【インタビュー】ダダダ!、1分前後の楽曲11曲のフルアルバムで実現した表現

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■まだダダダ!でやるべき音楽を掴めてないような感覚もある
■だからもっと踊ってもらえるようなラップを研究していきたい


――2021年10月にリリースされた「ダダダ!」は強いビートが印象的で、まさにユニットのテーマがわかりやすく反映された曲になっていると思います。ツイートによると、New Kさんはこのトラックの制作には試行錯誤なさったそうですが。

New K:それまで割とおとなしめというか、あまりアッパーな曲がなかったので、ダダダ!的なアッパーな曲はどんな感じかな?というのを考えながら作った曲ですね。アッパーなものとはいえEDMやハイパーポップをダダダ!でやるのもちょっと違う気がしたというか、単純にそういうはっちゃけ方をするのも面白くないよな……とか考えていたような気がします。“つまらないものにはしたくないな”という意識はありましたね。四つ打ちならではのグルーヴをどう“アッパー”に組み込むかを考えました。



いつか:1stの「ルーチン」とも、2ndの「goodance goodance」とも違うアプローチで、さらにわたしの得意な感じのトラックなのに今まで感じたことがないジャンルのものが来たので、突き動かされるようにパパパっと書き上げました。直感的にこれがダダダ!の軸になるかもしれないと思って、セルフタイトルにしたんです。





――結果この曲がダダダ!の1stフルアルバム『THE BEST HIT 1 MINUTES』の1曲目を飾ることになります。アルバムの構想はいつ頃からできてきたのでしょう?

いつか:シングル6曲を作った後ですね。そこからアルバムのための曲作りをしていって。

New K:これまでリリースしたシングルは1曲1曲作っていったので、アルバム曲は1枚のアルバムにすることを考えながら作りました。それぞれが濃いものだけど、集まったことによって宝石箱的なゴージャスさをすごく感じて。完成してシンプルに感動しましたね。


――アルバム2曲目の「我DANCE」は、「ダダダ!」の路線を極めたような印象を受けました。MVに出演なさっているダンサーさんも、「ダダダ!」でパフォーマンスされたTEMPURA KIDZのKARINさんなので、関連性があるのかなと。

いつか:「我DANCE」のトラックがNew Kさんから届いたときに、「ダダダ!」のさらに強いヴァージョンが来た!と思ったんですよね。過去曲を超えるものを作らなきゃと思うと、わたしの場合は前よりも鋭めになっちゃうんです。だからその経験を踏まえて、きつくならない程度のユーモアは意識しました。やっぱりダダダ!は踊ってもらうこと、楽しんでもらうことが大事なので。



New K:「ダダダ!」や「Nobody崇拝」といったアッパーな曲を作った後だったので、アッパーな曲を作るとなって僕もやっぱりより強い音を使った節がありましたね。だからこれはちょっと課題だなと。“アッパー”の新しい解釈を見つけたいなって。

いつか:たしかに。音がスカスカだけどアッパーな曲とか、何か違うアプローチができたらいいですよね。



――どの楽曲も1分前後なのに、「FEELIKE」がインタールード的な立ち位置になっているのも面白いなと思いました。意志が貫かれたものが多いなか、“なんとなく”をテーマにしている歌詞も目を引きます。

いつか:New Kさんの作ったトラックが空気のように佇んでいるような印象を受けたので、哀愁を漂わせたメロやラップはちょっと違うなと思って。“なんとなく”って日常にいちばん溢れてるものな気がするんです。リフレインしていく感じで重くもなく、軽すぎもしない、“普段”という概念みたいな曲になるといいかなと思って歌詞をつけました。

New K:ふわっとしたコードのものを作ってみたかったんですよね。いつかさんに投げたらどんなものが返ってくるだろう?と思いながら、ビートやコードを考えていきました。

――New Kさんは、いつかさんからのレスポンスを楽しみになさっていると先ほども話してくださいましたが、「唱えるtonight」のアプローチはとても新鮮だったそうですね。

New K:「唱えるtonight」のトラックはダダダ!とは別の案件でいつかさんにお渡ししたんです。おまけにその頃の僕はものすごく制作に行き詰まっていて、“とりあえず今できてるのがこれです”と絞り出したような感じで。だから僕的にはここでボツになるだろうなと思っていて……そしたらめちゃくちゃ良い曲になっていつかさんから返ってきて衝撃を受けました。

いつか:せっかく作ってくれたのに、使わないままボツにするなんてもったいないと思うので、可能な限りどんなトラックにも乗せたいんですよね。たまに降りてくる私の優しい部分が、New Kさんのトラックによって浄化されたのが「唱えるtonight」だと思っています。優しいわたしが出てくるときは無意識なんですよね。“こういうことを書こう”と思って書いていくことはあまりなくて。



――「唱えるtonight」は家で育児や家事をする人の心情が綴られています。

いつか:年齢を重ねたこともあって、家庭に入る友達が多くなってきたんですよね。そんな子たちと話していて、ふと切なさを感じてしまったことがあるんです。独身だったり子どもがいなかったら、別の活躍をしていたであろう優秀な子たちが、自分の選択で家庭に入って、家族のために日々一生懸命頑張っているんだけど……家の中のことって周りから評価されづらいところがあると思うんですよね。

――確かに。そうですね。

いつか:それなのにその子たちは自分の身の上話をした後に必ず、“家族のことで愚痴っちゃってごめんね”って言うんですよね。それがすごく切なくて。いやいや、あなたの日々の労力を考えたらその愚痴じゃ足りないよ? というずっと抱えていた気持ちが、「唱えるtonight」になったのかなと思います。子育てはすごく重要な大仕事だと思うんです。それを“しがない主婦ですよ”とか“働きにも出てないし”と言っているのを聞くと、ちょっとちょっと! 待って!! って思うんですよね。

――「グッバイ」も、それに近い優しいアプローチを感じましたが。

いつか:あ、あれは飲み会終わりになかなか帰らない方に“帰りましょ”と諭す歌です(笑)。

――わ、本当だ。そう言われたらそうにしか聴こえなくなりました(笑)。

いつか:あなた以外みんな帰りたいのよ? という気持ちを、切なく着地させるとああなりました(笑)。

New K:僕もこの曲は今までのダダダ!になかった切ない雰囲気の曲にしたいなというところから作り始めたんですよね。でもビートをしっかり効かせて、ダダダ!っぽさは盛り込んでいきました。

――お話を聞いていると、いつかさんとNew Kさんがダダダ!でやりたいユーモアとエッジのバランスは共通しているのかなという印象を受けました。

いつか:確かにそうかもしれない。New KさんとNaritaさんを紹介してくださったSASAKRECTさんのプロデュース能力、さすがですね。今回の1stフルアルバムもいいものができたと思っていますし、でもまだダダダ!でやるべき音楽を掴めてないような感覚もあるんです。わたしのラップだと、ダンサーさんは音がはめづらいのかもしれないなと思ったりもするので。だからもっと踊ってもらえるようなラップを研究していきたいですね。

――先ほどもNew Kさんがアッパーな曲に対する課題を話してくださっていましたが、ダダダ!でやりたいことはまだまだたくさんありそうですね。

いつか:もちろんです。ラララっていう“歌ってくれ”プロジェクトもいいなとぼんやり思っていて。

New K:あ、それ面白いですね。

いつか:すっごい可愛らしい子が、わたしの書いたキツめの内容を歌ってたらそれはそれで面白いなと思っていて(笑)。

――ははは。エッジはいつかさんの個性であり強みですからね。

いつか:このキツい性格は自分に染みついちゃってるので、何年か出家しないと抜けないですね(笑)。ダダダ!ではそんなところもユーモアにできるようにしていければなと思います。

取材・文:沖さやこ



リリース情報

1stアルバム『THE BEST HIT 1 MINUTES』
3月3日リリース
https://linkco.re/xYnQSzCP
1.ダダダ!
2.我DANCE
3.goodance goodance
4.ルーチン
5.萌口
6.FEELIKE
7.nobody崇拝
8.アハハ
9.唱えるtonight
10.ぷぷぷ
11.グッバイ

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