【ライブレポート】My Hair is Bad、<アルティメットホームランツアー>最終日の武道館で「みんなのことを抱きしめるつもり」
2022年5月にスタートし、“Zeppシリーズ”、“対バンシリーズ”、“ライブハウス公演”なども交えながら全国を巡ったMy Hair is Badのツアーが<アルティメットホームランツアー>だ。5thフルアルバム『angels』を携えた同ツアーの“ファイナルアリーナシリーズ”は、大阪城ホール2days、日本武道館2daysといった東阪大バコ2daysずつで行われた。長期に亘るこのツアーの最終日となった2月19日、日本武道館公演の模様をレポートする。
◆My Hair is Bad 画像8点
ステージが青色のライトで染まり、椎木知仁(G, Vo)、山本大樹(B, Cho)、山田淳(Dr)が登場。掌を重ねて気合いの入った声を響かせる3人の姿が、客席にいる我々の気持ちも自ずと高めてくれる。そして「カモフラージュ」からライブはスタートした。大掛かりなセット類が置かれているわけではないシンプルなステージでバンドアンサンブルが構築され、エネルギッシュなサウンドがこちらに押し寄せてくるのが、とにかく気持ちよくて堪らない。居ても立ってもいられなくなった人々が歓声を上げ、掲げた拳を突き上げる姿は、どんなに凝った演出にも勝る風景を作り上げていた。「サマー・イン・サマー」と「運命」も続けて披露され、早くも圧倒的な熱量で満たされていた武道館。最高のライブとなることを確信させられるオープニングであった。
“野球少年だった幼年期”、“バヤ(山本)とやまじゅん(山田)とバンドを組んだ高1の頃”、“2018年に初めて立った武道館”、“それから5年を経て再び戻ってきたこの場所”……これまでの軌跡を弾き語りで辿った椎木。モノローグと歌の間を行き来しながら想いを表現した後、「ドラマみたいだ」をスタートさせる様相に引き込まれずにはいられなかった。
そして「翠」「接吻とフレンド」「正直な話」が観客をさらに沸き立たせた後、漂っていた熱気をドラマチックに塗り替えたのが「綾」だった。幸福な結末を迎えられないことがわかっている男女の姿を描いたこの曲は、耳を傾けていると胸の内に切ない情景が映し出される。繊細なニュアンスを交えた3人の演奏が光っていた「最近のこと」も、豊かな物語を体感させてくれた。
「真赤」が届けられた後のMCで、後半戦に向けての想いを語った椎木。
「自分をまずはブチ上げていこうと思ってるんだよね。他人に求めるよりも、まずは自分からじゃない? 好きになってもらうためには、まずは好きにならなきゃいけなくない? 優しくされたいなら、優しくならなきゃいけなくない? ブチ上げるためには、俺はまずブチ上がろうと思ってる。今日、ここにいる誰よりもブチ上がります! 俺のことドキドキさせてみろよ!」──椎木知仁
という言葉が放たれた後、立て続けに披露された「アフターアワー」「グッバイ・マイマリー」「仕事が終わったら」「ディアウェンディ」「リルフィン・リルフィン」は、まさしく“ブチ上がっている”という言葉がふさわしかった。興奮の限界突破を重ねることで得られる無上の快感は、やはり生の現場でしか味わえない。“ライブって楽しい!”と心の底から思わされる空間が生み出されていた。
椎木の弾き語りが、その次に披露する曲を一際輝かせる即興のイントロと化すのも、My Hair is Badのライブの醍醐味だ。「今日は特別な日じゃない。今日を特別にしに来たんだよ」という言葉を添えてスタートさせた「フロムナウオン」は、この日のライブならではの生々しいエネルギーを帯びながら迫ってきた。起伏に富んだ展開を経て壮大に高鳴り続けた「戦争を知らない大人たち」。20代の日々へのレクイエムであると同時に、30代の穏やか足取りも刻まれている「花びらの中に」。コロナ禍の最初の緊急事態宣言の頃を思い出させられた「白春夢」……多彩な曲の数々も、ありありと思い出される。My Hair is Badの音楽の深い奥行きを噛み締めたひと時であった。
「大切なものに失ってから気づくなんて、俺はもう絶対にしない。大切なもの、思い浮かべられる? 1つじゃなくてもいいよ。いくつでもいいよ。一方的でもいいよ。当たり前になってるもの、失くしちゃいけないもの、思い返してみてください。俺は大切な人の隣にいる。味方でいる。それだけは間違わない。そういう気持ちで歌います」──椎木知仁
と椎木が語ってからスタートした「味方」は、とても優しいラブソングであった。歌い終えた後、「夢中になってた。夢見心地。夢中になってやれて、すごく幸せです」と言い、とても嬉しそうだった椎木。「自分自身が夢中にならないと観客にも夢中になってもらえないのだと学んだのが、今回のツアーだった」のだという。
「会場に来てくれた人を抱きしめたいから、そういう表現をやってる。いろんな主人公が曲の中にいて、意味は繋がっていかないけど、“何か1つの日がここにあった”って……そんな夢みたいなことを想像してやってきました。今日、My Hair is Badをいっぱい表現できて、すごく嬉しいです。残り3曲、みんなのことを抱きしめるつもりでやっていいですか?」──椎木知仁
と呼びかけてから歌い始めた「宿り」「告白」「歓声をさがして」は、力強さの中に何とも言えない温かさを宿していた。“みんなのことを抱きしめる”という椎木の言葉は、My Hair is Badの本質をまさしく示しているのだと思う。
そしてアンコール。手拍子と歓声に応えて、最初にステージに戻ってきたバヤの「ありがとう!」という清々しい声。生声で「ありがとう!」と言ったやまじゅんも、感無量の様子だった。「本気でやるよ。本気でついてきてくれよ」と椎木が言い、届けられた「瞳にめざめて」「優しさの行方」「クリサンセマム」が、アンコールを大いに盛り上げてくれた。
痛快な3曲を炸裂させて、一旦はステージを後にしたメンバーたち。しかし、鳴り止まない手拍子を浴びながら再登場した3人は、「月に群雲」と「エゴイスト」も届けてくれた。全力で爆音を轟かせ、疾風のように去った3人を見送った観客の歓声は特大級。素敵な余韻が、終演後の場内に漂っていた。
取材・文◎田中 大
撮影◎西槇太一
■<My Hair is Bad「アルティメットホームランツアー」ファイナルシリーズアリーナ公演>2023年2月19日(日)@東京・日本武道館 セットリスト
02. サマー・イン・サマー
03. 運命
04. ドラマみたいだ
05. 翠
06. 接吻とフレンド
07. 正直な話
08. 綾
09. 最近のこと
10. 真赤
11. アフターアワー
12. グッバイ・マイマリー
13. 仕事が終わったら
14. ディアウェンディ
15. リルフィン・リルフィン
16. フロムナウオン
17. 戦争を知らない大人たち
18. 花びらの中に
19. 白春夢
20. 味方
21. 宿り
22. 告白
23. 歓声をさがして
encore
24. 瞳にめざめて
25. 優しさの行方
26. クリサンセマム
W eocore
27. 月に群雲
28. エゴイスト
■『live digest「アルティメットホームランツアー」23.2.19日本武道館』
2023年4月29日(土・祝)20:00〜20:40
見逃し配信:5月12日(金)23:59まで
番組URL:https://abema.tv/channels/special-plus/slots/B5y3JNAfx76MMZ
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