【イベントレポート】KANA-BOON、ストレイテナーとの対バンでみせた「受け継ぎ、受け継がれる意志」
KANA-BOONの約4年ぶりの対バンツアー「KANA-BOON Jack in tour 2022」。緑黄色社会(9/30 福岡Zepp Fukuoka)、キュウソネコカミ(10/10 大阪Zepp Osaka Bayside)に続く対バン相手は、ストレイテナー。尊敬してやまない大先輩を迎えたKANA-BOONは、「カッコいいところを見せたい」という熱気、そしてデビュー10周年を目前にした4人の状態の良さを存分に発揮してみせた。
小泉貴裕(Dr)の影アナ(注意事項の説明のほか、ストレイテナーのドラマー・ナカヤマシンペイのリスペクトを熱く語ってました)で楽しい開放感を演出した後、まずはストレイテナーが登場。「Melodic Storm」「From Noon Till Dawn」など冒頭からアンセムを続けざまに披露し、フロアを埋め尽くしたオーディエンスも手を上げて応える。「初めましての人にわかりやすく言うと、アジカンと同期です(笑)。KANA-BOONと2マンは初めてなので、楽しみにしてきました」(ホリエアツシ)と挨拶すると、会場からは大きな拍手が巻き起こった。
この後もキャリアを代表する名曲を次々と演奏。「これぞストレイテナー」と開催を叫びたくなるようなシーンが続いた。「テナーとブーン、この後も仲良くしたいと思います」というMCの後も、「シーグラス」「REMINDER」などの名曲によって観客のテンションを引き上げたストレイテナー。11月21日からはじまる633(SIX HUNDRED THIRTY THREE)との対バンツアーも楽しみだ。
ストレイテナー
そして、KANA-BOONのステージへ。右手を高々と上げて登場した谷口鮪(Vo, G)が「来てくれてありがとう。先輩ありがとうございます、テナーブーンいきます」と笑顔でオーディエンスにアピール。まずは「シルエット」「フルドライブ」と盛り上がり必至のシングル曲を放ち、ガッチリと会場をロックする。高速の4つ打ちビート、鋭利なギターサウンド、未来への駆動を感じさせるメロディ。KANA-BOONをバンドシーンのど真ん中に導いた2曲(どちらも2014年のリリース)はまったく輝きを失うことなく、2022年のロックチューンとして機能していた。そして、「自由の灯を掴め」というメッセージが突き刺さる「Torch of Liberty」でライブは早くも最初のピークへ。重厚感とスピード感を兼ね備えた小泉のドラム、アグレッシブ&キャッチーな古賀隼斗(G)のギター、しなやかなメロディセンスで楽曲を支える遠藤昌巳(B)のベースラインによるアンサンブルも絶好調。遠藤が正式加入して半年以上が経ち、現在のKANA-BOONは圧倒的にチューンナップされていた。
「テナーブーンです。新しく名前付けてもらってうれしいなあ」(谷口)
「(ストレイテナーの)ライブ、めちゃくちゃよかった」(古賀)
と、ストレイテナーとの対バンにテンション上がりまくりの4人。「マーシー(遠藤)がストレイテナーのメンバーに山登りに誘われた」という話から、「足腰がしっかりしてないといけないから。今からみんなで、足腰しっかりするダンスナンバーをお届けします(笑)」(谷口)と「Dance to beat」につなげる。最新アルバム『Honey & Darling』に収録されたこの曲は、鮮烈かつダイナミックなギターリフ、心地よいヘビィネスと疾走感を同時に感じさせるビートを軸にしたロックナンバー。さらにKANA-BOON流のファンクネスがうねる「talking」(サイケデリックな雰囲気のライティングもカッコいい)へ。このバンドが持つ奥深い音楽性を体感できる場面が続いた。
ここで谷口が、ストレイテナーとのなれそめについて語りはじめた。高校生のときにストレイテナーを知り、夢中になって曲を聴いていたこと。ストレイテナーの世代のバンドに影響を受けて、自分たちの曲作りやサウンドのスタイルが出来ていること。今は後輩のバンドから「KANA-BOONを聴いてバンドをはじめました」と言われることが増えたこと。
「受け継がれる意志みたいなものを歌った曲があるから、久しぶりにやろうと思います」と紹介されたのは「バトンロード」。濃密な感情が込めれた「未来を君と追い抜いて 見たいのさ この目で新章を」というラインは、10代の頃から憧れ、影響を受けてきたバンドと正面からぶつかり合えることの意味と直結していた。さらに「あんたたちの後輩はこんなにカッコいいんだぞってところを見せたいよね」という言葉から「まっさら」へ。すべての音と言葉に全身全霊で感情を込める演奏は、まさに力強さ全開。特に「だんだん遠くなってく 君を追いかけていく」を叫ぶように歌う谷口の姿には強く心を揺さぶられてしまった。
そして、個人的にこの日のライブでもっとも心に残ったのは「きらりらり」だった。TVアニメ『BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS』オープニングテーマとして制作された新曲(CDシングルは11月2日リリース)だ。ドラマティックな楽曲展開、緻密なアレンジとダイナミックな手触りを共存させた演奏は、明らかにKANA-BOONの新機軸。この日の1曲目に演奏した「シルエット」(アニメ『NARUTO -ナルト- 疾風伝』オープニングテーマ)の「大事にしたいもの持って大人になるんだ」と「きらりらり」の「大事にしたいものを持って 大人になれたよ」のつながりをライブの現場で体感できたことも大きな収穫だった。
「まだ盛り上がり足りないですか?」(谷口)と「ないものねだり」へ。間奏で観客のハンドクラップに合わせてサビのメロディを歌い上げ、気持ちいい一体感を生み出す。未来への希望をストレートに歌った「ネリネ」(マーシーのランニング・ベースが最高)によって本編は終了。
観客の手拍子に呼び戻されたメンバー4人は、再びストレイテナーへの思いを話し始めた。
「今日はシンペイさんに魂もらったんで、いいドラムが叩けたと思います」(小泉)、「高校の軽音部で、俺と、こいちゃん(小泉)、後輩のベースと3人でストレイテナーの曲をやったことがあって。恐れ多くも、やってみようと思います」(谷口)とストレイテナーの「TRAIN」をカバー。瑞々しさと熱さに溢れた演奏は、まるで10代の男子のよう(鮪くん、「楽しい、みんなもやりいよ、バンド」と叫んでました)。KANA-BOONのルーツの一端を実感できる貴重なカバーだった。
最後は、アルバム『Honey & Darling』収録の「スターマーカー」。ポジティブなパワーをたっぷり含んだメロディ、「最低な夜を抜けて 目と目 耳と声 繋ぐダンスフロアで 踊ろう さぁ夜が明けるまで」という歌詞、そして、フロアを照らし出すミラーボールの光は、この日の対バンライブの素晴らしさを祝福しているようだった。
対バンツアーは10月24日の名古屋DIAMOND HALL公演(ゲスト:フレデリック)で終了。そしてこの日、2023年4月30日に大阪城音楽堂、5月14日に東京日比谷野外音楽堂で野外ワンマン KANA-BOON 10th Anniversary KICK OFF LIVE 「Sunny side up - Moon side up」を開催することがアナウンスされた。2023年はメジャーデビュー10周年。初の野音ワンマンからはじまるアニバーサリーイヤーでKANA-BOONは、ロックバンドとしての魅力、楽しさ、凄みをさらに強く証明してくれるはずだ。
写真◎AZUSA TAKADA
文◎森朋之
提供◎Artist Commons
<KANA-BOON Jack in tour 2022>
1.シルエット
2.フルドライブ
3.Torch of Liberty
4.Dance to beat
5.talking
6.バトンロード
7.まっさら
8.きらりらり
9.ないものねだり
10.ネリネ
EC.TRAIN
EC.スターマーカー
◆KANA-BOONオフィシャルサイト
この記事の関連情報
ポルカドットスティングレイ、対バンツアー<ポルカVS>東京追加公演にKANA-BOON
ストレイテナー、12thアルバム『The Ordinary Road』詳細が明らかに
『連続ドラマW ゴールデンカムイ』各アーティスト担当回&楽曲名決定。コメント到着
ストレイテナー、12thアルバム先行シングル「COME and GO」MV公開
ストレイテナー、12thアルバム『The Ordinary Road』を10月発売+先行シングルリリースも
【レポート】FLOW主催アニソンロックフェス、ぴあアリーナMM 2DAYSにレアコラボも「すべての歌が俺たちの誇りです」
KANA-BOONライブ活動再開、東阪ワンマンを5月開催「復活です!」
ストレイテナーのホリエアツシとフジファブリックの加藤慎一、国産木材の弦楽器を弾く「新しいものが芽生えた」
ストレイテナー、新曲「インビジブル」デジタルリリース+武道館ライブ映像作品も発売