【対談】MATSURI × Moeco、シンガーとチョークアーティストの異種混合に漲る「作品の輝かせ方とそれぞれの物語」

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■金魚がくれた出会いに感謝しています
■金魚に愛おしさを感じるようになりました

──Moecoさんはオーディションでの受賞経験やチョークアートとの出会いから人生が大きく動き始めたわけですけど、MATSURIさんも今、そういう時期にいるんじゃないですか? 高校生の時、YouTubeに動画をアップしたらものすごい反響があって、それがメジャーデビューに繋がったんですよね?

MATSURI:はい。学園祭の後夜祭で歌ったり、地元のライブハウスで歌っている動画は、もともとアップしていたんです。でも、再生回数が100回行ったら“おっ!”ってなるくらいで、チャンネル登録者数も60〜70人くらいでしたから、全然観ていただけなくて。でも、King Gnuさんの「白日」のカバー動画をアップしたら、いつもと違う動きをし始めたんです(※1年間で約275万回を突破)。あの時、“人生って何があるかわからないなあ”って思いました。


Moeco:“誰にも知られていなかったのに、なんでこうなったんだろう?”っていう感覚は私にもありました。デビュー当時は、特技として番組で絵を描かされたりすることもあったんですけど、それ以降は周りの一部の人くらいしか私が絵が好きだってことを知らなかったんですね。私自身は絵が好きだから、ずっと描き続けていて。ある時から「絵を見たよ」とか「個展に行きたい」っていろいろな人から声をかけていただけるようになって。なんでそうなったのかは、今でも不思議。でも、現代はSNSとかインターネットを使って発信できる時代なので、MATSURIちゃんも自分がやりたいと感じたことは迷わずにやったほうがいいと思います。

MATSURI:ありがとうございます。Moecoさんに言われたら、やりたいことをどんどんやって大丈夫だという気持ちになりました。

Moeco:自分に言い聞かせている感じもあるんですけどね(笑)。自分がMATSURIちゃんくらいの年齢だった頃のことを考えると、個人が世界へ発信できるようになっている現在の環境は羨ましいですね。

MATSURI:今はまだコロナ禍が続いていることもあって、みなさんも、どうしても気持ちが落ちたりしちゃうと思うんです。でも、Moecoさんのお話を先ほどから聞いていて、芯の強さをすごく感じていて。どうやったらメンタルを維持しながら強くいられるのか、ぜひお訊きしたいです。

Moeco:意味もなく気分が落ち込む日って私にもあるんですけど、そういうことにあまり逆らわないようにしています。“駄目な日は駄目だから何もしない”とか、“「何もしない」をする”みたいな。あと、コロナの影響で何かができなくなったとしても、“ちょっと先延ばしになっただけ”と思うようにしていますね。例えば“海外での展示会ができない”という状況になっても、“2年後くらいにはできるし、それまでにもっといい絵を描けるようになろう。じゃあ今は何をするべきか?”っていう考え方をしたり。

MATSURI:すごくためになるお話です。私は小学校6年生から中学2年生くらいまでボーカルスクールに通っていたんです。最初は、“歌うことがとにかく楽しい!”っていう感じだったんですけど、歌の奥深さをどんどん知っていく中で、それだけではなくなっていく場面もあったんですよね。

Moeco:私も歌や絵が好きだったからこそ仕事にしたかったわけで、それでもやっぱり嫌いになる瞬間もあるし、“今日は描きたくない”という日もあるんです。でも、“好きだからこそ嫌いにもなるし、好きだから嫌いになった瞬間があってもやれる”っていう感じなのかな。影があるからスポットライトのまぶしさを感じられるわけだし、いつまでも影の中にいることはできない。光に当たらなければいけない。きっとMATSURIちゃんも、そういうバランス感覚を持てるようになると思いますよ。

MATSURI:そうなれるといいな。“楽しい”と思って始めた音楽ですけど、続けていると楽しいと感じる時ばかりではないじゃないですか。それでも、自分で選んだ道だし、支えてくださる方々がたくさんいらっしゃるから、簡単に投げ出すわけにはいかなくて。そんな私の場合、気持ちが落ち込んだ時は美味しいものを食べて、たくさん寝てっていう感じでしょうか(笑)? 唐揚げが好きなんです。お母さんが作る唐揚げが一番好きです。

Moeco:わかります。私が一番好きな食べ物は餃子です(笑)。


▲4th digital single「ハレノヒ」

──2月11日から配信がスタートしたMATSURIさんのデジタルシングル「ハレノヒ」についても訊かせてください。ジャケットのアートワークは、Moecoさんが描いたMATSURIさんのチョークアートですね。

MATSURI:はい。私の写真をお送りして描いていただいたんです。

Moeco:その写真に加えて、「大正ロマン的な着物を描いてください」というリクエストがあったんです。いろいろなお着物を見ながら“違う”と思ったのは、“小さい帽子をかぶって、手袋をして、生地は1色で”みたいなものではないということでしたね。1stデジタルシングルが「金魚すくい」でしたし、そのニュアンスも入れつつ、“MATSURI=祭り”というワードから連想されるイメージと、レトロでかわいい雰囲気を表現したいと思っていました。

MATSURI:私、マネージャーさんにこの絵をプリントアウトしていただいて、それをお家に持ち帰って飾っているんです。宝物です。肌の質感もすごいんですよ。様々な色を重ねて、この感じになっているんですよね。頬や掌の赤味かかっているところとか、ものすごく綺麗です。

Moeco:嬉しいです。掌の感じは私も気に入っています。

MATSURI:見れば見るほど引き込まれる絵です。

Moeco:もともとチョークアートはお店の看板のアートなので、立体的に見える技法ではあるんですけど、強めにコントラストを入れて、より立体感を表現するように描きました。

MATSURI:この絵のお着物に“晴れの日=ハレノヒ”を感じます。

Moeco:この絵を描くにあたって、いろいろなお着物を見させていただいたり、WEBサイトやSNSとかも見たりしたんですね。これは実際にあるお着物がもとにはなっているんですけど、全く同じではないんです。Instagramに写真を載せていた方に「これをもとに描いてもいいですか?」とご連絡したところ、「大丈夫ですよ」とおっしゃっていただけて。その写真にアレンジを加えながら描いたものです。

MATSURI:このお着物がもしお店で売られていたら、絶対にゲットします(笑)!


▲Moeco

──アート活動をしている者同士、共鳴し合うものがあるようですね。

Moeco:そうですね。音楽もそうだと思うんですけど、絵を描くという制作もすごく孤独な時間なんです。今回はある意味、“誰かと一緒に創作活動をする”ということができましたから、ジャケットを描かせていただけたのは、とても楽しかったです。出来上がった絵を見た時の喜びも倍になりました。

MATSURI:たくさんのみなさんとの出会いがあるということは、私も音楽をやりながら感じるようになっています。ドラマの主題歌を歌わせていただいたことによって、Moecoさんとこうして繋がることができましたから。金魚がくれた出会いにとても感謝しています。今までは金魚を見て特に何か思うってことはなかったかもしれないけど、愛おしさを感じるようになりました。“金魚”という単語を聞くだけで身体が反応するようになっています(笑)。

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