【インタビュー】ダダダ!、1分前後の楽曲11曲のフルアルバムで実現した表現

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2021年に始動した、Charisma.comのMC・いつか、FUNLETTERSのソングライター・New K、映像作家のYuki Naritaによるプロジェクト、ダダダ!。MVにはダンサーをフィーチャーして音楽×ダンスの表現を追求してきた3人が、遂に1stフルアルバムをリリースする。その名も『THE BEST HIT 1 MINUTES』。すべてが1分前後の楽曲である。“たった11分のフルアルバム”ではなく“11曲のフルアルバム”として1曲1曲が存在感を放つ充実の内容だ。そもそもなぜ1分というフォーマットでの曲作りを始めたのだろうか。そしてメンバーはダダダ!という場所でどんな表現を実現したいと考えているのだろうか。ソングライティングを司るいつかとNew Kに、じっくりと話を聞いた。

■4分尺くらいにするとトゥーマッチになることが多いので
■1分でこんな面白い曲が作れるんだと思ってもらえたらうれしい


――ダダダ!というユニット名は“Dance dance dance”から来ているとInstagramで拝見しました。となると“踊る”ということが大前提にあるプロジェクトということですよね。

いつか:そうですね。Charisma.comでも踊れる曲を作っているつもりだったんですけど、ライヴで踊ってくれる人も少なかったし、ダンサーさんがレッスンとかで踊る楽曲にもあまりノミネートされなくて。自分もサウンドでアガるような感覚でラップをしているので、“踊ってほしい”という気持ちが強めのプロジェクトをやりたくて2020年に個人でダダダ!の前身プロジェクトである“踊ってくれ”シリーズを始めたんです。

――それだけ“踊る”という行為は、いつかさんにとって大事なことだった。

いつか:中学高校でダンス部に所属していた、にわかダンサーだったので、青春を引きずってるだけかもしれないんですけどね(笑)。今でも“ダンサーさんってこういうところで音を取って振り付けにはめたりするんだ”みたいに見るのが好きなので、それを自分が作った曲でやってもらえたらうれしいなという動機です。実際ダンサーさんがレッスンやショーで使う曲はマックスで3分くらいのことがほとんどなので、短い尺で気軽に使ってもらえる曲を作りたいなと思った結果、1分の曲を作れたらなと思ったんです。

――なるほど、腑に落ちました。1分という長さはSNSで使用されることを意識なさっているのかなと思ったのですが、いつかさんはSNSにそこまで肯定的ではなかったので、どんな理由なのかなとは思っていたんです。

いつか:おっしゃるとおりSNSにはそこまで肯定的ではないので、まったく意識はしていないです(笑)。踊ってくれシリーズは自分でトラックを作ったんですけど、わたしの技術では1分が限界だったので、ちょうどいいやと思ったりもして。それをSASAKRECTさんにプレゼンして、New KさんとYuki Naritaさんをご紹介していただいて今に至ります。


▲いつか

――New Kさんはお話をもらって、どのように感じましたか?

New K:いつかさんはすごく大好きなラッパーなので光栄でした。社長から連絡が来て、ぜひやらせてくださいと即答しました。ポップミュージックとしては1分という枠は規格外かもしれないですけど、Aメロ→Bメロ→サビとは違うアプローチができるんじゃないか、面白いんじゃないかとも思いましたね。実際に作ってみても、3~4分尺の曲よりもアイデアや表現が広がる気がするんです。

いつか:よかった~! 1分にまとめるの、めっちゃ大変じゃないかなと思っていたんですよ。

New K:僕が4分くらいの曲を作る場合、もともと作ったデモに“ここに何か展開を入れたほうがいいな”とか“ここに何か足したほうがいいな”と足し算をしていくタイプなので、1分だとそれを考えなくていいんです。“こういう展開にしなきゃいけない”という固定観念が壊れるぶん、やれることやアイデアの幅が広がるんですよね。ダダダ!での制作はすごく自由で大胆になれるので、めちゃくちゃ楽しいです。

――現にダダダ!のトラックは、FUNLETTERSとのアプローチと全然違いますものね。

New K:FUNLETTERSは歌詞もメロディも僕が書いているのと、歌を中心にした曲作りという意識があるので、自然と全然違うものにはなっていきますね。ダダダ!では僕が自由に作ったトラックにいつかさんがラップやメロディをつけてくれるので、全然想像していなかっためちゃくちゃかっこ良いものが返ってきたりもするんです。だから今までやったことがないアウトプットを与えてもらえていて、すごくありがたいし毎回感動しています。

――いつかさんは1分間のトラックに歌詞を乗せるという行為はいかがですか?

いつか:非常に肩の荷が下りましたね。わたしは言葉を詰める系のラップをするので、後から聴き返すと情報量が多すぎるなと思うことがよくあったんです。でも1分ぐらいだと、それをやってもサウンドの一部として組み込まれるので自由に書ける。だから聴いていてもちょうど良い塩梅というか。どの曲もフィーチャリングで呼ばれたくらいの塩梅になっている気がします。


▲New K

――尺が短いぶん制限が多いのかと思っていたのですが、おふたりとも制作が思いのほか自由だったとは。目から鱗です。

いつか:“次のセクションに何を書くべきか全然出てこないよ~!”がないんですよね。次のセクションが来る前に1分経っちゃうので(笑)。ちょっとなんか物足りないかも!と思うときもあるんですけど、でも結局4分尺くらいにするとトゥーマッチだったことが多いので、“1分でこんな面白い曲が作れるんだ!”と思ってもらえたらうれしいですね。

――ダダダ!の映像を手掛けるYuki Naritaさんも、もしかしたら同じような感覚なのかもしれませんね。おふたりはNaritaさんの制作する映像にはどのような印象をお持ちですか?

いつか:いつも面白いですね。あ、そういうことするんだ!みたいな。

New K:毎回趣向も違うし、どのMVも観たことない感じの質感やカットなので、めちゃくちゃかっこ良いですね。

いつか:ちょっとマッドな感じというか。すごく好きなタイプですね。だからいつもおまかせですし、毎回“良いですね~!”で終わります(笑)。

――個性的かつ、楽曲とダンスを生かした映像をお作りになりますよね。MVにご出演されているダンサーさんもジャンルレスで、こちらも自由度が高いです。

いつか:New Kさんがいろんなタイプのトラックを作ってくださるので、MVでもそれに適した振りがついたものを観たいなと思うんですよね。だからInstagramとかで検索して、オファーしています。音にしろダンスにしろ直感的に生まれてきたもので構成できると一番自然かなと思うので、ダンサーさんにも基本的には自由にやってほしいなと思っています。電車や街の中で思わずビートを刻んでいる人を見るとテンションがあがるんです。ダダダ!でもそういうことができたらいいなと思っているんですよね。

――New Kさんはダダダ!でトラックを作るうえで、どんなマイルールをお持ちでしょうか?

New K:最初はいつかさんの“踊ってくれ”シリーズを参考にしつつデモを何曲か作って、そうしているうちにダダダ!っぽい面白い感じやダンス感というか、自分が勝手に感じてるダダダ!らしさが出来上がっていった感覚があったんですよね。それ以降はそれを軸にして“次はどういうふうに面白いことやろうかな?”という発想で作っています。

いつか:New Kさんはダンサンブルなトラックも落ち着いたトラックも、どちらもセンスが良いんですよね。でもちゃんとユニークなんです。……やっぱりユニークって大事ですよね。わたしのラップもNew Kさんの作ってくださったトラックありきで生まれているものなので、もしNew Kさんがスタンダード・オブ・スタンダードなトラックを作る方だったら、わたしから出てくるものもそういうものになると思う。だからNew Kさんのユニークなサウンドには毎回興奮するし掻き立てられているので、とても助かっているんです。

――ダダダ!の楽曲は日常生活で抱える鬱憤などが反映されていて、それでも我が道を行くという意志を感じさせる歌詞が特徴的だと思います。それはいつかさんがCharisma.comでも取っていたスタンスだと思うのですが、いかがでしょうか。

いつか:それがわたしの本質だから絶対に抜けていないんですけど、Charisma.comは“今から戦いに行くぞ!”という曲が多かったと思うんです。“わたしはわたし”というスタンスは失いたくないけど、とはいえそんなに毎日戦っていられないし、戦ってばかりだと疲れちゃうし、人間誰しもダメでダサいところがあるし。ダダダ!ではCharisma.comとは違う、そういう自然体も出せたらなと思ったんです。

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