【コラム】4年ぶりの開催迫る＜朝霧JAM＞、出演アーティストの見どころ

日本屈指のキャンプ・イン・フェス＜It's a beautiful day Camp in 朝霧JAM '22＞が、2022年10月8日（土）～ 9日（日）に富士山麓 朝霧アリーナ・ふもとっぱらにて遂に4年ぶりに開催されることが発表されたのは、2022年2月23日の「富士山の日」。2001年よりスタートした朝霧JAMは、シンボルであるこの富士山を臨む大自然の中で寝食しながら多彩な音楽を味わえるという夢のような空間だ。残念ながら、2019年は台風の接近に伴う悪天候により開催中止、2020年および2021年は新型コロナウイルスの影響により開催は見送りに。しかし、2022年の開催へ希望をつなぐべく、2022年1月に富士宮市民文化会館にて開催された朝霧JAMのプレイベント＜KEEP ON ASAGIRI JAMMIN'＞には、折坂悠太、ハナレグミ、中納良恵といった豪華アーティストが集結し、朝霧JAMの存在感を改めて知らしめていたように思う。


同じくSMASHが主催するフジロックの打ち上げとしても位置付けられながら、そばに設けられる大小2つのステージを行き来するゆるやかなタイム感も含めて、本家よりも好きという根強いファンも多い朝霧JAM。本稿では、いよいよ開催まで1ヶ月を切った待望の朝霧JAM'22に出演するアーティストをピックアップしていく。



初日10月8日（土）。今年7月、フジロックの場内で恒例の朝霧JAM第一弾出演者発表が掲示された際に、その名前を見つけて歓喜した人も多かっただろうアーティストがスピリチュアライズド。3年ぶりの新作『Everything Was Beautiful』を引っ提げた待望の来日だが、大自然に囲まれた朝霧JAMで浴びる轟音サイケデリアは予想を斜め行く体験になるので見逃せない。日本からは、そのパンキッシュなパフォーマンスがフェスやイベントでも爪痕を残しており日本武道館2days公演も発表したばかりのカネコアヤノや、フジロックでもお馴染み、ポップなサイケロックで会場に変幻自在に白昼夢を出現させるTempalayが出演。君島大空の繊細でオルタナティブな音楽世界にも浸りたい。自然に囲まれたある種神秘的なムードに、彼の音楽はとてもよく映えるはずだ。「いとうせいこう is the poet with 満島ひかり」は、今年のフジロックの「Gypsy Avalon」で異彩を放ったダブポエトリーのユニット。鋭敏ないとうせいこうの言葉と凛とした満島ひかりの歌声、そしてサックスとトランペットも擁する鮮やかなバンドサウンドに、是非くらっていただきたい。その一方で、開放感あふれるあの空気の中でドリンク片手に気持ちよく揺れたいのがYogee New Waves、YONA YONA WEEKENDERSのステージだ。








フランク・オーシャンの楽曲プロデュースワークで知られるロンドン出身のプロデューサー／DJ／グラフィックデザイナーであるヴィーガン、フランスのガスコーニュ地方を拠点とするベテランのロック・ブルースデュオでありながら有機農業を営むプロの農家であるジ・インスペクター・クルーゾ、さらには公式音源リリース前の＜FUJI ROCK FESTIVAL'19＞にて初ライブを披露したのを皮切りにシンパを増やし続けているTHE ALEXX、富士山の麓富士宮市に根付く創作和太鼓団体「本門寺重須孝行太鼓保存会」など、1日目から見どころ満載。音が鳴り止む夜はゆったりとキャンプを味わう朝霧JAMにおいては、それまで存分に多種多様なアクトのステージを楽しもう。





2日目の10月9日（日）には、年内でコンサート活動を終了する加山雄三が、最後の野外フェス出演として朝霧に登場するというビッグニュースが舞い込んできた。海を愛した若大将は静岡県とも縁のあることから、朝霧JAMが20周年を迎えるはずだった2020年より出演依頼を続けてきたという。4年ぶりに開催される朝霧JAMにて、若大将の姿を目に焼き付けよう。一方この日は、STUTS（BAND SET）、Daichi Yamamotoといったヒップホップシーンを軸に活躍している面々が登場。今年のフジロックではCreativeDrugStoreとして登場し、RED MARQUEEを沸かせたBIM&VaVaのパフォーマンスにも注目している。さらに、羊文学、yonawo、never young beachといった日本の音楽シーンでセンスが光る若手バンド勢のステージも一挙に体験できる。その一方で、ベーシスト/作曲家/サウンド・プロデューサーである池田憲一のプロジェクトROOT SOULは絶対に見ておいたほうがいい。ブーツィー・コリンズからも賛辞を寄せられた実力の持ち主で、今回は4ピースのジャズ・ファンク・セットで登場する。neco眠るのステージに身を任せて踊り倒すのも、今年の朝霧JAMの最高の過ごし方のひとつだ。










世界の音楽を届ける朝霧JAMらしいのが、ブラック・ルーツ・ミュージックの伝道師ファンタスティック・ネグリートだろう。魂のステージに期待したい。前回の来日公演で大成功を収めたというボヘミアンベティヤーズも気になって仕方がない。ハンガリー人特有の喜怒哀楽を表現したスピードフォークフリークパンクバンドというプロフィールの所以を、この目で確かめる。シンガーソングライターであり、ドラム、ギター、キーボード、マンドリン、ハーモニカなどの楽器を操るイングランド出身19歳のアルフィー・テンプルマンもチェックして青田買いしよう。


今年も、まさに“JAM”の名にふさわしい色とりどりのラインナップである。4年ぶりに開催される音楽の楽園を堪能しよう。

文：堺 涼子