【インタビュー】群咲「ずっと聴いてくれて励まされたり共感してくれたりしたら嬉しい」

『アイドルマスター ミリオンライブ！』や『ラブライブ！サンシャイン!!』などの楽曲の作曲や編曲を担当し、ずっと真夜中でいいのに。の立ち上げに参加し楽曲提供をしていたラムシーニと、『ウマ娘 プリティーダービー』のダイワスカーレット役などで活躍する声優の木村千咲が意気投合し結成された音楽ユニット、群咲が1stミニアルバム『明日こそ』をリリースする。今回は結成の話から、ミニアルバムの全曲解説まで、ユニットの魅力に迫る。

■関西弁同士で意気投合
■音楽ユニットを結成

──どのような経緯でユニットを組まれたのですか？

千咲：出会いは、私が担当しているキャラクターのキャラソンをラムシーニさんが担当していたことなんです。そこで「ようしゃべるおっちゃんやな」と。

ラムシーニ：誰がおっちゃんや！　お兄ちゃんや！

千咲：……こんな感じで、関西弁同士で話も合って、やりたいことが似ているなと思って、そこからできたユニットなんです。

──意気投合した感じだったんですね。

ラムシーニ：彼女からしたら、作家さんはしゃべらない人が多かったみたいで、しゃべる僕みたいなほうが珍しかったみたいです。ただ、逆に声優さんでノリのいい人も珍しいかも。

千咲：それで一緒に音楽ができそうだなぁって思ったんです。その頃、私もちょうどフリーになった頃だったので、自由に自分で決められるということもあって、音楽を始めました。

──ラムシーニさんは、自分の曲を歌ってくれるボーカルを探していたのですか？

ラムシーニ：それもありますけど「自分も前に出たいな～」って思ったんですね（笑）。でも歌えないし、誰か良い子いないかなとぼんやり思っていたところに現れた感じですね。作曲・編曲の仕事をしている中で生まれた欲というか（笑）。

千咲：タイミングが良かったんですね。


──一緒に音楽をしていて、お互い「良いな」と思うところはどんなところですか？

千咲：ラムシーニさんは、私に対しての信頼を置いてくれているんです。私は何でも挑戦したいタイプなんですけど、それをわかってくれて、難しい曲を出してきてくれる。それに対して私も頑張るから、私も向上できるし、ラムシーニさんも楽しくできるのかなって。そこは魅力だと思います。

ラムシーニ：ありがとう（笑）。彼女は、声優さんの中であまりいないキャラクターだと思うんですよ。マイルドヤンキーと僕は言ってるんですけど、それでも一本筋が通っているんです。何でもやりたいって聞くと、軸がブレてるんちゃうかな？となるんですけど、彼女は一本筋が通っていて、それを軸に広げているからブレない。そこは良いかなと思っています。

──千咲さんの歌詞もいいですよね。

ラムシーニ：歌詞に関しては、言いたいことはひとつでいいと言っているんです。世の中に対する不満とかって、人間って大きく1個や2個だと思うんです。そのひとつあれば、それを歌詞に載せたらいい。それは守ってくれていると思います。

千咲：ちゃんと私がブレそうになったときは軌道修正してくれるんです。そんなんじゃなかったやん！って。それも助かっています。

──今回、1stミニアルバム『明日こそ』が1月31日にリリースされましたが、クラウドファンディングで作ることになったんですよね。

ラムシーニ：そうですね。クラウドファンディングでアルバム制作プロジェクトを立ち上げ作っていったんですが、最初はできた段階で出すつもりだったんです。ただ、アルバムができそうになったときに、文化放送さんでラジオ（『群咲の古参ぶるなら今なのでは！？』）を始められることになったんです。

──宣伝は主に千咲さんの担当なんですか？　twitterにもソーシャルメディアインフルエンサーとなっていますけど。

ラムシーニ：去年の2月にゲームの『ウマ娘 プリティーダービー』がリリースされて、すごく流行りだしたんです。それまではフォロワーが200人くらいで……。

千咲：500人はおった！

ラムシーニ：おったか。でも、そのときは僕のほうがまだ多かったんですよ。

千咲：それでマウントを取られていたんです。

ラムシーニ：そしたら一気に抜かれてしまって。それだったらもう君が宣伝しなさいと（笑）。

千咲：でも知ってくれる人が多いということは、気に入ってくれる方も増えるということだし、それでファンになってくれた方もいたから良かったです。


──ミニアルバムのタイトルはどう決まったのでしょうか？

千咲：私は最初から『明日こそ』にしようと思っていたんです。というのも、群咲のテーマとして「今日も映えない、明日こそ映えたい私たちへの音楽ユニット」というのがあるんです。世の中に不満を溜め込んで、なんで映えないのかなって思っている人っていると思うんです。もっと注目されたいのに、なんでこんなにうまく行かないのかなって。その思いを中心に1stミニアルバムを作っていったので、このタイトルがいいのかなって。

──その思いは軸としてあるんですね。

千咲：私の感情的にも「明日こそ！　明日こそ！」と思って生きてきたところがあるので、それがようやくに世に出せて、一つの作品にできたのかなと思います。

──曲は、YouTubeにアップされていますが、最初に出たのは「非公式ワタシ」でした。

ラムシーニ：この曲は、Lady Antebellumの「Need You Now」という曲の日本版をやりたかったんです。もちろん仕事ではそんな案件はないので、ここで作ったというか。ユニットとしての1曲目は自己紹介曲だなと思ったので「自分が今思っていることを全部書き！」と渡したので、最初は再生数とかは考えないで作ったんですよ。2曲目で「深海に漂う」を書いたんですけど、それ以降の曲は、自分が「ずとまよ」（ずっと真夜中でいいのに。）とか今まで聴いてきた好きな音楽、作編曲の仕事での経験を踏襲している感じになっています。


■1stミニアルバム『明日こそ』
■全6曲を2人が語る

──ミニアルバムの収録順に話を聞いていくと、1曲目の「深海に漂う」は疾走感たっぷりの曲で、歌詞も〈この場所が心地良い いちばん心地良いなら　いなよ〉と強く歌うものでした。

ラムシーニ：めっちゃ煽ってるんですよ。

千咲：私は煽っていたんですけど、感情的に「ここにいてもいいんや」と捉える人もいたんです。でも、そう受け取る人がいることってすごく素敵だと思ったので、聞いてくださる方の解釈や状況に委ねたいと今は思っているんです。

ラムシーニ：きっちり答えを出さんほうがこの曲はいい気がするね。どっちに捉えるかはあなた次第という。


──続く「透明少女、空を往く。」ですが、“透明少女”はナンバーガール世代からすると、気になるワードですね。サウンドもギターロックですし。

ラムシーニ：「ロキノン系が好きやけど、みんな聴いてるから、好きって言うとちょっと……」という気持ちってあるじゃないですか（笑）。大阪の大学に通っていたときにライブハウスに行くと、そういう曲ばかりなんですよね。そうなると僕はあまのじゃくだから「やっぱプログレっしょ！」みたいな。でも、ホントは好きやねんなぁっていう……当時は隠れロキシタンと言ってたんですけど、そんな僕が密かに作っていた“ロキノン憧れ”曲です（笑）。群咲のために書いた曲ではないので、この曲だけピアノがほとんど入っていない、ギター中心の曲になっているんですよね。

千咲：私はこの曲一番好きかもしれない。歌詞も、自分に正直になって書いた曲ですね。


──「第一印証」は、いつまでもつきまとう第一印象って面倒だなという曲でしょうか。

千咲：そうですね。「いつまでその考えでおんねん！」っていう気持ちを歌った曲になっています。

ラムシーニ：この曲は一度レコーディングをして、彼女も個人的に納得していたと思うんですけど、後で聴いてみたら「なんかちゃうな」となったんです。で、その次の週の「またこれ」のレコーディング時に、わざと怒らせたんですよ。収録中に、僕が居眠りをするという技を使って（笑）。

千咲：この人いつもこっそり寝るんですよ。それがブースから見えるから「寝てるやん！」って。

──それは怒りますよね。

ラムシーニ：スタジオの後ろにいるイキりプロデューサーみたいな感じですよね。で、怒ってるからしめしめと思って、もう一度「第一印証」を歌ってと言ったら「はあ？」って。

千咲：マジっすか？？って、まためちゃめちゃ不機嫌になって。

ラムシーニ：スタジオの空気も悪くなるんですよね。エンジニアさんもあたふたしているけど、僕はしめしめと。それで歌ってみたらめちゃめちゃ良かったんです！

千咲：そんなこともありましたねぇ。

──曲を聴いたときのメモで、“ブチギレソング”と書いたのですが、本当にブチギレていたのですね（笑）。

千咲：マジでブチギレてました。

ラムシーニ：彼女も役者なので、役者としてのブチギレってできると思うんです。ただCDは一生聴けるものなので、演技ではない本当のブチギレを入れたいなって。

──あと、ラップも聴きどころですね。

千咲：ラップは結構苦戦したんです。あっ、その時もいなかったよね？

ラムシーニ：仕事の電話の対応をしていたんですよ。その間にラップ部分を録っていたんですけど、聴いたらRun-D.M.C.みたいな感じだったんです。

千咲：だって、そのイメージだったんだもん。

ラムシーニ：いや、古いんよ！

千咲：「それは違う」と言われて、でもいなかったから、「おらへん自分が悪いやろ！」ってまたキレたんです。

ラムシーニ：今のラップを聴いているのか？って。

千咲：ヒプノシスマイクは聴いてるよ！

ラムシーニ：ヒプマイ聴いてて、Run-D.M.C.は出てこんのよ！　当時聴いてたやろ？ってくらいドンピシャ世代の歌い方してたんですよ。もちろんRun-D.M.C.は好きですよ！　でも、この曲はそれじゃないっていうだけなんです。

──今、けっこう仲悪いユニットになっていますけど、大丈夫ですか（笑）。

千咲：ビジネス仲良しです（笑）。

──続く「またこれ」はピアノが印象的な曲でした。

ラムシーニ：この曲はMVを作らず、曲だけなんですけど、歌詞を見ると、今までの歌い方じゃないほうがいいかなと思って、あまり感情を入れずに歌ってもらったんです。この曲を聴いてどう思うかは、聞き手に委ねようと思ったんですよね。

千咲：ここまでの3曲とも強く歌っていたから、珍しかったし挑戦でした。

ラムシーニ：やっぱり強く歌うとメッセージ性って固定されるんですよ。ゆったり聴いてほしい気持ちもあったので、こういう歌い方にしてねってお願いしたら、プロなので完璧に歌ってくれて（笑）。

千咲：結局どうなりたいの？　みたいなところがある曲だったから、歌い方はこれが正解だったと思うし、伝わりやすいかなと思いました。

──ピアノ以外だと、ワウギターも良いアクセントになっていましたね。

ラムシーニ：ワウが大好きなんですよ！　ロックでギターのワウが入っているのが大好物なので入れちゃうんですよね。

千咲：私もワウの音、好きよ。なんだかんだ、この人の曲は好きなんですよ。いつも良いなって思っているので。

ラムシーニ：曲“は”って！　聞き逃さんぞ（笑）。

千咲：たまにイラッとするけど、結局良い曲を書く人やな～と思っているんです（笑）。

ラムシーニ：（素直に）ありがと。

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