【インタビュー】東京ゆみ子とザ・パールミーゴ、コテコテのムード歌謡にラップやダンスが融合した「私ったら困ってます」
『女芸人No.1決定戦 THE W』や『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!』の「山-1グランプリ」などで話題となった<東京ゆみ子とザ・パールミーゴ>の「私ったら困ってます」。夫婦のお笑いコンビ「ホロッコ」のこまりがピン芸人として披露した歌ネタで、コテコテのムード歌謡にラップやダンスが融合した世界観は一度見たら忘れられないインパクトを放っている。5月12日から順次カラオケ配信もスタートするということで、さらに注目を集めること間違いなし。今回は東京ゆみ子ことホロッコこまり、そして相方であり夫のほり太に<東京ゆみ子とザ・パールミーゴ>誕生の経緯などを聞いた。
■ムード歌謡といえば地名が出てくると思うんですが
■そこにタップダンス、ラップ、セリフっていう全乗っけ(笑)
──<東京ゆみ子とザ・パールミーゴ>の「私ったら困ってます」。いよいよ5月12日からカラオケ配信が順次始まりますが、今のお気持ちを聞かせてください。
ホロッコこまり:生きている中で、自分が歌っている曲がカラオケで配信されるなんて思ってもいなかったので信じられないような気持ちというか(笑)。カラオケで配信されたりしたらいいねっていう話はしていたんですが、そもそも歌手でもないし、普通にネタとして作ったものなので、まさか本当になるとはという感じです。でもカラオケに行ってデンモクで自分の名前を検索できるようになるのかと思うと、嬉しいし楽しみでもあります。
──<東京ゆみ子とザ・パールミーゴ>はどういうきっかけで生まれたんですか?
ホロッコこまり:最初は、2020年の『女芸人No.1決定戦 THE W』に何かいいネタが出来たら出ようかっていう話をしていて。
ほり太:前々からそうだったんですが、僕らコンビでやってしまうと、僕が主にネタを書いているから「自分にはこれはできないな」とか「自分の能力ではこの台本はこなせないからやめておこう」という感じで、自分にストッパーをかけてしまうところがあったんです。でもこまりに関しては何でもできると思っているので、こまり1人となるとストッパーが外れる。だから思いっきり、面白いと思うことや好きなこと、昔からやりたいと思っていたことをやろうかなと思ったのがきっかけでした。2人ともムード歌謡や昭和歌謡、昭和ポップスのような、僕らが小中学生の頃に歌番組で見ていたものや親世代が年末の紅白で見ていたような時代のものにもともと興味があったので、ネタにできたらいいねっていう話はしていたんです。
ホロッコこまり:その何年か前の単独ライブでも「ザイアイ」というムード歌謡っぽい曲に合わせて男女がデュエットしているっていうネタをやったんですね。歌詞はちゃんとした日本語じゃなくて、雰囲気だけの言葉を羅列してるっていう(笑)。
ほり太:その時も、やっぱりムード歌謡は面白いと思っていました。こまりは以前も『THE W』に出たことはあったんですが、上手くいかなかったということもあり、とにかく今回は本気で強いものを出そうと。やりがいのある大会だし、僕もこまりの良さを全面に出すものを投げられるチャンスだと思ったので、(ムード歌謡に)面白いと思うものを全部乗っけようと考えました。
──確かにいろんな要素が乗っかっていますよね。
ほり太:僕らの笑いって“あるある”とかのように共感の笑いではないんですが、やっぱり強いネタを目指すには「あぁ、わかるわかる」っていう共感の笑いも入れたい。それを、ムード歌謡の曲に合わせて歌う。ムード歌謡といえば「赤坂」とか「乃木坂」といった地名が出てくると思うんですが、それを、意表を突く笑いとして盛り込む。そこにタップダンスを入れて、ラップ入れて、セリフを入れてっていう全乗っけ(笑)。でもいきなり情報量が多いとお客さんは頭に入ってこないかもと思い、絵にしてフリップをめくりながら歌えば補足されるかなと思ったんです。だけど、ムード歌謡の最終的な形はカラオケビデオだよねと。そしたらカラオケビデオあるあるも乗っかるから、昔風の映像演出も盛り込むことにして『THE W』に出たんです。
──実際に『THE W』でネタをやってみて、手応えとしてはどうでした?
ホロッコこまり:今まで1回戦も突破できなかったんですが、このネタでいきなり準決勝まで行くことができたので、これはイケるのかもしれないって思いました。準決勝の持ち時間は4分間だったんですが、この時は最初に喋りとか何も入れず歌だけだったので、ちょっとみんな「何だろう?」みたいな感じになってしまい、あまり笑いがなかったんです。歌として聴き入られちゃったというか(笑)。
──それだけ歌のインパクトがあったということですね(笑)。
ホロッコこまり:(笑)。決勝までは行けなかったんですが、その後はネタの頭に「本人出演のカラオケ映像お披露目会です」みたいなセリフも入れ、歌を短くつまんでやるとオーディションにも通るようになったんですよね。
ほり太:これはあるオーディションの時の話なんですが、番組の演出の方が現場の様子をリモートでご覧になっていたらしく、たまたまスタッフさんと名刺交換をしようと思って僕が部屋に戻った時に、その方が画面の向こうでこの曲を口ずさんでいらっしゃる声が聴こえてきたんですよ。すごくご機嫌な感じで(笑)。これは良いものがやれているんだなって思いましたね。スタッフさんが芸人のネタを繰り返して歌うなんて、そんなことあまりないですから。これは普通とは違うインパクトの与え方をするんだなということは感じました。
──となると、その流れにもしっかり乗っかって行きたいところですよね。
ほり太:でも2021年の『THE W』では、このネタをやらなかったんです。全く別のネタで勝負しようと。その時は2回戦で落ちたんですが。
こまり:作り込み不足でしたね(笑)。
ほり太:ただその年の「歌ネタ王決定戦」は「私ったら困ってます」で準決勝まで行けました。
──『ぐるぐるナインティナイン』の「おもしろ荘」(2021年)や、『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!』の「山-1グランプリ」(2022年)も大きな話題になりましたよね。
ほり太:『あらびき団』に出演した時、先方の作家さんのアドバイスでネタをかなりショートにしたんです。その結果、こういう風にするとかなり強いインパクトが残せるということを学び、「おもしろ荘」と「山-1」に出そうと思ったんです。「おもしろ荘」は最終選考まで行き、また何か次に繋がりそうだなという手応えを感じました。で、その後に『ガキ使』から合格の連絡が来て、これはやったなと。僕ら、お笑い界のトップはダウンタウンさんだと思っているので、かなり“やった”感がありましたよね。
──そこに、カラオケの第一興商が飛び込んでくるというミラクルまで起きたわけですね。
ホロッコこまり:そうなんです(笑)。「ガキ使」が終わって、SNSではすごく好評なコメントをいただいていたんですが、だからと言って何か仕事のオファーが来るとかそういうこともなく(笑)。「どうなんだろうなぁ」と思っていた時、最初にご連絡をいただいたのが第一興商の方からのメールだったんです。「こんなことが起きるんだ!」って感じでした(笑)。
──カラオケ映像あるあるまで盛り込んで作ったネタが、正しいところにたどり着いたと(笑)。
ホロッコこまり:本当に(笑)。そうなったら面白いよなとは思っていましたけど、そのためにはもうちょっと知名度というか、テレビとかにも出て売れないと。つまりまだまだ先のことだと思っていたので『ガキ使』に出て、その1回で(カラオケの話が)来るとは思ってなかったです。
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