【インタビュー】MATSURI、『ハレノヒ』に5つの物語と非日常「その時々の特別な想いを」
■金魚は水槽の中でしか輝けない
■私もステージでしか輝けないんです
──楽曲「ハレノヒ」は2月に先行配信されましたが、サウンドがエキゾチックな風味ですね。
MATSURI:はい。今までの私の楽曲とはまたちょっと違っていて、アップテンポな異国情緒に溢れたサウンドになっています。
──中華風味もどことなく漂っているのが独特です。銅鑼が鳴っているわけではないんですけど、なんとなく銅鑼が聞こえるような感じがあります。
MATSURI:そうですね(笑)。ミュージックビデオはダンサーのみなさんに出演していただいたんですけど、この楽曲のダンサブルな部分を表現していただけました。お気に入りのミュージックビデオです。
──異世界に迷い込んだような雰囲気のミュージックビデオですね。
MATSURI:はい。ファンタジーのようなミステリアスさがあって、行ってみたくもなるこういう世界観は、私もすごく好きなんです。歌詞の中に春夏秋冬を感じる単語が散りばめられていて、日本の四季が持つ美しさや、どんな瞬間も持っている特別さも表現されていると思います。こういう楽曲を聴きながら、“何気ない日常も特別なんだ”とみなさんに感じていただけたら嬉しいです。
──この曲もまさにそうですけど、日本語の響きを大切にしていますよね?
MATSURI:そうですね。「ハレノヒ」には“冬の花火”という言葉が出てくるところも好きです。花火と言えば夏のイメージが強いですけど、こういう遊び心を感じる表現もお気に入りです。
──「蛍」も和的情緒がありますね。恋で身を焦がす様が“蛍”というモチーフに託されていて、とてもイメージが膨らみます。
MATSURI:これは昨年8月に配信した2ndデジタルシングルの楽曲なんですけど、今回の作品を通じて、改めてぜひ聴いていただきたいです。
──TREKKIE TRAX CREWの手掛けるサウンドは、クラブミュージックの要素が根底にありますけど、MATSURIさんがもともと聴いていた音楽とはまた別ですよね?
MATSURI:はい。こういう楽曲を歌わせていただくことによって、聴く音楽の世界も広がっていっています。今までは洋楽やヒップホップとかはあんまり聴いてこなかったんですけど、K-POPとかも含めて幅広く聴くようになりました。
──配信シングルの「蛍」のジャケットは、書道アーティストの原愛梨さんとのコラボレーションでしたね。今作のジャケットもMoecoさんとのコラボレーションですが、様々なアーティストのみなさんにアートワークを手掛けていただく喜びとは何ですか?
MATSURI:アーティストの方々に表現していただくと、楽曲の持っている世界観の新しい一面をみなさんに感じていただけると思うんです。そういうものがコラボレーションの面白さですね。今回のアルバムには収録していないんですけど、デジタルシングル「線香花火」のリリックビデオはイラストレーターのゆのさんにイラストを描いていただきました。こういう表現の仕方はこれからも大切にしていきたいです。さらにたくさんのアーティストの方々とコラボができたら嬉しいですね。
──様々なアーティストとのコラボが、例えば音楽フェスとか主催イベントに繋がったりしたら楽しいでしょうね。フェスの名前は<MATSURI 祭り>とか(笑)。少し脱線してしまったので、曲のお話に戻りましょう。「凪」もすごく良い曲ですね。
MATSURI:“大正浪漫感がある楽曲を作りたい”というのがあったんです。サビに入っているトランペットの音からも大正浪漫を感じていただけると思います。
──大正浪漫や昭和レトロ、懐かしさや郷愁を誘う作風というのは、やはりMATSURIさんの音楽に一貫してある要素ですね。
MATSURI:やはり“懐かしい感じがする声”と言われることが多いので、こういうものになるんだと思います。
──激しい熱量が魅力的なシンガーもいますけど、MATSURIさんの歌声は穏やかな気持ちになる落ち着いたトーンですね。和的なモチーフも、MATSURIさんのそういう歌声に合っているんだと思います。「金魚すくい」も、まさにそういう曲ですし。
MATSURI:1stデジタルシングルだった「金魚すくい」は、ドラマ『私の夫は冷凍庫に眠っている』の主題歌で、もともとは小説だった作品がコミック化されていたんですよね。私はドラマ主題歌のお話をいただく前からコミックを読んでいたので、選んでいただけて驚きました。お姉ちゃんに「やばい!」って報告して、ハグし合いましたから(笑)。
──感慨がありました?
MATSURI:はい。本当に嬉しくて、Paraviで何回も観ました。ドラマを観てくださった方々が「主題歌いいね」とか、コメントを寄せてくださるのも、すごく励みになりましたね。「金魚すくい」は主題歌のお話をいただいてから制作した楽曲ではなかったんですけど、「このドラマに合ってる」って言われたのも嬉しかったです。たくさんの方々に聴いていただくきっかけをくれた金魚には、感謝しないといけないですね。
──金魚すくいを彷彿とさせる“溶けそうな恋じゃなくってさ すくえる幸せをすくいたいの”という表現もそうですけど、優美さの根底にある力強い意志を感じる曲です。
MATSURI:この曲は金魚を自分自身に喩えて、揺れ動く切ない恋心を描いています。“私を選んで 選んでほしいの”とか、意志を感じる表現も入っているんですよね。金魚ってヒブナを品種改良した魚なので、川に放流するともとのヒブナに戻るらしいんですよ。つまり金魚は水槽の中でしか輝けない生き物なんです。そういう姿も、私自身と重ねながら歌っています。私もステージでしか輝けないですし、そういう私をみなさんに見つけていただきたいです。MATSURIとしての想いも、この楽曲に込められています。
──心地よい空間に包まれる感覚にもなる曲です。
MATSURI:イントロが「水の中にいるみたい」と感想を言っていただいたこともありました。
──ミュージックビデオでは、水の中を漂うシーンがありましたね。
MATSURI:はい。初めてのミュージックビデオ撮影だったので、すごく緊張しました。私、実は泳げなくて……。そういう意味でのドキドキもありました(笑)。素敵なミュージックビデオに仕上げていただけて良かったなあって思っています。
──泳げないんですね?
MATSURI:そうなんです。でも、撮影している途中からどんどん楽しくなって、金魚になったつもりの私を撮影していただけました。ミュージックビデオもそうですけど、いろいろな方々と一緒に何かを生み出すのって、やっぱり楽しいですね。
──「幻月」も、とても素敵ですね。MATSURIさんの歌声が、鮮やかに浮き彫りにされている曲です。
MATSURI:「幻月」って、月の光が強過ぎて左右に幻の月が現れているように見える現象なんです。“振り返ってみたら特別だったな”と感じられることを、幻月に喩えて表現しています。
──これも歌声の穏やかなトーンの中に力強さを感じます。
MATSURI:楽曲によってではあるんですけどね。今のところ、スローテンポのバラードを歌うことが多いんです。そういうのもあって、おっしゃっていただいたような印象になっているのかもしれないです。
──今回の作品を振り返って、改めて感じていることは何かありますか?
MATSURI:タイトルが『ハレノヒ』ですし、込めているコンセプトをすごく感じていただける作品になったと思います。特別な日、ワクワクする気持ちをいろいろな楽曲から感じていただけたら嬉しいです。“ハレノヒ=晴れの日”という言葉は知っていても、あまりなじみはないのかもしれないですよね。だけど、「ハレの日だね」とか「ハレだね」とか会話の中で使っていただけるようになったらいいですね。
──ライブの機会も、今後増えていくでしょうね。
MATSURI:ライブ、やりたいですね。先日のバースデイライブの時に、ピアニストの方と、ギタリストの方にサポートしていただいたんです。生バンドの演奏で歌うというのは、とても楽しい時間でした。息を合わせて一緒に表現していくことに大きな喜びを感じたんです。これから、そういう機会がどんどん増えていったら嬉しいですね。
取材・文◎田中大
■コンセプトミニアルバム『ハレノヒ』
https://beinggiza.com/subsclink/?no=maHARENOHI
01. Intro:Stay on.
02. ハレノヒ
03. 蛍
04. 凪
05. 金魚すくい
06. 幻月
07. ハレノヒ instrumental
08. 蛍 instrumental
09. 凪 instrumental
10. 金魚すくい instrumental
11. 幻月 instrumental
■『ハレノヒ』チョークアート原画展示
展示場所:HMV&BOOKS SHIBUYA
展示期間:2022年4月20日(水)〜5月3日(火)
◆インタビュー【1】へ戻る