ブラジルを代表するピアニスト/作編曲家“ハファエル・マルチニ”、新作『Martelo』リリース
現代ブラジルが誇るマエストロとなりつつあるハファエル・マルチニが、長年構想してきたプロジェクトが本作『Martelo』だ。
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楽曲はいずれも自作曲(一部共作含む)で確固たるコンセプトに基づいている。例えばタイトル曲「Martelo」は、アルツハイマーが進行した自身の母との経験から生まれたもの。反復、拡張と伸縮、記憶の消去や構築といったテーマから作られた、テクスチャーとリズムの万華鏡のような楽曲だ。
演奏するのはアコースティック/エレクトリック混成の異形ともいえるセクステットである。メンバーはハファエル・マルチニ(ピアノ/シンセサイザー)以下、ジョアナ・ケイロス(クラリネット/バス・クラリネット)、ルカ・ミラノヴィック(ヴァイオリン)、フェリペ・ジョゼ(チェロ)、アントニオ・ロウレイロ(ドラムス)、ペドロ・ドゥランエス(エレクトロニクス)といったミナスを代表する俊英ばかり。とりわけ本作の共同プロデューサーでもあり、クリストフ・シルヴァの傑作『Deriva』(2013)なども手掛けた電子音楽家ペドロ・ドゥランエスの存在は、これまでのマルチニ作品になかったエッセンスを随所にもたらしている。と同時にエレクトロニック・ミュージック的なテクスチャーをニュアンス豊かなドラミングで表現することができるアントニオ・ロウレイロの参加も、本作のキーポイントと言えるだろう。
録音はヴィンテージ・シンセから最新機材まで、膨大なコレクションを誇るブラジルのスタジオ「New Doors Vintage Keys」にて敢行。本作の構想自体は少なくとも2017年にはある程度出来上がっていたようだから、そこから5年という歳月をかけて、じっくりと形にしていったことがうかがえる。マルチニが夢想し追い求めた、あらゆる音楽をのみこむ緊密にして奔放なアンサンブルは、ここに結実。現実と非現実をスリリングに行き来しつつリスナーを深遠な体験へと導く、至極の5曲と言えよう。
『Martelo』
Think! Records THCD597 2,970円(税込)
■Tracklist
1. Martelo
2. Passagem
3. Nascente Afluente Vazante
4. Se um viajante numa noite de inverno
5. À escuta
*パーソネル: Rafael Martini (piano and synthesizer), Joana Queiroz (clarinet and clarone), Luka Milanovic (violin), Felipe José (cello), Pedro Durães (electronics) and Antonio Loureiro (drums)
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