【ライブレポート】いつまでも若かった、ジェフ・ベックのギタープレイ
ジェフ・ベックの訃報には驚きとともに命の儚さと呆気なさを改めて痛感している。なぜなら、昨年2022年の11月に元気なステージを観ていたからだ。素晴らしいステージであったが、指定席7列目というポジションからの写真撮影では少し遠かった事もあり、レポート提出を見送っていたのだ。
しかし、突然の訃報を知り、すでに2ヶ月以上経過しているが簡単に記憶を辿ってみようと思う。
2022年11月6日、ロサンゼルスのダウンタウンに位置するオルフェウム・シアターで開催されたショウは、ジョニー・デップとのジョイントコンサートでありチケットはソールドアウト。クラシックな造りのそのホールはベックとジョニーにとても雰囲気がマッチしている。メディアも多数来ていたし、館内にも各ドアには専用係りがおり、バーも併設されていてドレスアップした大人たちが集っていた。マーチャンのコーナーは大行列で、自分もジョニーとのコラボTシャツ等を購入してしまった。
オンタイムにサングラスをかけ、白いストラトキャスターでベックが登場。ここ10年くらい観ていなかったが、全く変わらずプレイは若い。オープニングから彼の高い演奏力は明らかだし、音色の素晴らしさもいつ聴いてもうっとりする。
バックを務めるメンバーは、ロンダ・スミス(B)アニカ・ニルス(Dr)、ロバート・スティーブンソン(Key)、チェロ奏者にヴァネッサ・フリーバーン・スミスというラインナップ。非常にタイトでフレッシュで、前半には各所で彼らにスポットが当たる場面もあった。
このツアーは、ジョニーとの共演作品『18』アルバムの宣伝とともに「You Know You Know」や「A Day In The Life」「Brush With The Blues」等のインスト曲を通じてベックの伝説的なキャリアを探るというもの。ベースのロンダは時折、ステージセンターで技巧派な場面も見せてくれるし、アニカのリズムとテンポはクラシックな曲が実に新鮮に蘇る。ベックは指とトレモロだけを使い、時折のスライドも見せ、音色が泣いたり、跳ねたりの弾むトーンが自由自在、シンプルだけど最高級のプレイ。
様々な場面でその楽曲を最大限にギターで表現していくベックのプレイには、アメリカでも余計な声援はなく、ひたすらシーンとした中で一音たりとも聴き逃したくないと言う観客側の緊張感もある。
「Cause We've Ended as Lovers」でスタンディングオベーションの大喝采を浴びた後だったと思う、ベックが「複雑な気分だよ」みたいな事を言い、「僕には助けが必要だ」と、ジョニーをステージに迎え入れた。場内には女性ファンの声援が響き、映画の中でしか会えないスターなので生の姿を観れるのは貴重な機会。テレキャスターを低く持ち、ルーズな雰囲気を出しながらブルージーに歌とギターを、そこにベックが合わせていく。その様もベックの余裕さが明らかで、ジョニーを中心とした演出であるが、正直ベックの存在が大き過ぎるようには感じた。
「A Day in the Life」のインストバージョンや、アップテンポの「The Death and Resurrection Show」等、アレンジもなかなか良かったし、このコラボはさながら映画を観ているような感覚にもなった。とても素晴らしいショウであったし、2人のスーパースターの共演は実に贅沢な夜だった。
この日のバックステージには、オリアンティやデヴィッド・カヴァーデールも訪れていたようで、ジョニーを始め、この2ヶ月後にベックが亡くなる事など誰も考えもしない出来事だ。ロッド・スチュワートが「ジェフ・ベックはもともと別世界の人間だった」と素敵なコメントを出している。
心よりご冥福をお祈りします。
文・写真◎ Sweeet Rock / Aki
<Jeff Beck with Johnny Depp Tour 2022 >
1.Freeway Jam
2.Loose Cannon
3.Midnight Walker
4.Big Block
5.Caroline No
6.You Know You Know
7.Me and the Devil Blues
8.Star Cycle
9.Brush with the Blues
10.You Never Know
11. Cause We've Ended as Lovers
12.Rumble
13.This is a Song for Miss Hedy Lamarr
14.Isolation
15.Time
16.Venus in furs
17.A Day in the Life
18.Corpus Christi Carol
19.Little Wing
20.The Death and Resurrection Show
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