【ライブレポート】マカロニえんぴつ、「10周年をこんなにお祝いしてもらえて本当に幸せなバンドです」

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旅の終わりはいつも華々しく賑やかで、そして少しだけ寂しい。それが10周年を祝うバンド史上最大規模のツアーならばなおさらだ。マカロニえんぴつ<マカロックツアーvol.14 ~10周年締めくくり秋・冬ツアー☆飽きがくる程そばにいて篇~>のファイナル、さいたまスーパーアリーナ2DAYS。インディーズ時代からのファンには特別な感慨を、近年のタイアップヒットやフェスで彼らを知ったリスナーには新鮮な興奮を。人の数だけ様々な思いを抱えた満員の観客に向けて響け、鳴らせマカロック。

予想以上にソリッドでストイックな、ライブの始まりは「トリコになれ」から。メンバーの顔を隠すようなめまぐるしいバックライトの点滅が期待感を煽る。一転して「洗濯機と君とラヂオ」で強烈な光がはじけ、レーザービームが流星雨のように降り、巨大スクリーンに4人の姿が大写しになる。アリーナの規模を最大限に使った壮麗な演出と、爆音のバンド。はっとりの歌も伸び伸びとパワフル、気合い十分だ。









「ワンルームデイト」は、ソロもばりばり弾き倒すはっとりの勝ち。「愛のレンタル」はクラヴィネットの音色を使った長谷川大喜のソロが圧巻で、はっとりと田辺由明はオールドロックファンが痺れるツインリードを聴かせる。サポート高浦“suzzy”充孝は歌にぴたりと寄り添うドラムを叩く。照明は七色、スクリーンの映像はサイケデリックなオイルアート。派手な仕掛けと自然体の演奏でぐんぐん飛ばす。

「見てください、この景色を。みなさん、マカロニえんぴつだけを見に来てくれてるってことでしょ? この10年で出会えた人たちと、こういうふうに音楽で会話ができることが本当にうれしいです」



ここから5曲、はっとりの歌を軸にじっくりしっかり聴かせる曲が並ぶ。華やかなしゃぼん玉の演出でファンタジックに盛り上がる「たましいの居場所」から、おおらかなグルーヴと間奏のクラップが一体感を生む「MUSIC」へ。雄大な自然の映像をバックにぐっとシリアスにブルージーに、歪んだギターと澄み切ったピアノの対比がかっこいい「mother」から、夢見るような浮遊感覚と肉感的でソリッドな演奏が溶け合う「恋人ごっこ」へ。極めつけは、はっとりがアコースティックギターで弾き語る親密なラブソングを、バンドが柔らかく包み込む「夜と朝のあいだ」だ。打ち上げ花火をスローモーションで見ているような幻想的なライトが美しい。深く優しく力強く、ここがライブの折り返し地点。

壮大かつ珍妙かつ大真面目なチャイニーズフードロック、いやハードロックな「街中華☆超愛」へ繋げるMCは、主演・はっとりの小芝居を含めてたっぷり長め。赤い中華服のメンバー、盛大に飛び散るテープと紙吹雪、凝りまくった映像。マカロックにはユーモアのセンスが欠かせない。ハイテンションのまま「カーペット夜想曲」へとなだれこみ、さらに長谷川の邪悪なリフ、田辺の速弾き、高野賢也のスラップがバトルを繰り広げる、プログレメタルめいた壮絶なセッション曲へ。マカロックには謎かけめいたシュールな要素も欠かせない。なんだこりゃ?と思ってつい引き込まれ、いつのまにか「ブルーベリー・ナイツ」から「愛の手」へ、ピアニシモからフォルテシモまで、音もメロディも感情もダイナミックに揺さぶられるエモい曲を叩きつける。激しい曲なのに誰もが動かず聴き入る、曲に込めた感情の深度がとても深い。





あなたがたの得意な臓器に力を込めて、あなたの臓声を聞かせてくれますか── はっとりの奇妙な造語は「ワンドリンク別」への前振りで、体で感じたままの内なる声を聞かせてくれという意味。たぶん。疾走感あるテンポに乗って「MAR-Z」ヘ、「星が泳ぐ」へ、ぐんぐんスピードを上げて突っ走る。ドラム台の後ろに隠れていたミラーボールとアリーナ後方に置かれたミラーボールがまばゆい光を集め、スーパーアリーナの天井を美しい星空に変える。田辺のソロが熱い。「ヤングアダルト」は、強烈なライトの後光を背負った長谷川のソロがエモい。「さいたまヤングルーザー」と歌う、はっとりの歌に込めた情熱が濃い。ライブはいよいよクライマックス。

「自分を救うために音楽を始めました。自分の孤独は自分にしか救えないと思ってました。ユニコーンを見て、バンドをやりたいと思いました」



エレクトリックギターを爪弾きながら、はっとりの長いMCはMCというよりも1曲の歌のような独白劇。バンドの10年を静かに振り返りながら、長い迷いの季節を経て、自分で自分を救うのではなく「この人たちに救ってもらおう」と思うようになったこと、そこからバンドが楽しくなったこと。照れながらメンバーに感謝を、ファンに感謝を、そして「救ってくれてありがとう。マカロニえんぴつという、あなたが愛した音楽でした」という言葉に続いて歌われた「なんでもないよ。」が、いつも以上に強く心の琴線に触れる。10年ぶんの思いを乗せた「なんでもないよ。」を、アリーナいっぱいの観客と配信の視聴者が共有している。10年生き抜いた、ここがマカロニえんぴつの現在位置。

「新曲やります」

アンコール1曲目に用意されたのは、1月から始まるTBS系金曜ドラマ『100万回 言えばよかった』(出演:井上真央、佐藤健、松山ケンイチ)の主題歌「リンジュー・ラヴ」だ。バンドにとって初のゴールデンタイムのドラマタイアップは、打ち込みを加えた溌剌としたリズムの上で、人を愛する心のぬくもりをメロディアスに歌う曲。10年ぶんのキャリアが生んだ、大人の愛の歌。続く「僕らは夢の中」も、バンドが10年続かなければ生まれなかった自伝ソング。ロックバンドは最高だ、そんなの当然だ。笑っちゃうほどストレートな、決して揺るがないメッセージ。

「終わっちゃうのが寂しいくらい実りあるツアーだったし、10周年をこんなにお祝いしてもらえて本当に幸せなバンドです。これから先も一緒に憧れを追いかけて、みんなと一緒に生きて行こうと思います」





さらなるアンコールを求める拍手に、「もうちょっと行けるでしょ」と駄目出しする高野。メンバーが笑い転げてる。ファンも笑ってる。ツアーファイナルの最後を飾る1曲、「鳴らせ」が爆音で響き渡るアリーナに笑顔が溢れてる。自分を救うための音楽が、もうすでにみんなのうたになっている。

客席を背にして記念撮影をするメンバーの後ろに、無数のツアータオルが掲げられる。旅の終わりはいつも華々しく賑やかで、そして少しだけ寂しい。しかし音楽は鳴りやまない。ライブ終了直後に、早くも4月から始まる次のツアー<マカロックツアーvol.15 〜あやかりたい!煌めきビューチフルセッション編〜>の開催が発表された。全国6か所で2公演ずつ、1日目はワンマン公演で2日目は対バンライブという特別仕様。ロックバンドは旅の途中、明日はどこへゆこう。「僕らは夢の中」の歌詞が頭をよぎる。憧れを追いかけ続ける新しい旅がまた始まる。



文:宮本英夫
撮影:酒井ダイスケ

<マカロックツアーvol.15 〜あやかりたい!煌めきビューチフルセッション編〜>

■ONE MAN
4月 6日(木)KT Zepp Yokohama
4月13日(木)Zepp Sapporo
4月20日(木)Zepp Nagoya
4月27日(木)Zepp Fukuoka
5月10日(水)Zepp Osaka Bayside
5月18日(木)Zepp DiverCity

■TWO MAN
4月 7日(金)KT Zepp Yokohama  ゲスト:Vaundy
4月14日(金)Zepp Sapporo    ゲスト:くるり
4月21日(金)Zepp Nagoya     ゲスト:サンボマスター
4月28日(金)Zepp Fukuoka     ゲスト:ウルフルズ
5月11日(木)Zepp Osaka Bayside ゲスト:My Hair is Bad
5月19日(金)Zepp DiverCity    ゲスト:UNICORN

TICKET
1F立見 6,300円(税込)
2F指定席 6,800円(税込)
2F立見 6,300円(税込)

ファンサイト「OKKAKE」先行受付開始
1/8(日)18:00〜1/23(月)23:59

ファンサイト「OKKAKE」
https://fc.macaroniempitsu.com

「wheel of life」EP

2023年3月8日(水)発売
収録曲/リンジュー・ラヴ、あこがれ (2022 再録)、他新曲2曲、計4曲収録

[初回生産限定盤 特典]
・結成10周年記念ショートムービー「あこがれ」、インタビュー映像
・BSフジ「マカロニえんぴつと言葉の居場所」

初回生産限定盤 TFCC-89756~89757 税込 ¥3,000
通常盤 TFCC-89758 税込¥1,500

・「wheel of life」EP特設サイト
https://macaroniempitsu-wheeloflife.com/

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