【インタビュー】Kroiの自由感
Kroiが3月29日にメジャー2nd EP『MAGNET』をリリースするEPには全6曲が収録され、その中からすでに「Hard Pool」、「風来」の2曲が先行配信リリースされている。
◆撮り下ろし写真
2021年にメジャーデビューして以降、急速なペースで規模を拡大していくKroi。2022年は2ndアルバム『telegraph』のリリースに加え数々のタイアップやライブをこなし、怒涛の勢いを見せた。……と聞くと、いかにもメジャーシーンの王道を歩いていく優秀で優等生なバンドに見えると思うが、彼らの音楽の根底にはそれだけでは言い表せないいつも自由さがある。クオリティの高い音源を聴いていても、まるでいまそこでスタジオセッションが行われているようなフリーダムさを感じることすらあるのだ。今回は「風来」リリースをきっかけにインタビューを実施し、Kroiのもつその独特の空気感を探ってきた。
◆ ◆ ◆
■内輪ノリをでっかくしていきたい感覚はあります
──少し振り返った話になりますが、2022年はメジャー2ndフルアルバム『telegraph』もリリースし、ツアーの開催。Kroiにとってバンドとして飛躍の年だったように思います。
関 将典(B):まとまった作品って、一筋縄でいくモノじゃないので、それをメジャーデビューしてから2枚目というのはかなり自分たちの自信にもつながりましたね。それに伴って、リスナーの方々の数だったり、ライヴ会場の規模感、新しい地方へ行ってもお客さんが来てくれる。自分たちの音楽が広がってる実感がある年だったな、って。
内田怜央(G,Vo):絶妙なフワフワ感があった年というか。ずっと前から我々は地盤を固めて、いろんな人へ音楽を届けられるような道筋を組んできたんですけど、それをやっててもちょっとフワッとなる感覚があるぐらい、いろんな環境が動いた2022年だったと思います。
──そのフワッとしたというのは、ポジティブな意味で?
内田 両方だと思います。聴いてくれる人が増えることによって起きるフワッと感というか、新たな場所にきたな、っていうのがあって。
──想像以上のリアクションがあることによって、足元がおぼつかなくなる……とまでは言わないかもしれないけれど。
内田:まあ、そうっすね。活動自体に影響があったかと言えばそうでもないんですけど、個人的な感覚として気持ちいい浮遊感があったなっていう。
益田英知(Dr)今、(内田)怜央が言ったことはたしかにな、と思ってて。自分も似た感覚というか、アップアップしてたというか(笑)。かなり忙しかったので全体を俯瞰して見れなくて。溺れるか、溺れないか、っていう感覚もあったんですよね。昨年はポジティブでよかった一年でしたが、個人的にはもうちょっと俯瞰してやっていきたかったな、って思いもあったり。
内田:ちゃんと反省があって、マジメなバンドだな(笑)。
一同:ハハハハ(笑)。
──ちょっと確認をしておきますけど、Kroiはマジメなバンド(笑)?
益田:マジメっす(笑)。
千葉大樹(Key):見かけよりは(笑)。
内田:まあ、自分たちでそういうからには、そんなでもないんでしょうね(笑)。
──なるほど(笑)。益田さんの話に千葉さんも頷かれてましたよね。
千葉:聴いてくれる人が増えてくると自然と考えなきゃいけないことも変わってくるし、前の立場では見えなかったことも気にしなきゃいけないし。昨年がどうだったかっていうより、徐々に変化していく中で頑張ってるんですよね。
──長谷部さんは昨年をどう振り返りますか?
長谷部悠生(G):ざっくりと上半期は『telegraph』の制作をして、下半期はずっとツアーをしてて。曲を作ってライブする、っていう健全な動きができましたね。もともと、インディーズのころは凄くライブをするバンドだったんで、その懐かしさもありつつ、当たり前の流れをしっかりできた1年でした。
──たくさんこの質問はされたとは思うんですけど、『telegraph』に収録された「熱海」はホントに驚いた1曲でした。
内田:驚いてもらって良かったです。これ、普通に聴かれちゃったらどうしよう、と思ってたから(笑)。
──いい違和感があるタイトルをセレクトしながら、楽曲のクオリティもちゃんと高いっていう。
内田:もともと、熱海っていう場所が好きだったし、Kroiっぽいなとも思ってて。熱海は昔からの観光地っていう部分に加えて、ちょこちょこ今っぽいお店があったりするんです。そのレトロとモダンの組み合わせが我々っぽいし、親近感がずっとあって。だから、そういう曲をずっと作りたいと思ってたし、やっとふざけながらできたな、と。
──いいバランス感ですよね。Kroiはタイアップ曲にもしっかり向き合えるし、そういう遊び心も忘れないし。
内田:かしこまった表現ばっかりになってしまうと自分たちの幅を狭めるなって思ってて。その両立はずっと前から意識してやってますね。
──そういった感覚って、皆さんで共有してるんですか?
長谷部:それこそ、「熱海」のときは凄く話した記憶がありますね。合宿でレコーディングしたんですけど、マジメすぎないよう、ちょっと変わったエッセンスも入れたいね、って。
──やりすぎちゃうとただの遊びになってしまうし、その塩梅ですよね。
関:自分たちがいちばんわかってるんですよ、やりすぎちゃうヤツらだ、って(笑)。だから、その制限みたいなところは考えますね。
──それでいうと、年明けにLINE CUBE SHIBUYAで行ったツアーの追加公演を観させてもらったんですけど、いつもあんなに自由なんですか?
内田:自由ですね。
千葉:この間、リハをしたんですけど、また自由になりすぎてて、ちょっと引き締めないとダメかもしれないな、って(笑)。
──ライヴ中、ステージドリンクを飲むんじゃなくて、本格的なアフタヌーンティーを楽しむのは衝撃でした(笑)。
関:オレ、最後の方はめちゃめちゃ心配になってたんですよね。「この時間、大丈夫かな?」って(笑)。
千葉:追加公演のときはオレも(長谷部)悠生も食いながらそう思ってた(笑)。だって、「熱海」とか聴いて俺らを知ってライブに来てくれた人にとっては、ボーカルでもないヤツらがお菓子を食いだしてるわけだから。
──ボーカルでもないヤツら、って言い方もどうかと思いますけど(笑)。
一同:ハハハハ(笑)。
長谷部:ライヴハウス規模だったらまだアットホームな雰囲気もあっていいんですけど、だんだん会場が大きくなってくると、遠くからは何をやってるか見えないしね(笑)。
──ああいうアイデアって、瞬発的なモノなんですか? それとも、プレイするだけじゃなくて違う要素も入れたい、とか。
関:ツアーへ向かう段階では普通にライブをしに行くつもりでリハーサルに挑むんですけど、その休憩時間にひょんなことからくだらない会話があって。それがあれよあれよと話が進み、本番でもやっちゃう、っていうのが基本でして。「WATAGUMO」の歌唱権を益田と悠生が争うっていうのもそうでしたし。
内田:何だろう、内輪ノリをでっかくしていきたい感覚はありますね。みんなでセッションしてる時間とか凄く楽しかったりするから、それも共有したいな、って。
──シンプルにプレイを見せるだけじゃなく、普段の空気感も含めて楽しんでもらえれば、と。
内田:今はそういうスタイルがいいかな、と思っています。
◆インタビュー(2)へ
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