【ライブレポート】<Re:PHASE VOL.2>、Tani Yuuki、all at once、あたらよが札幌の開架スペースに集結

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Tani Yuuki、all at once、あたらよといった3組の新世代アーティストが札幌の夜を彩ったイベント<Mount Alive presents Re:PHASE VOL.2>が7月3日、北海道・EZOHUB SAPPOROにて開催された。同公演のレポートをお届けしたい。

◆<Re:PHASE VOL.2> 画像

<Mount Alive presents Re:PHASE>は、新型コロナウイルスの影響によりパフォーマンスを行う場が制限されてしまった若手アーティストを北海道に招聘し、活躍の場を広げることを目的としたイベントだ。2021年11月に初回スタート、今回で第二回目となる。会場となった札幌最大級のコワーキングスペースEZOHUB SAPPOROがライブステージとして使用されるのは今回が初。ステージとフラットに配置した座席に加え、書架も兼ねたベンチも客席に活用された場内には約150名が集まった。




▲あたらよ

トップバッターのあたらよは4ピースバンドだが、この日はひとみ(Vo&G)とまーしー(G)による2人体制での出演となる。あたたかい会場の拍手に迎えられた2人が1曲目に選んだのは「悲しいラブソング」。恋人と別れる際の葛藤や迷いといった心の機微を疾走感のあるサウンドにのせて響かせる。

本格的なライブを北海道で行うのは初だというあたらよは、「それに加えて、アコースティックでのライブも珍しいので、先ほどから足が震えています」(ひとみ)と程よい緊張感で初のステージに臨めていることを語った。そして、切なくも爽やかな「青を掬う」、別れた相手への怒りにも似た感情をぶつけた「ピアス」、ツインボーカルで夏の切ない情景を鮮やかに描いた「夏霞」などを披露。エモーショナルな歌声と、叙情的なギターサウンドが波紋を描くように場内に広がっていく。

「この曲をきっかけにあたらよを聴いてくださる方もたくさん増えました。私たちにとって大切な1曲です」と語り、ラストはミュージックビデオ再生回数が3600万回を突破している代表曲「10月無口な君を忘れる」で締めくくった。





▲all at once

続いて登場したのは、北海道出身のITSUKIと宮崎県出身のNARITOによるボーカルデュオall at onceだ。美しいアカペラのハーモニーから始まる「年をかさねて」で会場を柔らかく包み、高揚感に満ちた「Fanfare」でクラップを巻き起こし、ファンクナンバー「Take mo’Chance」で会場をカラフルに染め上げた。

デビューからの活動期間のほとんどをコロナ禍の中で過ごしてきたall at onceは、あたらよと同様、北海道ライブは今回が初。ITSUKIにとっては念願の凱旋ライブでもある。万感の思いを込めた「ただいま」に、会場からは「おかえり」の声が上がった。「北海道では8月が七夕なんだよ」とITSUKIが道民ならではの豆知識をNARITOに伝えつつ披露したのは、七夕を表す季語をタイトルにした「星合」。大切な人に会えなかったここ数年、誰もが経験したであろう切なさやもどかしさを織姫と彦星に重ねて歌い上げた。

さらなる盛り上がりを見せたのは、この日配信スタートを迎えた「RIVALS」だ。アニメ『シュート!Goal to the Future』エンディング主題歌として書き下ろされた同新曲は、切磋琢磨しながら自分を成長させてくれるライバルの存在を歌ったもの。ITSUKIは「夢を持っている人に届く曲なので、すべての人に聴いてもらいたい」と曲に託した思いを語った。フレンチポップ調でキャッチーな「マカロン」、躍動感あふれる「Mission to the moon」と磨き上げられた豊かな表現力とハーモニーで会場を魅了し続けたall at onceは、「コロナ禍の中でライブができず、音楽を続けられないんじゃないかと悩んだこともありました。今日、ライブができて本当に嬉しく思います」と喜びを言葉で表し、全身でこの瞬間を楽しむ2人は終始笑顔だった。ラストは伸びやかなハイトーンが美しい「蒼空」を響かせてステージを後にした。




▲Tani Yuuki

トリを飾るのは<Re:PHASE VOL.1>にも出演していたTani Yuukiだ。バンドメンバーが先にスタンドインし、カホンのリズムと共に始まったセッションとそれに呼応する会場内のハンドクラップの中、数時間前に札幌ドームで行われたファイターズ戦のスペシャルライブで着用したオリジナルユニフォームを羽織ってTani Yuukiが登場。湧き上がる歓声の中、そのままシームレスに1曲目「決別の唄」、リズミカルなポップナンバー「Unreachable love song」と曲をつないでいく。

札幌でのライブは前述の<Re:PHASE VOL.1>を含めて二度目だというTani Yuuki。「いつか札幌ドームでワンマンをやりたいです!」と誓いのMCを挟みながら、デビュー曲「Myra」をはじめ、「油性マジック」「愛言葉」など、豊かな語感と心地よいフロウといった表現の多彩さ、一音一音が心の深部へと響く繊細な歌声でオーディエンスの琴線に触れる。札幌ドームからライブをはしごしているファンもいて、客席とコミュニケーションを図りながら嬉しそうに目を細めるTani Yuukiは、不安や葛藤を抱えている人、夢を追いかけている人に向けた疾走感溢れるロックナンバーで会場を大いに沸かせた。

「自分を縛り付けていたものから解き放ってくれた大切な1曲です」との言葉を添えて、TikTokでの総再生回数6億超のシングル「W/X/Y」でライブは幕を閉じるも、会場からは当然アンコールが沸き起こった。「じゃぁ、やりますか!」と笑顔のTani Yuukiは、アコースティックギターをキーボードに変え、繊細で美しい旋律とともに、世代を超えて響く応援ソング「自分自信」を披露。あたたかな拍手と歓声の中、<Re:PHASE vol.2>は充実のエンディングを迎えた。


コロナ禍により、あたり前があたり前ではなくなってしまったこの時代。多くの表現の場が失われていった中でも、TikTokをはじめ様々な手段で楽曲を披露し、ひたむきに歩み続けてきた未来を担う新世代アーティストたち。彼らの進む道に、力強い光が差し込むのを確かに感じた夜だった。

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