【プロミュージシャンのスペシャル楽器が見たい】Unlucky Morpheus 仁耶、“極悪なリフ”が弾ける楽しさを教えてくれたESP E-IIの多弦ギター

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メロディックスピードメタルバンドUnlucky Morpheus(あんきも)で、紫煉とともに華麗なツインギターを構成するのがギタリストの仁耶だ。あんきもでは主に7弦ギター、8弦ギターといった多弦ギターで“極悪リフ”を奏でている仁耶は、ライブにおいては長い間同じギターばかりを使い続けているという。それはなぜなのか、そしてそれはどんなギターなのか、愛機について仁耶に語ってもらった。


――仁耶さんのメインギターは7弦ギター、ESPのE-IIですね。

仁耶:E-IIのHORIZONタイプ、FR-7というモデルです。レコーディングでは曲によってほかのギターを色々と使い分けることもありますが、ライブではほぼこれだけですね。

――どんなきっかけでこのギターを使い始めたんですか?

仁耶:僕は、あんきもに加入したときは普通の6弦ギターを使っていたんです。7弦ギターを使う曲もあったんですが、そのころは6弦でできるようにアレンジしてやっていました。でも加入してからしばらくして、たしか7~8年前だったと思いますが、どうしても7弦ギターが必要になる曲が出てきて。それでそのときにESPさんに相談して、このギターを使い始めました。



――このギターを選んだ決め手になったのはどんなところですか?

仁耶:ちょうどESPさんに相談しにいったころ、このE-IIというブランドが世に出始めたタイミングだったんですね。それで、こういうのを試してみないかと薦められたんです。実際に試してみたら感触がすごくよかったので、決めました。E-IIはオーダーメイドはやっていないので、僕が使っているこれも普通に市販されているモデルです。

――試してみて感触がよかったところは?

仁耶:ギターの見た目ってすごく大事なポイントだと思っているんですが、このギターは見た目も自分たちの音楽に合っていると思いました。音のことで言うと、ざっくり言えばしっかりメタルらしい音が出るところですね。メタルにはこういう音が必要だろうという、自分がイメージしているようなところが、最初に弾いたときにすぐ感じられたんです。


――それはどんな音ですか?

仁耶:まずパワー感、ですかね。そのときはアクティブピックアップらしい音が出したかったんですが、このギターにはそのアクティブピックアップがついているし、ピックアップとのマッチングもこのギターはよかった。パワフルだけど、ただパワフルなだけではなく、それが使いやすい塩梅になっているんです。バランスのよさ、乗りこなしやすさみたいなところもよかったですね。

――初めての7弦ギターを選ぶにあたって、重視していたのはどんなところですか?

仁耶:第一には音のことですが、プレイヤビリティ、弾きやすさも重視しました。多弦ギターって弾きにくいイメージがあるじゃないですか。ネックが太くて運指が難しいとか。そういうイメージがあったので、なるべく自分の手になじみそうなもの、というのは絶対に外せないところでした。7弦ギターを色々と試してみて、中には弾きにくいと思うものもあったんですけど、このギターはなじみがよかった。ネックも太すぎず細すぎず、自分のイメージの範囲内というか、良いイメージを持てましたね。


――7弦ギターにはすぐ慣れましたか?

仁耶:そうですね、1週間くらいで慣れました。ただ、低音弦のブレについてはちょっと苦労しましたね。ギターの低音弦って、強く弾くと音程のブレが出やすくなるんです。それはやはり6弦より7弦のほうが大きくなる。だからそこのコントロールはちょっと難しかったですね。ある程度パワー感を持って弾かないとメタルらしさが出ないんですが、だからといって力いっぱい弾いてしまうと音程がブレる。そういうところに7弦の難しさは感じました。でも、多弦を弾く楽しさを教えてくれたのもこのギターですね。

――多弦ギターの楽しさって、どういうところですか?

仁耶:やはり極悪なリフを弾けるところ(笑)。多弦ギターでないと出せない低音がありますから。出せる音程が広がって、7弦ギターにしかできない表現を楽しめる、それが魅力ですね。


――7~8年と長い間このギターをメインで使い続けてきて、その間にほかのギターに目移りしたことはなかったんですか?

仁耶:なかったですね。とくにライブでは弾きやすさとか、ギターと自分とのコンビネーションみたいなものが重要になるので、そのギターに慣れていることが大事なんです。レコーディングなら自分の手元に集中すればいいけど、ライブだと目を閉じても弾けるくらいになっていないといけない。ギターを換えてしまうと手元の感覚が変わってしまうので、できるなら変えたくないんです。

――それだけ使い続けられているということは、長い間トラブルもなかったんですね。

仁耶:そうですね。もちろん細かい調整はしていますけど、バラしてオーバーホール、みたいな大きなことはしていないし、トラブルのないギターですね。


――このギターのもっとも気に入っているところは?

仁耶:ポジションマークかな(笑)。マークは、もともと7弦側の端に四角いのがあるだけだったんですが、1弦側にも小さいのを追加してもらいました。そのほうが、ソロをハイポジションで弾くときに細かいミスが減るだろうと思ったので。地味な変更点なんですが、これで命を救われたことが何度かあるという(笑)。細かいところだけど、これは市販モデルにはないところだと思うし、とくにお気に入りのところですね。

――追加されたポジションマークもかなり小さいですが、それだけでかなり違うものなんですね。

仁耶:そうですね。やはりライブでは楽しくなりすぎて、我を忘れてしまう瞬間があったりする。そんなときに、意識していなくてもふと目に入ってくるだけでかなり違うんです。ポジションマークがあることで、見た目的にカッコいいかどうか人によって色々感じ方があると思いますけど、自分は弾きやすさ重視で、良い音楽を届けるために必要なものだと思っています。


――では仕様についても詳しく教えてください。まずボディの材質は?

仁耶:アルダーですね。個人的には、アルダーってギターの標準的な音という感覚があります。たとえばマホガニーだと甘くて太い音だと言われていますが、アルダーはとがった部分がないというかオーソドックス、標準的な音という感じで気に入っています。これは重さも標準的だと思いますね。7弦ギターなので当然普通のギターよりは重くなりますが、7弦ギターとしては特別重くも軽くもないと思います。



――ピックアップは?

仁耶:もともとはフロントもリアもEMGの707という、EMG 85の7弦バージョンだったんですが、リアだけEMG 81の7弦バージョンに替えてあります。

――アクティブタイプのピックアップですね。

仁耶:はい。アクティブがとくに好きということではないんですが、あんきものメロディックスピードメタルの音には、よりなめらかさのあるアクティブの音のほうがマッチしていると思うんですよね。EMGはパワー感もあるし、音の輪郭を失わないので多弦ギターとの相性もいいと思います。EMGの音って、メタルに対しての最適解の一つなんじゃないかと思っています。

――ブリッジは?

仁耶:フロイドローズの純正のままです。ただ、バックパネル側に木材を挟んで、アームダウンしかできないようにしています。あんきもでは6弦だけチューニングを下げるドロップDチューニングをよく使うんですが、フローティング状態だと、6弦のチューニングを下げたときにほかの弦のチューニングも変わってしまうので、ブリッジを固定しているんです。ドロップDにするときにすぐチューニングを変えられるように、ナットのロックも低音弦側だけ外しています。

――ドロップDにチューニングしたギターに持ち替える、ということはしないんですか?

仁耶:同じ仕様のギターだとしても、持ち替えるとやっぱり感覚が変わってしまいますから。あくまで同じ感覚でサウンドも変えず、チューニングだけ変えて弾きたいんです。チューニングだけだったら、ペグをひねるだけで済みますから。

――レコーディングでもこのギターを使いますか?

仁耶:以前はレコーディングでも使っていましたが、最近だと2020年の『Unfinished』というアルバムの「籠の鳥」というミドルテンポの曲くらいですね。それ以外はもう1本の7弦ギターを使うことが多いです。E-II TE-7という白いボディカラーのモデルです。

――それはどんなギターなんですか?

仁耶:この黒いFR-7はおとなしくてまとまりがある、優等生的な印象なんですが、TE-7は暴れ馬というか、爆発力がある。爽快でロックな音がするギターです。ピックアップはEMGの85と81の7弦バージョン、FR-7と同じ組み合わせです。このピックアップの組み合わせって、昔から色々な人が使っているメタルの定番で、いわば黄金の組み合わせじゃないですかね。


――ピックアップのフロントとリアの使い分けは?

仁耶:とくに決めてはいないんですが、基本的にはリアが多いですね。低音弦のリフとかバッキングはほとんどリア。でもライブではそのときの気分で無意識に変えちゃったりもするし、1回のソロの中でもフロントとリアをカチャカチャ変えちゃうこともありますね。ただ、紫煉さんとのツインギターのときは、二人ともフロントでそろえよう、とか決めておくことはあります。


――音作りについては紫煉さんの音も意識していますか?

仁耶:基本的にはあまり意識せず、自分の好きな音を作っています。これは弾き方からくるものだと思いますが、どんな機材でも僕の音のほうが鋭くてキレ重視みたいな音で、紫煉さんのは丸くて伸びやかな音になるんです。だから、意識はしていないんですが、お互いを補い合うような音に自然になることが多いですね。

――ちなみに弦はどんなものを?

仁耶:基本的にはエリクサーのコーティング弦で、ゲージは.009~.052です。エリクサーは大好きですね。耐久性もあるし、錆びないから手のすべりがよくて、弾きやすいところがすごく気に入っています。潤滑剤を使わなくてもさわり心地が変わらないので、いつでも同じ感覚で弾けるんです。



――では、もう1本の8弦ギターも見せてください。

仁耶:同じE-IIの8弦で、これも市販モデルです。これは実は紫煉さんのギターなんですけど、僕もこれとまったく同じものを使っています。

――7弦モデルと違うところは?

仁耶:ピックアップはセイモアダンカンのBlackoutsだったと思います。そのほかは、弦の数以外はほとんど7弦モデルと同じです。


――つまみは一つ取り除いてあるんですか?

仁耶:ああ、これは紫煉さんのだからそうなっていますね。もともとは、ピックアップに近いところにボリューム、遠いところにトーンのつまみがあったんですが、遠いほうだけが残っていて、これがボリュームなんです。紫煉さんの好みで、トーンは使わないからなくしたい、ボリュームは手が当たってしまうから遠いほうに置きたい、ということでこうなっています。僕のはもとのままでつまみは2つありますが、トーンはいつも全開です。


――どんなチューニングで使っているんですか?

仁耶:普通の6弦の音域の下に弦を2本足したものですね。6弦がEで7弦がB、ここまでは普通の7弦と同じで、その下にF#の8弦がついているというチューニングです。一番低い8弦は、弾きやすさを重視して細めのものを使うようにしています。

――どんなときにこの8弦ギターを使うんですか?

仁耶:単純に低い音を出さなきゃいけない曲で使っています。8弦ではそんなに速弾きをすることはなくて、基本的にはリフで使っています。でもリフの迫力は相当出ると思いますよ。8弦を絡めたリフって、明らかに異質というか極悪というか(笑)、通常の音楽にはないニュアンスが出せるんです。個人的には7弦まではよくある音だと思いますが、8弦になると“なんだこの音?”っていう感じ。だからそういう効果を狙って使っています。

――ここまで低音になると、ベースの領域にも入ってきますよね。

仁耶:普通のベースの4弦の2フレットの音域まで出せます。だからむしろ紫煉さんのギターとの関係より、ベースとの音の兼ね合いを考えますね。このギターを持つときは低音をあまり出さないように、むしろ高音域の抜け感を重視して、ベースとの住み分けができるように考えています。



――アンプやエフェクターはどんなものを?

仁耶:レコーディングではなるべくアンプのピュアな音を出したいので、エフェクターは極力少なくしているんですが、ライブだと利便性を重視して、アンプシミュレーターとマルチエフェクターが一緒になっているものを使っています。よく使うのはFractalのAX-8とHX Stompです。

――ここで基本的な音を作ってしまうんですね。

仁耶:そうです。僕らはライブだとアンプで音を作らないんです。ここですべての音作りを完結させて、ここから直接PAに送ります。あと、ステージ上のアンプにもこれを送っていますが、それは自分たちのモニターとして鳴らしているんです。

――どんなセッティングで使うことが多いですか?

仁耶:曲によってエフェクターも使いますが、マストで使うのはオーバードライブとアンプモデリングですね。オーバードライブはブースターとして入れていて、アンプに行く前に出すぎている低音を削ってなめらかな音にする、という感じです。バッキングのときは原音を変えすぎないナチュラルなオーバードライブが基本で、ソロのときはミドルの抜けるTS-9みたいなものもよく使いますね。アンプは、AX-8でもHX Stompでもピーヴィーの5150タイプを使っています。

――音作りでもっとも重視していることはどんなことですか?

仁耶:お客さんに良い音で届けることが大事なので、大きい音で鳴らしたときの音をイメージして作っています。


――では、仁耶さんが楽器を選ぶときに重視していることは?

仁耶:僕は新しいものが好きなんです。今ならSNSとかで、ミュージシャンやメーカーさんが色々な情報を出してくれているので、まずそれをチェックしますね。それである程度の当たりをつけてから、楽器屋さんに行って実際に見てみる。そして音が良いとか、ライブで使いやすいとか、色々な視点から総合的に判断するようにしています。

――情報収集が重要なんですね。

仁耶:すごく大事ですね。

――今後使ってみたいギターはありますか?

仁耶:今は、ファンフレットとかヘッドレスとかにちょっと興味がありますね。そういうところって、この10年くらいでかなり伸びてきた分野だと思うんですが、僕はまだ使ったことがないので、機会があれば試したいですね。ギターってまだ発展する余地のある楽器だと思うので、これから新しいものも出てくると思います。ライブ用としては、今のE-IIの7弦と8弦の2本体制で満足してはいますが、なにか良いものが出てきたら使ってみたいですね。

取材・文●田澤仁


▲Unlucky Morpheus(写真左より:仁耶、小川洋行、Fuki、紫煉、FUMIYA、Jill

リリース情報


『evolution』
価格:2,800円(税抜)
品番:ANKM-0041
01. evolution
02. “M”Anthem
03. アマリリス
04. Welcome to Valhalla
05. 誰が為に
06. Wer ist Faust?
07. The Black Death Mansion Murders
08. Serene Evil
09. “M”Revolution
10. 夢幻


『“XIII”Live at Toyosu PIT Blu-ray』
価格:5,000円(税抜)
品番:ANKM-0038
01. Unfinished
02. Unending Sorceress
03. Near The End
04. 籠の鳥
05. Salome
06. Make your choice
07. Top of the“M”
08. Dogura Magura
―Violin Solo―
09. Carry on singing to the sky
10. “M”Revolution
―Bass Solo―
11. Spartan Army
12. Wings(acoustic)
13. 願いの箱舟(acoustic)
14. Vampir
15. Opfer
16. La voix du sang
17. Phantom Blood
18. Angreifer
19. Change of Generation
20. Knight of Sword
―Drum Solo―
21. Black Pentagram
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