【インタビュー】Suspended 4th、走攻守揃った1stフルアルバムに死角なし「生のライブではなにかが起こる」
■フィジカルとロジカルを兼ね備えているのは
■Washiyamaがジャズの手法を持っているから
──もうひとつ言えば、「ストラトキャスター・シーサイド '22」の音源ではベースをダビングして2本鳴らしていませんか?
Fukuda:えっ!? 気づきました?
Washiyama:そこに気付いてくれると嬉しいな。しかも、クリックなしで弾いたソロに「もう1本ダビングしてくれ」とオーダーしたんですよ。Suspended 4thはレコーディングとかミックスのエンジニアを僕が担当しているので、よくムチャぶりするんですけど、そのときのFukudaくんはちょっと嫌そうだった(笑)。
Fukuda:ははは。ノンクリックでソロを弾いた後に、Washiyamaから「全く同じように弾ける?」と言われたんです。「無理です」と答えたんだけど、「じゃあ、いこうか!」と録ることになり。途中まではわりと完璧に弾けているけど、後半から崩れてグチャグチャになっていくんですよね。
──でも、その感じがいいんです。
Fukuda:そうなんですよ。その生々しさがいいし、グチャグチャが飽和したところで“♪デケデケ デケデケ”と入ってくるのがカッコいい。
▲Kazuki Washiyama (G, Vo)
▲Seiya Sawada (G)
Washiyama:その場で思いついたことだけど、すごくいい感じに仕上がってよかった。僕の中で特に印象的な曲は「BIGHEAD (Rev.2)」。既存曲ですけど、エンジニアリング的にも、ギターサウンド的にも挑戦できたかなと思う。ギターはエフェクターとか全部かけ録りして、3回弾いたバッキングを3本全部鳴らしているという。だから、バッキングは3回とも一発録り、ドラムとベースもほぼ一発録り。そこにSawadaさんにアディショナルしてもらうというか、「なにかアイディアがあったら入れてください」みたいな録り方でした。
Sawada:で、ギターで“ふりかけ”をのせたみたいな感じ(笑)。
Washiyama:でも、そのふりかけが相当いい仕事をしている。
──同感です。皆さんが挙げてくださった曲以外にも注目曲は多いんですよ。たとえば、ロマンチックなインストナンバーの「Venetzia」やDennisさん作詞作曲でボーカルも務める「Tell Them」などはアルバムのいいアクセントになっています。
Washiyama:まず「Venetzia」は3年くらい前に作ったから、これも結構昔からある曲ですね。テーマメロディーのイメージがイタリアのヴェネチアっぽかったので、「Venetzia」というタイトルにしました。この曲は完全に僕の趣味です。
──風景が思い浮かぶような曲ですよね。
Dennis:そう、Washiyamaさんはこういう曲を好むイメージがありますね。僕はジャンゴ・ラインハルトがめちゃくちゃ好きなので、「Venetzia」みたいな曲も大好きです。
Fukuda:僕はこういう系統の曲も好きだけど、自分が一番やりたい音楽かと言えばそうではないので、いい機会をもらって便乗したという感じかも。
Sawada:僕もそうかな。「Venetzia」のような路線も好きですけど、自分のボキャブラリーの中にはないので、こういう曲を作れるWashiyamaをリスペクトします。Washiyamaはジャズの学校に通っていたことがあるんですよ。Suspended 4thがフィジカルな部分とロジカルな部分を兼ね備えているのは、彼がそういう一面を持っているからで。
Washiyama:たとえば「Betty」は、ゆったりした6/8拍子で始まって、いきなりサンバノリのサビに変わるじゃないですか。それも、ジャズではよくある手法というか。3拍子から16ノリにスイングするメトリックモジュレーションはよく使われるんです。そういうジャズの様式をポップスに入れてみたのが「Betty」ですね。
──「Betty」の頭の展開は本当に驚きました。ジャズの手法を巧みに採り入れることも、それを違和感なく演奏できることも。
Washiyama:メンバー全員に対して、めちゃめちゃ有り難いと思っているんですよ。「Betty」で言えば、ウォーキングベースを弾いてもらってるんですけど、全部の音を僕が指定したフレーズで。
Fukuda:そもそも僕の中にウォーキングベースの引き出しがないから、全く馴染みのない運指だったんですよ。だから、もう歯を食いしばりながら弾いたウォーキングベースです、これは。
Dennis:それでも、苦労して弾いてるように聴こえないところがいいよね。
▲Hiromu Fukuda (B)
▲Dennis Lwabu (Dr)
──Dennisさん作詞作曲でボーカルを取られた「Tell Them」も、実にスマートなナンバーです。
Dennis:僕の曲を1曲入れてくださるという流れになったんですけど、アルバム収録曲のトータルバランス的にバラードという感じではないなと思って。ミドルテンポの箸休め的な感じになったらいいなというところから曲作りをスタートしました。スケール感の大きさも意識しましたね。スタジアムバンドの曲でうわっ!ってなる感じがあるじゃないですか。売れてる売れてないにかかわらず。その感じを出したかったんです。
──そう思ったときに、いわゆるスタジアムロック的なシンガロングではなく、ゴスペルの壮大さを持ってくるというところがセンスいいですね。
Dennis:ありがとうございます。
──それに、サビのゴスペルコーラスの後ろで鳴っているコード進行が絶妙です。
Washiyama:いわゆる3度抜きですよね。3度の音を抜きつつ途中でギターがマイナーの音にいったり。アディショナルしているコードトーンも、その上でいろいろやっている。でも、Dennisは全部感覚でやっているんだよね?
Dennis:そう。僕自身はなにが起きているのか、理論は全然わかってない(笑)。
Washiyama:彼が面白いのは音楽理論のことはなにも知らないけど、こういう曲がつくれるところなんです。
──Washiyamaさん自身、Dennisさんが歌うことに対してはどのような考えを? 抵抗とかはないんですよね。
Washiyama:むしろDennisが歌うところを見せたくて、僕が提案したんですよ。Dennisの歌はかなりソウルフルですよね。Suspended 4thにはそういう匂いも薄くあって、ソウルとかR&Bとかが好きな人も聴いてくれている。そこにDennisの歌があれば、よりソウルやR&Bに濃い人たちがSuspended 4thをディープに支持してくれるんじゃないかなと思ったんです。
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