【ライブレポート】lyrical school、現体制最後の日比谷野外大音楽堂ライブで最新・最強のパフォーマンスが炸裂
5人組のHIP HOPアイドルユニットlyrical schoolが、7月24日、東京・日比谷野外大音楽堂で<lyrical school tour 2022“L.S.”>のファイナル公演を行った。hime、hinako、risano、yuuの4名がリリスクを卒業するということで、この日は現体制最後のライブ。5人がずっと目標にしてきた日比谷野外大音楽堂のステージで5年分の感謝を伝えるとともに、最後にして最新・最強のパフォーマンスを炸裂させた。
蝉が鳴き真夏の日差しが照りつける会場のあちこちで見かけた、新旧さまざまなツアーTシャツ。それぞれの思い出とともに全国から集まったヘッズ(リリスクファンの呼称)の背中が、語りきれないリリスクへの愛を表しているようでなんだかグッとくる。だけど、4人が卒業し、minanは新メンバーを募集して活動を続けるというニュースが発表された時の驚きや困惑を乗り越えた人も、消化しきれないままの人も、もっと言うと最新アルバム『L.S.』で初めてリリスクを知ってやって来た人も、こんな最高のロケーションで5人のパフォーマンスが見られるのだからワクワクしないはずがない。
気温に負けないような熱気が立ち込める会場に最新作のオープニングを飾った「R.S.」が鳴り響き、歓声ともに湧き上がった拍手の中、5人は「夏休みのBABY」を歌いながら登場した。5年前の夏、この5人体制になって初めてリリースした曲が5年後の野音を心地よく揺らしているなんて、5人にはこの景色がどんな風に見えているのだろう。ステップを踏んだり、それぞれの場所から客席に向かって手を振ったりしている5人の表情はとにかく楽しそうで、感傷的なムードは皆無だ。
「日比谷野音、待たせたね!」(hime)
「目標にしてた野音にやっと来れました!」(risano)
「今日はめちゃくちゃいい時間を過ごしましょう!」(minan)
流れを止めることなく今の気持ちを挟みながら、客席に飛び込まんばかりの勢いで「YABAINATSU」や「Pakara!」など夏気分を盛り上げるアッパーなサマーチューンを連発。その後は「LALALA」「ユメミテル」などメロディーの美しさが光る楽曲が並び、「Bring the noise」「LOVE TOGETHER RAP」とキャッチーかつポップなゾーンへ。
「愛してるぞー!」yuu
「5年間ありがとう!最高の1日にしましょう!」(hinako)
ダンスフロアと化した客席は文句なしの盛り上がりを見せ、前半ブロックの締め括りとなる「LAST DANCE」へ。歌詞の一節に合わせてrisanoが見事なムーンウォークを披露するなど見所もたっぷりだったが、いつか終わるからこそ今夜を楽しもうと歌われるこの曲はさすがに堪えきれなかったヘッズも多かったのだろう。himeが「そんなに泣かないで」としゃがみ込んで声をかける場面もあった。
“少しさみしくなるけどまた会えたらいいね それじゃまたね”
ステージの真ん中でギュッと肩を寄せ合った5人は笑顔で最後のフレーズを歌い、前半戦を終えた。
休憩を挟んで始まった次のブロックは、メンバーカラーがテーマだった衣装からお揃いの黒いワークシャツに着替えて登場。“次の一万円札の絵柄はアタシ”というフレーズにかけてこれまでもさまざまな仕掛けで楽しませてくれた「Fantasy」は、今回hinakoの顔が印刷されたどでかい1万円札がステージに運び込まれ大爆笑に(笑)。「次の一万円札の絵柄はアタシだー!OK!?」というhinakoのフリで曲は「OK!」へ。時間は足りない、死ぬまで生きてく、それで毎日は続く。さらりと核心を付く言葉に何度もハッとさせられて来たこの曲の最後、「一番盛り上がるのはどのパーティ?」は次の曲「パジャマパーティー」へと繋がり、5人で肩を組んだり、risanoが寝転んで歌ったりしていてやんちゃな可愛らしさも全開だ。
「FIVE SHOOTERS」から「Tokyo Burning」ではエモーショナルな歌詞と歌声に胸が熱くなり、シューゲイザー的な轟音が野音の空気を震わせた「Find me!」から「TIME MACHINE」では野外ならではの音響の迫力にも浸ることが出来た。軽快な鍵盤の音色から始まる「大人になっても」では、“ありがとう それから さよなら 何もかも これから まだこれから”という歌いだしの部分でhinakoとrisanoが自然と握手を交わしている。客席に向かって言葉を手渡すように、またいつかの自分自身に語りかけるように、曲の世界観を5人5様の表現で届けていたのが印象的だった。大人になっても、十何年後も、わたしはわたし。未来を見据える力強いフレーズを歌い終えると客席からは拍手と歓声が沸き起こり、その景色を嬉しそうに見つめている5人は、同じく前向きに未来を捉える「つれてってよ」で中盤のブロックを締め括った。
いよいよ最後となるブロック。ステージにはなぜかminan、hime、risano、yuuだけで、最新作のタイトルチューンでもある「L.S.」のパフォーマンスが4人で進んでいく。が、曲が後半に差し掛かったところで「急遽声をかけた友人」だというチアリーダー役の2人を引き連れ、この日のために作ったアイドル全開の衣装をまとってhinakoが登場。これぞアイドル!というキュートなパフォーマンスで会場を魅了した。その次に披露されたのが「Bounce」という流れからしても、これがリリスクならではの、というかリリスクにしか出来ない見せ方で、いわゆる狙った演出ではなく、むしろ納得しかない自然なパフォーマンスなのだからすごいとしか言いようがない。
risanoのパワフルなラップから「オレンジ」へ、そして配信EPとして初音源化されることが発表された人気曲「Summer Trip」。夕暮れの時間帯にもぴったりだったこの2曲には、新たな選択をした5人だけでなく、ここからまたそれぞれの日々に戻って行くみんなのことも優しく包み込むような空気が生まれていた。
ここで、この日唯一となるMCの時間が設けられていたのだが、しょっぱなから歌詞を飛ばしたことや、尋常じゃない汗が涙の分の水分も奪っていること、hinakoの衣装や一万円札についてなどの話がわちゃわちゃと繰り広げられている(笑)。そんな中でhinakoは「何も知らずに入ったリリスクがこんなに楽しくて、こんなに幸せにしてもらえる場所だとは思ってなかった。一人ひとりの笑顔を見てると、アイドル続けてよかったなと思う。苦しいこともあったけど、皆さんの笑顔に癒されました。ありがとうございました」と挨拶。
そのまま良い雰囲気になるのかと思いきや、「何か面白いこと言って」とhinakoがrisanoに無茶振り(笑)。risanoは(小島よしおの)「そんなの関係ねえ!」を全力で披露したのだが、なんだかんだで結局「5年間ずっとつまんない人だったよね」「貫いたね」とメンバーから一斉にいじられることとなり、ちょっとだけシリアスなムードに行くかと思われた会場の空気はどこかホッとしたような笑いに包まれていった。
とは言え、この5人でのリリスクのライブは今日が最後。「言い残したことはない?」と切り出したyuuは「今回のツアー中、私が一番泣いてる。でも今日は泣かないぞという気持ちでやってるの!それもみんなのおかげ。こんなにたくさんの方が集まってくれた。うちらこの景色を見たかったんだよね?後ろまで埋まってる野音で、この5人でやることが夢だった。この景色を見せてくれたみんなが笑わせてくれている。本当にありがとうございます!最後まで楽しもうね、みんな!」と笑顔で感謝を伝える。エゴサが大好きだというrisanoが「今日が終わると寂しいから、見終わらないなっていうくらいコメントを残してくれると本当に嬉しい!ずっと見ていたいから!」と呼びかけると、他のメンバーからも口々に同意の声が上がっていた。
ここからは、いよいよラストとなる4曲。前方でマイクを持つ2人以外のメンバーがハグし合う場面も見られた「Wings」。サビのメロディーを歌うminanの声がひときわ切なく響いた「NIGHT FLIGHT」。今夜もみんなのスマホの明かりがステージを照らした「The Light」。
そしてこの5人で歌う最後の曲「LAST SCENE」が始まると、野音の客席全体がメンバーカラーの5色に染まるというサプライズ!前方から後方へ、虹のように彩られた景色を前に感極まったhinakoとyuuをminanが抱き締めている。himeとrisanoは、ステージに寄せられる愛を全て受け止めるかのような表情だ。声が震えても、涙が流れても、5人全員が心をひとつにしてマイクを握っている。最後の最後はDJの音も止まり、5人だけのアカペラ。“愛とかピース”の歌詞に合わせてピースサインを高く掲げ、会場をひとしきり見渡した後に5人は、鳴り止まない拍手と歓声を全身で記憶するかのように深々と頭を下げていた。
汗と涙が入り混じったかのようなキラキラの笑顔で「以上、lyrical schoolでした!ありがとうございました!」と声を揃えて胸を張り、口々に感謝の言葉を伝えながらステージを去った5人。事前の予告でアンコールはないと分かってはいたが、何度アナウンスが入っても、ステージでの撤収作業が始まっても、しばらくアンコールを求める拍手は鳴り止まなかった。
愛すべきヘッズに向け「これからもminanちゃん率いるリリスクのこと、よろしくお願いします!」(hinako)という言葉をバトンのように託し、“クランクアップ”を迎えた現体制でのlyrical school。最後に作り上げたアルバム『L.S.』が素晴らしかっただけに、もうこの5人によるライブバージョンが聴けないのかと思うと正直残念だ。でも、“すべてがラストシーン みたいなもんさ つづく暮らし Don't stop 音楽”。hime、hinako、risano、yuuは新たな未来へと歩き始め、minanを中心とする第3期lyrical schoolもメンバーの募集がスタートするなど、それぞれの物語はすでに新しい景色を描き始めている。少し寂しいけど「みんな期待してて!」、そんな声が聞こえて来そうなファイナル公演だった。
取材・文:山田邦子
photo by 沼田学
リリース情報
2022年4月20日(水)発売
VICL-65696
■収録曲
1. ?R.S.-
2. L.S.
3. Bounce
4. Pakara!
5. ユメミテル
6. LALALA
7. バス停で
8.The Light
9. Find me!
10. Wings
11. NIGHT FLIGHT
12. LAST SCENE
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