【インタビュー】神はサイコロを振らない、2022年第一弾楽曲が物語る「4人全員がカッコいいバンド」
神はサイコロを振らないが2022年第一弾楽曲となる「イリーガル・ゲーム」をデジタルリリースした。同楽曲は現在放送中のTVドラマ『愛しい嘘~優しい闇~』の主題歌であり、劇中歌「あなただけ」含む新曲2曲を書き下ろし提供している。ドラマの台本を読んでから制作された新曲「イリーガル・ゲーム」は愛執染着を題材に、愛情の歪みや脆さなどが生々しく濃く描写されたもの。それら歌詞と共鳴する艶めかしいメロディや重厚なバンドサウンドこそ彼らの真骨頂のひとつと言っていい。
◆神はサイコロを振らない 動画 / 画像
ストリングスとピアノが導く緊迫感の高い導入部は、神はサイコロを振らないの新境地でもある。鋭利なハイハットワーク、歪んで地を這うベースライン、躍動するカッティング。大胆なシンフォニックアレンジと神サイ本来のバンドサウンドとの有機的な絡み合いが、楽曲が持つドラマを壮大に緩急自在に描き上げることに成功した。また、劇中歌の「あなただけ」は弾き語りのデモ段階から世界観が完成されていたという自信作だ。
「イリーガル・ゲーム」「あなただけ」はいずれも3月2日にリリースされる自身初のフルアルバム『事象の地平線』収録曲であり、前者はすでに配信開始、後者は2月18日に配信がスタートするなど、フルアルバムからの先行楽曲となる。BARKSインタビューでは疾風怒濤の2021年を振り返り、2022年の幕開けとなる両楽曲、そしてアルバムへの予感について、柳田周作(Vo)にじっくりと話を訊いた。
◆ ◆ ◆
■いいバンドだなと日頃から思っています
■各々がその道の究極形態になってほしい
──神サイにとって、あるいは柳田さんにとって2021年はどんな1年でしたか?
柳田:“音楽してたなあ”という1年ですね。音楽と向き合って、曲を作ってはアレンジを考えて。そんなことをずっとしていたら、あっという間に1年が過ぎてしまっていたような印象です。フルアルバムの曲順を考えている時に気づいたんですけど、2020年夏のメジャーデビューから現時点までの間に19曲も作っていたんですよ。僕らこれまでミニアルバムしか出してこなかったので、19曲というと、これまでの神サイの5~6年分くらいの曲数で。それほど一気に曲を作った、激動の1年でしたね。
──フルアルバムを作るにしても、20曲も収録するバンドはなかなかいないですよ(笑)。
柳田:ははは。でも初めてのフルアルバムが2枚組なんて、あんまり聞いたことないし、面白いなあと思ってやってみました。
──これだけたくさんの曲を書くのはスケジュール的に大変だったでしょう。
柳田:でも、毎日何かに追われているほうが自分には合っていますね。「1年くらい休みたい」と冗談で言うこともありますけど、実際に長期休暇に入ったら、たぶん2週間くらいで痙攣し出すと思う(笑)。やっぱり曲を作ったりライブのことを考えたりしている時間が、一番生きている実感が湧きますし、結局自分にはそれしかないので。
▲1st Full Album『事象の地平線』初回限定盤
──柳田さんから見て、メジャーデビュー以降の吉田さん、桐木さん、黒川さんはどんな感じですか? せっかく今この場に3人はいないので、彼らに直接言いづらいことも話していただければと。
柳田:悪口言っちゃいます(笑)2021年はアニメやドラマの主題歌を作るチャンスをたくさんいただけた分、いろいろなタイプの曲を作ったし、制作がずっと続く中で、頭の中でパズルを組み立てるのが大変だっただろうなと思うんですよ。それでもちゃんとやってこれた。神サイのギタリストとして、神サイのベーシストとして、神サイのドラマーとして、自分の色をちゃんと出そうと、それぞれが頑張っていたと思うんです。その頑張りが俺にはすごく伝わってきたので、メンバーのことは尊敬しています。たぶん“明日結果が出なかったら終わる”くらいの覚悟を持ってみんなやっているし、メジャーデビュー以降、自然と意識が高まっています。例えば、ドラムの黒川は、毎月の収入のほとんどをつぎ込むくらい、毎日のようにリハスタに入って練習をしているんですよ。
──すごい。お忙しいだろうに。
柳田:神サイのレコーディングに毎回ドラムテックとしてついてくれる方がいるんですけど、その人がずっとドラマーとしての黒川に寄り添ってくれていて。ケツを叩いてもらったりしているみたいです。僕はギターは弾けますけど、ドラマーでもベーシストでもないので、そういう部分を補ってくれる人が周りにいることが、すごくありがたいと思っています。だから、メンバーの成長もありますけど、それだけじゃなくて、チームで助け合って、鼓舞し合って、進んでいる感じがしますね。
──なるほど。
柳田:俺も含めて、音楽をやっている人ってどこか欠けている人が多いと思うんですよ。神サイの4人も“明日音楽がなくなったら、どうやって生きていくのかな?”ってくらい。音楽がなかったら何もできないような、ある意味ポンコツなんです。そんな4人が、たまたま楽器や歌を武器にして世界で戦おうとしている中で、こんなポンコツに賭けてくれるスタッフはじめ周りの人がいるわけだから……だったらもう頑張るしかないでしょ、という。
──素敵なお話ですけど、メンバーの悪口が全然出てこなくてつまらないですね(笑)。
柳田:あはは! あ、このあいだ大阪でライブをした夜、俺と黒川がちょっと喧嘩になりました。俺、神サイはワンマンバンドになっちゃダメだと思うんですよ。やっぱりこの4人で這い上がっていきたいし、4人全員がちゃんとカッコいいバンドになりたい。それで「もしも明日、神サイがなくなったとしても、この人にしか出せない音、味みたいなものが俺は絶対に欲しいんだよ~」って俺が熱く話しちゃって、年始早々、カオスな感じになっちゃいました(笑)。
▲1st Full Album『事象の地平線』通常盤
──でも、バンドのことを大切に思っているからこその言い合いだったんでしょうね。
柳田:そうですね。だから喧嘩ではない。そうやってバンドのことを考えて熱くなっちゃうことがたまにあって。桐木は普段静かですけど、酒が入ると4人の中で一番面倒くさくなりますし(笑)、吉田も含め、本当に熱いやつらだなと思います。それぞれがバンドのことを想っているし、いいバンドだなと日頃から思っていますね。
──それこそ「神サイはワンマンバンドじゃダメだ」というのは、3人に光るものがあると思っているし、信頼もしているし、ということですよね?
柳田:それに、4人ともまだぺーぺーで、伸びしろしかないと思うので。俺自身も含め、それぞれがその道の究極形態になってほしいという気持ちはあります。僕、インタビューやインスタライブでたびたび「自分は歌が上手くない」と言っているんですけど。
──あ、実は、“どうしてそんなこと言うんだろう?”と思っていました。柳田さんの思う“歌が上手い人”って具体的に誰ですか?
柳田:宇多田ヒカルさんや玉置浩二さんですね。あと、声楽とかをやってきた人も自分とは次元が違うなと思います。俺は歌のテクニックみたいなものが全然分からないし、あそこには辿り着けないと思うんですよ。だけど、誰よりも歌に気持ちを乗っけられる自信はあって。
──じゃあ「歌が上手くない」発言は、卑下したり、卑屈になったりしているわけではなく、“自分なりの道があるはずだと信じている”という意味合いというか。
柳田:そうですね。ポジティヴな意味です。一度だけ、ひょんなことからボイストレーニングに行く機会があったんですけど、その先生から「柳田くんの場合、発声法とかそういう話じゃなくて、危ういからこその良さが絶対にあると思う。ロックバンドは上手いことがすべてじゃないから、今日、言ったことはライブになったら全部忘れていいよ」と言われたんです。その時に“自分の歌をひたすら突き詰めればいいんだ”と改めて思うことができて。音楽含め、芸術の面白いところは、“自分こそが正解だ”と言えることだと思うんですよ。だからメンバーに対しても、激ウマになってくれとは思わない。ただ、誰が聴いても“黒川っぽいな” “桐木っぽいな” “吉田っぽいな”と思えるようなフレーズを弾いてほしいし、そういう音作りをしてほしい。それぞれのアイデンティティをここからどんどん出していきたいです。
──わかります。
柳田:僕は正直、「今の歌いまわし、柳田っぽいね」と言われても自分では全然分かりません。だけど自分にとって一番気持ちいい歌い方をしている瞬間に、みんながそうやってフォーカスを当ててくれるので、それが正解なのかなとは思っていて。だから僕個人にとっては、“自分の感覚を信じてあげなきゃ”と思えた1年でした。コラボしたキタニタツヤには「やっぱり柳田らしさってあると思うよ」と言ってもらえたし、Sexy Zoneさんに提供した「桃色の絶対領域」をメンバーのみなさんが歌っているのを聴いた時も、「ここ確かにちょっと俺っぽい。デモの歌を意識してくれてるのかな」と思ったし。少しずつ、着々と“らしさ”を見い出せているのかなと感じています。
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