【プロミュージシャンのスペシャル楽器が見たい】Gacharic Spin TOMO-ZO、ガムテでガチガチに固めたPRS blue crab blue
■PRS blue crab blueは反応も良いし繊細なニュアンスも出してくれる
■ボディのフィット感も良いしネックも握りやすいので気に入っています
――(笑)。Gacharic Spinの楽器隊にFukiさんがボーカルで加わったDOLL$BOXX(略称はドル箱)が2012年から始動しましたが、これも当時のTOMO-ZOさんにとって新鮮な経験だったんじゃないですか?
TOMO-ZO:はい。楽曲を作る上でラウド系の音楽を聴いたりもしましたし、ソロやフレーズのバリエーションがそこで一気に増えました。それも今に繋がっていますね。
――ドル箱は、PRS Custom 24 blue crab blueを弾いているイメージが強いです。
TOMO-ZO:あのギターは、ドル箱がきっかけで使うようになったんです。使ってみたらすごく良くて、それでGacharic Spinでも弾くようになったんですよね。
――blue crab blueは、生音も良いんですよね?
TOMO-ZO:はい。すごく鳴ってくれる感じも良いし、ボディのフィット感も良いし、ネックも握りやすいんです。Custom 24のorangeと較べても、こっちの方が弾きやすいです。
――PRSは、愛用しているギタリストがたくさんいますよね。
TOMO-ZO:そうですね。音の反応も良いですし、繊細なニュアンスにも反応してくれるというか。私もいろいろな面で気に入っています。
――blue crab blueのリアピックアップの下に貼ってあるテープも先ほど写真を撮らせていただきましたが、これについても語っていただけますか?
TOMO-ZO:はい。これは放電を抑えるためのシールなんです。「これを貼ったら弾きやすくなるから」ってエンジニアさんに言われて貼ってみたら、本当にそうだったんです。頑張って弦を押さえなくてもすごく反応するようになって、「こんなに違うんだ?」って、びっくりしました。もともとは車とかに使われるものらしいんですけど。音って、こういうことによってかなり変わるんですよね。
――Custom 24 orangeとblue crab blueの違いに関しては、どのようなことを感じていますか?
TOMO-ZO:orangeはblue crab blueと較べるとローミッド寄りの音色です。ドロップDチューニングにして、ハード目な楽曲で使うことが多いです。
――ヘヴィな音を出すには7弦ギターを使う選択肢もありますが、興味はあります?
TOMO-ZO:ちょっと興味ありますね。やっぱり音の厚みという部分では7弦ギターには勝てないというのがあるので。身体的にも私に弾きこなせるのかはわからないですけど。
――KOGAさんも最初は少し戸惑ったみたいですけど、4弦ベースから5弦ベースになりましたし、案外使いこなせるようになるかもしれないですよ。
TOMO-ZO:たしかにそうですね。7弦を使うと、作る曲の幅も広がるかもしれないですし。Mary's BloodのサポートをしていたYASHIROちゃんも7弦をバリバリに弾いているので、もしかしたら私もいけるかもしれないです。
――7弦ギターをLEDで光らせたりしたら、ものすごいでしょうね。Custom 24 orangeは昔、LEDでボディを縁取っていたじゃないですか。
TOMO-ZO:そうでしたね。今はLEDを外してしまったんですけど。
――blue crab blueを光らせなかったのは、何か理由があったんですか?
TOMO-ZO:blue crab blueはドル箱で使っていて、「クールなギターだ」っていうイメージがあったので、「orangeはガチャピンっぽく派手にしよう」っていうことになったんです。
――初めてLEDを光らせているのを観た時はびっくりしました。「Custom 24にこんなに罰当たりなことをする人は他にいない!」ってなりましたから。
TOMO-ZO:しかもガムテープですし……。
――ダブルで罰当たり……。
TOMO-ZO:次から次へと(笑)。あのLEDは、いつもお世話になっているESPの方に手伝っていただいてボディを縁取りました。
――ボディの裏側にそれ用の電池ボックスを付けて?
TOMO-ZO:はい。手作り感満載でした。
――こういう装飾とか小道具って、結構手作りをしてきましたよね?
TOMO-ZO:そうなんです。だからメンバー全員、はんだごてをよく使っていました。「やばい! LEDが壊れた!」って、私もよく直していましたから。ガールズバンドが黙々とはんだごてを使ってるって……冷静に考えるとすごい光景ですよね。
――音が出なくなって自分で直しているとかだったら、まだわからなくもないですけど、LEDは音と全く関係ないですからね。
TOMO-ZO:「そっちかい?」ってなりますよね(笑)。私は昔、衣装やアンプも光らせていたんです。LEDは結構いろいろなところで使っていました。
――最近のガチャピンはLED成分が減ってきたように思うのですが。
TOMO-ZO:硬派になってきたんです。でも、私はエイリアンを貫くという使命があるので、その辺もまた頑張っていきたいと思っています。
――TOMO-ZOさんの独自路線の象徴的存在といえば、オリジナルギターのT-LANDですね。ファンから募集したデザイン画をもとにして、ESPギタークラフトアカデミーの学生さんに作っていただいたんでしたっけ?
TOMO-ZO:そうです。「このデザインは実際にできるのだろうか?」と一緒に相談しながら作っていただきました。
――ボディのデザインはかなりぶっ飛んでいますけど、これ、実はランダムスターが土台になっていますよね?
TOMO-ZO:そうなんです。キャンディが入る箱があったり、アイスクリームが光ったりとか、小ネタは盛り込んでいるんですけど。
――このギターに関しては、「人を舐めくさったギター」っていう表現がいつも出てきちゃうんですが……。
TOMO-ZO:たしかにその通りなのかも(笑)。
――海外公演でもこのギターを弾いたことがありますよね?
TOMO-ZO:はい。海外にも持っていけるように、専用のハードケースを作りました。
――エレキギターとしては、すごくしっかりしているんですよね。かなりハードなサウンドが出ますし。
TOMO-ZO:そうなんです。ピックアップはダンカンで、攻撃的な尖った音が出るので、ギャップ萌えのギターですね。フロイドローズも付いていますし。
――TOMO-ZOさんが使っているギターの中で一番メタル寄りなのかも。
TOMO-ZO:この見た目ですけど、実はそうなんですよね。
――フロイドローズは、弦の張替えが大変ですよね?
TOMO-ZO:そうなんですよ。最初、全然上手くできなくて苦労しました。
――弦を張り替える時、ブリッジが下がらないようにボディとの間に何を挟んでいます?
TOMO-ZO:クロスを挟んでいます。弦を張り替えるのは慣れが必要ですけど、フロイドローズは使っている時の安心感が大きいです。派手なアーミングにはもってこいなので。
――T-LANDは、じっくり眺めるといろいろ面白いんですよね。ペグがピンクのハートみたいですし。
TOMO-ZO:ポジションマークがキャンディで、蟻が食べに来ていたりとか。これを作った学生さん、相当大変だったと思います。LEDもすごいんですよ。ガチャピンの初期の頃にはまだなかった新しいタイプのLEDが光るようになっています。
――ざっくり言うと、無駄な要素が多いギター?
TOMO-ZO:その通りだと思います(笑)。「どんだけ盛り込むんだ?」っていうことをしていますから。世界に1本だけですから、これからも大事に使っていきたいです。
――アコースティックギターを弾く頻度が増えたのは、新型コロナウィルスの影響で有観客ライブがなかなかできなくなってからでしたっけ?
TOMO-ZO:はい。「配信ライブやアコースティックライブを増やしていこう」っていうことになったんです。
――使っているアコースティックギターは、テイラーの312ce narrowですね。
TOMO-ZO:はい。ボディが薄めなんです。あと、ネックもナローネックで、幅が少し狭くなっています。
――Custom 24 のblue crab blueとorange、T-LAND、テイラーのアコギ。以上の4本がTOMO-ZOさんのギターの基本セットだったわけですが……去年のアンジーさんの成人式のライブで新兵器が登場しましたね?
TOMO-ZO:はい。
――FramusのIdolmaker?
TOMO-ZO:そうなんです。スティーヴィー・サラスさんがプロデュースしたギターです。発売されてからずっと気になっていたんですけど、いつもお世話になっている山野楽器さんで弾かせていただける機会があったんです。3本の弾き比べをして、一番気に入った1本を選びました。おしゃれな見た目も気に入っています。持つと上手そうに見えますから。
――「上手そう」ではなくて「ガチで上手い」じゃないですか。
TOMO-ZO:ありがとうございます(笑)。ボディやネックは女性向きという感じではないんですけど、持った感触が私にすごくフィットしています。こういうのはなかなかないんですよね。ボディがメイプルトップ、マホガニーバックで、わりとPRSとも近くて、幅広いサウンドに対応できるのもガチャピンでの使いやすさです。
――気に入ったギターが大好きなスティーヴィー・サラスのプロデュースだというのも、嬉しいじゃないですか。
TOMO-ZO:そうなんですよ。しかも、私が使っているっていうツイートに反応してくださって。
――スティーヴィー・サラスのツイートを引用すると、“She makes@my IdolMakers look proper !”。
TOMO-ZO:ツイートしてくださったのを見て感動しました。
――それに対してTOMO-ZOさんは“Thank you very much!! That makes me so happy!!”。
TOMO-ZO:読まれると恥ずかしいです(笑)。スタッフさんに「この英語で大丈夫ですか?」と確認してから送りました。
――Idolmakerはまだ回していないですけど、回す場合は当然ガムテープ?
TOMO-ZO:ガムテープは避けたいなあ(笑)。重いので、頭に当たったりしたらやばそうですし。
――PRSも頭に当たったらやばいんですけどね。
TOMO-ZO:PRSは回しやすいギターです。
――言ってることがなんかおかしい……。
TOMO-ZO:Idolmakerは音に高級感があるんですよ。大人っぽい一面をアピールできるギターかもしれないなあって思っています。これも今後のガチャピンの幅に繋がるかもしれないですね。
――細かな部分ですが、エレキギターに張っている弦は?
TOMO-ZO:アーニーボールの009~046のセットです。アーニーボールの弦は、張り替えた時のバキッ!とした感じが好きです。
――ピックはオリジナルモデル?
TOMO-ZO:はい。素材はポリアセタールで、1mmのものを使っています。
――結構ぶ厚いのを使っているんですね。
TOMO-ZO:そうなんです。ピンクと黒を作ったんですけど、黒の方が弾きやすいんですよ。色でも違いが生まれるみたいですね。
――アコースティックギターもこのピックで弾いているんですか?
TOMO-ZO:はい。アコギは柔らかめのピックで弾く人の方が多いと思うんですけど。
――では、足元のお話もしましょう。送っていただいたリストを一通り読み上げますと、Volume Pedal【Ernie Ball PO6180】、Wah【G-LAB WOWEE-WAH WW-1】、Tuner【KORG pitch black】、Octaver【ELECTRO-HARMONIX Pitch Fork】、Pitch Shifter【BOSS PS-5】、Chorus【ROULETT∃ TOMO-ZO model】、Modulation【BOSS MD-500】、Switcher【BOSS ES-8】、Power supply【Noah'sark DC-STICK】、Whammy Pedal【DIGITECH WHAMMY5】……これで合っていますよね?
TOMO-ZO:はい。基本的にKEMPER(PROFILER POWER RACK)で音を作るんですけど、それ以外の「こういう音にしたいな」っていうのをボードに入れて使い分けています。KEMPERも、これ1台でものすごく万能なんですけど。
――KEMPERは、音のプロファイリングができますね。
TOMO-ZO:そうなんです。KEMPERは、サウンドが幅広いガチャピンに欠かせないです。
――足元に関しては、ピッチシフターのBOSS PS-5をもともとワーミー的に使用していましたけど、ワーミーも導入しましたよね?
TOMO-ZO:はい。今でもPS-5を使う曲はあるんですけど、それとは違ったニュアンスが欲しくてワーミーを導入しました。もともとドル箱では使っていたんですけど。
――最近のライブでは、アンジーさんがワーミーをTOMO-ZOさんの代わりに踏むことがありますよね?
TOMO-ZO:はい。「マジックアンブレラガール」ですね。ステージの真ん中でギターソロを弾きたいので、「アンジー、まかせた!」ってお願いしています。あれ、実はアンジーにマジックをかけて操っているんですけど。
――つまり、アンジーさんもTOMO-ZOさんの機材?
TOMO-ZO:はい。優秀です(笑)。
――(笑)。オリジナルモデルのROULETT∃はLEDが目を引きますが、つまみをひねると光量が変化するんですよね?
TOMO-ZO:そうなんです。
――光量はサウンドの変化と連動しているんですか?
TOMO-ZO:つまみを動かしてもLEDの光の強さが変わるだけです。
――そんなところにもGacharic Spinらしさを感じます……。
TOMO-ZO:遊び心しかない機能です(笑)。
――(笑)。最近、興味を持っている機材はありますか?
TOMO-ZO:レコーディングでLEVINさんのスタジオを使わせていただくことがあるんですけど、「MindSet」でテレキャスタイプをお借りして、それがすごく良かったんですよ。イタリアのPaoletti Guitarsというメーカーのギターです。すごくバキッ!としたサウンドを出してくれました。テレキャスは前から欲しいんですよね。
――ギターからエフェクター類までじっくり紹介していただきましたが、Gacharic Spinでギターを弾く楽しさって、どのようなところにありますか?
TOMO-ZO:ガチャは「いくら目立っても怒られない」っていうバンドなんです。自分の感情だったり、みなさんにお見せしたいことだったりを惜しみなく出せるんですよね。もちろん歌をちゃんと聴かせたりとか、バランスはちゃんと考えますけど、基本的に「目立つことも考えなきゃいけない」っていうのがあるんです。それが自分の成長にも繋がっていて、「もっとこうしたいな」っていう向上心も生まれ続けています。
――歌がもともと好きなTOMO-ZOさんが、ソロコーナーで思いっきり歌うこともできるバンドですからね。
TOMO-ZO:ほんとそうですね。私のメインボーカル曲だけで、もうアルバムを1枚くらい作れますから。
――今後のGacharic Spinに関しては、何かイメージしていることはありますか?
TOMO-ZO:5期になって硬派になってきているところがありますけど、私は独特な世界をこれからも貫いていきたいですね。そういう面でGacharic Spinを広められたらいいなあって思っています。
取材・文:田中大
▲Gacharic Spin(左より:オレオレオナ、yuri、はな、アンジェリーナ1/3、F チョッパー KOGA、TOMO-ZO)
ライブ・イベント情報
TOUR FINALは、2023年7月2日(日) 大阪 なんばhatchにて開催。
2023年6月からは、コロナ禍で延期になっていた47都道府県TOUR「ROCKET SPIRITS」Restart!!も始動。
2023年11月18日(土)
日比谷野外大音楽堂ワンマンライブ決定
<Limit Breaker~結成15周年に向けて~>
その他のライブ情報はオフィシャルサイトをご覧ください。
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