【ライブレポート】ブラススターの最前線・最先端 SUPER BRASS STARSが東京国際フォーラムで刻んだ新たな歴史
中川英二郎、エリック・ミヤシロ、本田雅人というブラススター3名のユニット“SUPER BRASS STARS”(SBS)によるバンドセット公演『SUPER BRASS STARS - XXL EDITION』が、5月3日東京国際フォーラムホールCにて開催された。
今回の公演は5月3日~5日に渡って開催された<丸の内ミュージックフェス メインコンサート>の一貫で実施され、初日のトリを飾る120分の単独ステージ。
これまでは3名のみや、オーケストラとの共演まで、アコースティック(生音)を重視してきたSBSだったが、今回はコンセプトを一新した、ラージアンサンブル/バンドセットに。事前アナウンスの段階からバンドメンバーがひとりずつ公開されたが、ピアノに宮本貴奈、ドラムス・川口千里、ベース・川村竜など、XXL EDITIONと題するに相応しい豪華な面々がラインナップ。スペシャルゲストにギターの小沼ようすけを迎え、さらに直前には歌手・平原綾香の出演が発表されるなど、ファンの間では否応無しに期待が高まっていた。
ダンスミュージックの鳴る会場。突然暗転すると中川が現れ、VJ Manami Sakamotoとのコラボレーションによる「Heaven's Kitchen」がスタート。美しい天国にいるようなヴィジュアルが紗幕に映し出され非現実的な世界観にオーディンエンスは一気に引き込まれる。続いて川口のドラムソロから始まった「Peep」は、まさにメンバーたちを覗き(Peep)にいくような視点でカメラマンが舞台上を縦横無尽に歩き回る様子が投影。緊張感と疾走感溢れるパフォーマンスと、見事に合わさった演出に冒頭2曲ですでに今回のライブがただものでないことを確信した。
ここでようやく幕が開き、「Secret Gate」「Sky Dance」とメンバーによる煌びやかな楽曲が続く。(さながらダンスフロアのように回ったミラーボールが美しかった!)会場も温まったところでスペシャルゲスト・小沼ようすけが登場。「Coffee Please」の演奏を中川から提案された小沼。曰く“SBSナイズド”されたファンキーなアレンジによって、互いに煽り心地よいグルーヴが生まれ、客席も自然に体が動く。前半最後はT-SQUARE時代に書いた本田雅人の代表曲「MEGALITH」。小沼も加わり、まさにXXL、重量級のサウンドで盛り上げた。
休憩明け、突如ベースの川村竜がスクリーンに映し出され、バックステージからの生中継が始まる。SBS3名による楽屋でのトークコーナーだが、これは中川英二郎が昨年10月に開催した配信公演「Hitori Monsters」にもあった要素で、前半のストイックな雰囲気とは打って変わったユルさでテレビ番組を見ているような感覚になった。
そのまま3名で舞台に移動し「12Colors」を演奏。再びVJとのコラボでは色彩感溢れるヴィジュアルが展開された。次に中川英二郎と本田雅人で「Scramble」を披露。超難易度であろうこの楽曲のたった2人によるセッションに思わず舌を巻いた。続いてエリック・ミヤシロが戻り、名曲「Birdland」を3名で。SBSが結成するきっかけとなったオンラインフェスでも演奏されるなど代表曲と言っても過言ではない。
終盤戦に差し掛かりここでもうひとりのスペシャルゲスト、平原綾香が登場。直前に発表されたとあって会場からはどよめきと共に大きな拍手で迎えられた。挨拶代わりにBTSの大ヒット曲「Dynamite」をエリックのアレンジでカバー。ホーンセクションの気持ち良いバッキングとリズム隊のグルーヴも際立つ。ここで平原の父でサックス奏者の故・平原まこととのエピソードトークに。SBSにとっても、先輩であり仲間であった平原まことの存在は大きく、平原も「亡くなってからホーンの音を避けてしまっていたが、今日は勇気を出して挑もうと思う」と決意。自身の代表曲「Jupiter」を歌いあげた。きっとこの場で平原まことも聞いているに違いない、そう思わせられる瞬間だった。
そして、いよいよライブはラストスパートに。エリックのアレンジによるチック・コリア「Spain」で会場のボルテージは最高潮に上がり、ラストチューンは中川英二郎の代表曲「Into The Sky」。楽曲の持つ瑞々しさ、疾走感とレーザーも含めた幻想的な演出が、見事に調和し、圧巻そのものだった。
SBS率いる最強XXLメンバーに、ダブルゲストという豪華ラインナップだけでなく、ライティング、VJ、ライブ映像、楽屋トーク、エンドクレジットなど、様々な演出要素も加わり、溶け込むことで、映像とライブを行き来する一つのエンタテイメントとして昇華した今回のステージは、ブラス界のみならず、ジャズ、フュージョンにおける新しい歴史のひとつになったことに間違いない。
Photo by Kenichi Kurosaki
<セットリスト>
2. Peep - Michael Brecker
3. Secret Gate - Eijiro Nakagawa
4. Sky Dance - Eric Miyashiro
5. Coffee Please - Yosuke Onuma
6. MEGALITH - Masato Honda
7. 12 Colors - Eijiro Nakagawa
8. Scramble - Eijiro Nakagawa
9. Birdland - Joe Zawinul
10. Dynamite - David Stewart / Jessica Agombar
11. Jupiter - Gustav Holst
12. Spain - Chick Corea
13. Into The Sky - Eijiro Nakagawa