【インタビュー】中村ゆりか、「女の子の味方になれる、引っ張って励ませるアーティストになりたい」
役者として数々の映画やドラマに出演し、幅広いジャンルのアーティストのミュージックビデオでも存在感を放つ中村ゆりかが、4曲入りEP『Moonlight』でアーティストデビューを果たした。
◆ライブ映像/ミュージックビデオ
全曲のソングライティングを務めるのは、女性目線のリアルなラブソングを作り続けるシンガーソングライター・CHIHIRO。中村が2019年にCHIHIROの「失恋のあと」のMVに出演したことがきっかけで親交を深めたという。甘さの中に切ないほろ苦さを感じさせる中村の声が、描かれた女性の心情を丁寧に描く。彼女は音楽活動とどのように向き合っているのだろうか。彼女と音楽の関係性を紐解いていった。
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■「中村ゆりかっていいね」と言ってもらうためには
■自分の大切にすべきものを見失っちゃいけない
──アーティストデビューおめでとうございます。
中村ゆりか:ありがとうございます。わたしにとっても念願のデビューなんです。
──中村さんの公式YouTubeチャンネルにアップされていた質問回答動画でも、音楽やドラマ主題歌への憧れを語ってらっしゃいましたね。
中村ゆりか:すっごいテレビっ子だったんです。小学生のとき、朝起きたら新聞のテレビ欄でドラマの再放送をチェックして、友達と遊んでいても「ドラマが始まる時間だから帰る」って切り上げてました(笑)。『やまとなでしこ』や『オレンジデイズ』、『ランチの女王』や『ナースのお仕事』……いろんな作品を観ていたんですけど、どのドラマも主題歌が印象的でした。これはどんなふうに作ってるんだろう? こんな歌を歌えるなんてすごいな! という子どもらしい目線で観ていました。
──その時に歌手への憧れもおありだったのでしょうか。
中村ゆりか:音楽番組もたくさん観ていたので、観すぎて若干妄想と現実の区別がつかなくなっていて、自分も歌手なんじゃないかと錯覚してました(笑)。レッスンに通うとかはしていなかったけど、家族でカラオケに行ったり、母親が若い頃にレストランでピアノを弾く仕事をしていたので、歌うことや音楽は自然と好きになっていきました。
──そういう生活を送っていたところに、12歳でスカウトでこの世界に入られたと。
中村ゆりか:芸能の世界に憧れはあったんですけど、自分からオーディションとかに行けなかったタイプだったんです。だからお声を掛けていただいたのは本当に自分にとってうれしいことで。
──アーティストデビューも、2019年にシンガーソングライターのCHIHIROさんの「失恋のあと」のMVに出演された際に、スタッフさんから声を掛けられたことがきっかけだそうですね。
中村ゆりか:はい。「ゆりかちゃん歌やらないの?」と声を掛けていただいて。それまで自分がアーティストデビューできるだなんて少しも思ってもみなかったんです。でも小さい頃から憧れはあったので、その言葉がアーティスト活動を考えるようになったきっかけになりました。「失恋のあと」でちいちゃん(CHIHIRO)と仲良くなって、何回も会うようになって「音楽活動やったほうがいいよ」と背中を押してくれたんですよね。それで心に決めることができて、役者の仕事と並行しながらボイトレを始めました。音楽活動をしてみたいと思うようになったのは「失恋のあと」以降なんです。あれがなかったら今はないと、すごく思います。
──歌やらないの?とおっしゃった方は、中村さんの声が音楽に合うと思われたのかもしれませんね。中村さんの声は、独特のムードを纏っているので。
中村ゆりか:当初わたしはお芝居もなんでも、自分が素敵だと思った人の真似をしていたんです。そしたら皆さんがわたしのことも上手だと思ってくれると思ったんです。でもそうするとその人の真似っこでしかなくて、物足りなさを感じてしまって。これって自分らしさなのかな……? と悩んだことがあったんです。そこから「中村ゆりかっていいね」と言ってもらうためには、自分の大切にすべきものを見失っちゃいけないなと思うようになって、自分なりに取り入れる方法を考えていくようになりました。それから徐々にお仕事いただく機会が増えたんですよね。
──なるほど。オリジナリティが確立してきたことで、人の心や記憶に残るようになっていったんですね。
中村ゆりか:TBSの『PLAYLIST』という音楽番組のナレーションをやるようになったのも、“ゆりかちゃんの声でメッセージを伝えたり、アーティストを紹介してほしい”という理由から声を掛けていただいたんです。声は自分でも大事にしている部分なので、それを褒めてくれること、伸ばしてくれる場所を作ってくれることは本当に光栄です。自分のスタイルは、いろんな経験を積みながら見つけていくものなんだなと感じます。わたしは戦略を立てたりすることに向いていないので、自分が自信を持てると直感的に思ったものを信じていきたいし、周りの応援や支えに助けられてるから今の自分があるんだなと思います。
──中村さんはご自身のいいところを見つけてくださる方にご縁があるんでしょうね。特にスカウトは、オーディションを受ける勇気がなかった中村さんが、憧れの世界に足を踏み入れるきっかけになったわけですし。
中村ゆりか:そうですね……。この間会社で、初めてスカウトしてくれた方にお会いしたんです。ほんとスカウトしてくださったときぶりにお会いして。めっちゃ泣きそうになって……今も思い出すと涙が出て来そうになって……。ほんと最近すごく涙腺が弱くなっていて(苦笑)。特に優しさに弱いんです。
──それも先ほどおっしゃっていたとおり、経験を重ねたからだと思います。スカウトしてくださった方との再会もアーティストデビューも、芸歴10年を超えて、大人としてより成長していく25歳という、とてもいいタイミングで迎えられたのではないでしょうか。
中村ゆりか:本当にそうですね。「25でデビューなんて遅いんじゃない?」と思う方もいると思いますし、うまい人はこの世の中にたくさんいらっしゃるし。今までお芝居をやっていたのに急に歌を歌うことになって、追いつけない人もいると思うんです。でもそれを覆したい。自分の世界を大事にすること、人から褒めてもらった部分を生かしたり伸ばしたりすることは大事だと思うんです。だからこそ自分だからできること、誰でもできることじゃないこと、これだけは譲れないというものをしっかり自分の中に持っておきたいんですよね。
──今おっしゃっていただいた言葉からも、半端な気持ちで決めた音楽活動ではないんだろうなと想像します。
中村ゆりか:お芝居だけでも立て続けに役が入ってくるとテンパる、かなり不器用なタイプで(苦笑)。だから会社に「音楽がやりたい」と言い出すのも、だめだと言われそうですごく怖かったんです。でも2020年の自粛期間中に、外で仕事ができないぶん家から発信できるものはないかなと自分も必死に探していたし、周りにはSNSを頑張ったり新しいことを始めた子もいれば、芸能活動を辞めちゃった子もいて。そういうのを見ているなかで、誰に対して届けたいか、どういう人になりたいかをあらためて見つめ直したんです。
──そういうなかで、先ほどおっしゃったようにCHIHIROさんが音楽活動を後押ししてくださった。
中村ゆりか:ちいちゃんは2年間くらいずっと“ゆりかちゃんならうまくいくよ。きっとできるよ”とエールを送り続けてくれたんです。だから会社が許可を出してくれる、音楽活動でやりたい方向性やその理由を考えて考えて……それで会社に相談したらOKをいただけたんですよね。お仕事が生き甲斐ですし、不器用ながらにまだまだこれからだという戦闘心みたいなものもあるんです。
──不器用ながらに、お芝居も音楽も全力投球で。
中村ゆりか:相乗効果で素敵な女性になれたらなとも思いますね。だからほんと、いろんな時間を経て、やっとたどり着けた感覚があるんです。同時にこれからだなとも思いますし、そういう気持ちも活動を通して前向きに伝えていけたらなと思っています。音楽は開放的に自分の世界をアピールできる自由な空間なので、お芝居とは違うアウトプットをいただけることは本当に恵まれているなと感じますね。出会った方々に頂いた言葉で自分の人生が動かされることも多かったので、自分もそんなふうに人を導ける人間になりたいんです。
──中村さんはよく、芯の強い人が好きだとおっしゃっていますよね。
中村ゆりか:人の心の痛みをわかる人、人のことに寄り添える女性になりたいんですよね。自分よりも他人を優先できる人になりたい。でもそれは、ある程度自分に心の余裕がないとできないし、そのためにもいろいろ経験しなきゃいけないから、1個1個大事にしたいんです。
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