【鼎談】花村想太&Lil' Fang&梶原岳人、アーティト/シンガーとしてのそれぞれの在り方
■この曲が作品にピッタリ合う理由がわかった気がする(梶原岳人)
──そんな制作の裏側があったのですね。今回、お二人で制作をされてお互いにどんな印象を持たれましたか?
花村:でき上がってきた歌詞が印象的でしたね。力強い歌詞の中に2割くらい弱さがあるんです。弱さがあるから8割の強さで覆い隠しているのかな、性格的にもそんな感じなのかなって思いました。僕は割と強気な人間ですが、1割くらい弱さがあるのでそこは近しいな、と。マイナスの部分を上手く隠しつつ作れたらいいなと思って、一緒に書き直しました。
Lil' Fang:たしかにそれはありましたね。1番では葛藤部分や後ろ向きな部分を書いて、2番では思いっきり戦うけどどう切り抜けていこうっていう部分を書いて、それを想太さんがいいバランスに整えてくださいました。というのも、最初にデモを聴いた時にすごく武蔵っぽさを感じたんです。
梶原:あ、それ、わかります。
Lil' Fang:ですよね。で、私は(鐘巻)小次郎に共感しているので、小次郎の目線で書けないかなって思って書きました。
──梶原さんは「Break it down」を聴いてどう感じられましたか?
梶原:最初聴き終わった時、思わず「すげぇ」って声が出ちゃって。アーティストとして歌に人生をかけて、その曲にとてつもない思いを込めて制作されている方のパワーを感じました。
花村・Lil' Fang:いやいやいや(照)。
梶原:今、お話を聞いていて感じたこともあります。僕が演じている尼子勝巳もそうですが、キャラクターたちには弱さを自覚しているからこその強さみたいなものがあるんですよね。なので、先程の強さと弱さの部分なんかは色んなキャラクターに通ずるなって。作品を演じている側からすると、この曲が作品にピッタリ合う理由がわかった気がします。
Lil' Fang:嬉しいです!
梶原:あと、お二人ともパワーがえげつない。どうやって歌ってるのか純粋に気になりました。声を当てるポジションや声帯のお話なんかも、個人的にすごく研究したい部分なので。
花村:地声強めのミックスボイスで、このハイトーンを当て続けるって難しくて。でも、曲を聴かせていただくと梶原さんもできそうですけどね。
梶原:そうですかね。それに花村さんって普通に喋ってる声って全然低いじゃないですか。なのに、なんであんなに突き抜けるような音が出るのかっていう。僕、声優として声を使う仕事をしていますが、気持ちを表現する時にフィジカルの面で苦労することがすごく多いんです。
花村:あぁ、なるほど。声優さんもどこに声を当てて、どう喋るかってありますよね。高い声のキャラクターはこの辺りに当ててみよう、みたいな。そう考えると、お芝居と歌ってすごく似てますよね。
梶原:それは思いました。曲を作るときって、感情的な部分で変わったりもされるんですか? 例えば、歌いながらメロディを変えたりとか。
花村:全然ありますよ。むしろ歌詞ができた時に、再度メロディラインを精査します。僕の場合は歌詞優先。この歌詞がいいって思ったら、それにハマるようにメロディラインを変えることも多いです。
梶原:自分たちでイチから作れるからこそ、どこまでも高められるんですね。そこはむちゃくちゃ羨ましいです。
──梶原さんの「色違いの糸束」は、オープニングの「Break it down」と全く違った雰囲気の楽曲ですよね。
花村:めちゃくちゃ綺麗な声! それに、声優さんだから歌詞が聞き取りやすい。
Lil' Fang:それは私も思いました。
梶原:そういう聴き方もあるのかぁ。
花村:言葉の立て方、母音の入れ方、子音の挟み方が丁寧で、言葉一つひとつが独立してますよね。なので、「何て歌ってるんだろう」って思うことがないというか。まさに「歌詞カードいらず」!
梶原:ありがとうございます。でも、僕はどっちの良さもあると思っているんです。聴こえないなら聴こえないなりに、一体どういう意味なんだろうって想像してみたり、聞き手が意味を補完したりして、改めて歌詞カードを見た時に「こういうことを言っていたんだ」って発見できるのも面白いなって。なので、どっちもやれるようになりたいと思っています。
Lil' Fang:なるほど。
梶原:僕、結構もがいているかもしれません。声優として演じる時は綺麗に言葉が聴こえることも時には大切になるときもありますが、結局人間が普通に喋る時って、感情で話して何を言っているかわからないときもあるじゃないですか。そういうのが出せたほうがリアルでいいのかなって思ったりもします。
花村・Lil' Fang:はぁー! たしかに。
──「色違いの糸束」は、どんな思いで歌われたんですか?
梶原:『オリエント』の世界観で言うと、人には魂の色というのがあって、その色がそれぞれ違うんですよね。例えば、武士団の中でも対立があったり、前線に立つ人、中継ぎ、支える人という役割分担があったり。第2クールでは心情的な部分で対立もあったりします。それを主人公の武蔵の発言や行動で一つにまとめてくれる。色違いの魂を武蔵の不思議なパワーでまとめ上げるという部分を、歌で表せたらと思って歌いました。
Lil' Fang:それをアウトプットするにはどんなテクニックを使って歌われるんですか?
梶原:僕、役を演じる時の心情と歌う時の心情が同じであってほしいんです。なので、感情で変わるメロディがたくさんあった方がいいって思っていて。今回は、アフレコ現場に入って見た景色や空気感を歌に変換する気持ちで歌いました。実際にお話したり、掛け合いをして出てきたものを直に見るっていうのが、ある意味テクニックなのかもしれません。
──梶原さんの綺麗な歌声や歌詞と、バンドサウンドの組み合わせも印象的です。
梶原:僕の歌だけでは力強いものを出しにくいと思っていて、なので力強さを添えてくれるバンドサウンドがいいかなって。僕自身がネガティブなんですよね。結構歌ってパーソナルな部分が関わってきませんか?
花村:だいぶ関わってきますよね。僕なんかは自己啓発系の曲ばっかり書きますよ。でも私生活のタイミングによっては全然そういうのが書けなくて暗い曲ばっかりになることもありますし、ワクワクしてたら恋愛の曲がいっぱい書けちゃう。パーソナルな部分もそうですけど、気分にもめちゃくちゃ左右されます。今はね、まっっったく曲が書けないんですよ(笑)。
梶原:そうなんですか!?
花村:頑張って書いてはいるんですけどね。いつもだったら締切の5日前くらいにできあがるんです。3日あろうもんなら、5曲くらい提出する。けど、今は締切が迫っている3つのうち、やっと1つ終わったっていう。ギリギリの戦いをしていて、期限がやばいやつを2つ放置しています(笑)。
梶原:僕も役者なので、マイクの前では自分の気持ちなんて関係ない!ってやらなきゃいけないんですけど、やっぱり片隅にネガティブな気持ちがあったりしますし。現場に入るまでも悩みながら行くときもありますし。
花村:でも、そういうのって大切ですよね。生きている証拠ですから。それでいうと、歌ってめっちゃ面白いですよ。車で渋滞している時ってイライラするじゃないですか。
梶原:しますね〜。
花村:そのイライラした状態でリハーサルした時の声を聞くと面白い。自分では平常心を保っているはずなんですけど、イライラしていたからちょっと力強くなっているんです。ほんのちょっとの違いなんですけど。あと、凄くテンションが高い時に録るとピッチが高くなりやすい。音に当たりやすいけど天井超えちゃうとか。音楽は特に左右されるのかもしれません。
梶原:へぇ、そういうのがあるんですね。でも、わかります。僕、自分の心をうまくコントロールできる方じゃないんです。
花村:一緒!
Lil' Fang:私、逆に曲に合わせて私生活変えるタイプです。
花村:うわー、しんど! じゃあ、リード曲がめちゃくちゃ失恋ソングとかだったら、終わってるってこと?
Lil' Fang:はい。もし付き合っている人がいたら、別れます。だからめっちゃしんどいです(笑)。逆に何もない時に超幸せのキュンキュンした曲を書かなきゃいけなかったら、必死でキュンキュンできる人を探します。
梶原:めっちゃすごいですね。面白い。
Lil' Fang:「Break it down」のときは、めちゃくちゃスポーツ見ました。高校サッカーの「最後のロッカールーム」とか。
花村:「大迫半端ないって!」のやつ?
Lil' Fang:そうそう。そういうのめっちゃ見ました。でも2〜3曲重なると訳がわからなくなるんですよね。
梶原:アプローチの仕方が役者っぽいです。僕は俄然感情に振り回されるタイプで、もっとシャキッとしろってよく言われます。レコーディングする時にフラットな状態だったらどっちにも寄せられるんですけど、どっちかに寄ってると逆方向にいけないっていう。
花村:じゃあ、ボイトレ向いていないかも。先生に言われた時に、その日の気分で「マジかよ……」って思うときもあれば、「先生の言うとおりにしよ♪」って思うときもあるから(笑)。
梶原:あはは! 自分次第なんですね。
Lil' Fang:めっちゃあるあるなんですけど! これ、私だけのわがままだと思って、今まで自分を責めてました(笑)。
花村:でもしょうがないですよね、人間ですから。
──では最後に、アーティトとしてお互いに抱いている印象をお伺いしたいです。
花村:梶原さんの歌は、職種が違うゆえに見える世界がありますよね。さっきも言った言葉の立て方、アクセント、日本語の綺麗さっていう部分がある中に、表現者特有の声のオーラたいなものがしっかり出ている方だなぁって。あとチェストの響きがすごく綺麗で、LOWにかかる下の成分がしっかり倍音で鳴っています。そういうところを僕も取り入れて、低いところも厚く出せる歌唱方法を試してみたいなと思いました。
Lil' Fang:私も言葉一つひとつが聴きやすいというのはすごく思っていて。だからこそ、1曲を聴き終わった時に本を1冊読んだような気持ちになるんですよね。始まりから結末まで心にしっかり落とし込める歌い方をされるなって。私、レコーディングする時に、自分が歌いたいように歌うのと、言葉を受け取ってもらいやすいように歌うのって違うなって悩むんです。それで言うと、梶原さんは受け取ってもらいやすい歌い方をされるので、すごく勉強になりました。
梶原:僕はお二人から学ぶことだらけです。自分は声優、役者をメインでやっている上でアーティスト活動をやらせていただいている状況なんですけど、同じ土俵に立っている以上、お二人に負けないようないい作品を作りたいなって刺激をもらいました。曲作りのお話やこだわりを聞いて「そんな視点があるんだ」って気付きましたし、今まで意識したことがなかったポイントもかなり見えたというか。改めて勉強しようという気持ちになりました。ありがとうございました!
取材・文◎高橋梓
花村想太 & Lil’ Fang「Break it down」
配信リンク:https://avex.lnk.to/breakitdown
リリックビデオ:https://youtu.be/NJELX1zr1k8
梶原岳人2ndシングル「色違いの糸束」
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01.色違いの糸束 ※TVアニメ「オリエント」EDテーマ
02.あの日が未来だった君へ
03.色違いの糸束-TV ver.-
04.色違いの糸束-Instrumental-
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01.色違いの糸束 ※TVアニメ「オリエント」EDテーマ
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05.あの日が未来だった君へ-Instrumental-
TVアニメ「オリエント」作品情報
TVアニメ「オリエント」第2クール淡路島激闘編2022年7月11日(月)より放送開始!
【テレビ東京】7月11日から毎週月曜25:30
【BSテレ東】7月14日から毎週木曜24:30
【AT-X】7月12日から毎週火曜23:00
※AT-X リピート放送:毎週木曜11:00/毎週月曜17:00
※放送日時は変更になる場合がございます
【配信】
第2クール淡路島激闘編がdTV・アニメタイムズ・Huluにて毎週月曜26:00~ 先行配信!
第1クール安芸旅立ち編も下記サイトにて配信中
■見放題配信
dTV
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【イントロダクション】
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武蔵と小次郎は“最強の武士団”結成の夢を誓い、鬼退治に挑む!
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“ネオ戦国”の世を舞台に繰り広げられる、王道バトルアクションが開幕‼
【第2クール淡路島激闘編 あらすじ】
淡路島激闘編、ここに開幕――!
鬼神の襲来により、人ではなく“鬼”が覇権を握る日ノ本。
“最強の武士団”結成を誓い、故郷を飛び出した武蔵と鐘巻小次郎は
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鬼を倒す唯一の武器である「鬼鉄刀」を手に入れ、夢への一歩を踏み出した。
そして播磨で、武蔵たちは上杉竜臣率いる大武士団「上杉武士団」と出会う。
彼らの目的は、淡路島を飲み込んだ巨大鬼神“砲戦竜八岐大蛇”の討伐。
そこには武田尚虎率いる「武田武士団」や
武蔵と同年代の武士である島津秋弘や尼子勝巳たち
どこか浮世離れした人見知りの姫・猿渡みちるの姿もあった。
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対する八岐大蛇は、“一度も傷ついたことがない”鉄壁の鬼神。
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苛烈を極めようとしていた――。
【STAFF】
原作:大高 忍(別冊少年マガジン連載/講談社)
監督:柳沢テツヤ
シリーズ構成:國澤真理子
キャラクターデザイン:岸田隆宏、松本文男
総作画監督:松本文男、崎本さゆり
アクション監修:須賀重行
プロップデザイン:きむらひでふみ
色彩設計:舩橋美香
美術設定:浅見由一
美術監督:坂上裕文
撮影監督:間中秀典
編集:山岸歩奈美(REAL-T)
音響監督:納谷僚介
音響制作:スタジオマウス
音楽:深澤秀行
アニメーション制作:A・C・G・T
製作:「オリエント」製作委員会
【CAST】
武蔵:内田雄馬
鐘巻小次郎:斉藤壮馬
服部つぐみ:高橋李依
猿渡みちる:安野希世乃
武田尚虎:日野聡
真田青志:石谷春貴
山本春雷:大西沙織
上杉竜臣:前野智昭
直江兼竜:花江夏樹
宇佐美黒子:日笠陽子
甘粕政紀:中島ヨシキ
島津秋弘:内山昂輝
尼子勝巳:梶原岳人
犬飼四郎:下野紘
犬川静六:新垣樽助
犬田八咫郎:杉田智和
鐘巻自斎:小西克幸
黒曜の女神:桑島法子
【第2クール淡路島激闘編 テーマ】
OPテーマ:花村想太 & Lil' Fang「Break it down」
EDテーマ:梶原岳人「色違いの糸束」
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