【インタビュー】MATSURI、『ハレノヒ』に5つの物語と非日常「その時々の特別な想いを」

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沖縄を拠点に活動を重ねるMATSURIが4月20日、自身初のコンセプトミニアルバム『ハレノヒ』をリリースした。同アルバムは、J-POPを聴きながら歌う喜びを育んできたというMATSURIと、TREKKIE TRAX CREWによるサウンドプロデュースが絶妙に融合している作品だ。クラブミュージックを土台としつつも和的情緒や多国籍な要素も加えた各曲は、新鮮な旋律と物語を伝えてくれる。

◆MATSURI 画像

先ごろ公開したチョークアーティストMoecoとの対談では、『ハレノヒ』ジャケットアートアーク製作秘話はもとより、歌を始めたきっかけやMATSURIの名前を世に知らしめたYouTube動画について明かされた。今回はシンガーとしてのバックボーンや初ステージの思い出をはじめ、アーティストとしての足跡と最新作『ハレノヒ』に深く迫る。歌声に包まれるひと時が心地よい『ハレノヒ』に収録された1曲1曲についてもじっくりと話を訊いた。

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■普通の日であるように感じても
■誰かの特別な日、誰もが特別な存在

──子供の頃から音楽が好きだったんですか?

MATSURI:聴くのは好きでした。家族も音楽が好きだったので、歌が身近にある環境でしたね。玉置浩二さん、中島みゆきさん、中島美嘉さん、BoAさんとかが好きで、よく聴いていました。

──「聴くのは好きだった」というのがポイントですね。人前で歌うのが苦手で、家族とカラオケに行っても歌わなかったという話を、前回の対談取材でうかがいましたから。

MATSURI:そうなんです(笑)。聴くのは好きだったんですけど……。


──小学生の時、家族で行ったカラオケで歌ってみたら、拍手を受けて、それで歌う楽しさに目覚めたんですよね?

MATSURI:はい。“カラオケ事件”があってから、歌うことが楽しくなりました(笑)。それ以来、授業とかで歌うのを嫌がっている友達とかを見ると、“何でだろう? 楽しいのにな”と思うようになったんです。

──当時から「歌、上手いね」とか言われていました?

MATSURI:どうなんでしょう? “上手い”とかよりも“歌声が大きい”みたいな感じで思われていたのかもしれないです。

──歌を褒められた最初の体験は、覚えています?

MATSURI:小学校6年生くらいから通い始めたボーカルスクールですかね。途中から教えてくださるようになった女性の先生で、今もずっとお世話になっているんですけど、「MATSURIはキラキラしてるね」って言っていただいたことがあって。“自分がするべきこと”と言ったらあれですけど、“私には歌しかないのかもしれないな”と思うようになったきっかけでした。

──ライブハウスで歌うようになったのは、いつ頃からですか?

MATSURI:中学校2年生の冬くらいからでした。地元・沖縄の北谷にモッズというライブハウスがあって。そこで誰でも出られる飛び入りライブをやっていたんです。“歌いたいな”と思って、お母さんに連れて行ってもらったんですけど、その時、ライブハウスのスタッフさんから「ライブに出てみない?」って声をかけていただいて、毎月出演できるようになったんです。その後、徐々に那覇とかのライブハウスにも出るようになりました。


──ライブハウスで歌っている映像を高校時代からYouTubeに公開するようになったそうですが、2019年10月にKing Gnuの「白日」をカバーした動画がバズって、デビューに繋がったんですよね?

MATSURI:はい。「白日」は、本当に難しかったです。すっごい練習しました。それまでも動画の投稿をしていたんですけどあまり再生数が伸びなくて、“どうやったらバズるのかな?”ってずっと考えていたんですね。「白日」を女性でカバーしている人があまりいないことに気づいて、歌ってみることにしたんです。けど、次のライブまであまり時間がなかったんですよ。“どうやったらこの曲を自分なりの表現で歌えるのかな?”って思いながら、毎日歌い込んで練習しました。キーを上げると「白日」の良さがなくなっちゃう感じがして、そこも大変でしたね、いろいろ試行錯誤した結果、あの動画みたいになりました。

──「白日」の動画の再生数が急に伸び始めた時は、びっくりしたんじゃないですか?

MATSURI:アップして、翌朝起きたら1万とかいってたので、“バグかな?”って(笑)。

──“全国のいろんな人が、自分の歌っている姿を観ている”と感じる体験は、やはり独特でしょうね。

MATSURI:そうでしたね。“これがバズるということなのか!”って思いつつ、不思議な感覚でした。

──そういう出来事を経て、メジャーデビューに繋がっていったわけですが、どういう活動をしていくことをイメージしていましたか?

MATSURI:レコード会社のみなさんは、私自身が持っている「世界観を大切にしていきたい」とおっしゃってくださったんです。YouTubeで活動していた時もMATSURIという名前だったので、そこから“祭りの日” “ハレの日”が、活動のコンセプトになっていきました。祭りの日が持つ非日常感、特別感、ワクワク感、不思議な感覚を大切にしたくて、居場所がない孤独感を抱いている方に“そんなことないよ”って伝えられるような音楽をお届けしたいと思っています。普通の日であるように感じても、誰かにとっては特別な日ですし、誰もが特別な存在ですから、そういうことを歌を通じて伝えていきたいです。


──沖縄在住ですけど、地元から発信していくことに対する想いも強いのでしょうか?

MATSURI:そうですね。今の時代は住んでいる場所とか年齢に関係なく発信できるようになっていますから。エリアレスでありたいということも思っています。

──エリアレスという点で言うと、YouTubeやSNSには海外からの反応も結構ありますよね?

MATSURI:はい。とてもありがたいことです。

──どこかノスタルジーを誘うフィーリングや和的情緒が、海外のみなさんも含めたリスナーが心惹かれている理由なのかなと感じるんですけど、ご自身ではどう思いますか?

MATSURI:そうだったら嬉しいです。YouTubeのコメントとかで、“懐かしい感じがする”と書いていただけることがよくあるんです。そこは大切にしていきたいと思っています。

──楽曲のサウンドプロデュースに関しては、TREKKIE TRAX CREWがずっと手掛けてくださっているんですね?

MATSURI:はい。DJとしても活躍されていて、新しいサウンドに敏感なみなさんですけど、私の歌声が持っているものを大切にしてくださるんです。それによってTREKKIE TRAX CREWさんの良さと私が持っているものが融合した音楽になっているのかなと思います。


──これまでの配信シングル「金魚すくい」「蛍」「線香花火」「ハレノヒ」も、まさにそういう曲でしたよね。今回のコンセプトミニアルバム『ハレノヒ』は、どのような1枚にしたいと思っていました?

MATSURI:まさに“ハレノヒ”がテーマになっていて、インストと1曲目「Intro:Stay on.」を含めて11曲入りなんですけど、それぞれの曲に物語があるんです。“その時の特別な想い”を表現したいと思っていました。

──リアルタイムでは平凡だと感じていた日も、時間が経ってから振り返ると特別な時間だったと思えることがありますし、そういう感覚が描かれていますよね?

MATSURI:はい。過ぎ去ってしまったからこそ美しく感じられたり、もう戻れないからこそキラキラ輝いていることってありますから。

──“ハレノヒ”は、日常の延長線上にあるということでもあります?

MATSURI:そうなんです。例えば結婚式とかまさに“晴れの日”だと思うんですけど、そういう感じの曲はこのアルバムには入っていないんですよ。そういうことよりも、何でもない日常を表現しています。それが聴いてくださるみなさんの思い出、記憶の中にあるものに重なったら嬉しいです。

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