【インタビュー】あるくとーーふ、部活で集結「もしかして、自由自在。」
長野発、メンバー全員2001年生まれの5人組・あるくとーーふ。2019年に10代限定の音楽フェス<未確認フェスティバル>でファイナリストに選出され、その後東京に拠点を移して活動を続ける彼らの4作目となるEP『UPSIDE DOWNTOWN』は、ここまでコンスタントにリリースを重ねてきたバンドの歩みの先で新たな世界を切り開く、転換点となるべき1作だ。
これまでソングライティングの中心だったキーボードのamicoに加え、今作ではギターの貴仁、ボーカルの利佳子も作曲を担当。表現の振れ幅はより広がり、そうやってバリエーションが豊かになったことで、かえって「あるくとーーふらしさ」にも磨きがかかるという、最高のスパイラルが生まれている。
そもそもルーツも好みもバラバラなメンバーが集まったバンドだけあってさまざまなジャンルをクロスオーバーさせて楽曲を生み出してきたあるくとーーふだが、その根幹には何よりも貪欲にポップを追求する姿勢がある。彼らが掲げる「攻撃的ポップ」というキャッチフレーズはまさにその姿勢のことで、いろいろなものを取り込みながらもちゃんとポップに着地する不思議なバランス感覚こそがこのバンドのおもしろさ。この『UPSIDE DOWNTOWN』はそのおもしろさをたった4曲でこれでもかと教えてくれる。今回の制作を通じてさらに確信を深めたように見える5人に、バンドのこれまでと現在地を語ってもらった。
──あるくとーーふは高校の軽音部で結成されたんですよね。
伊藤ヒナノ(Dr):はい。結成6年目になります。
利佳子(Vo):最初は部活の体験会みたいなものがあって、そこでメンバーと出会いました。amicoは部活じゃなくて一緒のクラスだったので知り合ったんですけど。何か好きなバンドも一緒だったので話が合ったんです。
amico(Key):それで利佳子がバンドを組んでみたいって言っていて、「一緒にやらない?」って誘われたんですけど、私はもともとバンドをやろうとは1mmも思っていなかったので「ちょっと一晩考えさせて」って言って(笑)。でもなんか面白そうだなと思って、次の日にやろうって返事をしたんです。そこからメンバーを集めなきゃねってことで、りっちゃんが部活でひな(伊藤ヒナノ)となかじ(Nakamura Koji)をスカウトしてくれたんです。ギターのタカちゃん(貴仁)はなかじ(Nakamura Koji)が声をかけて誘ってくれました。
──利佳子さんはそれまでバンドはやっていなかったんですか?
利佳子:やっていなかったです。中学のときは1年半ぐらい合唱部に入っていたんですよ。でもその頃に友達からおすすめされたバンドを聴いて「めっちゃいい」と思って、そういうバンドをやりたいなって思うようになりました。
利佳子(Vo)
──そのバンドって?
利佳子:UNISON SQUARE GARDENです。
──ということは彼らみたいなバンドをやりたかったんですか?
利佳子:いや、なんかもうバンドなら何でもいい、みたいな(笑)。
伊藤:とにかく演りたかったんだよね。
──じゃあ、こういう音楽をやりたいからこういうメンバーを、みたいなイメージがあってみんなを誘ったわけではなかったんですね。
amico:とりあえずそのパートの人がいたらスカウトする、みたいな。部活に入るときに最初は固定でバンドを組まなきゃいけなかったんですよ。そのために誘うみたいな感じで、本当に何もビジョンもなく、たまたま集まった5人って感じでした。
Nakamura Koji(B):それで最初に音源を作ったのが1年生の今ぐらいだったんですけど。そのリリースイベントを地元のライブハウスで組んだんですよ。そのときにお客さんが大盛り上がりしてくれて、曲を作るのってめちゃくちゃ楽しいし、こんなに人が沸いてくれるんだっていう目に見える実感があって。そういうのがやる気というか動機づけになって「がんばっていこう」って思うようになりましたね。
伊藤:そのときは自分たちの力で歌詞カードを入れたりしてCDを出したんですけど、そのリリースイベントで、私が想像していた10倍くらいCDをみんな買っていってくれたんですよ。それにびっくりしたのと、単純に嬉しかったので、もっと頑張っていきたいなって思いました。
──amicoさんはバンドでオリジナル曲を作るというのはもちろん初めてだったわけですよね?そのときはどんな気持ちでしたか?
amico(Key)
amico:一番最初にレコーディングをして自分たちの録った曲を聴いたときに「オリジナル曲って作れるんだ」っていうことにすごいびっくりしました。最初は手探りで、いっぱいボツ曲とかも出たりしたんですけど、レコーディングスタジオで何泊かして、録音してミックスしてもらったものを聴いたときにすごく嬉しくて。そうやって自分たちの作った曲が初めて形になったときに「これはいけるかもしれない」と思いました。
──それまでバンドじゃなくても曲は作っていなかったんですか?
amico:なかったですね。ピアノは5歳のときからやっていたんですけど、バンド音楽に詳しくもないし、曲を作ったこともなかったです。
──じゃあみんなも彼女が曲を作れるとは思っていなかったんだ。
利佳子:そうです。すごいなと思いました。
──利佳子さんにとってのターニングポイントは?
利佳子:一番は高校を卒業して大学に入るときだったのかなって思います。そこから新しい生活になるから、葛藤もあるし、バンドを続けるか続けないかみたいな話にもなったんです。でもそこで続けるという結論を出したというのが一番のターニングポイントだったと思います。その決断のきっかけになったのが高校3年生のときに<未確認フェスティバル>に出てファイナリストに選んでいただいたっていうことだったんです。5人とも仲良いし、amicoの作る曲もすごく楽しいし、自分も歌うのが好きだから、大学に行ってもこのバンドをやっていきたいなってフワッと思ってはいたんです。そこで<未確認フェスティバル>のファイナリストに選ばれて。3000何人っていうたくさんの人の前で「ハニーレモン・ジンジャー」っていう曲を演ったときに、私が手を左右に振ったらお客さんもそれをやってくれて。それを見たときに「私たちの曲を聴いて楽しんでくれる人がこんなにいるんだ」って思って、このバンドを続けていきたいなと思いました。
──ちゃんと聴いてくれる人、盛り上がってくれる人が目の前にいるんだっていう実感があったからこそやろうと思ったんですね。貴仁さんはどのタイミングで手応えを感じましたか?
貴仁(G):やっぱり最初にこのバンドいいなって思ったのは、ファーストEPを作って、初めてCDの形で手にしたときでした。CDっていうものを作るのが初めてだったので「こんなの作れちゃうんだ」っていう感動っていうか驚きがあって、しかもそれがイベントですごく売れたという手応えもあったし。そこからセカンドEP、サードEP、ミニアルバムって続いてくる中でその「なんかいいな」がすごく重なってきたんですけど、やっぱり一番決定的だったのは<未確認フェスティバル>。じつは2回応募しているんですよ。1回目はいつだっけ?
伊藤:ファイナリストになる1年前だから、2年生のとき。
貴仁:そのときは音源審査で落ちちゃったんですよ。だからリベンジで3年のときにもう1回応募して、今年行けるかなってみんなで話してたらなぜかファイナリストまで行っちゃった(笑)。そこで本当にこのバンドをやってきてよかったなって感じたし、ライブはもちろんライブの後の物販の列もものすごく長くなっていて、こんなに自分たちのものを買ってくれる人がいるんだっていうのを見て「これはやっていく価値があるな」って感じました。
──なるほど。音楽的な面でいうと、僕があるくとーーふを聴いたときの最初の印象は「変なバンド」というものだったんです。ポップなんだけど、曲の振れ幅は異常に広いし、そこで鳴っている音もよく聴くとすごくゴツゴツしているというか、異質なものが組み合わさっている感じがして。それはどうしてこうなったんですか?
amico:それぞれの好きな音楽のルーツが違うんですよね。理想としている音楽、譲れないものがたぶんそれぞれにあって、そこの化学反応を楽しんでいるみたいなところがあるくとーーふのおもしろさなんじゃないかなと思います。
伊藤:あとはたぶんみんな、最初は本当に自分たちが楽しむ目的で始めているので、「こうしなきゃいけない」みたいな音楽の基礎のセオリーとかを意識して作っていたわけじゃなくて。「なんかこれいいじゃん」みたいな感じで作ってできあがったものが、私たちが今出している音源なんです。基礎を知らないっていうのは、いい意味でも悪い意味でも縛られないというか。それがよかったのかなって。
amico:確かにそういう意味だと今回のEPはもうちょっと、そうは言っても整理されてるというか。個性を保ちつつ、ごちゃごちゃを整理しているみたいな印象はあります。
──今もいろんなものが要素として入っているけど、だんだんあるくとーーふとしてのスタイル、らしさみたいなものが絞られて固まってきた感じがしますか?
伊藤ヒナノ(Dr)
伊藤:そうですね。最初はそれこそ利佳子とamicoが一緒に作っていたりしたので、曲に対しても「こうしたい」っていう明確なものがない状態から始まっていたんですけど、今はamicoが主になって作ってくれていて、だんだん私たちも「この曲ではこういうことがしたいんだろうな」みたいなのがわかるようになってきたと思います。amico自身も何かを伝えてくれるときの伝え方がすごくわかりやすくなってきていて、コミュニケーションの取り方とかもだんだん慣れてきて、みんなで1個のものを作り上げるんだっていう意識がたぶんできあがってきたのかなって。
amico:それは本当に、昔はごめんなさいっていう感じです(笑)。前は「こういうのが作りたい」って言ってポイッて投げているような感じだったので。でも最近は曲を作るときに、まず弾き語りで作るんですけど、そのあと1回ボーカルの利佳子に渡して、曲のメロディをボーカル目線で見たときにどうすればいいかっていうのを直してもらったりして。そこからまた返ってきたフィードバックを踏まえてみんなにそれぞれのパート付けをしてもらうっていう流れができてきているので、そこは結構機能してるかなって思います。
──なるほど。作曲のクレジットはamicoさんひとりになっていたとしても、5人の共作という側面があるということですね。
amico:そうですね。私ひとりじゃ絶対にできない音楽です。
──みなさんが今感じている「あるくとーーふらしさ」ってどんなところだと思いますか?
貴仁:やっぱりちょっとひねくれてる感というか。それがあるくとーーふらしい部分なのかなっていうのはあります。ギターをつけるときも、amicoのやりたいこと、「こういうものが欲しいんだろうな」というのを理解しつつ、もっとひねくれて違うやつを入れてやろうみたいなことを考えながら作っていたりします。
利佳子:私も、ただamicoが書いてくれた曲を歌うっていうだけじゃなくて、ちょっと私っぽい目線とか、ボーカルから見てこういうメロディのほうがいいんじゃないかとか、そういうのをちょっとだけ足すようにはしていて。前はわりともらった曲をそのまま歌っていたんですけど、年月を経ていくにつれて、自分らしい歌を歌うことによってよりあるくとーーふらしい曲になっていくんじゃないかなと思うようになりました。
──当然出発点はamicoさんだけど、そこに自分のエッセンスを入れていくことであるくとーーふらしくなるっていうようなことですかね。ひなのさんはどうですか?
伊藤:私たちの曲を作るスタイルっていうのが、最初からがっちりできあがってるわけではなくて、1本の軸をaimcoがくれて、そこにみんなが色を足していく感じだと思うんです。しかもその色も薄いものじゃなくて、結構その曲の根幹に関わるようなフレーズだったりリズムだったりを足していく形で。だから最初にギュッていろいろなものを詰め込みまくる過程があって、そこからこれでもかというぐらいの引き算をしていく、みたいな(笑)。その引き算はやってくる中で学んだことなんです。最初は「詰め込みすぎだよ」って結構言われたりすることもあったんですけど、でも今はそれを学習した上で詰め込んでからいいところを残すっていうか、ここは外せないでしょっていうところをしっかり残していくっていう作業があるので。そのやりかたが曲を作る上でのあるくとーーふらしさなのかなと思います。
──確かに曲を聴かせていただくと、情報量は多いなって思うんですけど、引くところはスッと引くようなバランス感覚はありますよね。それは最初からそうだったわけじゃなくて、学んだんですね。
伊藤:学んできました(笑)。
amico:まだ課題かもしれない(笑)。
Nakamura:もう6年もやってきて、amicoの言いたいこともだんだんわかってきてるので、デモを聴いたときに「ここで絶対これを弾いてほしいんだな」っていう箇所が結構あるんですよ。今回、1曲目の「シャリライ」とかって、本当にそれを裏切る作業をずっとしていたみたいな感じなんです。
──理解した上で裏切るんだ(笑)。
Nakamura:いい意味でですよ。残念なものを作るんじゃなくて、amicoのやって欲しかったものを超えていきたくて。「それは考えてなかった」みたいなことをみんなで出して、そこからさっきの引き算をしていくんです。「シャリライ」はその足して引くという量の移動がめちゃくちゃ多かった気がします。
──2021年にリリースしたミニアルバム『サイファールーム』では全曲amicoさんが作っていましたけど、今回は貴仁さんや利佳子さんも作曲していて。そのあたりもバンドとしての変化なのかなと思ったんですが、それは自然にそうなったんですか?
amico:なんかメンバーから「ちょっと作ってみたよ」みたいな連絡をもらったりすることがあって。タカちゃんはもっとゆるい感じだったよね。
Nakamura:秘めてたんだよね、ずっと自分で曲を作りたいって思っていたと思うんですけど、それをあっためていたんだよね。
貴仁:うーん……。
amico:そうでもない(笑)。でもたまにちょっとひとりで作ってるとか聞いたりはしていて。結構ゆるい感じで「ちょっとこんなのできたんだけど」みたいな連絡がきたりして、「いいじゃん」ってなって。じゃあタカちゃんのコードに私が歌詞とメロディつけるよみたいな感じで、この「くらしのまま」という曲はできました。そういう形で作るのは初めてだったんですけど、タカちゃんのコードがすごくよかったので、すぐ作れました。新鮮だし、それはそれでまた今までと違ったおもしろさがあるなっていうことに気付きました。
貴仁:最初は1曲作ろうっていう気はまったくなかったんです。ただ自分で弾いて遊ぼうっていう感じだったんです。でもそうやって何曲も作っている中で、なんか今だったらいけるかもっていう気がして、みんなに渡して、それでできたのがあれなんですけど。わりと自分の趣味が出ているなと思ったので、全部メンバーに投げて「ちょっと直してよ」みたいな感じで作りました(笑)。
──今回そういうトライアルをやってみてどうですか?これからもどんどんやっていきたいという感じはしますか?
amico:私はやっていきたいと思いました。今までは自分で0から100まで最初に作り上げるっていうのがわりと美学みたいな感じだったんですけど。あるくとーーふの可能性というかやれることを広げるためにどうしたらいいかってなったら、やっぱり他のメンバーが作った曲も心から私は好きなので、どんどん作っていってほしいって思っていますね。
Nakamura:ずっとamicoの曲でやってきて、慣れてきたここ最近だったので、やっぱりすごい刺激になりました。作ってみて思ったのは、やっぱりルーツが違う5人が集まってるので、その持ち味が出てきたかなって。タカちゃんが作る曲はタカちゃんっぽいし、amicoが作る曲はamicoっぽいし、りっちゃんの作る曲は本当にりっちゃんっぽくて。本当に弾いていて楽しいEPというか、作曲者の色がすごい出ている作品になったんじゃないかなって。
──本当にそうですよね。今回amicoさんの曲とamicoさん以外のメンバーが作った曲が半分ずつ混じり合うことでバンドの新たな可能性が広がった感じがしますよね。でも決してこれまでのあるくとーーふらしさみたいなものが消えているわけでもないし。
伊藤:ありがとうございます。自分たちにとってもあるくとーーふらしさを考えるタイミングになったし、今までずっと主観でやってきたものを第三者目線というか、1回俯瞰して見るっていうきっかけになったので。新しい気付きもありましたし、それがあったからこそ「もっとこういうこともしてみたいな」っていうのにも繋がりました。
──「こういうの」って具体的には?
伊藤:私、今までは結構手数多いのが好きで。amicoのルーツとかを聞いても手数多いのがきっと好きだと思うって思ってやっていたんですけど、今回のきっかけで改めてあるくとーーふの曲とはっていうふうに考えて、そこから一歩踏み出して、その曲にどれだけ合っているかとか、この曲をどうよく見せるかみたいなところを意識してみようって思いました。でも「ひなの考えるドラムのフレーズがちょっと変わっていて好きだ」って言ってくれるので、そこはしっかりと大事にしつつやっていこうと思っています。
──そういう意味では利佳子さんの作った「太陽の沈む街」はリズムでも挑戦している曲ですよね。
amico:なんだっけ、あの丸いバチみたいな。
伊藤:ああ、マレット?そういうのもみんなでアイディアを出し合っていく中で「そんな手があったか」みたいな感じで採り入れたりしていますね。
──この「太陽の沈む街」はどうやって生まれてきたんですか?
利佳子:ふと思いついたみたいな感じではあるんですけど、私もともとRADWIMPSの野田洋次郎さんにヴォーカリストとしてすごく憧れていて。洋次郎さんってたまに賛美歌みたいな曲を書くんですけど、私も賛美歌とかが好きで「いいな」と思っていて。でもそういう曲があるくとーーふにはないから、そういう曲を作れたらいいなと思っていたら、たまたまメロディを思いついたんです。でも私は楽器が弾けないので全部声だけでデモにして、それを「ちょっとこういうのに挑戦してみたんだけど」みたいな感じでメンバーに送って。そしたらナカジが「めっちゃいいやん」って言ってくれたんですよ。私、彼に褒められるの結構嬉しいんです(笑)。
Nakamura:あ、そうなんだ(笑)。
利佳子:だから嬉しい!って思って、調子に乗ってドラムも入れてみたりしてもう1回送ってみたら「作ろうよ」って言ってもらえて作ることになりました。
──Nakamuraさん、刺さったんですね。
Nakamura Koji(B)
Nakamura:こういうのを作ってくるのがすごいなって単純に思って。なんか声が何重にもなっている、全部アカペラの曲みたいな感じだったんですよ。本当に包まれるような曲だったので、これはみんなでやったらすごいものになるんじゃないかと思いました。レコーディングでもりっちゃんのデモみたいにたくさん声を重ねるみたいなことをやってみたら、静かな曲だけど重圧感がある感じになって、すごいポテンシャルを秘めている、すごくいい曲だなと思いました。
──アレンジのプロセスとかも他の曲とは全然違ったんですね。
amico:全然違いました。今までは曲の全体像が見えている状態でやっていたんですけど、これは本当に絵を描いているみたいだなって。いろんな要素が入ってごちゃごちゃした状態で、不思議な宇宙みたいな雰囲気なんだけど、芯にはりっちゃんの、アカペラの音源のままの声があって。声がこの曲の中心だと思うので、そこを尊重しつつそれを引き立てる楽器をどう入れていくかっていうのを1個1個考えていきました。曲としてわかりやすい、Aメロ、Bメロ、サビみたいな曲ではないので、本当に1個1個考えていった感じです。
──どうですか、完成させてみて。
伊藤:一言では言い表せないですね。今までの曲も当然、完成したものを聴くとテンションが上がるんですよ。単純に試行錯誤してみんなで作ったものが1つの形になって、それがいいなって思えるっていうのがすごく嬉しいっていうのはあるんですけど、今回は曲の雰囲気が壮大なのも相まって、もうなんか…感動、みたいな(笑)。
amico:オーロラを見た、みたいな感じだよね(笑)。
利佳子:自分が作ったデモをずっと聴いてはいたんですけど、そこにメンバーの素晴らしき楽器陣が彼ら彼女たちの思ってることとか考えてることを結構足していってくれて。自分が思っていた以上にすごいものになったなと思います。
貴仁(G)
貴仁:僕はこのEPの中でこの「太陽の沈む街」が一番好きな曲なんですよ。りっちゃんが言っていたように賛美歌的な、すごい優しくて壮大な雰囲気があるんだけど、すごい力強いものもやっぱりあって。そこが響くというか。っていうのもあるし、みんなが変なことをやっているっていうおもしろさもあるし。
Nakamura:うん。あるくとーーふにとっては新たな一面を提示する曲になったんじゃないかなと思います。
amico:今までのあるくとーーふらしさがあるかって言われたらそうじゃないと思うんですけど、このメンバーで今までやってきたから作れた曲だなという感じがします。
──そうそう。確かに新しい挑戦ではあるけど、ちゃんと今までやってきたことの延長線上にあるっていう感じもしますね。
amico:はい。
──そういう曲も入ったこの4曲入りEP、改めてどんな作品になったと思いますか?
amico:通して聴いて思ったのは、やっぱり可能性が開けたというか、私たちって結構何でもできるじゃんっていうことに気付けたのがすごく大きくて。このCDの帯に私がキャッチコピーを書いたんですけど、「もしかして、自由自在。」っていう。これが私がEPを作ったときに感じたことそのままで。私たちってもしかしたらすごい可能性があって、もっといろいろなことができるんじゃないかってすごく思った作品です。
──いいコピーですね、それ。まさにそんな感じがします。
Nakamura:『UPSIDE DOWNTOWN』というタイトルは自分が思いついたんですけど、これもこの4曲を聴いて率直に感じた感想なんです。「UPSIDE DOWN」と「DOWNTOWN」が掛け合わされているんですけど、いろいろなメンバーが作曲しているというのがいろんな人が住んでいる街みたいに思えたし、ひっくり返すような自由自在さも感じました。
──ひなのさんはどうですか?
伊藤:ちょっとまだまとまりきっていないんですけど、このまとまりきらないっていうのがもしかしたらこのEPなのかなって今ちょっと思って。本当に一言で言い表せないというか、いろいろな色があるし、作っている中で楽しいこともいっぱいあったけど時には悩むこともいっぱいあって。そういうところも含めて表れているEPだと思うんです。今まで以上にそういうバンドの内面も無意識のうちに出ている気がします。
貴仁:今までのCDと比べて一番ひとつの作品感が強い気がしていて。みんな言ってくれた通り、1曲1曲色が全然違うし、同じものが並んでいないところに作品感をすごく感じられるかなって。4曲しかないのに、4曲聴いただけでお腹いっぱいになるみたいな、そんな感じがします。
──利佳子さんは今作をどう言葉にしますか?
利佳子:この作品は大きく分けてふたつあるなと思っていて。ひとつは、4曲のうち最初の2曲はamicoが作詞作曲で、後の2曲が私とタカちゃんが作った曲で。でも2対2で分かれている訳ではなくてちゃんとつながっている感じがするっていう。もうひとつは、なんとなく、たとえばシングルだったら1曲目をドーンと出してあとはカップリングとか、アルバムでも12曲あったとしたらその中のどれか1曲はあまり好きじゃないかも見たいなことがあると思うんです。でもこのEPは1曲1曲がシングルの1曲に匹敵する感じがして。全部が大事な曲で、それかひとつが突出してるっていうより、個性の強い4曲が集まって1個の作品になっている感じがします。
──わかりました。最後に、あるくとーーふって「攻撃的ポップ」というキャッチフレーズを掲げているじゃないですか。そこにはいろいろな意味がたぶんあるんだと思うんですけど、その「攻撃的」っていう言葉に込めているものもだんだん変わってきたんじゃないですか?
amico:そうですね。最初「攻撃的ポップ」って言ったときは「悪役の話」みたいな曲を指していた言葉だと思うんですけど、今は今回のEPみたいに「新しい世界に攻撃的に飛び込んでいく」みたいな姿勢のことを言ってもいいんじゃないかなって思っています。でもあくまでポップに、という。
取材・文◎小川智宏
<あるくとーーふpre「歩豆腐街」>
@下北沢ReG
出演:あるくとーーふ / ゴホウビ / ReiRay
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あるくとーーふ 4th EP「UPSIDE DOWNTOWN」
1.シャリライ
2.氷星
3.くらしのまま
4.太陽の沈む街
4th EP「UPSIDE DOWNTOWN」試聴/ダウンロード
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