【ライブレポート】Bialystocksの世界を堪能する1st EP『Tide Pool』リリースライブ

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Bialystocksが1月26日にリリースされた1st EP『Tide Pool』の発売を記念し、2月25日に<「Tide Pool」Release Live>を新代田FEVERで開催した。

◆ライブ写真

共演予定だったRyu Matsuyamaは残念ながら新型コロナウィルス感染を受け出演辞退となったが、Bialystocksに対する期待値の高さを証明するように当日チケットは完売という盛況ぶりだ。

映像作家でもある甫木元空(Vo)と、他のアーティストのサポートやジャズのライブで活躍する菊池剛(Key)からなるBialystocks。結成のきっかけは甫木元が手掛けた映画『はるねこ』の劇中音楽をライブ演奏するイベントで、2019年から活動を開始した。映画やミュージカルといった二人の共通項と、甫木元のどこか郷愁やペーソスを感じさせる歌詞の世界観、菊池のバックボーンであるジャズやソウルが融合した、オリジナリティと風通しの良さが同居した音楽性で早耳の音楽ファンを惹きつけている。


ライブはミュージックビデオのダイジェスト映像を背景に波の音が流れる中、サポートメンバー5人とともにステージに登場。1曲目は『Tide Pool』収録の「光のあと」でスタート。音数を選びぬいた演奏の上を、あたかもそこあることが当たり前のように伸びていく甫木元のボーカルに驚く。かと思えばR&Bテイストの「コーラ・バナナ・ミュージック」ではトリッキーなメロディラインを歌い、さらに驚かされる。生バンドで表現するネオソウル〜現代ジャズの抜き差し感も音源とはまた異なる楽しさを増幅させていく。さらに郷愁感漂う語りに近い歌い出しとジャジーなピアノのイントロから始まる「花束」。Aメロでのファルセットへの飛翔はこちらの身体も浮き上がるようだ。熱唱とは違う自在な歌唱と、それを埋没させない隙間の多いアンサンブルにすでにオーディエンスは心を持っていかれた様子。

「あ、この二人がBialystocksです」と、登場時の印象をいい意味で覆す甫木元。後のMCでも「Ryu Matsuyamaさんを見るつもりだったけど返金するのもめんどくさいなと思って来られた方もいらっしゃいますよね」と笑いを誘う。


フロアが和んだところでメンバー二人だけでの「フーテン」へ。ブルージーではないけれど、風来坊を描写した歌とラウンジ感のある菊池のピアノが、曲の人物像に命を吹き込む。ここで甫木元が「映画撮ってるとかいうとアーティスティックな人と思われがちなんですが、こんな感じなんです」と、ダメ押し気味に自己紹介。続く「All Too Soon」は歌の譜割りがミュージカル調かつ器楽的でユニーク。サポートの山下あすか(Perc,Cho)のコーラスも効いていて、ノワールなジャズにきらめきを一匙振りかけたような洒脱さ。都会的な夜におとぎの国が出現したような、Bialystocks独特の音楽観が十二分に堪能できた。

さらに超スローなキック&スネアから始まる「またたき」は全ての音が歌に付かず離れずのいい温度感。シンプルな音像だからこそ、サビでエモーションを開放する甫木元のロングトーンも落差があってカタルシスを生む。また、菊池と秋谷弘大(Key,Cho)が添えるコーラスの完成度も高い。秒針のようなシンバルの刻みから入る「Winter」はスタンダードジャズをアップデートしたようなメロディが心地よい。一聴、ジャンル違いなようなブルージーな鶴田伸雅(G)のソロが起点になり、スケールの大きなロックナンバーのエンディングに向かい、バンドスタイルならではのダイナミズムを満喫させてくれた。続いてピアノループに乗る早口のトーキング風ボーカルに耳目を奪われる「I Don’t Have a Pen」。NTT docomoのWEB CM『正解よりも、楽しいを答えに。』に起用された、アイデア満載のナンバーだ。生演奏ではサビでファンクのグルーヴに突入する勢いが何倍にもなる印象だ。そのトリッキーさと熱演に大きな拍手が起きる。


ひとりでフォークギターを弾いていたという甫木元は初めてスタジオに入った際に始まったセッションにどう参加していいかわからなかったという。バンドビギナーだというわけだ。そこに一人、また一人、音を重ね、菊池の「これが噂のセッション!」という言葉に甫木元があんなに流暢な歌から意外なほどたどたどしくフェイクを入れる。さらにサポートメンバーの紹介がスタートし、それぞれのソロパートで会場を沸かせた。

日常をこの上なく美しいメロディに乗せる新作EPからの「Over Now」。ちょっとした皮肉や面白みを押韻も含め、軽快に描くセンスは背景の違う二人ならではだろう。耳が喜び、心が躍る。本編ラストは彼らの中ではフォーキーな魅力にあふれる日常の歌、「ごはん」と「夜よ」を1曲につないだ展開。コロナ禍のみならず、世界が不穏な空気に包まれるときだからこそ、“明日こそは意味を持たずに のんきな歌 そっと響くように”というフレーズがしみた。


ポストジャンル的な多様さを持ちつつ、人懐こさもある彼らの音楽に拍手喝采が送られ、しばしの後、アンコールで再登場。まず二人だけで「あいもかわらず」を披露し、再度サポートメンバーを呼び込んで、主にインディーポップ好きのあいだで話題になり、予測不可能な展開で人気曲になった「Nevermore」を披露。ギターポップのきらめきもエモーションの爆発もすべて詰め込んだこの曲の自由度の高さはさらにオーディエンスを熱くして、そこにいるあらゆる人は高揚感の中、おのおのの帰路についた。

なお、対バンライブ<Bialystocks Live 2022 “音楽交流記1“>が5月7日に渋谷WWWで開催されることもライブ中に発表された。


セットリスト

01. 光のあと
02. コーラ・バナナ・ミュージック 
03. 花束
04. フーテン
05. Emptyman
06. All Too Soon
07. またたき
08. Winter
09. I Don’t Have a Pen
10. Over Now
11. ごはん & 夜よ
EN01. あいもかわらず
EN02. Nevermore

■リリース情報

1st EP『Tide Pool』
2022年1月26日(水)発売
PCCI-00006 ¥1,650(税込) ※CD Only
購入・配信:https://lnk.to/TidePool
収録曲:
01. Over Now
02. All Too Soon
03. フーテン
04. 光のあと
05. あいもかわらず

▼CDショップ購入者先着特典
「光のあと(Acoustic Version)」DLコード付ポストカード
※旧譜特典:2021年2月17日発売アルバム『ビアリストックス』には「Nevermore(Acoustic Version)」DLコード付ポストカードが付属

※全国の対象店舗にて『Tide Pool』を購入した方に、先着で上記オリジナル特典をプレゼント。
各店舗で用意している特典数量には限りがございます。
※特典は数に限りがございますので、発売前でも特典プレゼントが終了となる可能性がございます。
※一部取り扱いの無い店舗やウェブサイトがございます。予約・購入の際には、各店舗の店頭または各サイトの告知にて、特典の有無をご確認ください。

◆Bialystocks オフィシャルサイト
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