【速レポ】<JOIN ALIVE 2022>The Birthday、よけいな言葉は必要ない「楽しんで帰れよ」
第1回目を含め、過去に何度も出演しているThe Birthdayのメンバー達にとって、<JOIN ALIVE>は、わざわざ北海道まで遠征することを考えても、それなりに思い入れのあるフェスなんじゃないかと想像する。
◆The Birthday ライブ写真
しかも今回は、出演が決まっていながら開催が中止になってしまった2020年のリベンジなんて言うこともできるわけだから、“ひょっとしたら”と何を期待していいのかわからないまま“何か”に期待しながらVELVET CIRCUSまで足を運んだのだが、ご存じ、寡黙なメンバー達はそんなことにはこれっぽっちも言及せずに(と言うか、そんなことは端っから考えていないのかもしれないが)、アンプが発するフィードバックノイズからチバユウスケ(Vo,G)とフジイケンジ(G)が轟音のリフを鳴らしたガレージロックナンバー「12月2日」から、いつも通りハードボイルドでクールな佇まいの中に熱情を秘めた演奏を繰り広げ、観客を酔わせていった。
因みにこの日、ライブ中にメンバーが言葉を発したのは、クハラカズユキ(Dr)の「見事に晴れましたね。それなのに我々はサーカス小屋です(笑)」とそれに応えたチバユウスケの「工場みたいでおもしろい」、それと最後の最後にチバが言った「楽しんで帰れよ」の三言のみ。
しかし、曲に宿らせた哀愁が観客の気持ちをぐっと掴んだ「ある朝」、グルービーな演奏と“お前の想像力が現実をひっくり返すんだ”と刺激的な言葉を投げかけるチバのスポークンワードを組み合わせた「月光」、そしてブルースハープを奏でるチバをはじめ、メンバー全員が回すソロを含め、長尺のインプロビゼーションを繰り広げ、曲を膨らませたジャジーでロカビリーでブルージーな「Red Eye」とそれぞれに趣向を凝らした曲の数々を楽しませているんだから、よけいな言葉なんて必要あるかいということをメンバー自身が一番わかっているのだろう。
演奏そのもので勝負するバンドという意味では、チバ以外のメンバー達のプレイも聴きどころだ。時にタイトに、時にダイナミックにバンドの屋台骨を支えるチバの長年の盟友、クハラのプレイは言うまでもなく、グルービーなヒライのベース、攻撃的なトーンで鳴るフジイのギターにもライブを見ながら耳を傾けずにいられなかった。特に歪みよりもむしろアーミングやエフェクターを駆使して、音色に揺らぎを加えるフリーキーでサイケデリックなプレイの存在感は唯一無二のフロントマンであるチバに肉薄するほど。轟音のコードをかき鳴らしながらチョーキングでフレーズをゆがめる「12月2日」のイントロのプレイにはいきなり気持ちを持って行かれた。
ある意味実験的とも言える曲を、集中力のある演奏で立て続けに聴かせた前半戦から一転、前述したMCを挟んでからの後半戦は、バラードの「ヘッドライト」、アンセミックともキャッチーとも言えるロックナンバー「ブラックバードカタルシス」を繋げ、The Birthdayが持っている、いわゆる歌ものの魅力も楽しませ、曲の振り幅をアピール。もちろん、観客が手を振りながら受け止めたその2曲でもチバの歌の裏でフジイのギターはフリーキーに鳴っていたのだが、「ブラックバードカタルシス」のシューゲイズなソロはこの日のベストプレイと言ってもいいほどのかっこよさだった。
取材・文◎山口智男
撮影◎柴田恵理
<JOIN ALIVE 2022>
時間:開場 9:00 / 開演 11:00 / 終演 20:30予定 ※雨天決行
会場:北海道・いわみざわ公園〈野外音楽堂キタオン&北海道グリーンランド遊園地〉(北海道岩見沢市志文町794番地)
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