【ライブレポート】ツユ、紫陽花咲くステージでファンに誓い

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6月12日、東京・日比谷野外大音楽堂にて<ツユ 3rdアニバーサリーワンマンLive『雨模様』>が開催された。平年よりも早い梅雨入りが宣言されたばかりの空の下という彼らにぴったりのステージで、普段心の奥底に封じ込めている感情を刻んだ楽曲たちが広い大空に解き放たれるさまは痛快そのものだった。音楽と感情を共有し、オーディエンスと絆を確かめ合ったライブのレポートをお送りする。

◆ライブ写真

朝からのにわか雨は止んだものの、しっとりと湿度を帯びた空気が漂う日比谷野外大音楽堂。会場に入ると、鮮やかな紫陽花や傘が飾られたステージが目に飛び込んでくる。オーディエンスが身につけたグッズの青色も映え、さっそくツユの世界に招き入れられた。

開演予定の18時ちょうど、「秋雨前線」のBGMとともに青色を基調とした衣装のメンバーが登場し「やっぱり雨は降るんだね」でライブがスタートした。タイトルとは裏腹に晴れた空に、礼衣(Vo)の透明感溢れる歌声と軽やかなサウンドが響き渡る。続く「風薫る空の下」では、礼衣のハイトーンボイスにぷす(G)とmiro(Key)の緻密なフレーズが絡み合い、それをサポートメンバーのリズム隊が支えるバンドアンサンブルの力強さに圧倒された。


バンドのプレイアビリティはライブの最後まで感じることになるのだが、複雑な構成の楽曲を再現しているのはもちろん、音源よりも躍動的で生々しい。特に礼衣のヴォーカルが、難解なメロディを完全に歌いこなし、さらに音源を凌ぐ迫力を放っている。ネガティブな部分を隠さないリアルな歌詞と相まって、耳と心にグサグサ刺さるような感覚に満たされた。

「“やっぱり雨は降らないね”なんですよ、我々(笑)。雨だったことはないんじゃないですか?」と礼衣が笑いを誘ったMCタイムを経て、“ただでさえ梅雨の季節だろ”というまさに今なフレーズで始まる「雨を浴びる」へ。聴き心地はポップながら、華やかなギターソロやピアノの音色に彩られた重層的なアレンジが心地良い。ミディアムチューン「太陽になれるかな」からピアノソロを挟んでピアノと歌だけで始まったバラード「梅雨明けの」、疾走感溢れるギターロック「ルーザーガール」「かくれんぼっち」など、研ぎ澄まされたスキルでさまざまな表情を見せていく。マイナスの感情もパワフルな歌とバンドサウンドによって昇華され、オーディエンスの手拍子やグッズの団扇が揺れる会場はポジティブなムードに包まれていた。


「きつい! 筋トレです(笑)」というぷすの言葉から始まった2度目のMCタイムでは、メンバー同士でフリートークを展開。ぷす曰く、「前回、前々回とあんまりMCをやってなくて。今回は外だし、ステージに花とかあるし、ちょっとポップな感じでいこうと思って、MCを多めに設定しております」とのことだ。お互いにボケたりツッコんだりのゆるい空気感が新鮮。シリアスな楽曲群とギャップのあるフリートークが、ツユの新しい魅力になっていくかもしれない。

「ここから夜にかけて、めちゃくちゃ(景色が)綺麗だから。ちゃんと目に焼き付けてください」とぷすが告げ、「奴隷じゃないなら何ですか?」「デモーニッシュ」とさらにディープなツユの世界へと誘った。毒っ気のある辛辣な詞にヘヴィな音を乗せるのではなく、ジャジーなフレーズを差し込むなどひと癖あるアレンジが効いている。イントロからアウトロまで、一瞬の隙もなく降り注ぐ音と言葉に耳を奪われた。そして、打ち込みのダンスナンバー「テリトリーバトル」を終え、空に少しずつ夕暮れの気配が漂う中で披露されたのは、この日のために作られたという新曲「雨模様」。切ないラブソングが、グラデーションの空に溶け込んでいった。

変わりゆく空の色を背景に、長尺なキーボードソロが炸裂した「シャーベット」、忠犬ハチ公の物語を描いた「忠犬ハチ」、和テイストな「アサガオの散る頃に」とエモーショナルな楽曲を連投。時折り聞こえる風の音や鳥の声なども相まって、野外だからこその贅沢な時間となった。


「ようやく喋れた!」とmiroも参加した3度目のMCタイムで、ふたたびフリートークに花を咲かせる3人。「(客席が)近いよね。今までこういう場所でやってこなかったから新鮮だし、テンションあがった」(miro)、「“雨模様”って私は雨が降ってる様子だと思ってたんですけど、雨が降りそうな状態のことだってぷすが教えてくれました」(礼衣)、「今日も雨模様でぴったりだと思います。素晴らしい!」(ぷす)と盛り上がったあと、「後半戦に入ってまいりますけども。ここで本当はもうちょっと穏やかにいければいいんですけど、ここからがいちばん大変」(礼衣)、「ここから盛り上がるから、本気で盛り上がって下さい!」(ぷす)とラストスパートへ突入した。

すっかり夜が到来した会場に、「あの世行きのバスに乗ってさらば。」「泥の分際で私だけの大切を奪おうだなんて」など、宣言どおり攻撃的な楽曲を畳みかける。ここに来てひときわ高いキーのメロディを歌う礼衣も、ぷすとmiroが牽引するバンドアンサンブルもまったく失速しない。それどころかますます熱を帯びて、オーディエンスの一体感を煽っていく。希望なんて一切歌っていないのに、その歌声と楽曲を通すことでふつふつと力が湧いてくる気持ちになるのがおもしろい。ネット世代だからこその過剰な情報量と勢いでなぎ倒し、生きる力に変えていくのだ。

感情が高ぶり続けるまま、ピアノソロからの導入で本編ラストに贈られたのは初期からの人気曲「くらべられっ子」。誰しもが感じる劣等感をシニカルに表現し、礼衣のハイトーンが夜空を貫いて圧巻のエンディングを迎えた。


アンコールは、“推し活”の悲喜こもごもを描いた最新シングル「いつかオトナになれるといいね。」で幕開け。これまでの楽曲以上に切れ味抜群で、ライブでキラーチューンになるに違いないインパクトを残す。さらに、メンバー紹介を兼ねた豪華なソロ回しから、未発表の新曲を投下。ツユらしい繊細なアレンジとポップさを兼ね備えた楽曲で、3周年の先へ進む彼らの未来を感じることができた。

「おつゆー」のかけ声で写真撮影を終えたあと、恒例のぷすによる熱い締めのMCーーに入ろうとしたものの、やや時間が押しているということで、「じゃあ、本当に伝えたいことだけ!」と今年メジャーレーベルに所属したことを報告。「僕はひたすら毎日曲を作ります。基本的に活動の仕方は変わらない。基本的に僕らで考えることができる。ただ、作った音楽をより表に出せるっていう。みんなにとってマイナスなことはないので、そこはわかってほしい」と真摯に想いを伝えた。


「ライブとかもがんがんやっていきます。今年もまだあります!」と嬉しい予告を付け加え、ラストナンバー「ロックな君とはお別れだ」へ。“じゃあね”と別れを歌うキャッチーなロックで駆け抜け、2時間に及ぶ濃密なライブを締め括った。

3度目のワンマンライブで野外という挑戦的なステージを制覇し、新曲や発言を通してまだまだ突き進んでいく意志を示したツユ。彼らの楽曲はきっと部屋でヘッドホンを通してじっくり聴いても刺さるけれど、ライブで生の歌声とバンドサウンドを体感することでその真価が発揮されるのは間違いない。バンドとして一体感を強め、彼らがこの先どんな景色を描くのか、期待が高まる一夜だった。

取材・文◎後藤寛子
撮影◎森好弘

セットリスト

セットリストプレイリスト
URL : https://tuyu.lnk.to/onemanlive_amamoyo

M01 やっぱり雨は降るんだね
M02 風薫る空の下
M03 雨を浴びる
M04 太陽になれるかな
M05 梅雨明けの
M06 過去に囚われている
M07 ルーザーガール
M08 かくれんぼっち
M09 奴隷じゃないなら何ですか?
M10 デモーニッシュ
M11 テリトリーバトル
M12 雨模様
M13 シャーベット
M14 忠犬ハチ
M15 アサガオの散る頃に
M16 あの世行きのバスに乗ってさらば。
M17 終点の先が在るとするならば。
M18 ナミカレ
M19 泥の分際で私だけの大切を奪おうだなんて
M20 くらべられっ子
EN1 いつかオトナになれるといいね。
EN2 謎の新曲
EN3 ロックな君とはお別れだ

リリース情報

ツユ「いつかオトナになれるといいね。」
2022年5月25日(水)デジタルリリース
https://tuyu.lnk.to/itsuoto
TUYU Records

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