【インタビュー】MUCC、25周年と新章を飾る『新世界』完成「今までにない空気感…LOVE&PEACEの“PEACE”の部分がある」
■昔、「絶望」を歌っていた人が
■新譜で同じフレーズを歌うのは面白い
──YUKKEさんと逹瑯さんは、このアルバムにPEACEが初めて入っている、ということに関してはどうですか?
YUKKE:今までよりも、やっぱそこに向かっていくというか、PEACEという出口が見えていたというか、そういう感覚は自分なりにあって。作詞は1曲だったのに、その中でこの歌詞を書いたから、そこは意識してたしかに書いた気はしますね。
──バンドとして、そのメッセージを発していくことに対しては、どうお考えですか?
YUKKE:MUCCが持ち合わせていないものではない、と思うんですよ、人間だし。表現手法、手段としてその言葉を一つ掲げたというのは、リーダーの口から今そういう発言があって、俺も今初めて“たしかにそういうことを考える段階なんだな”と、ちょうど感じていたところでした。
逹瑯:昔の何もない平和な時代に“みんな楽しそうだな”と思ってたときは、“いや、本当はそんなんばっかじゃないじゃん?”と言って暗黒面を歌いたくなってたんですけど。実際、この暗黒な世の中になると希望を見たくなるというか、逆に行きたくなる感じがひねくれてるんだろうなぁと思いながら(笑)。“やっぱり希望が見たいんだな”っていうのが自然と出てくるのが面白いな、と思いますね。
▲YUKKE (B)
──前回のインタビューでもこの話題になりましたが、早くから「絶望」や「世界の終わり」を歌ってきた、表現してきたバンドだからこその視点ですよね。
逹瑯:「星に願いを」の歌詞を書いていて、“「絶望」って、今の感じだな”と思って。その後のラップみたいなところに「絶望」の歌詞がハマるかな?と思って入れてみたらいい感じだったので、ハメてみて。昔と今の対比で、昔、「絶望」を歌っていた人が、今新譜で同じフレーズを歌うのは面白いな、と思って書いていったんです。「絶望」をリリースしたのはいつなんだろう?と思って調べたらちょうど20年前で、『葬ラ謳』も20周年で。バチッとハマッた感じがして気持ち良くて、そこが楽しかったです。久しぶりに気持ち良く遊べた!と思って。
──世界の変化、自分たちの変化を歌詞に映し出す。すごいアイデアですよね。
逹瑯:自分たちのことが歌に出てくる歌、好きなんですよ。(忌野)清志郎さんの歌でも、“RCサクセションがきこえる RCサクセションが流れてる”って曲(RCサクセション「激しい雨」)があるんですけど、すごく好きでグッとくるから。自分でもいつかやりたいなと思っていたのが、今できて良かったです。
──ミヤさんがブルースやゴスペルに惹かれたのもPEACEという文脈だったのでしょうか?
ミヤ:気分に呼ばれて、という感じです。ゴスペルって、ブルースとかの音楽の基礎になっている部分もあるし。なんで基礎になっているんだろうな?と考えた時、やっぱり祈りなんですよね。日本人にブルースというものがあるとしたら、もしかしたらそれは演歌なのかもしれないし。そういったルーツミュージックから感じるような芯の強さ、パワーというものが、“激しい表現ではない表現をする”となった時にしっくりきたというか。あと、アジア的ではないメロディーの動きにすごく惹かれたというのもあって。だから、それを乗っけることが、一番の目的として今作にありました。いつもMUCCのアルバムとか、新しいものをつくる時はわりとその手法なんですけど、何か新しく乗せるものを決めたら、それ以外はいつもと同じところ、自分たちらしいところを出していくんです。
──「未来」はブルージーで、すごく良い曲です。
ミヤ:「未来」もすごくシンプルにつくりたかったんですよね。それもメロディーやピアノの佇まいを引き立たせたいがゆえのアレンジなので。ピアノは実家のものをスタジオに持ち込んでレコーディングしました。そのピアノで曲が出来上がっていったし、一回ぐらい東京のちゃんとしたスタジオで鳴らしてあげたいな、というのもあって、やっと実現できたという。茨城から運ぶのは結構大変で、しかもすごく古いピアノなんですよね。調べたら1900年から戦前までの間につくられたどこかのモデルで。
──エレキギターが誕生するより前ですね。
ミヤ:うん。俺が小学校低学年ぐらいの頃に家に来たんです。相当古くて、でも今も現役だし、いい音がする。そういうピアノと一緒に育ててくれた親に感謝ですね。出所とか前のオーナーを知りたいです。
──幼い頃からミヤさんの中に染み付いていた音なんですよね。
ミヤ:普通にその辺にある日本のピアノとこいつは違うな、というのはずっと感じていたんです。まず見た目が違うし、茶色いし。ペダルのところは靴を履かないと足を置けないし、「外国のピアノなんだよ」という話は聞いていて。音や、音を出す雰囲気が好きだったし、そのすごさは音楽をやるようになってよく分かりました。
──その個体の音でなければ絶対にいけない、という固有で特別なものだった、と。
ミヤ:そのイメージで出来上がってきたし、特に「未来」はそうでした。
──「未来」は少しスティングっぽいというか、「Englishman In New York」のような、異邦人の孤独や疎外感などがイメージとして湧いてくるんですが…。
ミヤ:その辺がたぶん今回の渋さというか、“大人だな”と他のメンバーが思っていた部分なんじゃないですか?
▲<新世界完全再現>2022年6月9日(木)@神奈川・CLUB CITTA’
──たしかにそうかもしれません。「R&R Darling」は逹瑯さんが作詞作曲。どのように生まれてきたんですか?
逹瑯:この曲は、事前の打ち合わせの段階から、「気持ち良く、聴いているだけで自然と身体がゆっくり動かされる曲にしたいね」と言っていて。なんかポカポカしてる曲つくりたいなと思って、最初につくった曲です。だけど、やっぱりサビはエモい方向に行きたくて。Aメロ、Bメロとつくり終わって、「サビはどっち行くかな?」と話していて、「ここのまま行くよりもグッと違う風を吹かせたい」と思って付けていったんですけど。やっぱりああいうサビにしておいて良かったなと思いますね。俺、アウトロが長い曲って好きなんです。歌い終わってその空気とか景色がすーっと広がっていくような。MUCCで言うと「溺れる魚」や「フリージア」のアウトロとかも好きだし。そういう曲になって良かったなと思いました。
──「NEED」は作曲が逹瑯さんとYUKKEさんのダブルクレジットですね。
逹瑯:2曲別々の曲をガッチャンコしました。
──あ、「WORLD」と同じパターンですね。
YUKKE:でも、意外と初の組み合わせだもんね?
逹瑯:うん。今回の曲出しで、俺とYUKKEから出てきた匂いが少し似ていた2曲でしたね。“どっちを選んで入れるかな?”という感じに普段だったらなるんですけど、今回は2曲混ぜて、みたいな。
──それはわりと抵抗なくできることなんですか?
YUKKE:そうですね。「WORLD」の時からそういうこともあったし、抵抗は全然なくて、逆に合わさってどうなるかを楽しみながら。
逹瑯:うん、そうだね。
YUKKE:その辺は良くなるなら全然いいと思います。
逹瑯:俺が最初に持って行ったデモは、もう少しテンポが速くて。高揚感のある曲をやりたいなと。リーダーがワーッ!と叫んでいて、俺がローでグッと行っている掛け合いで構成していったら、“ライヴで盛り上がりそうだな”と。そう思ってつくっていって。最初は全く違うサビが付いていたんですけど、YUKKEの曲に合わせてちょっとテンポを落として、その曲のサビとガッチャンコして。上がっていくだけの曲よりも、サビでグッと押さえて広げるという展開になって、めちゃくちゃ良くなったなと思いました。
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