【ライブレポート】Kroiが提示する“次世代型コンセプチュアル”
Kroi史上初の全国ツアー<Kroi Live Tour 2022 “BROADCAST”>の追加公演が、2023年1月8日にLINE CUBE SHIBUYAで行われた。昨年9月から始まった彼らのツアーでは、全17都市でライブが開催された。終着点となるLINE CUBE SHIBUYAは、Kroiのキャリアで最大のキャパシティ(2000人越え)を誇る。音楽番組『バズリズム02』において、“今年コレがバズるぞ!BEST10”の3位に選出されていたのが昨年2022年の1月だから、順調に階段を上っているように感じられる。2019年に<出れんの!?サマソニ!?>に出演していたのがずいぶん昔のことのようだ。
◆ライブ写真
メンバーの長谷部悠生(G)がライブの前日に完成させたというお手製のラジオ番組『ロゼッタスペース』の新春スペシャルバージョンから始まり、全体がその世界観に覆われてゆく。昨年の8月にZepp Hanedaで行われたKroiのフリーライブでは、“961便”、すなわち航空機がモチーフに採用されていた。ライブをコンセプチュアルに演出するのは、今の彼らにとって重要な技法なのかもしれない。いや、彼らに限らず、古今東西を見渡しても、GorillazやFlying Lotus、日本ではずっと真夜中でいいのに。らが明確に「世界観」を持ってライブを行ってきた。サブスクの台頭によりリスナーの視聴体験がアルバムから楽曲単位に移行したことで、現在では音楽を「点」で聴く人が増えた。今回のKroiのライブのようなあり方はその流れに逆らう、「線」で音楽を聴かせる行為である。途中の寸劇やかけ合いも含め、まさしくラジオの“BROADCAST”だった。
ギミックの効いた導入から始まったのは、一切のMCなしで続く「Drippin’ Desert」、「Pixie」、「Monster Play」、「a force」、「Juden」の5連発。内田怜央(Vo)が時々発する「あざっす…」以外は、曲間に何も入らない。シームレスでありながら迫力のあるライブ構成だった。この日の特筆すべき点として絶対に挙げておきたいのが、照明の辣腕ぶりである。ここ最近見た中ではトップクラスの、いや、はっきりとトップの照明デザインだった。「Pixie」が演奏されるとき、頭の拍が入るタイミングで極彩色のライティングが展開し、Kroiが変則的に鳴らす音にも完璧に対応していた。「Pixie」の音の構成だけでなく、アートワークも理解していないとこの表現にはならないだろう。しかもこの1曲だけでなく、徹頭徹尾圧巻のクオリティだった。「Juden」では関将典(Ba)のソロにピンスポットをあてながら、その後のセッションでは間髪入れずに全体にフォーカスする。この日の「Juden」は、これまでの彼らの演奏の中でもベストパフォーマンスに感じたが、ライティング演出が果たした役割も相当大きいはずだ。
「Juden」後にMCを挟み、個人的に最も楽しみにしていた「Funky GUNSLINGER」が“スペシャルバージョン”で演奏された。昨年7月にKroiのセカンドアルバム『telegraph』がリリースされた当初、筆者は“ダブっぽい”と感じた。が、その後に発表された同曲のミュージックビデオでは“西部劇ファンク”と銘打たれ、土煙漂うバイブスが表現されていた。
今回のライブではミュージックビデオにも出演していた男女のダンサーを招聘し、映像さながらの世界観を構築。ライブサウンドで聴く「Funky GUNSLINGER」は、ジャマイカのフィーリングよりもGrateful Deadのそれに近かったように思う。広がりのあるギターのフレーズは、ヒッピー・サイケデリックからの引用なのかもしれない。
ライブの中盤、千葉大樹(Key)によるアフタヌーンティー講義が催された。BROADCASTツアーにおけるライブの定番として、メンバーがお茶(あるいは茶菓子)を嗜む時間が設けられている。「ライブ中って基本的に水を飲むけど、別に水じゃなくてもいいよね。メンバーの誰かがお茶をしばき始めたら面白いのでは」という考えのもとで始まったという。最終公演である今回は、特別に本格的なティースタンドでアフタヌーンティーが届けられた。「アフタヌーンティーというのは(スタンドの)下から食べてるんですからね。真ん中や上からいってはダメなわけです。今日はアフタヌーンティーが終わるまで帰りませんよ」。なお、安藤さん(Kroiのマネージャー)の後始末が大変なため、今回のツアーでアフタヌーンティーは見納めらしい。
今回のツアーを語る上で欠かせないトピックが「WATAGUMO Battle」だ。全国を回る中で、長谷部と益田英知(Dr)が「WATAGUMO」の歌唱権をかけて競い合い、これまでのライブで様々なパフォーマンスを行ってきた。時にはマイケル・ジャクソンやブルーノ・マーズに扮し、時にはプロの演出家を呼んで寸劇を披露し、余興とは思えぬ完成度のかけ合いが生まれた。ツアーを通した競争企画の結果が、今回の公演で発表される。各公演の会場票、スタッフ票、オーガナイザー票、Twitter(ハッシュタグ“ワタグモバトル”で集計)票をもとに、益田に軍配が上がった。彼は大いに喜び、ステージ上を闊歩しながら「WATAGUMO」を熱唱した。その歌声は、しっかり仕上がっていた。
アフタヌーンティーの歓談しかり、まさしく「ラジオ」のノリとマナーだと感じる。みずからが設定した“BROADCAST”という世界観を守るために、歓談もかけ合いも必要だったのだ。しかも、長谷部のロゼッタスペースは、昨日今日始まったものではない。筆者が彼らを本格的に認識したのは2021年の11月だったが、その頃からこのDIYなラジオ番組は存在していた。音楽を聴かせるために、音楽以外のチャンネルを作る。それは昨今のカルチャーを考える上でも非常に重要なことだ。それをツアーの最終ライブ、あまつさえ過去最大キャパの会場に一番の盛り上がりを持ってくる。極めて能動的に発信しようとする意思がなければ、なかなかできないことだ。ちなみに、千葉もYouTuber「喉仏第一部隊」のメンバーとしての一面も持つ。
アンコールでは新曲の「Hard Pool」、「Fire Brain」が披露された。「Fire Brain」がここで選ばれた理由は、定番かつライブ映えするからだろうけれど、「Hard Pool」との相性が良いことも大きく影響しているように思う。2曲とも、構成が展開多めの尻上がり爆裂セッションナンバーなのである。「Fire Brain」は何度もライブでプレイされているから練度が高いが、「Hard Pool」にもそのポテンシャルを大いに感じた。この時点で十分迫力があったが、それでもなお即興的な要素が重ねられる余地があった。しかしこの予想も凌駕されるだろう。先述した「Funky GUNSLINGER」のように。
そしてどこかのラジオステーションの偉い人、どうか『ロゼッタスペース』に出資していただきたい。コンセプチュアルなアイデアが、本当に実像を手に入れるなんて夢のある話じゃないですか。
文◎Yuki Kawasaki
写真◎jacK
セットリスト
2.Pixie
3.Monster Play
4.a force
5.Juden
6.Funky GUNSLINGER
7.Balmy Life
8.Mr.Foundation
9.Flight
10.侵攻
11.夜明け
12.Not Forever
13.Never Ending Story
14.WATAGUMO
15.Network
16.HORN
17.Shincha
En1.Hard Pool
En2.Fire Brain
New Digital Single「Hard Pool」
https://lnk.to/hardpool
<Kroi 2023 "Magnetic" Tour BLUE / RED>
4月13日(木) 神奈川 KT Zepp Yokohama
4月15日(土) 静岡 浜松窓枠
4月16日(日) 愛知 DIAMOND HALL
4月22日(土) 福岡 DRUM LOGOS w/ BREIMEN
4月23日(日) 福岡 DRUM LOGOS
5月6日(土) 北海道 PENNY LANE24 w/ BREIMEN
5月7日(日) 北海道 PENNY LANE24
5月12日(金) 大阪 Zepp Namba
5月13日(土) 岡山 YEBISU YA PRO
5月18日(木) 東京 Zepp Shinjuku
5月20日(土) 宮城 仙台Rensa
5月26日(金) 石川 金沢AZ
5月27日(土) 新潟 新潟LOTS
【RED】
6月2日(金) 大阪 オリックス劇場
6月23日(金) 東京 NHKホール
■TICKETS
ライブハウス公演【BLUE】 : 前売り ¥4,800(+1DRINK)
ホール公演【RED】 : 前売り ¥5,800
■チケット
プレオーダー(抽選)
〜 1月15日(日)23:59まで
https://eplus.jp/kroi/
■注意事項/備考
※未就学児童入場不可/ / 小学生以上チケット必要
※公演前に発表する注意事項をご確認の上、ご来場をいただきますよう、お願い申し上げます。
※当日は新型コロナウイルス感染拡大防止のガイドラインを遵守し、然るべき安全対策を講じた上で開催されます。
※ガイドラインに合わせて随時レギュレーションを変更する可能性ごさいますことご了承のほどよろしくお願い申し上げます。
◆Kroi オフィシャルサイト
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