【インタビュー】imase、クレバーな観察眼とピュアな優しさが心をつかむ2ndデジタルシングル「逃避行」

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■“バズるポイント”と“好きなポイント”
■「逃避行」はそのふたつがめちゃくちゃバッチリ重なった曲


――よく本をお読みになりますか?

imase:本というよりは映画かもしれません。Amazon Primeで人気の映画を国内外問わず片っ端から観ていて。映画はおしゃれな言い回しが多いんですよね。そこからの影響は大きいです。

――映画といえば、先日Twitterで岩井澤健治監督のアニメーション映画『音楽』について触れていましたよね。

imase:『音楽』はすごい映画ですよね! 語り始めるときりがないんですけど、主人公たちが初めて楽器を持って弾いているシーンを観ながら、まだまだ音楽初心者の自分と重ねたりもして。観終えたあとに“やっぱ音楽は心を動かすものなんだな”、“どんなに経験が浅くて粗削りでも、いい音楽なら心が動くんだな”と励みになりましたね。

――imaseさんはTikTokでショートヴァージョンの楽曲をアップしていますよね。まずサビからお作りになるのでしょうか?

imase:サビをある程度固めてから、Aメロ、Bメロと広げていきます。Aメロから作ったこともあるんですけど、サビがパッとしなくなっちゃうことが多くて……(笑)。だから今のところはサビから作るやり方を続けていきたいと思っています。メジャーデビューしてからは僕のデモをもとにアレンジャーさんが編曲をしてくださっているので、これまでずっとひとりで曲作りをしていた自分としては楽しくて。「Have a nice day」の間奏のジャジーな感じは音楽初心者の僕では作れないから、お願いして良かったなあと思います。


――そして1月30日リリースの2ndデジタルシングル「逃避行」。こちらが先ほど話していただいたTikTokの週間楽曲ランキングで1位になった楽曲のフルヴァージョンで、バズりのツボを反映したうえで制作なさったそうですね。

imase:要所要所でバズりのツボを押さえていったので、作っているときから“これ絶対バズるでしょ~!”と確信めいたものがありました。歌い出しのサビの《さよなら 逃避行》というラインがめちゃくちゃキャッチーだし、BPMが130~150くらいの曲にして、あとノスタルジックな雰囲気も今の音楽シーンに合っていると思うんです。


――バズりの傾向を分析して、それを踏まえて制作した楽曲を公開してバズるかバズらないかの結果を見るのは、ゲームを攻略していくのと感覚が近いのかなと思いましたが、いかがでしょうか。

imase:たしかに、面白いですね。でも「逃避行」は思惑どおりにバズったとはいえ、バズりの傾向は結局机上の空論だとも思うんですよ。これまでうまくいかなかったものが多いし、バズりのポイントを押さえていたとしても、バズるのは運の要素もかなり大きい。それでも不特定多数の人が聴いたとき、耳に残るような曲にしようという意識はありますね。

――ちなみにその“バズるポイント”と“imaseさんの好きなポイント”はどれくらい重なるのでしょう?

imase:それこそ「逃避行」はそのふたつがめちゃくちゃバッチリ重なった曲なんですよ。自分が作りたいものと、ほかの人たちが良いと思うものが合致した。だからめちゃくちゃ気持ちよかったですねえ……(笑)。R&Bにしても、ロックやポップスにしても、ノスタルジックな曲、エモい曲はもともとハマりやすいので。「逃避行」は歌詞でも《「夢を見たいの」》みたいに人の話し言葉を使って、そこをエッジボイスで歌ってみたり。曲のなかに主人公像が見えるのは面白いなと思っています。

――分析を表現に落とし込むことに長けていらっしゃるようお見受けします。

imase:やっぱりまだ曲を作り始めて1年くらいの初心者なので、自分の感性だけではバズに追いつけないところはどうしてもある気がするんです。だからつねに自分なりに研究しています。「逃避行」はいつもよりさらにメロディとそのリズムを際立たせたくて、音数を極限まで少なくして空白を作りたいとアレンジャーさんとも話し合いをしました。僕は歌唱力がまだまだだし、グッドメロディは世の中にも出尽くしているから、リズムを工夫したり、音と音の間を埋めていくような拍の取り方をするようにしています。自分にできることは限られているけれど、そのなかで精いっぱいこだわりたいなと思っていますね。


――imaseさんはメロディ、アレンジ、譜割り、歌詞、ヴォーカルなど、楽曲に関わるすべてのことに対して妥協がないと思います。バズりのポイントなどを見定められるのも、耳の良さゆえかもしれません。

imase:そうなんですかね……。めっちゃ耳は掘ってますけど(笑)。

――とことん追いかけたい気質は耳かきにも表れている(笑)。もともとお持ちの性質が、今の時代に音楽をやるために必要なこととぴったり合致したのかもしれませんね。

imase:あははは、ありがとうございます。実際は自分でできることを必死に探っている……という感じです。地声と裏声を使い分けるヴォーカルスタイルも良いのか悪いのかはわからないけど音的に面白いと思うし。それに歌を聴けばすぐ“これはimaseだ”とわかると思うんです。これならほかのアーティストとも勝負できるかなって。

――自分自身の強みを生かしていったがゆえに、今のimaseさんが在るのでしょうね。音楽とimaseさんの関係性は、この1年でだいぶ変わりましたか?

imase:なんとなしに始めた音楽活動ですけど、これだけ反響をいただけたとなると、遊び心は失わずにもっと真剣にスキルを上げていかないとなあと……(笑)。やっぱり期待には応えられる自分でいたいんです。

――人を楽しませたい気持ちが、imaseさんを突き動かしているところも?

imase:学生時代から目立ちたがり屋だったので、そうかもしれません(笑)。今は10代から活躍しているアーティストさんも多いですし、20代でデビューしている人たちも10代から音楽をやっている人たちがほとんどだと思うんです。だから“二十歳から楽器未経験の人間が音楽を始めてもここまでできるよ”という姿を見せたい気持ちもありますね。何かを始めることに年齢は関係ないなと思うんです。それを立証するためにも、アーティストとしてある程度大きくなりたいなって。誰かが音楽を始めるきっかけになれたらなと思います。

取材・文:沖さやこ

リリース情報

「逃避行」
1月30日配信リリース
https://imase.lnk.to/escapeID

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