【インタビュー】flumpool、コンセプトアルバム『A Spring Breath』に変化と原点「冬が終わることを望んでいたのかもしれない」
2021年7月に所属事務所から独立、4人で力を合わせ、新たな道へと一歩踏み出したflumpoolが世に送り出すコンセプトアルバムが『A Spring Breath』だ。デビュー曲「花になれ」や代表曲「君に届け」、合唱曲の定番となっている「証」などの既発曲群と、タイトル曲を筆頭とする新曲群を、いずれもアコースティックアレンジで届ける初の試みに挑んだ。
◆flumpool 画像
コロナ禍という、多かれ少なかれ誰もが制約を強いられる状況が2年を超えた2022年の春。変化を求める人の心に寄り添い、そっと後押しするようなこの作品は、メンバー自身の変化への渇望から生まれていた。矛盾するように感じるかもしれないが、“原点”というキーワードも異口同音に語られたのが興味深い。アルバムの制作プロセス、大切にしたものは何か?を尋ねる集合ロングインタビュー。4人が醸し出すムード、バンド内に吹く風もまた春を思わせる、軽やかでナチュラルなものだった。
◆ ◆ ◆
■僕らは路上ライブ出身のバンド
■原点を見つめ直すというか
──コンセプトアルバム『A Spring Breath』は新鮮な驚きに満ちた作品でした。一言でアコースティックアレンジと言っても、実に多彩な広がりのあるサウンドで。どのように生まれたのか、皆さんはこの作品で何を伝えたかったのか。詳しく伺っていく前に……、まずは体調はもう大丈夫ですか? 1月にコロナ感染のニュースで驚き、心配していました。
山村:もう全然問題ないです。そもそも軽症だったので。
──その影響で、アルバムの制作も少し遅れたのですよね?
阪井:間に合うかどうか、かなり危なかったですね。あと1曲を残している状態だったんですよ。「君に届け」だったかな? まさに歌をレコーディングする日に「ちょっと熱出たから帰るわ」って。一番に山村がかかったんですよ。
山村:いやいや、お前やから! だってその瞬間、お前も熱出てたやん?
阪井:お前にうつされたからや。
山村:あんな瞬間でうつされへんやろ(笑)。
阪井:ははは。まぁ、それで1回作業を止めたのが1月中旬ぐらい。2月頭には仕上げないといけなかったのでギリギリですよね。
小倉:その流れで感染を発表するにあたって、メンバー全員検査しておかないと、ということで検査したら、案の定、僕もうつされてて。
山村:いやいや、俺からじゃなから!
▲山村隆太 (Vo)
──逆に言えば、検査がなければ判明しないぐらい、誠司さんには自覚症状がなかったということですか?
小倉:全然なくて。ちょっと咳が出て喉が乾燥するなぁというぐらいで。コロナだなんて全く思わなかったですね。
── (阪井)一生さんは発熱していなかったんですか?
阪井:熱はそんなに出てなかったですけど、一瞬味覚と嗅覚が消え去りましたね。
山村:なんで分かったん? なんか食べて味せえへんかった?
阪井:ティラミスの味がせえへんかった。ティラミスの味せえへんのはヤバいやろ。
小倉:なんでそのチョイス(笑)? カレーとかやったら分かるけど。
阪井:ティラミス食べたい気分だったんや。
小倉:いつもそんな甘いもん食わへんやん?
阪井:Uber Eats見てたらティラミスがあったんや!
──ははは。そんな中、(尼川)元気さんだけは感染せず。
尼川:そうですね。僕だけちゃんと感染対策していたので。それにうつるほど仲良くないんで。
山村・阪井・小倉:いやいや(笑)。
▲『A Spring Breath』通常盤
──いろいろと大変だったと思いますが、皆さんいつもの感じで安心しました(笑)。そもそも、アコースティックアレンジのコンセプトアルバムをつくろう、という案はいつ頃から出ていたんでしょうか?
山村:去年の事務所独立後ぐらいですかね。
──ということは、独立が7月1日でしたから、夏ぐらいから。
山村:そうですね。アルバムというか、まずは「曲づくりをしたいな」というところから始まって。だったらこういったアンプラグドで、「アコースティックな音に一回立ち返ってもいいんじゃないか?」という話になったんです。僕らは路上ライブ出身のバンドだと思っているので、原点を見つめ直すというか。そこから、「じゃあアルバムをつくろう」「ライブもやろう」とアイディアが膨らんでいって、昨年末のビルボード(Billboard Live TOKYO)でのライブが決まったりもして。そんな中で、「アルバムは春に出したい」という想いは早めの段階からありました。冬が終わる、みたいなことを望んでいたのかもしれないですね。春に出そうというのも、冬から春へというのが、季節の中で一番変化が待ち遠しいと思うから。
──新体制になってリリースする第一作目として、春という季節に出すのがふさわしい、というのもあったんですか?
山村:あまり意識はしてなかったんですけど、無意識にこそ真実はある気がするので、そういう気持ちが強かったのかな?とは思いますね。
──メインソングライターである一生さんに伺います。今作に収録されている新曲たちは、いつ頃から生まれ始めていたんでしょうか?
阪井:ビルボードライブが決まったぐらいのタイミングなので、制作は去年の秋ぐらいから始まった感じですかね。
──切なさと明るい希望とが混ざり合った、でも一歩踏み出していこうとするような、静かな覚悟が伝わってくる印象の曲が多かったです。ヴィジョンは明確にあったんですか?
阪井:“テーマは春”というのが一つあったので、まず「A Spring Breath」という新曲を最初につくって。春らしい曲ができたので、これを軸にしていろいろとイメージを広げていったという感じですね。
──体制が新しくなったことは、曲づくりに何か影響を与えましたか?
阪井:曲づくり自体にはそこまで影響はなかったんですけど、レコーディングを全部宅録で自分のスタジオで完結したというのが一番大きいですね。実験的な感じだったので。原点に返るというか、プロデューサーも今回はいなかったので全て自分たちだけで仕上げていくっていう。環境が良いわけでは決してないので、どうやって歌を録ったら一番よく聴こえるか?とか、マイクの種類とか、毛布の位置をどうするかとか。ギターにしてもそうですけど、いろいろと試行錯誤しながらレコーディングをしていったのは、新しい試みでしたね。
──手づくり感もあったんでしょうかね。
阪井:そうですね。結果的にすごくいい出来になったので、今後もこういうやり方でつくれるな、ということも分かりました。
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