【ライブレポート】Kenta Dedachiが醸し出した、とても密度の濃い音楽のエナジー
無限の可能性を持って未来へはばたく、フレッシュなアーティストのライブを体験する喜びは何にも代えられない。8月17日、渋谷WWW X、Kenta Dedachiのワンマンライブ「Set off Jam」。メジャーファーストアルバム『Midnight Sun』のリリースにともなう東京と大阪のツアーの初日、フロアを埋めた観客と音楽関係者の数が期待値の高さを物語る。それはアメリカのコンテンポラリーポップスとJ-POPとをナチュラルに融合させる若き才能・Kenta Dedachiの新たなset off=出発を記念する特別な夜。
1曲目、アルバム『Midnight Sun』のオープニングを飾る荘厳なアカペラコーラスを、完璧な音程で再現する歌唱力に息を呑む。一転して「楽しむ準備はできてますか!」と少年のような笑顔でフロアに呼び掛ける、自然体の姿に頬が緩む。ベースにRenato Iwai、ギターにElias Thiago、キーボードに大樋祐大(SANABAGUN.)という凄腕揃いの日米ブラジル混合バンドは、トラックと生楽器を組み合わせて実に心地よいグルーヴを生み出す。ピリッとした緊張感とふわっとした浮遊感との絶妙なバランス、Kentaのエアリーなボイスとの相性は抜群だ。照明が、あやしくかっこよくムードを盛り上げ、歌と演奏をどれだけまっすぐ聴かせるか、シンプルだが効果的な演出。
KentaとRenatoが、アルバムの制作裏話を楽しげにしゃべってる。Renatoの皆を幸せにする笑顔と、シンセベースを含むベーステクニックの凄さはKenta Dedachiのサウンドには欠かせない。ここから数曲はアコースティックブロックで、KentaとThiagoがアコースティックギター2本で歌ったり、Kentaと大樋祐大のピアノでしっとりと聴かせたり。ThiagoもRenatoに負けない笑顔とテクニックのナイスガイで、大樋もいかつい体に似合わぬ柔らかな物腰と繊細で叙情的なプレーで、Kentaミュージックの一番柔らかくてメロディアスな部分をしっとりと伝えてくれる。素敵なバンドに支えられ、Kentaも実に伸び伸び歌ってる。アコースティックギター1本でのエモーショナルな歌唱は、Sacredと表現したいほどに深いヴァイブスを持って心に沁み入る。
ライブ中盤では、アルバム収録曲「Better days」に参加したシンガーソングライター/ギタリストのMichael Kanekoを招き入れ、フレンドリーでピースフルなスペシャルセッションが聴けた。洋楽カバーあり、Michaelの自作曲からKentaが選んだ曲のデュエットあり。Michaelの朴訥であたたかみあるボイスと、Kentaの丁寧にコントロールされた歌声と、たたずまいの異なる声がここにしかないひとつのハーモニーを奏でる。ふたりの音楽家のリスペクトが生み出した、これが音楽の楽しさ、素晴らしさ。
終盤の盛り上がりタイムではKentaの盟友であるプロデューサー・KOSEN (Colorful Mannings) もバンドに加わり、さらにビートが強化され、オーディエンスのダンスやクラップの動きがどんどん大きくなる。「Beau」ではハンドマイクを握ったKentaがステージ狭しと飛び跳ねたり踊ったり、アクティブな動きでフロアをさらに熱くする。リズミックなEDMサウンドのキャッチーなドロップに、いやがうえにも身体が動く。Kenta Dedachiのライブはたぶん、あなたの想像よりもアクティブでダイナミックなものだ。百聞は一見に如かず。
アンコール。リラックスした表情で戻って来たKentaが、ひとりで鍵盤を弾きながら「Where We Started」を歌ってくれた。『Midnight Sun』完全生産限定盤のみに収録された曲だが、こうしたパーソナルで美しい曲がアルバム以外にもまだまだあり、それを聴けるのもライブの楽しみのひとつ。そして最後はバンド全員が一体となり、あふれんばかりの幸せな空気の中でのフィナーレ。ライブパフォーマーとしてのKentaは、荘厳なアカペラからエモーショナルな激しい歌唱まで、しっとり静かな弾き語りから笑顔で飛び跳ねるマイクアクションまで、実に多彩な表情を見せてくれる。あとに残るのは、この先1週間はあたたかい気持ちでいられると思えるような、とても密度の濃い音楽のエナジー。
「Set off」は送り出す、出発する、新しいことを始めるという意味で、それはこれからアメリカの大学に復学するKenta自身の思いでもあり、「このライブをきっかけにみなさんの中で何かがSet offできればという願いを込めて」とKentaは言った。23日の大阪公演を終えると、KentaはLAに戻る。そして数か月後、大学を卒業した彼は再び日本に帰ってきてくれる。それぞれのSet offの思いを胸に、幸せの余韻がいつまでも頬を緩ませてくれるような素敵な時間だった。
文◎宮本英夫
『Midnight Sun』
2CD (Disc1 + Bonus Disc)完全生産限定盤
ESCL 5428~9 \5,500 (税込)
1.Midnight Sun
2.New Beginning
3.Sparkling Lemonade
4.Tattooed Hollywood
5.Fire and Gold
6.Better days
7.Green Eyed Monster
8.Beau
9.Strawberry Psycho
10.Jasmine
11.Stay with me
12.Dandy Lion
13.Rewind
Bonus Disc
1.Strawberry Psycho (Eng.Ver.)
2.Stay with me (Eng.Ver.)
3.Fire and Gold (Eng.Ver.)
4.Beau (Eng.Ver.)
5.Sparkling Lemonade (Eng.Ver.)
6.New Beginning (Eng.Ver.)
7.more feat. DedachiKenta & FUNTYME - AmPm
8.Unbreakable - FAITH × DedachiKenta
9.Walking In The Rain (Alright)
10.No Other Way feat. DedachiKenta & Sincere - The Burning Deadwoods
11.Jasmine (Jpn Ver.)
12.アイ・キャン・オンリー・イマジン feat.小坂忠
13.Where We Started (Acapella Ver.)
< メジャー1st AL『Midnight Sun』リリース記念ワンマンライブ"Set off Jam">
東京 WWW X
OPEN 18:00 / START 19:00
Guest : Michael Kaneko
¥4,500(税込) ※整理番号付
2022年8月23(火)
大阪 umeda TRAD
OPEN 18:00 / START 19:00
Guest : Michael Kaneko
¥4,500(税込) ※整理番号付
◆Kenta Dedachiオフィシャルサイト
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