 辛夷のつぼみ
リリース情報
2023年10月18日(水)発売開始
※詳細は後日発表
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