【インタビュー】ブライアン・ジャクソン、「私は今まで自分自身を歌手であると認識していなかったんだ!」

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ギル・スコット・ヘロンと数々の名盤の共作者として有名な、伝説的なアメリカ人ミュージシャン、ブライアン・ジャクソン。

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そんな彼がザ・フェノミナル・ハンドクラップ・バンドの創立者であるダニエル・コラスと制作した20年ぶりのソロ・アルバム『This Is Brian Jackson』がBBE Musicからリリースされる。1970年代にギル・スコット・ ヘロンの『Pieces of a Man』や『Winter In America』などの数々の先駆的な傑作に絶妙なフルートとエレピの演奏を吹き込み共作し、多くの音楽ファンを魅了し、その時代を象徴するソウルやジャズ/ファンク・サウンドを確立した。また80年代以降にはスティーヴィー・ワンダー、クール&ザ・ギャング、ロイ・エアーズ、グエン・ガスリーやウィル・ダウニングなどと共演を果たしつつ、昨年Jazz Is Deadからア・トライブ・コールド・クエストのアリ・シャヒード・モハメッドとエイドリアン・ヤングとの共作『Jazz Is Dead 8』を発表し健在ぶりを発揮、 今でも冒険的で、肝要な心の広いアーティストとして活躍している。

『This Is Brian Jackson』はベテランならではの時間軸を超越しているかのような作曲、力が抜けた感じの編曲、人間味とアナログ感がつまった制作技能が集約されており、彼自身の暖かいヴォーカル、独特なフルートと叙情的な鍵盤演奏が中心となった、ブライアン・ジャクソンの魂を扇動させる、心が打たれる音楽が溢れていると言える。そんなブライアン・ジャクソンとダニエル・コラスに話を聞いた。

■あらゆる意味で、本作を完成するのに
■50年の歳月がかかったのか

──二人はどのように出会ったのでしょうか?

ブライアン:ニューヨークのイースト・ビレッジのライヴハウス、Nubluで自分の公演を行ったときに、我々の共通のDJ友達であるグレッグ・カズがひょっとして一緒に制作したらマッチするのではないかと思い、その前提で紹介されたんだ。ダニエルに新しいソロ・アルバムを作ることを打ち明けたときに、今までの過去作品と同様に自分でプロデュースしたくないと伝えた。ダニエルはこう言ったよ。「僕に任せて下さい」。当初なぜ彼がそう言ったのか理解できなかったが、そう彼に言われ、その答えを見つけるのはチャレンジだと受け止めた。結果として、彼は正しかったということになるね。

──このプロジェクトの音楽的な方向性に関して、事前に打ち合わせしたのでしょうか?

ブライアン:当初、この数年間ライヴで演奏している楽曲を生でレコーディングしたいと思っていたが、ギル・スコット・ヘロンの遺族と問題があったので、実現するのにかなり困難だったので諦めたんだ。ダニエルは最初からアルバムの制作について全く異なる方向性を考えていた。彼に私はギルと一緒に『Bridges』を手掛けていた1976年頃にソロ・アルバムを作り始めていたことを話した。そのときに何曲か完成しなかった曲も手元にあった。ダニエル自身にとって本作のコンセプトの元は「もしこの21世紀にブライアン・ジャクソンがこの1976年に作り始めようとしたアルバムを完成したら、どんな作品になるのだろうか?」ということだったんだ。

──本作の作曲と録音プロセスについて話してください。

ブライアン:概ね制作するのに11ヶ月かかった。平均毎週2回ほど、自分のブルックリンにあるディットマス・パークのアパートから、ウィリアムズバーグにあるダニエルのスタジオに通ったんだ。コーヒーを飲み過ぎ、余計なほどのタコスを食べ、魅惑的なウィスキーを飲み過ぎながら、二人で音楽的なアイデアを模索つつ、個人的に重要なことをたくさん話し合ったね。本作に収録されている楽曲の歌詞内容は、二人の会話から生まれたんだ。歌詞を執筆するのに手伝ってくれたモルガン・ファレンに感謝の意を述べたい。過去に彼とダニエルは共作したことがあって、「Force Of Will」と「All Talk」で彼らのコラボが復活したわけだ。演奏面ではビンキー・ブライス(ビリー・オーシャン、エヴェリン・シャンパン・キング、ウィル・ダウニング)とラテン・グラミー賞の受賞経験のあるフルート奏者、ドメニカ・フォサティといった旧友達からのたくさんのサポートをもらったね。

ダニエル:そう。私のスタジオで二人で週2回会い、相談しながら作曲とレコーディング作業を繰り返した。たまにビクター・ブラウン(ギル・スコット・ヘロンのバック・バンド、ザ・ミッドナイト・バンドの同僚)やロンドンから良く訪ねてきていた友人のベンなどの訪問者やゲストを迎えた。しばらく経ってから、この期間に大変お世話になり、その感謝を表したく、本作収録の曲の曲名を命名した、近所のメキシコ料理屋で食事をしてからセッションを始めたね。


──本作に参加した他のミュージシャンに関して教えてください。

ダニエル:私は、ビクター・ブラウンがブライアンの右腕的な人だと考えるようになった。彼らは長年共演していて、特にスタジオでの作業に関して、息が絶妙に合っている気がするね。初めて彼に会ったときがブライアン自身のトリオのベーシストとしてだったけど、彼はまた敏腕なギタリストでもあり、Mトゥーメやビリー・オーシャン、ロイ・エアーズなどとセッションしたことのあるレジェンドなんだ。本作で彼はベースとギター(時に両方ともプレイした)を弾いてくれた。ムーサ・ファデラは、ストックホルム出身の私の親友で、世界で最も気に入っているドラマーだ。録音時にツアーでNYに来ていたので、彼に演奏してもらうことを即決めたよ。彼は、「All Talk」と「Mami Wata」で叩いてるよ。

NYの音楽シーンでの交流の中でカイト・サンチェスと知り合った。彼はディスコとソウルを同等な熱力と権威で演奏できる数少ないドラマーの一人だ。今や亡きチャールズ・ブラッドリーのバック・バンドでプレイしていえるのを観た後、彼をブライアンのライヴ・バンドのドラマーとして加入させることを薦めたんだ。カイトは、本作収録曲「Nomad」「C’est Cette Comète」でプレイしてる。

他のミュージシャンも紹介しよう。Underground Systemのドメニカは「Mami Wata」「Path to Macondo」でアルト・フルートを演奏し、私のバンド、ザ・フェノミナル・ハンドクラップ・バンドの同僚であるジュリエットとモニカが「Mami Wata」「Force of Will」でバック・ヴォーカルを歌い、旧友であるベン・ローマンズーホップクラフトは私と一緒に「C’est Cette Comète」を共作してくれた。この楽曲の録音セッションではブライアンがピアノとモーグ・シンセ、私がドラム、ベンがベースを弾き、ジャムしながら始まってあっという間に出来上がったんだ。

──このプロジェクトは個人的にどんな意味を持っているのでしょうか?

ブライアン:私は今まで自分自身を歌手であると認識していなかった。今まで、2曲以外に自分が全収録曲をリードで歌おうとしたアルバムを録ったことがなかったんだ。しかしダニエルが自身の安全地帯から抜け出すように勧めてくれくれ、結果として今満足しているね。あらゆる意味で、本作を完成するのに50年の歳月がかかったのかと思う。今まで、私は本作みたいな作品を出す心の準備をしておらず、今回本作を発表したことに非常に誇りに思っている。


──本作を共作する前に、ダニエルのこと、それに彼が過去に制作した諸作品を知っていたのでしょうか?

ブライアン:私の妻と彼女のフランスにいる友達が知っていた、ザ・フェノミナル・ハンドクラップ・バンドのヒット作で、私もアメリカで聴いたことのある曲「15 To 20」に関して探っていたら、ダニエルが手がけた作品だということに初めて気づいたんだ。その後、私が昔から大いに気に入っている、ブラジル音楽に影響された彼自身の作品も聴き始め、それも好きになった。また彼はジョー・バターンの最新作も手がけたことも知って、この作品もヒットした当時、ワクワクしながら聴いていたことを思い出したよ! それ以来、ザ・フェノミナル・ハンドクラップ・バンドの大ファンになり、いつもダニエルにこのバンドと一緒に制作出来るのか相談しているところだ(笑)!

──あなたは、ブライアン・ジャクソンと彼自身の音楽をいつ出会ったでしょうか? 彼が手がけたどのアルバム/楽曲が好きで、気に入っている理由を教えてください。

ダニエル:90年代の中旬に初めてロンドンに旅行したとき、友達が(ブライアン・ジャクソンも参加したギル・スコット・ヘロンの楽曲)「The Revolution Will Not Be Televised」をプレイしてくれた。その数日後に同じ友人が「The Bottle」のライブ盤(『It’s Your World』収録のヴァージョン)のテープを聴かせてくれ、そのときにブライアン・ジャクソンが吹いたフルート演奏を聴きながら「凄い、彼はフルートも演奏することができるんだ。彼は誰なのだろう?」と思ったね。当時、私はフルートに取りつかれていたけど、吹く奏者に出会ったことがなかったんだ。大抵バラードなどを演奏するときにフルートを吹くサックス奏者ばかりに会っていた。もちろんピアノ奏者がフルートを兼用する人も珍しくなかったけど、当時はそれが可能なのか思いもよらなかった。とにかくその時点で私の人生の中で、ブライアンとギル・スコット・ヘロンの音楽は定番だったんだ。しかし、彼らが手がけたレコードは簡単に手に入れるものじゃなかったので、各アルバムはあまり知らなくて、たまに聴いていたミックステープに個々の楽曲に登場していたから知っていたわけだ。例えば「It’s Your World」や、また隣家の窓から「Pieces Of A Man」などが流れていたりしたわけ。以前聴いたことがなかったにもかかわらず、ギル・スコット・ヘロンとブライアン・ジャクソンの諸作品であることが曲を聴けば、簡単に分かるんだ。特にこの2曲は、私の人生に多大な影響を及ぼしてくれたね。90年代の終わりに、ギルが「Show Bizness」のスポーケン・ワード・ヴァージョンを披露したのを観たとき、即座に『Secrets』を入手して、「Angel Dust」も一番好きな曲になったね。


『This Is Brian Jackson』

2022年5月25日(水)
BBECDJ681 CD(国内仕様盤)   ¥2,400+税
2022年5月27日(金)
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※輸入アナログ盤の商品外装は国内製造品と同等の美品状態は保障致しかねます。
BBE MUSIC

■Tracklist
1. All Talk
2. Force of Wil
l3. Little Orphan Boy
4. C'est Cette Comète
5. Nomad
6. Mami Wata
7. Path to Macondo 8. Hold On

◆BBE MUSIC オフィシャルサイト
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