【インタビュー】niKu「出来上がるまでのスピード感はものすごかった。“なまけもの”という曲名なのに」
■どんなものが共感されるかとか正直わからないので
■僕が感じることそのままでいいかと素直な気持ちを書いた
――「灯火」「シオン」「オーライア」「なまけもの」と、楽曲がリリースされるごとにniKuのポップセンスの可能性が広がっていると感じました。それには奏音さんのヴォーカルの表現力も大きく関わっているのだろうなと思います。
Chinozo:奏音さんはレコーディングのたびに上達しているんです。がちゃさんや僕にはそういう姿は見せないけれど、かなりまじめで努力家だなと思っています。
がちゃ:奏音さんは本当に一生懸命頑張っていて、3人のなかでいちばん若いのにものすごくしっかりしているんです。わたしはふたりに比べて音楽に対する知識が薄いけど、そんな人間でも「なまけもの」のヴォーカルを聴いたときに、一気にレベルが上がったなと思って。だからこの先も、Chinozoさんがどんな曲を作って、奏音さんがどんなふうに歌ってくれるのか楽しみなんですよね。
奏音:Chinozoさんは作る曲全部すごいし、歌詞で気持ちを表現するときとかの言葉選びもすごくうまいし、アドバイスもすごく的確で。がちゃさんはお母さんみたいに優しくてしっかり者で、いつも頼ってばっかりなんです。おふたりとも本当に優しくていい人。だからもっとわたしも努力しなきゃ……と思うんですよね。表立った場所に立つのはわたしなので、それに見合うヴォーカリストにならなきゃなと思っています。
――理想的な関係性ですよね。お互いを鼓舞しながら、この取材もリモートとは思えないほど和気あいあいとしていて。
がちゃ:あははは。ファミリー感があるユニットだなと思います(笑)。
Chinozo:たしかに(笑)。すごくいいメンバーと巡り合えてうれしいですね。
――2月9日、ニクの日にリリースされた「なまけもの」は、シニカルなポップソングで。これまでのniKuの楽曲とはまた異なるタイプかつ、奏音さんのヴォーカルのレンジが広がった楽曲だと思いました。こちらはどういう経緯で生まれたのでしょう?
Chinozo:去年の10月に「オーライア」をリリースして以降、僕がずっとバタバタしていてniKuの制作に取り掛かれなくて。そんなときに“そろそろniKuの楽曲を出してほしい”とケツを叩かれまして(笑)。“共感しやすい歌詞だとうれしい”というオーダーを受けていたんですけど、どんなものが共感されるかとか正直わからんし、もう僕が感じることをそのまま書いたらいいかーと素直な気持ちを書いた結果が「なまけもの」です(笑)。
がちゃ:出来上がるまでのスピード感はものすごかったですよね。「なまけもの」という曲名なのに(笑)。
――(笑)。Chinozoさんがお作りになるVOCALOID楽曲と近い雰囲気もしました。
Chinozo:ああ、たしかに。niKuならではの音作りも意識しつつ、VOCALOIDクリエイターとしてのChinozo色が出た曲でもあるのかも。というのも「オーライア」が僕個人の趣味全開の曲なんですよね。でもちょっと全開すぎたかなー……と。バランスを取るために、「なまけもの」はもう少し今っぽい感じにしました。自分で言うのも変ですけど、僕がVOCALOIDクリエイターとして作った楽曲は最近の人にも受け入れられやすいところがあるのかなと思うので、そのテンションで作ったところもあるかもしれない。
がちゃ:今までのniKuにはない毛色の楽曲だったので、絵柄もガラッと変えてみました。でも奏音さんの声のイメージ的にも可愛いものにしたい気持ちは大きかったですね。
Chinozo:それでがちゃさんが送ってくれたのが、MVのサムネの元絵ですね。レコーディングの段階でMVはほぼほぼ完成していたんです。
――では奏音さんは、ほぼすべて揃った状態でレコーディングに臨んだということですね。
奏音:はい。でも今までこういう感じの曲を歌ってこなかったし、あまり聴いてこなかったので、Adoさんの歌い方の雰囲気を参考にさせていただいて。
Chinozo:Aメロの歌い方とかは新鮮だけど、サビはちゃんと奏音さんらしさが出てるんですよね。サビのロングトーンはすごく上達していて。
奏音:Chinozoさんが頭に残りやすい歌詞やメロディを大事にしていると話していたとおり、「なまけもの」は特にサビがそうだなと思って。ドラムが入ってくるところとかは後ろから押されているような感じがしたし、これまでは聴いてこなかったアーティストさんや音楽に触れられたりもして、すごく楽しいんです。なまけもの感が出るように、だるーい感じを出したくて。生々しい歌にできたらなと思って、直近何日間はスウェットで過ごしたりして(笑)。レコーディングの日もパーカーにして、雰囲気作りをしていきました。
――MVの世界観とリンクする環境作りをしていったんですね。がちゃさんの作るアニメーションのシンボル的な電子機器は、「なまけもの」の世界ともしっかりリンクしていると思います。
がちゃ:ああ、電子機器を動画に使うのは完全に趣味です(笑)。ヴィジュアル的にも若者に響きやすいイメージもあるんですよね。若い子たちが共感しやすいイメージを入れられたらな……というのはいつも心掛けています。
――niKuの結成から1年半ほど経ち、4曲リリースしてみたことで見えてきたものはありますか?
Chinozo:僕自身は結成当初とあんまり変わらないかな。niKuで書きたい曲を書き続けるだけ。逆に奏音さんとがちゃさんがやりたいことがあるなら、僕はそれに乗っかりたいし……だからいっぱいチャレンジをしていきたいですね。奏音さんにいっぱいいろいろな曲を歌ってほしい!(笑)。
奏音:(笑)。今までに歌ったことのないタイプの曲を歌っていきたい気持ちは大きいです。もともと自分は低い声に自信がなくて高い声ばっかり使っていたんです。でも「なまけもの」で初めて低い声にチャレンジできて。それは自分だけで活動していたら踏み出せなかったと思います。得意なものを伸ばすだけではなく、苦手なところにもチャレンジできたらできることも増えるし、ひとつのイメージに縛られず、いろいろなことができたらなと思っています。
――Chinozoさんとがちゃさんが奏音さんのことを努力家とおっしゃっていますが、それだけ努力できるほど歌がお好きということだろうなと。
奏音:ほんとめっちゃ歌が好きです(笑)。何時間でも歌っていられるんですよね。“もっとこんなふうに歌いたい”というイメージがあるので、自分の歌やほかのアーティストさんの歌を分析するのが好きで。それで時間を忘れちゃうんです(笑)。
――好きなだけではなく、もっとご自身の理想に近づきたいという欲求が掻き立てるということですね。
奏音:そうです、そうです。niKuで矢面に立って活動をするのはわたしだけなので、なおさら頑張らなきゃなと思っています。
がちゃ:お~! 心強い!
Chinozo:この感じなら遠慮なくいろんな曲をばんばん作っていけますね(笑)。今後もリリースやライブが決まっているので、頑張っていきます!
取材・文:沖さやこ
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