【インタビュー】SideChest、存在感のある曲が繰り出され一気にラストまでいざなわれる1stアルバム『BUFF』

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名古屋発の4ピースロックバンドSideChestの1stアルバム『BUFF』は、音楽のエネルギーをギュッと凝縮して封じ込めた、密度の濃い作品だ。シャープでソリッドでポップでメロディアス。1曲目の「Slumber」を聴いた瞬間に、ぶっ飛んだ。せつないメロディを備えた壮大なミディアムバラードなのだが、なんと34秒しかない。アップテンポのナンバーのショートチューンは、さほどめずらしくないが、ミディアムでこの短さは前代未聞だ。しかもその時間内でエモーショナルな世界が展開されている。3分台の曲もあるが、基本的には短め。15曲収録されていて、次々に存在感のある曲が繰り出され、一気にラストまでいざなわれる。鍛え抜かれた筋肉のように、削ぎ落とされた無駄のない音楽でありつつ、叙情のにじむ曲もある。松岡拓実(Vo/Ba)、伊藤克俊(Gt/Cho)、戸田与久(Gt)、小林章人(Dr)というメンバー4人に、バンドヒストリーから1stアルバム『BUFF』まで、話を聞いた。

■ライブで多くの曲数をやれないので短くしたかったんです
■ともかくいらないところは切って切ってという作業でした


――SideChestは2016年結成のバンドで、現在のメンバーが揃ったのは2018年です。加入の順番としては、松岡さんが結成し、その後、伊藤さんを誘ったんですね。

松岡拓実(以下、松岡):そうです。もともとSideChestは、僕が大学在学中に結成したバンドで、素人4人がスタジオに集まり、好きな曲を演奏するところからスタートしました。就職などを期にメンバーが抜けて、ギターがいなくなりまして。それで高校の同級生だった伊藤を誘い、「ライブハウスに出てみようか」と誘ったところから本格的に活動を開始しました。

――伊藤さんを誘ったのはどうしてですか?

松岡:高校の頃から、互いにバンドが好きで、一緒にフェスやライブに行ったこともあり、それぞれの家でギターを弾いたこともあったので、自然に誘った感じですね。

伊藤克俊(以下、伊藤):「ちょっとやってみようか」くらいの軽い誘いだったので、まさかこんなに続けるとは思っていませんでした。最初の頃はグダグダでしたから(笑)。

松岡:スタジオに入っても、みんな素人なので、曲を演奏できないんですよ(笑)。自分たちの好きな曲をPA卓につなげて流して、踊っていました(笑)。

――その後、小林さんが加入しています。どういうきっかけから?

小林章人(以下、小林):僕と伊藤は大学の同じ軽音サークルだったんです。「メンバーが足りないからサポートで入ってくれないか」ということになり、サポートで入った半年後に、正式に加入しました。

――最後に入ったのが戸田さんです。

戸田与久(以下、戸田):僕はもともと3ピースのバンドをやっていたのですが、そのバンドが解散するタイミングで、彼らとライブハウスで出会って、「入れてくれ」と直談判しました。

――この4人が揃ったことで、手ごたえはありましたか?

松岡:戸田が入って、表現の幅が広がりましたね。


▲松岡拓実(Vo/Ba)

――1stアルバム『BUFF』を聴いていても、アンサンブルの表現力の豊かさを感じました。

松岡:3ピースでやっている時は英語詞のメロディックな曲が多かったんです。戸田がもともとやっていたバンドがギターロックなバンドだったこともあり、4人になったことで、幅が広がったところはあったと思います。戸田が加入した時、に「2ビートにギターを合わせたことがない」とのことで、最初は苦労したんですが、逆に2ビートに合わせたことのないヤツのギターが組み合わさることで、新しい世界が広がったと感じました。

伊藤:最初は「もっとギターを歪ませろよ」というところから始まりました(笑)。

松岡:喧嘩したり、誰かが折れたり、折衷案が出たりしながら、 じょじょに自分たちの音楽が固まっていきました。

戸田:ジャンルの違う音楽が合わさることで、おもしろい音楽になっているんじゃないかと思っています。今回のアルバムで、やっとまとまってきた気がしています。



――SideChestというバンド名はどんなところから?

松岡:僕はラジオが好きで、オードリーさんがやっている『オールナイトニッポン』をよく聞いていたんです。春日さんがボディビルをやっていて、ラジオでいくつかポージングの名前を出して、その中に“サイドチェスト”があったんです。ちょうどバンド名を考えているタイミングで、この言葉がスーッと入ってきました。とくに意味はありませんが、自分の好きな芸人さんの言葉なので、いいかなと。


▲伊藤克俊(Gt/Cho)

――1stアルバム『BUFF』を制作するにあたって、イメージしていたことはありますか?

松岡:初期の曲もいくつか再録したのですが、当時は3ピースでやっていたので、4人の音ではなかったんですよ。1stフルアルバムを出すことなった時には、4人バージョンで入れたいと思っていたので、その念願が叶って良かったなという気持ちがあります。

――初期の曲も入っているという意味では、集大成的な作品でもあるわけですね。新曲を制作するうえで、意識したことはありますか?

伊藤:1曲1曲をどれだけ短くできるかは、少し意識しました。

――1曲目の「Slumber」がいきなりショートチューンです。しかもミディアムテンポという。

伊藤:これまでは速くてなんぼのショートチューンばかりでしたが、この曲はまったく違うタイプですね。ゆったりとした壮大なショートチューンなので、フルアルバムくらいのキャパがなければ、入れられなかったかもしれません。


――短さにこだわったのは、どうしてなんですか?

伊藤:3~4分の曲だと、ライブで多くの曲数をやれないので、短くしたかったんですよ。ともかくいらないところは切って切ってという作業でした。

戸田:対バンライブをやることが多いので、30分でどれだけの曲数を詰め込めるか、ライブを意識して曲を作ったら短くなりました。

――アグレッシブなパワーが伝わってくる作品でもあります。

松岡:前の作品は、コロナ禍でライブのできない期間に作ったこともあり、時間があったので、音楽の幅を広げるべく練って練って作りました。今回、フルアルバムを作るにあたって、「原点に戻ろう」「初期衝動を重視して、直感的に良いと思うことをやろう」という話し合いをしたんです。衝動を音にした曲をたくさん入れたいと思って作っていたら、こういう作品になりました。

――それぞれプレイヤーとしてこだわったことは?

松岡:今までは意味を優先して、歌いにくい言葉でも入れていました。今回は妥協せずに、自分が歌いやすくて、なおかつ、内容も納得できて、聴いてくれる人に浸透しやすい言葉選びにこだわりました。

小林:ドラムに関しては、これまでの作品では、「ここを聴いてくれ」というポイントがあったのですが、今回はメロディを聴いてフレーズを考えました。ドラムソロも曲に合うことを優先して作りました。

戸田:ギターもメロディの邪魔にならないことを大前提としつつも、自分の納得できるフレーズのポイントを1曲に1か所は入れることを意識して演奏しました。

――伊藤さんは、ギターとコーラスに関しては?

伊藤:コーラスはやれるだけやって、やれないことは諦めるというスタンスでした(笑)。ギターも基本的にはそんなに難しいことはやっていません。自分が作った曲は自分でコードを考えますが、松岡が提示したものに関しては、もうちょっと良い響きはないかとかを探すくらいでした。

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