【ライブレポート】Homecomingの意志が貫かれた音楽を、ただただ直向きに

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Homecomingsの全国ツアー<Your Friendly Neighborhood Homecomings>の東京・LIQUIDROOM公演を観ながら、童話の世界と近いものを感じた。童話は子ども向けの内容かと思いきや、大人にも重要な思考が物語のベースになっていることがしばしばだ。可愛らしさでコーティングされた内側を掘り下げようとすると、底なし沼に溺れるように哲学性や思考の渦に巻き込まれることが多々ある。

◆ライブ写真

この日のライブのステージには、最新アルバム『New Neighbors』のジャケットに登場するキャラクターのぬいぐるみたちがアンプの上に鎮座し、メンバー4人は丁寧に歌声と音色を重ね、あたたかい空気感を作り出す。直感的に捉えるとメルヘンで愛嬌があって、居心地がいい空間だ。だが音色や歌詞の一つひとつを凝視してみると、途端に自分の内面や過去、最近の自分が見てきた社会のこと、バンドの思いなど、様々な回想や想像が広がっていく。4人は我々人間が生活をするうえで大事なことを、音楽というフィルターを通してダイレクトに届けていた。


Nicoの「These Days」をSEに登場すると、青い光とともにミラーボールが回るなか、じっくりと丁寧に音とコーラスを重ねてアルバムの1曲目である「ラプス」を演奏する。アウトロの残響から「ヘルツ」につなぎ、心地のよい、それでいて芯のある、迷いのないサウンドスケープで会場一帯を染め上げた。

“たくさん曲を演奏するので、自由に楽しんでいってください”と畳野彩加(Vo, G)が挨拶をすると「i care」へ。軽やかな演奏と、美しい軌道を描くボーカルとメロディ。福富優樹(G)の小鳥のさえずりのようなギターの音色はピュアリティとロマンチシズムに溢れる。福田穂那美(B, Cho)と石田成美(Dr, Cho)はたくましいリズムで歌とうわものを支えながら、コーラスで彩りを加えるという二刀流だ。土台と色付けをここまで両立させられるリズム隊はなかなかお目にかかれない。Homecomingsの音楽は、この4人でないと成立できないことを序盤3曲で痛感する。


これ以降は過去曲の演奏も増え、よりディープなムードが広がってゆく。導入を経て披露された「PAINFUL」は生演奏ならではの肉感や迫力で立体的な音像を作り出し、熱量の高いアウトロでこちらの胸を奮わせたかと思いきやそこにドラムが重なりポップナンバー「HURTS」へ。さらに鮮やかなギターが「I CAN’T TELL YOU WHAT I’M GOING TO DO」につなぎ、観客もビートに導かれるように身体を躍動させた。

ここでひとつの仮説が思いついた。このライブはバンドの歴史を総動員した『New Neighbors』の再構築なのではないかということだ。そもそも同作は、彼らのルーツと今表現したいことを軸に生まれた楽曲の集合体である。そして三つ子の魂百までという言葉があるように、ルーツというものはなかなか自分の身体から消えるものではない。好奇心に突き動かされて様々な変遷を経ながら、変わらないものを持ち続けてきた4人の人生が、この空間に鳴り響いていた。


福富が『New Neighbors』に込めた思いを語ると、「皆さんのおかげで自分たちがいると思うし、皆さんにとってお守りのようなアルバムになってくれたらいいなと思っています」と続ける。バンドとリスナーの関係が救う側と救われる側ではなく、隣人のように互いをケアし合う関係を理想とする旨を重んじるスタンスは、彼らの音楽から醸し出される安らぎにも大きく関わっているだろう。

「光の庭と魚の夢」の後に披露された「euphoria / ユーフォリア」では爽やかな内省性と力強さで観客を音の中へと引き込み、さらに「Here」で朝日のように大きく包み込む。すると自ずと、自分の記憶や心の旅に出ていることに気付いた。ひずんだ音の中からギターとドラムでゆっくりと幕を開けた「Shadow Boxer」は、より観念的で純度の高い空間に。意志が貫かれた4人の音は、自分自身の一つひとつと向き合わせてくれた。Homecomingsの送ってきた人生や見てきた景色、感じた気持ちは音楽となり、我々それぞれの記憶や心を揺さぶる。そのアート性の高い空間に、観客も大きな拍手と声援で歓迎した。


ここからラストまでの7曲は、一気にカラフルに駆け抜けた。「BUTTERSAND」と「Cakes」で晴れやかな演奏で魅了すると、電子パッドが用いられた幻想的な「Drowse」では畳野がギターを置いてボーカルに集中する。一帯を夜に沈めていくような導入から始まった「Blue Hour」では夜明けのような清々しさ、「PAPER TOWN」ではどこまでも遠くまで飛んでいくような解放感を生みだしていくと、この日のクライマックスとも言うべき「US / アス」へとなだれ込んだ。“これまで曲にはしてこなかった4人のルーツ”が詰め込まれた同曲は、10年続いたバンドの体力があってこそ説得力を持って輝く新機軸。様々な年代の楽曲を体感した後で聴く同曲は非常にドラマチックで頼もしい。本編ラストは、アルバムのラストである「Elephant」。“まだ飛べなくても、いいよ”と語り掛けるようなヴォーカルは、夢の中に落ちる瞬間のように柔らかかった。


アンコールで同ツアーの追加公演を下北沢ADRIFTで開催する旨を発表し、「アルペジオ」と「Songbirds」を披露して4人がステージを後にするも、観客の拍手と歓声は鳴りやまない。するとそれに応えるかたちで再びメンバーがステージに登場した。福富が「こんなの今日だけやで~ほんま」と笑うと、畳野が「これが本当に最後です。またみんな、元気で」と告げ、急遽ダブルアンコールとして「I WANT YOU BACK」を届けた。観客もクラップなど身体で喜びを伝え、演奏を終えたメンバーへあたたかい拍手を送り続けた。


Homecomingsはこの日、ただただまっすぐと自分たちの音楽を演奏して目の前の観客に届けるということだけに注力していた。観客をしきりに盛り上げたりもせず、ただ音楽と真摯に向き合い、4人の強い意志が貫かれた音楽が観客それぞれの心の奥を突き動かしていく。その様子はとても自由かつ健全で美しい。4月で東名阪を回ったこのツアーは、6月より再スタートする。追加公演も決まっている。3公演目でこれだけの完成度を堂々と提示した4人は、この後『New Neighbors』と自分たちの歴史でもって、どんな空間を作り上げるのだろうか。そのアート性とポップネスを、ぜひ体感してほしい。

取材・文◎沖さやこ
写真◎廣田達也

全国ツアー<Your Friendly Neighborhood Homecomings>

※終了公演は割愛
2023年6月10日(土)宮城・LIVE HOUSE enn 2nd OPEN17:30 START18:00
2023年6月11日(日)北海道・札幌 SPiCE OPEN17:30 START18:00
2023年6月15日(木)福岡・the voodoo lounge OPEN18:30 START19:00
2023年6月17日(土)石川・金沢 GOLD CREEK OPEN17:30 START18:00
2023年6月18日(日)京都・京都 MUSE OPEN17:00 START18:00
2023年6月24日(土)東京・下北沢ADRIFT  OPEN17:15 START18:00

チケット:
STANDING ¥4,500
学割STANDING ¥3,300

チケット一般発売受付
https://w.pia.jp/t/homecomings-yfn/

5th ALBUM『New Neighbors』

2023年4月19日(水)発売
■初回限定盤(CD&Blu-ray) PCCA-06195 ¥4,950(税込)
■通常盤(CD Only) PCCA-06196 ¥2,970(税込)
CD購入:http://lnk.to/NewNeighbors_CD
配信:https://lnk.to/New_Neighbors

収録曲:
1. ラプス
2. US / アス
3. ヘルツ
4. 光の庭と魚の夢
5. アルペジオ
6. i care
7. Shadow Boxer
8. Drowse
9. ribbons
10. まばたき
11. euphoria / ユーフォリア
12. Elephant

Blu-ray収録内容:
Live at Shibuya Club Quattro ”US / アス“ December 25, 2022
1. euphoria / ユーフォリア
2. Here
3. Shadow Boxer
4. Blue Hour
5. HURTS
6. Cakes
7. LIGHTS
8. Songbirds
9. i care

特典:
Amazon.co.jp:メガジャケ
タワーレコードおよびTOWER mini全店、タワーレコードオンライン:A4クリアファイル TYPE-A
全国HMV/HMV&BOOKS online:A4クリアファイル TYPE-B
その他法人:A4クリアファイル TYPE-C

※特典は先着で付与されます。なくなり次第終了となります。
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