【ライヴレポート】-真天地開闢集団-ジグザグ、「11月15日、日本武道館やります」

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第三完全音源集(3rdフルアルバム)『慈愚挫愚 参 -夢幻-』を掲げて、3月から2ヵ月以上にわたる全国ツアー<全国悪霊退治 -夢幻->を敢行した-真天地開闢集団-ジグザグ。ツアー中には<メトロック 2022>に出演するなど、初禊(ライヴ)体験者たちに強烈なインパクトを与えた彼らは、この夏、<ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2022>にも出演が決定しており、参拝者が増え続ける予感しかない展開である。

◆-真天地開闢集団-ジグザグ 画像

“ジャンルを超えた”というのは使い古された言い方だが、禊を見た人に“なんかわからないけど、すごい”とか“気がついたら好きになってた”と言わせてしまうところが-真天地開闢集団-ジグザグの最大の強みなのではないかと思う。国内外問わず、突き抜けたアーティストの共通項の褒め言葉、“うまく形容できない”──つまり、それだけ新しいのだ。

ツアー後半戦、5月10日にZepp Hanedaで<全国悪霊退治 -夢幻->の東京公演が開催された。そして、日本武道館公演<慈愚挫愚>を11月に行うことを発表したのが、この日の禊だった。


禊の幕開けは両手を広げて歌う命 -mikoto-(Vo, G)の姿が神々しい「Aria」。ミラーボールの光が降り注ぎ、ハンドクラップの中、ギターを持ち、開放感のあるポップチューン「ラスデイ ラバー」へ。変則的なビートの「タガタメ」は赤と緑のレーザーが飛び交う演出だ。完全音源集『慈愚挫愚 参 -夢幻-』から立て続けに4曲が披露され、会場には早くも一体感が生まれていた。

「初めて我々の禊に参加する方、どれぐらいいらっしゃるんですかね?」と命 -mikoto-が問いかけ、挙がった手の数の多さに、改めて「初めまして」の挨拶.「今日は(お立ち台の)下にライトみたいなのが仕込まれているんですが、網の下からパーンと光が上がるってカッコいいじゃないですか。長年の夢だったわけですよ」とステージセットやレーザーの演出も長年の夢が叶って感極まっていると心境を伝えた。そして龍矢 -ryuya-(B)と影丸 -kagemaru-(Dr)のメンバー紹介に。-真天地開闢集団-ジグザグは命 -mikoto-が“破壊の祈祷師”、龍矢 -ryuya-が“鳴弦の陰陽師”という役職(?)がついているのだが、Wikipediaに影丸だけ“ぽんぽこ太鼓”と記されていた(今は訂正されている)というエピソードで盛り上がるメンバー。ハイトーンボイスで「こんばんは、ぽんぽこ太鼓の影丸です」と挨拶すると、命 -mikoto-が「ホンマの名前は?」と問いかけ「禁忌の大忍、影丸です」と正式名称を名乗り、場内もほっこりした雰囲気に。

「来ていただいたみなさん、ホントにいいこですね」──命 -mikoto-

完全音源集を聴いた人には、次に何の曲をやるか速攻でわかる前振り。演奏する前に両手で自分の頭を撫で“いいこいいこして”ジャンプするなど振り付けが伝授され、「いいこいいこして」では参拝者たちがみごとに振りをマスター。“にんじん食べたよ いいこ”、“怒られちゃったよ いいこ”とシンプルな歌詞と明るいメロディで綴られるこの曲は“今日も生きたよ いいこ” “自殺しないよ いいこ”という箇所で涙腺崩壊のナンバーだ。子供たちに向けているのかと思いきや、大人をも肯定感で包んでくれる。-真天地開闢集団-ジグザグが全世代対応型のバンドである所以の1曲でもあり、彼らが伝えたいメッセージの核心をついているのでは?と深読みしたくなる。


打って変わって、キメが多くプログレのような難解さを持ち合わせながら、キャッチーで伸びやかなメロディが、それを感じさせない「僕ノ旋律」が放たれ、ドラマティックな王道バラード「忘却の彼方」に移行。命 -mikoto-の圧倒的な魂のヴォーカル、確かなスキルを持つ龍矢 -ryuya-と影丸 -kagemaru-のリズムセクションが歌を活かす引きのプレイに徹していることも含め、ヴィジュアル系を聴かない人も一発で持っていかれる名曲に大きな拍手が沸いた。

長引くコロナ禍や戦争の問題に触れ、「どうなってしまうねん」と世の中の情勢に触れた命 -mikoto-が言葉を続けた。

「だいぶ恐ろしい感じなんですけど、ずーっと雨が降っているっていうことはないでしょう。必ず、パーンと晴れる日もくるでしょう。ただ、ずーっと雨を耐え忍ぶのもだるいので、今、燦然とした未来をここで味わいましょう。悲しいこと、辛いこともあると思うけど、ここの空間では全部忘れてもらって楽しもう。ここに燦然とした世界を作りましょう」──命 -mikoto-

首を痛めないためのヘドバン講座も盛りこまれた「燦然世界」は、ジャンル無法地帯の突き抜けたナンバーで客席もハンパない盛り上がり。超パワフルなドラムとツボを突くフレーズを奏でるベース。恐らく-真天地開闢集団-ジグザグ沼にハマってしまう人続出。再び命 -mikoto-がギターをかまえ「死神」を投下し、中盤戦は発散ゾーン。デスボイスとファルセットを1曲の中で自由自在に使い分ける凄まじさに“どうなってるんだ!?”と思っているうちに、日本人が持っている精神を和テイストのサウンドで昇華させる「ええじゃないか」に突入。ツアータイトル<全国悪霊退治 -夢幻->通り、悪霊もいっきに退散しそうなテンションの高さである。


「みなさん元気かい? 楽しんでるかい? 疲れてるかい? 私は疲れてます」と笑わせ、ここで龍矢 -ryuya-の誕生日を祝うサプライズが。命 -mikoto-と影丸 -kagemaru-が高らかにバースディソングを歌い、「サプラーイズ!」と叫ぶ影丸 -kagemaru-。運ばれたケーキの蝋燭の炎が吹き消される儀式が行われると思いきや、「火を使うには申請に1ヵ月かかるので、今日は俺と影丸が蝋燭になります」と命 -mikoto-。身体をゆらゆら揺らせ、龍矢 -ryuya-が吹き消すジェスチャーをすると吹き飛んでいく様はまるでコントだ。2人からのプレゼントもその場で開封された。

「休憩できたね。疲れてたけど、回復しましたよ。みなさん、人生とは楽しいことばかりじゃない。毎日毎日、仕事や勉強、家事やら大変ですわ。でもね。ある日、どうしても何もしたくないっていうときあります。そんな時はいい方法があります」──命 -mikoto-

ブレイクを挟んで、再び振り付けのレクチャーがあり、アルバムからジグザグ流儀のパンクチューンとも言えそうな「ナニモシタクナイ」を投下。この曲のポイントはサビの“ヤダ ヤダ”でみんなで地団駄を踏むところ。「何もしたくない気持ちを爆発させようぜ!」と煽る命 -mikoto-も客席に背中を向け、お尻を振る振り切れよう。イライラ、ムカムカ、ヤキモキを幼稚園児のように本能のままに発散したくなるナンバーに続いて、幻想的で哀愁とスケール感のある「昴」をローボイスで歌いあげる命 -mikoto-。ギャップという言葉では括れない振り幅で魅了する。

そして影丸 -kagemaru-の確実にキメていく力強く痛快なドラムソロのセクションを挟んでライブは後半戦に。「夢に出てきた島田」「顔が好き」など-真天地開闢集団-ジグザグの禊でおなじみのカオスでマニアックなのにポップなナンバーを連続投下。「今日は何の日? メイドの日」という前振りで甘酸っぱいメロディとメタルが混在する「メイドカフェに行きたくて」も披露され、ということは龍矢 -ryuya-の誕生日はメイドの日なのか?と思わずツッコミたくなる展開。「復讐は正義」で炸裂し、ハードコアな「愛シ貴女狂怪性」になだれこみ、参拝者との約束の曲「Promise」が会場をすっぽり包み込んだ。そして最後のMCへ。


「本日はお集まりいただきまして誠にありがとうございます。楽しい時間はアッという間で、次で最後の曲になりますけど、ひとつ言いたいことがございます。11月15日、日本武道館やります」──命 -mikoto-

この告知に嬉しさと驚きのあまり、ざわめいた客席からすぐに大きな拍手が送られた。

「武道館ってゴールみたいになりがちだから、サラッといきたかったんです、“俺たち、ついに武道館、やります!”みたいなのはやりたくなかったんですね。そこがゴール! 終わり!ってなるとイヤなので、あくまで禊の大きいひとつのハコという概念です、ずっと続いていきたいからね、皆さんよろしくお願いします。みなさん、最後はやっぱり、しんみりはできませんよ。これをやらずしてジグザグは語れません。それでは、これにて終幕なり〜!」──命 -mikoto-

ラストナンバーはキツネのポーズで跳んではしゃいでの「きちゅねのよめいり」でハッピーエンディング。確かに日本武道館の発表には変な気負いもなければ、苦節何年のような重さも感じられなかった。固定概念を宇宙まで吹っ飛ばしてくれそうな-真天地開闢集団-ジグザグのことだ。参拝者はどんどん増殖していくだろう。そして終幕。幕がゆっくりと閉まる中、命 -mikoto-が生声で「愚かな者に救いの手を」と叫ぶ祈りが何度も鳴り響いた。

取材・文◎山本弘子

■<全国悪霊退治 -夢幻->2022年5月10日@Zepp Hanedaセットリスト

01. Aria
02. ラスデイ ラバー
03. タガタメ
04. コノハ
05. いいこいいこして
06. 僕ノ旋律
07. 忘却の彼方
08. 燦然世界
09. 死神
10. Requiem
11. ええじゃないか
12. ナニモシタクナイ
13. 昴
-影丸 Drum solo-
14. 夢に出てきた島田
15. 顔が好き
16. わた殖
17. メイドカフェに行きたくて
18. 復讐は正義
19. 愛シ貴女狂怪性
20. Promise
21. きちゅねのよめいり

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