【インタビュー】BURNABLE/UNBURNABLE、“捨てたい感情=ゴミ”から生まれたダークポップ「曲に帰ってきてもらうということ」
■眠れない夜や涙溢れる時に思い出す曲
■そういう音楽の在り方っていうものがある
──「灰になって空を舞う」の歌詞に描かれた“あなた”はお母さんのことですね。re:cacoさんは音楽にあふれた環境で育ったということでしたが、“好きなショパンを儚く弾いている”という歌詞にあるように、お母さんもピアノを弾かれていたんですか?
re:caco:そうです。実は先日のライブのときも私からお願いして、開場後の場内に流れる音楽を全部ショパンにしてもらったんです。歌詞に“ショパンを弾いている”という描写があるから、そこにつながるものにしたいなという思いがあって。気づいてくれた人がいるかはわからないですけど。
──“あなた”という、限定された人に宛てて書いた歌詞ではありますが、一人称の“僕”ではなく“僕ら”という表現をしていますね。
re:caco:きっと私だけの思いじゃないなって思ったんです。書いたときは意識的に“僕ら”という言葉にしたわけではなかったんですけど、感覚的に“僕ら”がすっと出てきたんです。私にとっては“あなた”がお母さんであるかもしれないですけど、聴いてくれる方にとってはまた違う“あなた”にもなると思うので。そういう思いもあって、“僕ら”という表現はすごく自然に出てきたんだなと思いますね。
▲<FUNERAL ver.0.0.0 by BURNABLE/UNBURNABLE>
──「灰になって空を舞う」は、悲しい感情や痛みであふれていた別れが、いつしか普遍的で美しく尊いものへと昇華されていく、その過程が物語的に描かれています。歌詞にしていくにあたっては、re:cacoさん自身記憶や感情を整理していく感じがあるんですかね。
re:caco:そうですね……ただ私はあまり過去を振り返らないようにしているというか、後悔をしたくなくて。振り返らないタイプだから、歌詞を書くときにいろんなことを思い出していくんですけど。そこで、ただただ昔のことを言いたくはなくて。“これからどうしていくか”とか“これからどうなってほしいか”とか、そういうメッセージを書けたらいいなっていうのがあって。“こういうこともあったけど、それでもいいよね”みたいな。そんなことを言えたらいいなというのがあるんです。
──振り返らないというのは、何かそういうきっかけがあったじゃないですけど、自分から振り返らないようにしようと決めた感じですか?
re:caco:無理矢理そうしようとした時期はありましたね。
──じゃないと、ネガティヴな思考に入っていっちゃうような。
re:caco:そうですね。そこからきっと、振り返らないように、というのがクセになったのかもしれないですね。きっと何か嫌なことがあったんじゃないかなって思います(笑)。
──歌詞を書くとなると、そのどこかに閉じ込めた思いを引っ張り出して、また味わってみるという体験があるわけですね。
re:caco:結構ネガティヴなモードに入らないと歌詞が書けないので、つらい作業ではあるんですけどね……。
▲<FUNERAL ver.0.0.0 by BURNABLE/UNBURNABLE>
──「灰になって空に舞う」でいいなと思うのは、それまで星のなかった空や、明日への希望が見出せなかったところから、徐々に季節の風を感じて、顔を上げて、一番星が輝いているのを目にするという、ポジティヴなストーリーになっているところです。BURNABLE/UNBURNABLEのコンセプトとして、“あなたの捨てたい感情をも肯定する音楽を”というのがありますよね。これはユニット名にも由来するもので、“BURNABLE/UNBURNABLE=可燃ゴミ/不燃ゴミ”であり、“捨てたい感情=ゴミ”から生まれた音楽プロジェクトであるということが謳われています。つまり、悲しみを悲しみとして感じていいんだよということでもあると思いますが、「灰になって空に舞う」のなかではその先にもう一歩前に進んで、前を向くとか、顔を上げる感じがありますね。
re:caco:そうですね。「灰になって空に舞う」もそうですが、よりそれが出ている「ふらふら」は、そういうことを意識しましたね。気持ちが落ちたときには聴きたくない曲とか、音楽自体も聴きたくないこともあると思うんです。そこからまた少し前を向いたときに、戻ってきて、聴いてくれたときに、進めるような曲を作りたいと思ってできたものが「ふらふら」で。この曲には私自身も救われたので。みなさんにも届けばいいなと思います。
──「ふらふら」は昨年10月の1st EP『BURNABLE TRASH』のCD盤に限定収録されていた曲でしたが、今年2月に配信リリースもされましたね。反響も多かったり、BURNABLE/UNBURNABLEというプロジェクトとしても多くの人に聴いてもらいたいという思いも芽生えた感じですか?
re:caco:そうですね。EPをリリースしたときに「ふらふら」を「すごく好き」と言ってくれる人も多くて。「この曲を共有したい」ということを言ってくれる人もいたので。CDだけに収録するという限定感もいいんですけど、リリースからある程度時間が経った今、さらに多くの人のものになってくれてもいい曲だなと思ってリリースすることにもなりました。
──こうして作品を重ねてきて、またライブも行ったことで、何か新しいものが見えたり、こういうものをやってみたいなど出てきていることはありますか?
re:caco:ちょうど昨日レコーディングをしていたんですけど、冒頭でもお話したように、ライブを経験したこともあって、伝えるという意識が出ているのか、「ボーカルに変化がある」って須藤さんが言ってくれていたんです。まだ自分では、その変化がわからないところもあるんですけどね。あとは今後、新しいメロディメイカーの方に参加してもらおうという考えもあって、それが先日のライブでサポートしてくれた方なんです。一緒に曲を作って、それをさらに須藤さんにアレンジしてもらったりとか、今までやったことのない作り方というのもやってみている感じです。
▲<FUNERAL ver.0.0.0 by BURNABLE/UNBURNABLE>
──変化を重ねながらも、BURNABLE/UNBURNABLEというコンセプトはますます揺るがないものになっていくんでしょうね。
re:caco:私たちが大事にしているのは、流行っているからとか、リリースされたときだけ聴いてもらうのではなくて、例えば夜眠れないときでもいいし、悲しいことがあって涙が出てしまう日でもいいんですけど、そういうタイミングで思い出して、曲に帰ってきてもらうということ。そういう音楽のあり方っていうのがあるんじゃないかなって思っています。そういう実験みたいなことは、BURNABLE/UNBURNABLEを通してやりたいですし、そういう音楽の聴き方が普通になってきたらいいですね。
取材・文◎吉羽さおり
■デジタルリリース「灰になって空に舞う」
Label:DOPE Distribution:NexTone
https://nex-tone.link/AshintheSky
▼収録楽曲
01.灰になって空に舞う
【re:caco (Vo)コメント】
約1年間発表を待っていたこの曲を、やっと世に出すことができました。こうして春にリリース出来た事を、とても嬉しく思います。私の個人的な想いが沢山詰まったこの曲を多くの方が大切にして下さったら、私はとても幸せです。
この曲は私の亡き母に向けて描いた曲です。完成した時はとても感動して泣いてしまったのを覚えています。
たくさんの後悔と反省と、「伝えたいことなんて一つも伝えられていないからなんで私は生きているんだろう?」とか、「生きる価値なんてないよな」と自ら死を選ぶようなことも考えたけど、母は私の中で永遠に生き続けているんだな、と少し前向きになれた今の私だからこそ、意味のある曲になっていると思います。そんな感情も哀しい記憶も、大切な私の心の宝石箱に大事に仕舞ってこれからも生きていたい。皆様もどうか、私たちと一緒に生きてください。
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