【ライブレポート】[Alexandros]、SUPER BEAVERを迎えた対バンツアー初日「ライバル心以上の愛が生まれる」
[Alexandros]主催対バンツアー<THIS SUMMER FESTIVAL TOUR '23>が5月17日、対バン相手にSUPER BEAVERを迎え、神奈川・KT Zepp Yokohamaからスタートした。
◆[Alexandros] × SUPER BEAVER 画像
<ディスフェス>こと<THIS SUMMER FESTIVAL>は、[Alexandros]がデビュー前から開催してきた対バンライブイベント。東名阪を回った2014年以来9年ぶりのツアー形式となる今回は、全国5都市9公演とスケールアップ。対バンも前述のSUPER BEAVERに加え、Vaundy、WurtS、Creepy Nuts、マキシマム ザ ホルモン、yama、WANIMA、go!go!vanillasと豪華かつ多彩なバンドおよびアーティストが顔を揃え、それぞれに違ったケミストリーを期待させるものになっている。
ツアーはgo!go!vanillasを対バンに迎える6月30日の愛知Zepp Nagoyaまで続くが、今回は初日のレポートをお届けする。
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走り出したい気持ちをぐっと抑え、しかし、メロディアスなフレーズを刻む上杉研太(B)のベースプレイをはじめ、演奏にはしっかりと熱を込めながら、“もはや終わればと思った挫折”を経験してもなおバンドを続けられている歓びを、気持ちを引き締めるように謳い上げた1曲目の「27」は、やはり嵐の前の静けさだった。
「<ディスフェス>記念すべき1発目! 俺たちがライブハウスから来たSUPER BEAVERです。よろしくお願いします!」と渋谷龍太(Vo)が声を上げ、「もう始まってますけど、楽しむ準備はできてますか? そんなもんですか? どれだけ行けますか!?」と言葉をたたみかけるように観客を煽ってから、藤原“34才”広明(Dr)によるスネアの連打からなだれこんだのは「突破口」だ。
「来いよ! 横浜!」──渋谷龍太
サビで声を重ねる柳沢亮太(G)と上杉に負けじと観客がシンガロングの声を上げる。そこからSUPER BEAVERはゴスペルを思わせるハンドクラップを巧みに使った「美しい日」をはじめ、彼らがこれまでシングルとして世に放ってきたアンセムの数々を繋げ、熱演にシンガロングで応える観客とともに熱気を作り上げていった。
コロナ禍の中で、声を出せない観客の代わりに渋谷以外の3人が繰り広げる渾身のシンガロングは、いつしかSUPER BEAVERのライブの聴きどころになっていった。この日、いつか観客と一緒に歌う日のことを思い描きながら、コロナ禍のさなかに作った「突破口」「ひたむき」「名前を呼ぶよ」では、メンバーたちのシンガロングに観客の声が重なった。メンバーたちはもちろんだが、彼らなりのやり方でコロナ禍と戦ってきたSUPER BEAVERを見てきた人なら、その歓びは一入、染みたことだろう。
4月19日にリリースした最新シングル「グラデーション」は、ピアノやストリングスも使った音源とは違う、4人の音だけで演奏するライブバージョンで披露。激しくステージを動き回るパフォーマスも含め、エモコアなんて言葉も思い浮かんだほど尖った演奏は、シューゲイザーバンドばりに目一杯、歪ませた柳沢のギタープレイをはじめ、凄みを感じさせるという意味で、この日のハイライトの1つだったと言ってもいい。
「突破口」の歌詞を借りるなら、[Alexandros]を相手にSUPER BEAVERが“正々堂々”と“正面突破”に挑んでいることは明らかだった。それはいつもにも増して挑発的な渋谷のMCからも窺えた。印象に残った言葉を拾っておこう。
「俺らから始まるんだったら、たぶん最高の対バンツアーになるんじゃないですか…と楽屋に戻ってから([Alexandros]に)言ってみたい。俺たち、対バンってよくやるんだけど、[Alexandros]が対バンやってるイメージがあまりない。だから、対バンってマジで楽しいんだよってことを、先輩に知ってもらいたい」
「対バンの一番いいところはメインアクトが1個前にやるアクトに影響されること。つまり、“こいつら、やべえな”って思われたいわけ。俺たちがすごかったら、たぶん先輩はそれを超えてこようとすると思うんで、俺たちと一緒に最高の音楽を作りましょう!」
そんな言葉の数々が観客の気持ちに火をつけたことは言うまでもない。
バラードの「人として」をじっくりと聴かせ、身じろぎできないほど、観客の気持ちを鷲掴みにしてからの後半戦は、「先輩に呼び出されて、横浜まで来ました。“おまえら、どんだけできんの”って言われてる気持ちです。“俺たち、こんだけできます”っていうところを残り3曲で一緒に見せてみませんか?」(渋谷)と「予感」「青い春」「東京流星群」と再びアンセムをたたみかけ、ダメ押しで盛り上げた。
この日、SUPER BEAVERが見せつけたのは、ホールやアリーナをいっぱいにするようになった現在でも“フロムライブハウス”と誇りにしているライブバンドの向こう意気だ。これまで歴戦のライブバンドたちとバチバチにやりあってきたんだから、相手が手強ければ手強いほど燃えるに違いない。それがSUPER BEAVERなのだ。メンバーたちもそんなライブを心底楽しんでいたようだが、終始、解き放たれているように見えたことがうれしかった。
「東京流星群」のサビの直前にシンガロングを求め、「[Alexandros]に聴かせてやろうぜ!」と渋谷が言いながら、最後の最後までアピールした闘志に応え、観客はシンガロングの声を上げたのだった。
◆ ◆ ◆
そんなふうに挑発的な熱演で正面突破に挑み、“フロムライブハウス”の矜持を見せつけたSUPER BEAVERももちろん素晴らしかったが、「ホントに愛してると思った」と川上洋平(Vo, G)が言いながら、イベントのホストとしてその思いをがしっと受け止めた[Alexandros]もまた素晴らしかった。
「対バンの楽しさを先輩に知ってほしい」と渋谷が言ったことに言及して、「ウィキペディアを調べたら、あいつら、デビューは2007年。うちらデビューは2010年だから、(SUPER BEAVERは)3年先輩なはずなんだけど、なんか後輩面されて」と笑いながら、「でも、先輩とか後輩とか関係ない。やっぱ、カッコいい奴が一番なんだからさ。マジ最高の相手だと思います。俺たちのイベントに出てくれるって感じでライブをやってるのを見るとライバル心以上の愛が生まれる」と川上が語るのを聞きながら、誰もがツアーの初日から見事なケミストリーが生まれたことを感じ取ったことだろう。
「ぶーやん(渋谷の愛称)は“対バンの楽しみを教えてやる”って言ってたけど、俺、知ってっからさ(笑)。2010年にデビューしてワンマンやれるようになるまで、どれだけがんばったと思ってんの!? 苦しかったことも覚えてるけど、楽しかったことも覚えてる。今日はホントに楽しいです。ありがとうございます」──川上洋平
その意味では[Alexandros]もまた、SUPER BEAVER同様にライブハウスからのし上がってきたバンドだったのだ。
白井眞輝(G)がフィードバックや空間系の音色を巧みに操りながら、アンビエントな音像を作り出した序盤から一転、ライブの流れを一気に加速させるようにデビュー当時のエモーションを蘇らせるようなロックナンバー「閃光」を披露。白井と磯部寛之(B)が加えるアンセミックなコーラスに観客が重ねたシンガロングを聴いた川上が「みんないい歌声してます。そんなに歌えちゃうんだったらもっと歌いたいでしょ? 行けますか、横浜!」と言いながら、これまで[Alexandros]のライブで名場面の数々を観客とともに作ってきた「Starrrrrrr」に繋げると、観客のシンガロングが会場中に響き渡り、スタンディングのフロアがぐらぐらと揺れたのだった。
「最高です! お馴染みの曲がみなさんのおかげで一段とパワーアップしてる気がしてます!」──川上洋平
そんな「Starrrrrrr」をはじめとする新旧の代表曲も披露しながら、これまでライブであまりやってこなかった曲や、近年、セトリから外れていた曲も散りばめたこの日の選曲は、かなりレアだったんじゃないか。そう思う一方でリリースに紐づかない自由な選曲は、チルなR&B、エレクトロパンク、レイヴナンバーまで飛び出す(敢えてこの言葉を使わせてもらうと)支離滅裂な曲の振り幅という[Alexandros]の魅力をいつにも増して際立たせていたようにも思う。
6月30日のファイナルまでライブを重ねながら、セットリストにはマイナーチェンジが加えられることだろう。しかし、現在もまだ絶賛ツアー中のため、セットリストの掲載および詳細については割愛させていただくが、限られた時間の中で、できるだけ多くの曲を演奏したかったのだろうか、「懐かしい曲を連発します!」という川上の言葉に続けて演奏された「Yeah Yeah Yeah」をはじめとするナンバーは、切なさと爽やかさが入り混じるギターポップ調の新曲と並ぶ、この日の聴きどころだったと思う。そして、ライブのハイライトに演奏することが多い、あのアンセムを、この日は川上がアコースティックギターの弾き語りで披露。
そんな曲の数々にシンガロングやジャンプ、時にはダイブも交えながら応える観客の姿を見ながら、コロナ禍以前のライブがようやく戻ってきたことを感じたのだろう。川上と磯部はその感慨をそれぞれに言葉にする。
「こんなにみんなの顔をちゃんと見られるのは久しぶり。(2022年12月7日、8日の)国立代々木競技場第一体育館の時は、声は聞こえたけど、みんなまだマスクしてたから。しかも(客席まで)遠かったから。こんなに距離が近くて、声が聞こえて、顔も見えて。みんな美しいです。何よりもみんなに来てもらえてうれしい。何に感動するかって、こんだけ声を出せるっていうね。改めて、それを感じました」──川上洋平
「俺らスタンディングのZeppなんて、マジで3年以上ぶりだからね。最初、この光景に感動したよね」──磯部寛之
前半戦同様、新旧さまざまな曲を織りまぜた後半戦を経て、本編を締めくくったのは、いつしか[Alexandros]のライブに欠かせない曲になっていたニューウェーブ調のポップナンバー「Dracula La」。SUPER BEAVERの「空の彼方」をワンコーラスだけ演奏してから、リアド偉武(Dr)のドラムで繋げ、ノンストップでなだれこむという演出が心憎かった。ちなみにVaundyを対バンに迎えた翌日のライブでは、Vaundyの「踊り子」を演奏したそうだ。今回のツアーの恒例になりそうな予感。
アンコールまで取っておいた「ワタリドリ」が盛り上がらないわけがない。磯部が奏でるグルービーなベースラインの心地よさを味わわせながら、ダメ押しで観客にシンガロングさせると、オーラスはライブハウスで対バンとバチバチにやりあっていた頃の向こう意気をぶつけるように2010年リリースの1stアルバム『Where's My Potato?』に収録されている「Don't Fuck With Yoohei Kawakami」を披露。
「おまえら、もっと声を出してくれよ! 騒いでくれよ!」と観客を煽りながら、白井がジミ・ヘンドリックスばりのフリーキーなギターソロを奏でると、ちょっと前にネットを賑わせたギターソロ不要論に中指を突き立てるように川上が「ギターソロが長い!? F××k!!」と叫んだ。
観客のダイブが止まらないフロアを見ながら、こんなライブを見たのは、いつ以来だろうと胸が熱くなった。
取材・文◎山口智男
撮影◎青木カズロー(SUPER BEAVER)/河本悠貴([Alexandros])
■[Alexandros]主催<THIS SUMMER FESTIVAL TOUR '23>5月17日@神奈川・KT Zepp Yokohama /w SUPER BEAVER セットリスト
01. 27
02. 突破口
03. 美しい日
04. ひたむき
05. 名前を呼ぶよ
06. グラデーション
07. 人として
08. 予感
09. 青い春
10. 東京流星群
▼[Alexandros]
※ツアー中のため割愛
■[Alexandros]主催<THIS SUMMER FESTIVAL TOUR '23>
5月17日(水) 神奈川・KT Zepp Yokohama
対バン:SUPER BEAVER
5月18日(木) 神奈川・KT Zepp Yokohama
対バン:Vaundy
5月26日(金) 北海道・Zepp Sapporo
対バン:WurtS
6月14日(水) 福岡・Zepp Fukuoka
対バン:Creepy Nuts
6月15日(木) 福岡・Zepp Fukuoka
対バン:マキシマム ザ ホルモン
6月22日(木) 大阪・Zepp Osaka Bayside
対バン:yama
6月23日(金) 大阪・Zepp Osaka Bayside
対バン:WANIMA
6月29日(木) 愛知・Zepp Nagoya
対バン:WANIMA
6月30日(金) 愛知・Zepp Nagoya
対バン:go!go!vanillas
全公演:open17:30 / start18:30
▼チケット
前売:¥8,800(ドリンク代別)
■SUPER BEAVER<都会のラクダSP 〜真夏のフジQ、ラクダにっぽんいち〜>
※※SOLD OUT
07月23日(日) 山梨・富士急ハイランド・コニファーフォレスト
※チケット一般発売中
■SUPER BEAVER<都会のラクダ TOUR 2023-2024 〜駱駝革命21〜>
09月30日(土) 広島・広島文化学園HBGホール
10月14日(土) 宮城・仙台サンプラザホール
10月15日(日) 宮城・仙台サンプラザホール
10月21日(土) 福岡・福岡サンパレス
10月22日(日) 福岡・福岡サンパレス
10月28日(土) 新潟・新潟県民会館
10月29日(日) 新潟・新潟県民会館
11月11日(土) 愛媛・松山市民会館
11月12日(日) 愛媛・松山市民会館
11月18日(土) 北海道・札幌文化芸術劇場 hitaru
11月19日(日) 北海道・札幌文化芸術劇場 hitaru
※全公演SOLD OUT
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