【インタビュー】Uz:ME、様々なボーダーを越えた異色ユニットが提示する独自の世界観
▲(写真左から) Patrik Leonheart、田中理恵、Simon Andante
声優の田中理恵が、スウェーデンで活動していたロックミュージシャンのPatrik LeonheartとSimon Andanteの2人と結成したインターナショナル・コラボ・ユニットUz:ME(ウズメ)。今年1月に結成を発表すると、2月にはヘヴィで強烈なギターサウンドで構築されたデビューシングル「SEARCHLIGHT」を、8月にはクールでメランコリックなエレクトロサウンドを押し出したダンスナンバー「ナマエモナイカンジョウ」をリリース。田中の歌声を軸に、まったく異なったサウンド/世界観を持つ楽曲を打ち出してきた。しかしそもそもの話、日本の声優とスウェーデンのロックミュージシャンという、様々なボーダーを越えた異色ユニットは、どうやって結成されたのか。その経緯や楽曲制作にまつわる様々なことまで、3人にじっくりと話を聞いた。
■天鈿女命(アメノウズメノミコト)は芸術の女神なんです
■歌って踊る神様の名前はぴったりだし縁起よく上がっていける
──まずはUz:MEというユニットが始まった経緯を教えていただきたいです。
田中理恵(以下、田中):以前から海外で開催されている声優やアニメーションのイベントに興味があったんです。毎年台湾や中国のイベントに呼ばれていたりしたんですが、ヨーロッパのイベントにも行きたいなと思って、いろいろ調べていたんですね。そのときにPatrikさんが、そういったイベントに詳しかったり、日本のゲームやアニメーションが好きだったりということで、相互フォローをしたんです。それで、もしコロナが終わったらよろしくお願いしますというお話をしていたんですが、何年経ってもコロナが終わらず(苦笑)。ただ、そういうやり取りをしていたときに、「実は自分達は音楽をやっています」という話も聞き、色々とお二人の音楽経歴を調べていたらお二人がSEIKEさんという方とバンド(SPŒKE)をやっていらっしゃるというのを知りました!
Patrik Leonheart(以下、Patrik):はい。そうです。
田中:それとはまた別で女性のボーカリストも探していて、「曲があるので、もしよかったら歌ってもらえませんか?」というお話をいただいたんです。実際に曲を聴かせてもらったら、歌えそう!と思って。それで、事務所に相談したら「あ、いいですよー」って(笑)。
▲田中理恵
──どうぞどうぞと(笑)。
田中:はい。ただ、スウェーデンと日本なので、どうやってやります?ということになり、じゃあコロナが落ち着くまではリモートでやっていきましょうと。
──コロナのことが始まってから連絡を取り合うようになったんですか?
田中:そうですね。どちらの国に行き来するのも難しい状況でしたし、その状況も数ヶ月ごとに変わるので、逐一お互いの国の状況を教え合っていました。ただ、1stシングルの「SEARHLIGHT」を出すときに、MVも作りたかったんです。そのときは、日本とスウェーデンそれぞれで撮った映像を、Simonさんに合成してもらって。
Simon Andante(以下、Simon):はい(笑)。
田中:コロナ禍だからこその収録の仕方だったので、実際に2人にお会いするまで、すごく不思議な感覚はありましたね。その後、スウェーデンのほうが先に入国制限が緩和されて、2ndシングルの「ナマエモナイカンジョウ」のMVは、スウェーデンに行って撮ってきました。
──なるほど。でも、びっくりしませんでした? 海外の方から「歌ってもらえませんか?」と言われたときに。
田中:いや、私はチャンスがあれば何でもやりたい人なので(笑)。元々、私は音楽でデビューしたんです。そこからは声優としてのキャラクターソングだったり、田中理恵クレジットでCDも出させていただいたりして。音楽もすごく好きですし、歌うことも好きだったので、また歌が歌える!って思いました。しかも私のために曲を作ってくださるので、すごい!やりたい!となりました!だから「ちょっと待っていてください!社長を説得しますから!」と話しました(笑)。
Patrik:逆に、私達のほうが「歌ってくれるんだ!」って思いました(笑)。
Simon:はい(笑)。
田中:えっ!? お願いしてきたのに!?(笑)
──でも確かに「本当にいいんですか!?」って思いますよね?
Patrik:そうですね(笑)。その通りです。レジェンドの声優さんなので、びっくりしました。「本当に歌ってくれるんだ!」って。
──そうなりますよね(笑)。PatrikさんとSimonさんは、スウェーデンで音楽活動をされていたと。
Patrik:はい。私達は10年以上ぐらいヴィジュアル系っぽいバンド(BatAAr)で活動していて。ワールドツアーもしていて、日本でもたまにライヴをしていました。そのバンドが2019年に解散してからは、ひとつのバンドだけではなく、複数のプロジェクトを一緒にやろうという話をしていて。そこからスウェーデンで活動をしていたんですが、日本人の女性ボーカルのプロジェクトもやりたいという話をしていたときに、田中さんと偶然知り合ったんです。自分達の音楽は、田中さんの声とぴったりかもしれないと思ってオファーしました。
▲Patrik Leonheart
──なるほど。Patrikさんは日本のどんなところに魅力を感じたんですか?
Patrik:私の場合は、子供の頃から「ポケモン」とか「ファイナルファンタジー」とかで育ったので、そのときからずっと日本に興味があって。2012年ぐらいに初めて日本に来て、想像以上に良い国だなと思って(笑)。そのときにいつか必ず住もうって決めました。
Simon:そこは私も同じでした。毎年1ヶ月ぐらい、日本に来て、旅行していました。
Patrik:そうですね。バンドでツアーをしにきたり、ただの旅行で来たり。本当は前のバンドが解散してから、すぐに日本に引っ越そうと思っていたんです。でも、その後にコロナの問題が出てきて、予定が2年以上延期になってしまって。
──今は日本に住まれているんですよね。
Patrik:はい。4ヶ月前に引っ越してきました。
▲Simon Andante
──Simonさんは日本のどんなところが好きです?
Simon:音楽やカルチャー以外でも、料理とか、街並みの賑やかな感じがすごく好きです。スウェーデンは人が少ないんですよ。日本は人が多くてすごく賑やかですね。
──日本で暮らしていると、スウェーデンっていいなって思っちゃいますけど。
田中:MV撮影でスウェーデンに行ってきましたけど、あのときって何℃でしたっけ?
Patrik:3℃ぐらいでしたね。
田中:すごく寒かったんですよ。弾丸で行ってきたので観光はできなかったんですけど、すごく広かったです。道路も広いし、ご飯を食べるところも広くて。あと、アンティークな建物が立ち並んでいて、歩くだけで「絵画……!?」みたいな(笑)。でも、本当に一瞬しかいなかったので、夢を見てるのかな……っていう感覚でした。
──田中さんとしては、PatrikさんとSimonさんの印象ってどんな感じだったんです?
田中:最初にリモートで話していたときは、怖いイメージだったんですよ(笑)。
Simon:ははははははは(笑)。
Patrik:すみませんでした……(笑)。
田中:お2人ともヴィジュアル系バンドさんなので、全体的にクールなイメージでした。自分自身がこの世界観に馴染めるか最初はドキドキしていましたが、MV撮影のときに、Simonさんが演出をする際にいろいろ教えてくださったり、「いいね!」って言ってくださったりしてからは、「大丈夫!頑張って素敵なものを作っていこう」という気持ちになりました!日本にいらっしゃってからは何回かご飯に行ったり、あとはライヴも御一緒したので、だいぶ慣れてきました!
──お2人としては田中さんの印象はいかがでした?
Simon:最初から優しそうな方だなと思いましたし、お会いしたときに本当に優しいなと思いました。
Patrik:あと、すごくプロフェッショナルな印象がありました。田中さんがMV撮影でスウェーデンに来たときも、こういうふうにできますか?とお願いしたときに、こちらが望んでいた通りにやってくださいましたし、あの寒さに耐えて頑張っていただけて。
田中:3℃で、薄着で、外で、しかも雨が降ったんですよ! 「これは死ぬかも……」と思いながら撮っていて、「もう一回やりましょう!」って言われて、「ひぃぃぃーー!!」みたいな(笑)。でも、その寒さを顔には出したらいけないので。
Patrik:そうですよね。顔に出ていなかったので、本当にすごいし、プロフェッショナルだなと思いました。
──そちらの映像もぜひ観ていただきつつ、Uz:MEという名前はどういうところから付けられたんですか?
田中:この名前は、日本の神様の「天鈿女命」(アメノウズメノミコト)から取りました。日本にちなんだバンド名にしたいとおっしゃっていたので、いい名前はないか調べていたときに、神様っていいかもと思って。天鈿女命は芸術の女神なんです。私達も音楽をやるので、歌って踊る神様の名前はぴったりだし、神様だから験担ぎにもなるし、縁起よく上がっていけるようにという願いも込めて、ウズメってどう?って。
Patrik:あと、私とSimonさんは、昔から自分達のプロジェクトを変わったスペルにすることが多くて。そこにこだわっているので、今回もウズメをUz:MEにして。
田中:最初は「読めない」って言われるんですよ。「これでウズメって読むの!?」って(笑)。
──でも、すごくインパクトがありますよね。
田中:はい。すごく素敵なデザインで、私も気に入っています。
Simon:ありがとうございます。
Patrik:Simonさんは、ロゴデザインだけじゃなくて、バンドのヴィジュアルも、MVの編集も、ジャケットのアートワークもすべてやっていますね。そのやり方が、自分達の伝えたい世界観を一番伝えやすいと思うので。できる限りはいつもこの2人で世界観を作りたいと思っています。
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