【使用レポ】ライブやフェスのお供に、頼りになるライブ用イヤープラグ AZLA POM1000

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手洗い・うがい・マスク着用など、未だ新型コロナウイルスへの対策の必要性が問われる昨今ではあるものの、アーティストのツアー開催やフェス・ライブシーンといったライブカルチャーは少しずつ息を吹き返し、活況を取り戻している状況にある。天候による中止や出演アーティストの変更など思わぬアクシデントはあるものの、それも含めて2022年は全国的に夏フェスの狼煙が上がる素晴らしい年になっているのは間違いない。音楽好きにとってライブシーンは、明日への活力と希望を生む最高のご褒美だ。

音楽は聴覚で感じるものだが、鼓膜で知覚できる周波数特性…つまり20Hz~20KHzの可聴域以外の音域も音楽を楽しむには重要だとする研究報告がある。こと耳で聞こえないような高周波は、体表面(皮膚)から情報を受容し、直接脳幹への刺激として送られているという文献もある。極端な重低域などは、振動として身体で感じていることは多くの人が経験していることだろう。音を「浴びるように聞く」とはよく言ったもので、五感を超える身体全体で音を浴びる楽しさと喜びこそ、ライブ文化の醍醐味の真髄でもある。

だがしかし、そんな音楽の楽園だからこそ注意も必要だ。激しい紫外線から身を守るべくUVカットを身につけるように、音の感受性には個人差がある。爆音環境に身をおいた時、アーティストが望むサウンドバランスを崩さぬままに、音量を下げたほうがいい場合もあるだろう。眩しいときにサングラスを掛けるように、音が痛いときに重宝するのがイヤープラグの存在だ。

イヤープラグとは、要は耳栓である。「音楽を聴く際に耳栓だなんてどんなギャグなの」と言われるが、ここで紹介するAZLA POM1000などは、静寂性を求める遮音が目的ではない。音楽を楽しむに欠かせない周波数バランス=音質を損なうことなく音量だけを下げるサウンド・アッテネーターと言うべき音量減衰アイテムとして設計されており、いわばミュージックラバー必携のアイテムとなっているのだ。会場に響くサウンドをスポイルすることなく楽しむためのアイテムで、耳に多くの負荷をかけキーンと耳鳴りしてしまう状態よりも、むしろ正しく音楽を楽しむことができるアイテムとなる。


市場には様々なイヤープラグが販売されているが、AZLA POM1000が持つアドバンテージのひとつは、最高のサウンドと最善のフィット感を生み出すハイエンド・イヤーピースで世を牽引してきたAZLAが、その技術と確かな知見をもって設計したという点だ。音楽を高品質に楽しむことを一意とする思想の企業が、音をアッテネートするツールを本気で開発したというだけで、心躍るじゃないか。コンセプトは「ライブ等の大音量下での聴力保護を目的としつつも、聴こえてくる音質を犠牲にしない」というもの。

POM1000はボディを回すことで、密閉と開放という2つのモードが切り替えできる。自然な音量カットを実現するオープンモード(開放)に対し、クローズドモード(密閉)はよりタイトに音量を下げる。前者はクラシックや映画鑑賞などダイナミックレンジも大きいコンサートホールなどの環境に最適なチューニングで、後者はロック~ポップス系の激しく強めな音響下で本領を発揮する設計のようだ。終わった後に耳がキーンとしてしまうような環境であれば、クローズドモードが威力を発揮する。

筐体を回すことでモードを変更できる。左(○)がオープン、右(|)がクローズドの状態。

同梱されている説明書

ライブハウスで実際に使用してみたが、基本的にオープンの設定で使うのが良さそうだ。そもそも高い静寂性を誇るAZLAのイヤーチップなので、基本環境が低デシベルな世界のため、耳の感度は研ぎ澄まされており、脳内は音楽でたっぷりと満たされる。芳醇なニュアンスと十分なダイナミックレンジが保たれているので、迫力や興奮も失われずライブそのものに没入できる。

AZLAイヤーチップの使用感の良さこそ、他のイヤープラグの追従を許さないところだろう。圧迫感なしに完璧にフィットしてくれるため、耳につけていることを忘れさせてくれる。ここ、重要なポイント。最適なフィット感を得るため、大小計6種類のイヤーチップも同梱されているので、自分の耳孔の大きさに合わせてセレクトすれば、誰もがストレスフリーな環境を手に入れられることだろう。

医療用シリコン採用のイヤーピースSednaEarfit MAX(S/M/L)(左)と、体温で軟化してフィットするTPE採用イヤーピースSednaEarfit XELASTEC(SS/MS/ML)(右)が付属する。

仕事上、ライブやフェスなど爆音環境に身を置くことも多いため、私自身は積極的に耳栓を使用してきた。数百円のものから数万円に至るものまで様々な耳栓があり、いずれも音楽の質感を損なわないように創意工夫が施されてきているが、POM1000は後発組だけあって、遮音性・音質・フィット感・使用感・メンテナンス性…あらゆる面で極めて高い完成度を見せている。使い心地と効果は高基準で、質感も高い。キャリングポーチや携帯用アルミケースなど付属品も過不足なく充実しているが、何よりイヤープラグストラップの用意が秀逸だ。

このストラップ、実際使用するユーザーの現場をよくわかってくれているなあと感嘆ひとしきりで、この気遣いが何より嬉しい。うっかり落としてしまうと、絶望的な気持ちになるからね。暗いライブ会場ではついに見つからず、野外フェス会場などでは泥や砂まみれになったり、生い茂った草の陰で見失うという耳栓あるあるを未然に防いでくれる。

このように付属ストラップをつけておけば、うっかり落とすことを未然に防げる。

私がこれまで使用してきた数々の耳栓。他にも暗い会場で落として無くしたものもあったけど…

まだまだ続く夏フェス。そして回復しつつあるライブシーンだが、イヤープラグは映画館でもテーマパークのアトラクションでも、そして通勤・通学などの普段の生活の中においても、その威力を発揮するシーンは意外にも多岐にわたっている。普段の生活から聴覚を守る意識を持つことは、音楽好きに限らなくも非常に大事な心がけなのだ。

※騒音性難聴のメカニズム

蝸牛の中に長さの異なったたくさんの有毛細胞が並んで立っており、それぞれが各周波数を担当している。有毛細胞にとって大きな音は強い刺激で、刺激を与え続けると疲労ししおれるように倒れてしまう。若いうちは休むことで回復し再び立ち上がるが、それも程度問題で、倒れたまま復帰しないとその周波数音域帯だけが聞こえなくなる。これが騒音性難聴の発症プロセスである。

騒音性難聴は、音量のみならず負荷時間で危険性が変わる。さほど大きくなくてもさらされる時間が長ければ危険度は大きくなる。80dB(走行中の電車内の騒音レベル)であれば40時間以内/週に押さえることがWHOで推奨されているが、98dBもの音量となると75分/週を超えると危険域に入る。98dbはガード下の電車音や地下鉄の構内と言われているレベルだが、大声でも会話が難しいこういった環境は、ライブ会場やクラブなどでは日常的だったりもする。ライブハウスのPAスピーカーの真正面などは、聴覚細胞が拳銃を突きつけられているような待ったなしの状況だ。120dBという大音量となると7分が限界だ。騒音性難聴は4KHzと6KHzからダメージを受ける事が多く、その後3KHzから2KHzへと聞こえない領域が広がっていく。騒音性難聴にかぎらず経年経過による老人性難聴の場合も、いっぺんに全域の有毛細胞がダメになるものではないため、特定周波数が聞こえなくなっている事実に気付きにくいという特徴がある。「何か聞こえにくくなったな…」と自覚が出るころには、多大なダメージが蔓延した「時すでに遅し」状態となっている。

また、「耳へのケアの難しさ」もある。真っ暗でも時間が経つと「眼が慣れてきて」周りがぼんやりと見えてくるのは、脳の働きによって視覚のダイナミックレンジが変更される暗順応だが、音でも同様の現象として「大きな音がそのうち大きいと感じなくなる」現象が起きてしまう。その状態だと音楽に迫力が感じられず、もっと音量を上げるというスパイラルに入り、いつしか「聴覚細胞を傷つけてしまうほどの大音量にさらされていることに気付かない」状況になる。コンサートでも後半につれて音量がどんどんと上がっていっているが、多くの観客はそれに気づいていない。

この問題の解決策はシンプルで「耳を休ませる」だけでいい。音楽を止め、10分でいいから休憩を取る。耳の感度をリセットし、遮音性の高いイヤホン/ヘッドホンを用意すれば、とても小さな音量で、音楽の持つ豊潤な情報量を受け取ることができる。聴覚の感度を上げ自らのダイナミックレンジが大きく広がれば、小さな音量でも存分に音楽を堪能することができ、「大音量こそ醍醐味」という心地よさを小音量で実現できる。日常においても大きな音量から耳を守ることを意識し、自らの環境をできるだけ静かなものにすることこそ、騒音性難聴に対し最も有効な防衛手段となる。

文◎烏丸哲也(JMN統括編集長)

AZLA POM1000

2022年8月19日(金)発売
希望小売価格:6,580円(税込)
・エアホール設計によるクローズドモードとオープンモードの切り替えが可能な特許機構搭載(3)
・高い遮音性と自然な音量減衰を両立、ライブの音質を可能な限り落とさない設計
・イヤーピース付け替え方式採用、ユーザーの好みに合わせた自由なフィッティングが可能
・医療用シリコン採用イヤーピースSednaEarfit MAX(S/M/L)付属(5)
・体温で軟化してフィットするTPE採用イヤーピースSednaEarfit XELASTEC(SS/MS/ML)付属(4)
・充実の付属品、イヤープラグストラップ(2)、携帯用アルミケース(1)、キャリングポーチ付属(6)

◆POM1000オフィシャルサイト
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