【ライヴレポート】DIR EN GREY、全国ツアーで体現されている“異端的王道”の正体とは?
去る6月15日に発売されたDIR EN GREYの最新アルバム『PHALARIS』が同27日付のオリコン調べによるアルバム・チャートで5位に初登場。快調な滑り出しを見せている。今作は同バンドのオリジナル・アルバムとしては第11作にあたるものだが、1999年のメジャー・デビュー以来、彼らはすべてのアルバムをトップ10に送り込んでおり、今回もその自己記録を更新することになった。今年は彼らにとって結成25周年のアニヴァーサリー・イヤーでもあるが、浮き沈みの激しい音楽シーンにおいてこれほどまでに安定した実績を維持しているのは、非常に稀有なことだといえるだろう。
◆DIR EN GREY 画像 / 動画
その最新作『PHALARIS』についてだが、メンバーたちがその完成に際して異口同音に認めているのが、このアルバムの“濃さ”だ。ひたすら攻撃的で激烈な楽曲ばかりが詰まっているわけでも、逆に叙情的な面がことさら強調されているわけでもなく、かといってこのバンドの持つ多様性がバランス良く計算されながら網羅されているというのとも違う。ただ、きわめてDIR EN GREYらしい作品であることは間違いなく、まさしく四半世紀の紆余曲折を経てきたバンドならではの深みと説得力に満ちた1枚になっている。しかも、過度なほど濃密でありながら、不思議なことにどこか聴きやすさがあるのだ。
タイトルや歌詩における言葉選びの意味深長さにも、これまで以上に深読みを誘うところがある。参考までに『PHALARIS』という表題は、明らかに古代ギリシアの残虐きわまりない拷問器具“ファラリスの雄牛”に由来するもの。先頃公開されている「The Perfume of Sins」のミュージック・クリップの映像も、拷問や処刑といったものを連想させずにおかない。また、アルバムの1曲目に収録されている「Schadenfreude」(シャーデンフロイデ、と読む)という長尺曲のタイトルが意味するのは“自らが手を下すことなく、他者が不幸や悲しみ、失敗に見舞われたと見聞きした際に生じる快感”である。DIR EN GREYが当初から“痛み”を表現上のテーマとしてきたことはよく知られているはずだが、今作ではその“痛み”の種類や度合い、表現の角度といったものにもある種の差異が感じられる。それは彼ら自身の変化によるものなのかもしれないし、混迷をきわめる現代社会の実情に起因しているのかもしれない。
彼らはこのアルバムのリリースを待たずして6月2日から<TOUR22 PHALARIS -Vol. I->と銘打たれた新規ツアーを開始。この19日の時点ですでに序盤の4公演が終了しており、筆者はそのうち12日の仙台公演を目撃しているが、そこで実感させられたのは、『PHALARIS』からの選曲がごく限られた数でありながらも、従来の彼らのどの作品とも異なったこのアルバム自体の感触や匂いといったものが、ライヴ空間にも漂っていることだった。
これからライヴに臨む読者のためにも具体的な演奏内容などについては触れずにおくが、とにかく印象的だったのは、全体の流れにおいて鍵となるポジションに配置された最新作からの楽曲たちと、久しくセットリスト入りしていなかった比較的レアな楽曲たちとが不思議に呼応しながら、近年の彼らのライヴとはひと味違った空気感を醸し出していたことだ。そこから察することができるのは、今回のツアーが単純に“いち早く新曲をいくつか披露する”という次元にとどまるものではなく、今現在に至るまでのすべての楽曲群を選択肢としながら『PHALARIS』という現地点を描こうとしているものだということ。つまり今作は彼らのディスコグラフィにおいてどこか異質なところのある作品でありながら、『PHALARIS』の芽とでもいうべき要素は彼らの歴史のいたるところにあった、ということでもあるだろう。このツアー自体は7月なかばまで続いていくことになるが、そこまでの過程で最新曲たちがいかに消化され、彼ら自身の歴史とどのような化学反応を起こしていくことになるのかに注目したい。
今回のツアーはあくまで『PHALARIS』をテーマに掲げながらの“Vol. I”であり、この先、彼らは段階を踏まえながらこの作品の世界をより深く色濃いものとして立体的に体現してくことになる。その過程についてももちろんだが、25周年という記念すべき節目にあたる年ならではの動きにも期待したいところだ。
取材・文◎増田勇一
撮影◎尾形隆夫 (2022.6.2@KT Zepp Yokohama)
■全国ツアー<DIR EN GREY TOUR22 PHALARIS -Vol. I->
6月09日(木) 新潟・新潟県民会館 大ホール
6月12日(日) 宮城・SENDAI GIGS
6月19日(日) 静岡・静岡市清水文化会館マリナート 大ホール
6月23日(木) 福岡・Zepp Fukuoka
6月25日(土) 広島・広島JMSアステールプラザ 大ホール
6月28日(火) 京都・ロームシアター京都 メインホール
6月29日(水) 愛知・Zepp Nagoya
7月06日(水) 東京・中野サンプラザ
7月09日(土) 千葉・市川市文化会館 大ホール
7月15日(金) 大阪・なんばHatch
7月16日(土) 大阪・なんばHatch
▼open / start平日公演 open18:00 / start19:00
土日公演 open17:00 / start18:00
▼チケット
・VIP Ticket (1階前方スタンディング/1階前方指定席・オリジナル特典付き):¥29,800(諸経費込)
・Exclusive Ticket (指定席・オリジナル特典付き):¥19,800(諸経費込)
・スタンディング:指定席 ¥9,800(諸経費込)
■11thアルバム『PHALARIS』
【完全生産限定盤 (CD+特典CD+特典Blu-ray) ※3枚組】SFCD-0265〜267 ¥9,900(tax in)
【完全生産限定盤 (CD+特典CD+特典DVD) ※3枚組】SFCD-0268〜270 ¥8,800(tax in)
※特殊パッケージ仕様
▼DISC 1:CD
01. Schadenfreude
02. 朧
03. The Perfume of Sins
04. 13
05. 現、忘我を喰らう
06. 落ちた事のある空
07. 盲愛に処す
08. 響
09. Eddie
10. 御伽
11. カムイ
▼DISC 2:CD
01. mazohyst of decadence
02. ain't afraid to die
▼DISC 3:Blu-ray or DVD
<疎外> 2021.6.5 東京ガーデンシアター
DOZING GREEN (Acoustic Ver.)
絶縁体
空谷の跫音
人間を被る
Devote My Life
CLEVER SLEAZOID
DIFFERENT SENSE
赫
Ranunculus
谿壑の欲
The World of Mercy
朧
かすみ
Followers
OBSCURE
落ちた事のある空
Sustain the untruth
激しさと、この胸の中で絡み付いた灼熱の闇
【初回生産限定盤 (CD+特典CD) ※2枚組】 SFCD-0271〜272 ¥3,740 (tax in)
▼DISC 1:CD
01. Schadenfreude
02. 朧
03. The Perfume of Sins
04. 13
05. 現、忘我を喰らう
06. 落ちた事のある空
07. 盲愛に処す
08. 響
09. Eddie
10. 御伽
11. カムイ
▼DISC 2:CD
01. mazohyst of decadence
02. ain't afraid to die
【通常盤(CDのみ)】SFCD-0273 ¥3,300 (tax in)
▼DISC 1:CD
01. Schadenfreude
02. 朧
03. The Perfume of Sins
04. 13
05. 現、忘我を喰らう
06. 落ちた事のある空
07. 盲愛に処す
08. 響
09. Eddie
10. 御伽
11. カムイ
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