【ライブレポート】Hakubi、“あなた”の元まで

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Hakubiの対バン企画ツアー・<巴・粉塵爆発ツアー>。“今だからこそ改めてライブハウスで生まれ育った原点に立ち返り、切磋琢磨していきたい同世代バンドとライブを作る”をコンセプトに2022年春に開催されたツアーである。そのファイナルシリーズとなる東阪公演が5月に開催。大阪・umedaTRAD公演にはHump Back、東京・LIQUIDROOM ebisu公演にはSHE'Sと、メンバーが尊敬する年齢の近い地元関西の先輩バンドがゲストに招かれた。

ファイナルシリーズ東京公演のLIQUIDROOMに立った3人は、1ヶ月前に同ツアーの渋谷O-Crest公演で観た時よりも冷静で、地に足がついていたように見えた。信頼する大切な人々とともに、より高みを目指す人間の意志の強さがステージから迸っていたのだ。

◆SHE'S ライブ写真
◆Hakubi ライブ写真


片桐(Vo,G)いわく“音楽を始める前からずっと先を走っている先輩”であるピアノロックバンド・SHE’S。飾らない装いで登場した4人は、「Night Owl」でこの日のライブの幕を開ける。その後も「Masquerade」に「Un-science」と、スタイリッシュでありながらも遊び心のあるダイナミックな演奏と歌唱で、たちまち観客たちの心を掴んでいった。


Hakubiとは交流はあったが初対バンだと語る服部栞太(G)は、「Hakubiのドラムのマッちゃん(マツイユウキ)から、どういう気持ちで企画したツアーなのかを伝えてもらいました。その思いを受け取ったうえでHakubiにしっかりバトンを渡したいと思っています。Hakubiと僕らと皆さんで三つ巴になって、最高の夜を作りましょう!」と晴れやかな表情で呼び掛ける。


「If」では夕陽のようにロマンチックかつナチュラルな空気感でスケール大きくで包み込み、「Letter」からつないだ「Ghost」では井上竜馬(Vo,Key)のキーボードが彼の指圧で傾くくらいの熱のこもった演奏を展開。迫力のサウンドスケープで圧倒した。ロックバンドとしてのたくましさと良質なポップスを奏でるセンスを兼ね備え、それをクリアに表現できる手腕を持ち合わせる――音楽性は異なれども、それはHakubiとSHE’Sの共通項と言っていいだろう。


「Hakubiとは3、4年前に出会って、ようやくツーマンができる」と喜びをあらわにした井上は、「せっかくならHakubiの曲のカバーとか練習したらよかった」と言いながら即興で、出会った頃によく聴いていたという「在る日々」の弾き語りを1フレーズ披露する。突然の気の利いたパフォーマンスに、観客たちも大きな拍手で喜びを表した。


リリースしたばかりの新曲「Grow Old With Me」の後、「追い風」と「The Everglow」の2曲で鮮やかな余韻を残しフィニッシュ。初期曲から最新曲までを網羅したセットリストでもって美学を突きつける、非常にスマートでエモーショナルなライブだった。


初めて訪れたLIQUIDROOMにて、SHE’Sからバトンを受け継いだHakubi。片桐とヤスカワアル(B)がマツイの前に集まり3人が一斉に音を出すと、1曲目に「光芒」を届ける。情熱的でありながら、落ち着いた佇まい。メロディアスなベースとギターの絡まり合いも美しい「どこにも行けない僕たちは」では、片桐が観客に「この景色、素晴らしいです!」「あなた一人ひとりに届けます」と語り掛けた。

時を経るごとにソングライティング面、メンタリティ面でも変化を迎えているHakubiだが、先述の“あなた一人ひとりに届ける”というポリシーだけは揺るがない。片桐は「Friday」で伸びやかな高音を響かせ、「Twilight」では大きく起伏を描くメロディを緩急をつけて歌い上げる。大人数の中の“あなた”の元までしっかり届けるために、3人は感情を丁寧に音へ昇華し、聴き手の心に向かって放っていた。


競演バンドやライブハウスのおかげで充実したツアーを回ることができ、強くなったと話す片桐。今年2月に行われたSHE’Sの日本武道館公演にメンバー3人で観に行ったことを明かすと、「ライブハウスから観てきた関西のバンドが武道館に立っている姿は、“自分たちもあそこに立ちたい”という夢を持たせてくれました。背中を追いかけたいし、追いつきたいし、追い越したいと思ってここに立っています」と続けた。その後に披露された「在る日々」は、こちらの手を取り光の中へと連れていくような、あたたかい優しさに溢れる。“自分たちの目指す夢の場所へとともに行こう”といざなわれるようだった。

「あの頃の自分がこの景色を見たらどう思うでしょう」とつぶやいた片桐は、目の前に“あなた”がいること、目標とする先輩や場所が存在することの感謝と喜びを語る。この日のライブでは、O-Crest時以上にその思いが強く表れていた。この1ヶ月の間に、彼女はおそらく多くの人々から支えられていることを痛感し、そこに対する感謝が大きく芽生えたと推測する。自分たちの思いを発信するだけでなく、思いを受け取り合うことができるというコミュニケーションと、自分たちの音楽を求めてくれる人の存在が、Hakubiの音楽により深みをもたらしていた。


「夢の続き」では普段クールな立ち振る舞いのヤスカワも微かに歌詞を口ずさんでいたり、「まだまだまだ夢を追いかけている!」と高らかに語る片桐が笑顔を見せるなど、ポジティブな空気が広がってゆく。「こんな自分を愛せるように、今は目の前にいるあなたを愛したい」という片桐の言葉でなだれ込んだ「mirror」は、とめどなくあふれる思いを取りこぼさないように次々と言葉にしていく彼女と、それをしっかりとバックアップするリズム隊の関係性も眩しかった。

生きる意味がわからなくて、音楽にすがっていた頃に書いたという「22」で感謝を伝えながら歌詞の一言一言をメロディに乗せ、本編ラストの「悲しいほどに毎日は」では観客が3人の発する思いを掴むように手を高く掲げ、熱いクラップで思いを伝えていく。今湧き上がる思いを交換し合う会場は豊かさで満ちていた。


アンコールではヤスカワとマツイが自由で朗らかなMCを繰り広げた後、片桐が井上の即興カヴァーへのアンサーとして、彼女の好きな曲であるSHE’Sの「Clock」の即興カヴァーを披露。アカペラで歌い出した彼女に対してすかさずシーケンスでビートを刻むマツイの対応にも心が和む。片桐が照れながら“今度はコピーをし合うツーマンを約束してもいいでしょうか?”と楽屋にいるSHE’Sに問いかけると、フロアからは大きな拍手が湧いた。


「Sommeil」と「辿る」の2曲を届け、ファイナルシリーズを締めくくる3人。爽やかな活力にあふれた歌と演奏には、ピュアな気持ちがきらめいていた。“あなたたちがいるから強くなれる。あなたたちがいるから歌える”――向けられた愛を真正面から受け取ることができるようになったHakubiは、この先どんな音楽を奏でていくのだろうか。我々とともにどんな景色を見ようとしているのだろうか。3人の行く先を今後も見守りたい。

取材・文◎沖さやこ

Hakubi 配信シングル「Twilight」

2022年4月22日(金)配信開始
https://lnk.to/hakubi_twilight


<京都藝劇 2022>

2022年8月11日(木・祝)京都・KBSホール
出演:Hakubi / TETORA / 黒子首 ...and more
料金:スタンディング ¥5,000(税込)ドリンク代別
主催:アームエンタープライズ株式会社
企画・制作:清水音泉 / ポニーキャニオン / KYOTO MUSE
協賛:専門学校ESPエンタテインメント大阪
後援:α-STATION
お問い合わせ:清水音泉 06-6457-3666(平日 12:00-17:00)
info@simizuonsen.com

・チケット
清水音泉湯仲間先行予約(抽選)
受付期間:2022年5月25日(水)18時〜6月12日(日)23時59分まで
受付URL:http://eplus.jp/hakubi-kg22-ou/
備考:小学生以上有料(未就学児入場不可) / お1人様4枚まで

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