【インタビュー】眉村ちあき、アルバム『SAI』に宿る自信と変化「やっと“まっすぐ”の意味がわかった気がします」

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活躍の場を着々と広げている“弾き語りトラックメイカーアイドル”眉村ちあきが、創作面でも新境地を切り拓き続けている様を示す最新アルバム『SAI』。作詞作曲、編曲、トラック制作を自身で手掛ける従来のスタイルの他、外部のクリエイターとの共同作業も楽しんでいる作品だ。変化球のはずなのに、キャッチー極まりない曲として聴かせてしまうパワーにもますます磨きがかかっているこのアルバムについて、存分に語ってもらった。

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■さらにわかりやすくすることを心掛けながら実験中

── この1年間で新しいことをかなりやってきましたよね?

眉村ちあき:やってきました。前までは共同編曲も一歩を踏み出す勇気が必要な感覚でしたけど、軽々しく人に声をかけられるようになりましたから(笑)。Numaさん、兼松くん(兼松衆)もそうだし、音楽隊(眉村ちあきの音楽隊/バンド編成でのライブの際のバンド名)のメンバーとも仲良しになったから、誰かと組むのが自分の一部になった感覚です。

── タイアップで曲を作ることも増えましたよね?

眉村:そうなんです。前よりノンストレスでタイアップと向き合えるようになったというか。前は「こういう要素を入れてください」とかを踏まえながら作るのに窮屈さを感じてたんですけど、楽しめるようになってます。

── 変化の理由って何ですかね?

眉村:何なんだろう? うーん…………………。

── 自信がついたからとか?

眉村:あっ、今、それ言おうとした(笑)。「私にしかできない曲になるはず」っていう自信なのかもしれないし、「私に頼んでくれてありがとう」という気持ち、「私に頼んでくれたんだから、自分らしさを出そう」っていう気持ちですね。

── もともとキャッチーさがすごくあるアーティストですけど、今回のアルバムでさらにそうなったという印象もしています。例えば「平成黎明GAL」や「レイニーデイ」とか、ものすごくキャッチーなポップスに仕上がっているじゃないですか。

眉村:ありがとうございます。今までも直球を投げてるつもりだったんですけど、「支離滅裂」「奇をてらってる」とか言われたりして、謎で仕方なかったんです。でも、やっとまっすぐの意味がわかった気がします。この1年でTikTokやSNSも頑張ってみて、何回かバズったことがあったんですけど、「全然何も伝わってない」って知りました。例えば「眉村ちあきがライブ中にぶつかっちゃって歯が欠けて泣いちゃった映像」っていうテロップが出てる映像に対して、「なんで泣いてるんですか?」っていうコメントが来たり。わかりやすくしたつもりでも、さらに説明しないとわかってもらえないんですよね。だからさらにわかりやすくすることを心掛けながら実験中という感じかも。自分がやりたいことだけやるのもやめたくないから、そういうこともやりつつですけど。まだ世の中的に「ちょっとぶっ飛んでる娘」とかいうイメージもあって、カップヌードルの曲と「大丈夫」を歌ってるというのが一致してないのにも気づいちゃったので、ずっとふざけてるわけではないのを伝えたいというのもあります。

── 「大丈夫」に関しては、一時は歌うのが嫌な時期もありましたよね?

眉村:はい。「この曲を歌ってる私、つまんないかも」って思ってた時期があったんです。でも、「いや。全力で歌えばつまんなくないな」って気づくようにもなって、その変化も大きいです。何事も全力でやってるのを見てもらえば、「ちょっととがってるところが好きだったのに」というマユムラー(眉村ちあきファンの呼称)にも、「全部本気なんだ」って感じてもらえると思ってます。



── 眉村さんの歌のすごさも今作で爆発していますね。上手くなった自覚があるっておっしゃっていたじゃないですか。

眉村:はい。めっちゃあります。

── 「秘密の恋」の歌、圧倒的なものがあります。

眉村:“Band ver.”は一発で録ったんですよ。自分でも「うまっ!」って思いました(笑)。

── (笑)。もともと上手いですけどね。

眉村:昔、手焼きでCDを作ってた時、iPadのマイクに向かって歌ってたんですけど、ボリュームの調整の仕方がわからないから、喉の調整をしながら「ここは小さめに歌わないと音が割れちゃう」とかやってたんです。それも今に活かされてます。


── 「秘密の恋」は、“Solo ver.”も収録されていますが、聴き比べるのも楽しかったです。

眉村:“Solo ver.”は、「100%眉村ちあき」っていう感じがしますね。好きなようにやってるので。これは夢で作った曲ですけど、“Solo ver.”はわりと夢を忠実に再現してます。「その夢の感じをプロに任せたらどうなるんだろう?」っていうチャレンジをしたのが“Band ver.”。全然違うものになって、自分でも面白かったです。

── 中野サンプラザのライブの夢を見たんですよね?

眉村:はい。知らないイントロを急に音楽隊のみんなが弾き始めて、「どっきりかな?」ってなって、汗が止まらなかった怖い夢でした。適当に歌詞とメロディをつけて歌いながら「即興をやってきてよかった」って思いました。「バレないんだ」って思って(笑)。

── (笑)。スタイリッシュなかっこよさがある曲です。宝塚で使われる曲風な雰囲気も感じます。

眉村:宝塚沼にどっぷりだった時期だったかも。毎朝、宝塚のDVDとかを観てたんですよ。

── いろいろ吸収し続けていますね。

眉村:はい。そういえば、今回のアルバムからベースを自分で弾き始めてます。

── 「秘密の恋」の“Solo ver.”のベースも?

眉村:はい。「レイニーデイ」が、自分で弾いたベースを初めて入れた曲です。「十二支のアマゾン」も自分で弾いたベースが入ってますね。「肉喰え」はバンドメンバーのベースですけど、デモでは自分で弾いて「こんな感じで」って伝えました。

── 「肉喰え」は、音楽隊のアレンジによって曲の良さがすごく引き出されている印象がします。

眉村:バンドでやる前提で作ったから、デモはグチャグチャでした。ギターソロのところに「イィィィ~ン!」って声を入れて(笑)。

── (笑)。マユムラーが、掛け声を上げながら盛り上がっている姿も浮かびます。

眉村:掛け声ありきだったり、ライブを想定して作ったのが久々だったから、嬉しかったです。

── この曲、メッセージも明快ですね。お肉って、間違いなく元気をくれますし。

眉村:ね? めっちゃ発散できるじゃないですか。私は何か嫌なことされても一旦ニコニコして、その場は凌ぐ派なんですよ。「なんで人に気を遣うのに悲しくなるんだろう?」って思うんですけど、この曲はそんな人の話です。そんな時は肉を食べたり、ちょっといいジュースをコンビニで買ってみたりしたら、わりと「おしっ!」ってなるんです。

── バンドといえば、音源では編曲も含めて眉村さんが全部やっている「レイニーデイ」は、去年のLINE CUBE SHIBUYAのライブで音楽隊が演奏していましたね。

眉村:はい。バンドで演奏することを想定せずに作ったけど、転調のところとかでみんなが好き勝手にやってくれて、「えっ⁉ それもいい!」ってたくさんなったんです。「楽器のプロたちだなあ」って改めて思いました。


── ものすごい転調が楽しいです。

眉村:転がり落っこちてる感じがします。

── 歌詞が謎かけ的ですね。

眉村:はい。音重視なんですけど、一応、意味があるんですよ。最近、歌詞の意味をちゃんと入れながら作り続けていて。でも、後から読むと「なんだっけ?」ってなるんですけど。

── 「レイニーデイ」は、目から落っこちた目玉の冒険みたいなのを思い浮かべながら聴いています。

眉村:目玉の冒険なんですけど、歌詞にもっといろんなことを含めたんです。でも、なんだったか忘れちゃって(笑)。目玉が転がり落っこちてたりするのをサウンドでも表せてると思ってます。転調も階段感がありますし。最近、歌詞に沿った音作りを頑張ってます。

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