【インタビュー(前編)】775、新進気鋭のレゲエDeejayが1stフルアルバム『あたい』をリリース
現在、各所から熱い視線が注がれている、岸和田出身のレゲエDeejay・775。2020年に発表した「よってらっしゃい」のMVが公開1ヶ月で100万回再生を突破(2022年6月現在、880万回再生を記録)。その後に発表した楽曲群も高い再生回数をマークしている。今夏は、昨年に引き続き、関西で開催される大規模レゲエフェス<HIGHEST MOUNTAIN>や、<Creepy Nutsのオールナイトニッポンpresents 日本語ラップ紹介ライブin 大阪城野音>など、様々なイベントにも出演することになっており、その名前をより多くの場所に広めていきそうだ。今回のインタビューは、1stフルアルバム『あたい』を紐解きつつ、775のこれまでについて話を聞いた。
■音楽ってどんなときでも普通に流れているし邪魔にならない
■何となく出てきたものやおもろいと思ったものを歌詞にするんです
──1stフルアルバム『あたい』をリリースされましたが、こういう作品にしたいと考えていたものはありましたか?
775:こういうものにしようっていうのは、作っている段階ではあまり想像できてなかったです。1曲1曲完成させていった感じなので。いろんなバイブスが固まっている1枚になったかなと思います。
──『あたい』というタイトルはどういうところからつけられたんですか?
775:自分のことを、“私”とか“あたし”とかあんまり言いたくないんですよ。普段も自分のことは775(ナナコ)って言ってるんですけど。“あたい”って、おばあちゃん世代ぐらいの人らが言うじゃないですか。そっちのほうがかっこいいなと思って、歌詞にも入れさせてもらっていて。アルバムのタイトルはめっちゃ迷ってたんで、いろんな人に聞いたりしたんですけど、「英語とかじゃなくて、漢字とかひらがなっぽいイメージがある」っていうのを何人かに言われたから、もう『あたい』でいいんちゃう?って感じでした。アルバムにはいろいろな曲があるけど、ひとつに絞られないし、結局、全部775だなと思って。
──確かにご自身のことを歌われているのもあって、ものすごくしっくり来るタイトルですね。今日は、収録曲のリリックを紐解きながら、775さんがどんな方なのかお聞きしていこうと思っています。まず、今回はバンドバージョンで収録されている「よってらっしゃい」から。〈ラジオで聞いた三木道三/4歳児の頃からいい女〉とありますが、幼い頃からレゲエを聴いて育ったと。
775:そうですね。親の車に乗ってるときに、たまたまたラジオから流れてきて。でも、親は別に775の前でレゲエを聴くこともなくて。たぶん昔は好きだったと思うんですけど。で、遊ぶ友達たちもレゲエを聴いていたから、ほんと自然に溶け込んでいってたみたいな感じです。
──レゲエを初めて聴いたときは、どんな印象がありました?
775:「なんやこれ」みたいな(笑)。裏打ちのリズムもめっちゃ好きで。音楽は全般的になんでも好きなんですよ。J-POP、ヒップホップ、ソウルとかいろいろ。けど、一番しっくり来たのがレゲエだったから、ずっと聴いてました。
──アルバムのリード曲「Microphone Center」に〈素直になれる音楽が教師〉とありますが、音楽が生活の中心にあるような感じでした?
775:まあそうですね。音楽ってどんなときでも普通に流れているし、邪魔にならないじゃないですか。生活に対して音は付き物だから。たとえば、こうやってしゃべっているときに何となく出てきたものを歌詞に引っ張ってきたりとか、友達がふざけて変なイントネーションで歌っていて、それおもろいなと思ったものを775の中でイジって、ボイスメモとかに録って貯めて行ったりとか。
──歌詞は日頃から書かれていることが多いんですね。オケが来て、それに合わせて書いたりも?
775:それもあるし、別に音がなくても自分でメロディを作ることもあるし。
──ケースバイケースだと。レゲエにどっぷりハマりつつ、すぐにDeejayになりたいと思ったんですか?
775:小学校ぐらいから思っていましたね。小学5、6年ぐらいのときに初めてリリックを書いて、中学校ぐらいから歌い始めて。そのときは小節とかよくわからなかったから、ぐちゃぐちゃな歌詞でしたけど、とりあえず歌っといたらいいわみたいな感じ(笑)。もうキーとかも関係なし。その頃はノリでマイク握ってたから。
──『あたい』の「skit」で、人生で初めて書いたサビを歌っていますけど、それがまさに小学校の頃。
775:そうです。ノリでとりあえず自分の名前を何かつけたいなと思って、“山ガールDeejay”って名前を自分で付けていたんですよ。その名前をただ言ってるだけのサビ(笑)。
──なぜまたその名前に?
775:山のほうに住んでたんですよ。岸和田でも田舎の方に。“a.k.a.音痴レゲエ歌手”とか言っていましたね(笑)。
──「七七五」には〈深夜0時にウチを抜け出し 刺激を求めては繰り返し〉とありますが、中学生の頃からいろいろな場所に行くようになったと。
775:もう5年前ぐらいになくなったんですけど、岸和田のGLOBEっていうところで、夜な夜なマイクを握って。親にバレないように。まあ、バレてたんですけどね(笑)。鬼電かかってきてたから。全部無視してたけど(笑)。
──それも「七七五」にありますね。〈親から鬼電ため息でるし 心配なのはわかってた中1〉という。それぐらいまっすぐに、これをやるんだという心持ちだったと。
775:やるんだっていうよりは、やりたいって感じでしたね。それがおもしろいからって。
──活動を始めた頃は、楽しいとかワクワクするという感情が一番強かったですか?
775:そうですね。マイクを握れたときの解放感はありましたね。そこでようやく声を出せるし。やっぱマイクを握らないと意味ないんで。男の中にひとりで戦場に行っていました(笑)。
──怖いと思ったりとかは?
775:怖いとかビビってたら何もできへんから、何も考えてなかったです。なんか、男の圧みたいなものをかけられたこともあったけど、そんなん気にしてたらやっていかれへん。
──いろんな経験をしていく中で、ご自身の中で変化はありました?
775:自分の中で変わったなと思うのは、何のヒット曲も出していないときの自分のショウケースとか、今思い返してみたら、マジで下手くそやったなって(笑)。「よってらっしゃい」がああなってから、コロナで1年間ぐらいライヴも出てなかったんですけど、その1年、ライヴに出られなくてよかったなと思って。
──というと?
777:「よってらっしゃい」を出す前は、月にライヴがあるんかって言ったら、ないときのほうが多かったし、いきなり「じゃあ来月からライヴ何本もあります」ってなったときに、たぶん歌えていなかったです。だから、1年休憩してたわけではないけど、去年ぐらいからかな。声の出し方とか、ライヴの見せ方とかを意識するようになって。全然違うなと思いますね。いまは昔の曲を聴くと、何これ?って思うんで。
──日々進歩しているという意味ではそうですよね。
775:最初の音源を聴いて、これイケてんなと思ったら成長してないと思うし。それはライヴの映像とかもですけど。それが昨日のことだったとしても、エグいなって思いたいし、毎日何か成長してたらいいなって。
──お話にも出てきましたが、「よってらっしゃい」のMVが公開から1ヶ月で100万回再生を突破したわけですけど、公開当初、その状況をどう受け止めてらっしゃったんですか?
775:関係者から「1ヶ月で100万行くのすごいね」って言われて。でも、775はそれをよくわかってなかったんですよ。「そうなん?」みたいな。レゲエじゃなくても、他のアーティストが何百万とかフツーにいってるのを見るし。まあそうなのかなと思ってたけど、そこから他の人のを見るようになったら、すごいことなんやと思って。でも、自分がそこに追いついてないときもありましたね。ライヴもやってないし、SNSだけでみんなが盛り上がって、775はそれをただ見るだけ、みたいな(笑)。
──不思議な感覚ですよね。
775:全部が初めてだったから、そういうのが。でも、ライヴをして、みんなのバイブスとかを見ていたら、こういうことなんだって感じましたね。なんか、今まで775が年上の先輩を見てるときみたいな光景だったから、みんなこういうのを見てたんやなって思いました。
──『あたい』に収録されている曲ではないんですが、「Keep on trying」には、〈自分を変えれる何かが 欲しくてひたすら書いた歌〉とあって。ライヴがない時期もあったりして、気持ちが落ちてしまうときもありましたか?
775:なんか、昔から変な自信があって。たとえば、『HIGHEST MOUNTAIN』って、自分で行ったことなくて。フェスとかにもあまり足を運んでなかったし、自分が出るまで絶対に行かないでおこうと思ってたし。でも、別にヒット曲を出してないときも、「今回、775呼ばれる予定やったんやけどな」って、毎年アホみたいに思っていて(笑)。そこら辺は変な自信があったんですけど、まあ「Keep on trying」で書いている葛藤みたいなものはありましたね。「いつやろう、自分の番は」みたいな。
──そういった葛藤はありつつも、気持ちが折れることはなかった、と。
775:気持ちが折れることはなかったというか……なんか、これはめっちゃ申し訳ない話なんですけど、高校のときは遊びたすぎて。でも、周りにクラブに行く友達もいなくて、毎回ひとりで行ってたから、面白くないなっていう時期があったんですよ。お酒も飲めないし、お金もなかったから、何も飲まんとラバダブだけしてすぐ帰るとか。それでちょっとクラブとかに行かない時期もあったんやけど、そのときも自然と歌は書いてたんですよ。
──それが日常になっていたんですね。
775:たまに自分でも思ってたんですけど、最近ショーケースとかラバダブとかもないのに、なんで歌書いるんやろうって。行く予定も、呼ばれる予定もなかったけど、とりあえず書いて、録って貯めとこうっていう感じでしたね。
取材・文:山口哲生
※アルバムインタビューの後半は後日公開予定
リリース情報
6月15日(水)リリースAMI-005 2,700円(税抜)2,970円(税込)
1. Intro
2. Microphone Center
3. 七七五
4. Life is RAGGA
5. Hands Up feat. 三木道三
6. イニミニマニモ
7. Skit
8. KSWD
9. チャンプロード
10. Shy
11. もういくつ寝たら
12. 母さん
13. よってらっしゃい(Band Session ver.)
ライブ・イベント情報
6月17日(金)鹿児島県 bijou
6月18日(土)福岡県 bijou
7月1日(金)岡山県 VESTI room
7月10日(日)茨城県 土浦club GOLD
7月15日(金)香川県 nude
7月17日(日)愛知県 ORCA NAGOYA
7月23日(土)北海道 KING XMUH
7月30日(土)沖縄県 MUSIC BAR LINX